【自主レポート】

第34回兵庫自治研集会
第8分科会 都市(まち)と地方の再生とまちづくり

 兵庫県本部は1985年から続く自治労「水週間」の取り組みを、2000年から県本部の「平和・人権・環境を考える集い」の一環と位置づけ、県本部総体の環境運動として取り組み強化しています。そして、県本部公営企業評議会は、「水は公共のものである」を訴えることを基本に、単組では地域住民や関係団体との協働による取り組みを続けています。第19回~第28回のここ10年の自治労「水週間」の主な活動を報告します。



自治労「水週間」の兵庫県本部公企評の取り組み
地域住民とともに取り組むツアー

兵庫県本部/公営企業評議会

1. はじめに

 兵庫県本部公企評は、1985年から開始された自治労「水週間」の取り組みを積極的に進めています。一方、県本部では1998年から、6月第1週土曜日の「平和・人権・環境考える集い」の取り組み(別途レポート報告)が開始され、2000年から「水週間」の取り組みは、この平和・人権・環境の取り組みの環境運動の一環として、公営企業評議会が中心となり企画立案し、県本部総体の取り組みとして進めています。
 山桜の育成のために間伐や下草刈りする組合員
「桜の園(兵庫県宝塚市)」
 県下のブロック・単組へは、本部公企評の水週間の統一行動指針に基づき①水源地・河川流域のごみなどの不法投棄実態調査行動、②水源涵養林等の下草刈り行動、③河川敷の清掃および水質調査行動、④組合員の家庭における節水行動、⑤組織内議員への取り組み要請をしています。
 県本部公企評は、自治労「水週間」の取り組み内容やテーマを検討し、組合員および家族と地域住民の参加を呼びかけて、子どもと共に学習できる取り組みを推進しています。その中で、阪神淡路ブロック水道部会では、第20回自治労「水週間」を機に、県本部総体で取り組みをした『「桜の園」での下草刈り活動』を、住民団体である櫻守の会にお世話になり、取り組み(別途レポート報告)を継続しています。
 自治労「水週間」の8月1~7日の期間中は、「水は公共のものである」という理念の確立を求めた連合「水基本法」制定の必要性を訴えるため、県本部公企評は「水きりペーパー」の教宣物を作成して、ブロック・単組では地域住民へのアピールを進めています。以下、主な活動報告をします。


2. 取り組み報告

(1) 10年間の取り組みテーマ等の一覧
  開催年月日
取り組みテーマ
住民団体 等
第28回
2012年
8月1日(水)
自然再生エネルギーを考える発電所見学ツアー
関西電力㈱ 奥多々良木発電所
第27回
2011年
8月7日(日)
「千種川の清流と地域再生力」に学ぶツアー
佐用町の「久崎地区商店会」(井口覚さん・井口呉服店代表)
第26回
2010年
7月29日(木)
国立公園成ヶ島の環境に学ぶツアー
国立公園成ヶ島を美しくする会(会長/花野晃一・所在/洲本市由良)
第25回
2009年
8月6日(木)
子どもとともに「森と水の恵み」に親しむツアー
ひょうご森の倶楽部
第24回
2008年
8月6日(水)
みんなで考える武庫川の旅
足立 勲さん(関西学院大学非常勤講師)
第23回
2007年
8月3日(金)
みんなで考える武庫川の旅(雨天中止)
 
第22回
2006年
8月26日(土)
2006水環境フェア「平磯探検隊」
神戸市建設局西水環境センター(垂水下水処理場)
第21回
2005年
7月30日(土)
県立コウノトリの郷公園視察・交流
県立コウノトリの郷公園
第20回
2004年
8月7日(土)
① 「涵養林の役割とその整備」の学習
② 「桜の園」での下草刈りのボランティア活動
ボランティアグループ「櫻守の会」
第19回
2003年
8月6日(水)
8月7日(木)
8月2日(土)
ブロック別にて河川調査等を実施
① 阪神淡路ブロック
甲山森林公園ビオトープ観察と水中生物観察、
武庫川下流・百間桶の視察(バス2台)
② 播磨ブロック
「水基本法について」「水環境を考える」の2つ
の講演で学習
③ 但馬丹波ブロック
円山川の河川水質調査及び水中生物調査
(豊岡市土渕・和田山町竹田)

足立 勲さん
(関西学院大学非常勤講師)

高山博司
公企評議長

上田 尚志さん
(コウノトリ市民研究所)

千種川と佐用川の被害の写真パネルの説明を聞く
(兵庫県佐用町久崎地区)

(2) 主な取り組みの概要
① 千種川の清流と地域の再生力に学ぶツアー
  自治労「27回水週間」の県本部の取り組みは、2011年8月7日(日)に、佐用町の「久崎地区商店会」(井口覚さん・井口呉服店代表)のご協力により、夏休みということを前提として小中学生を対象としました。子どもとともに「千種川の清流と地域再生力」に学ぶ取り組みを11単組51人の参加により行いました。今年は現地集合としましたが、多くの組合員や家族、市民団体などの参加がありました。
  冒頭、甘中公企評議長のあいさつの後、佐用町職尾崎執行委員長から「2年前の豪雨災害では、県下単組から多くの支援を受けありがとうございました」と連帯あいさつがありました。
  その後、佐用町企画防災課の高見さんより、ビデオによる2009年8月の台風9号による豪雨災害について説明がありました。
  「佐用町久崎地区は、千種川と佐用川の合流点なので大きな水害を受けた。2004年と2009年の2回浸水があった。地域のコミュニティー力により全住民が助かった」と報告がありました。井口さんから「不気味な雨の降り方であった。コンクリートやアスファルトにより、水が山や地面などに吸収される前に住宅地を襲った」と、当時を思い出してのお話がありました。
  意見交換では、「佐用ICから車窓を見ていると川幅はせまいし川底が浅い、今後も大丈夫か」に対し「県は5年計画で河川改修している。その中で2009年は600年に1回の災害。2004年は100年に1回の災害。1976年は1000年に1回の災害と県の考え方である」と地域住民が苦慮していると報告。また、「早い段階での避難勧告が有効では」に対し「お年寄りには早く避難が必要。町では小学校単位で、ワークショップを行いながら避難マップ作りを提起している」と町全体で防災意識の向上をはかっている報告もありました。
  その後、猛威をふるった水害から復興した町並みの実相や地域環境の視察を行いました。
② 国立公園成ヶ島の環境に学ぶツアー
  県本部公企評は、平和人権環境実行委員会とともに第26回自治労水週間の取り組みとして2010年7月29日に国立公園成ヶ島の環境に学ぶツアーを行いました。この取り組みは、洲本市由良町の無人島である国立公園成ヶ島で自然環境を学ぶツアーで、県内14単組77人が参加しました。県本部公企評は、①大阪湾における漂着ごみ対策の取り組みの学習、②漂着ごみ被害が心配される干潟に生息する希少生物生態の観察の2点を重点に取り組みました。
  当日は、先行きが不安なほどの大雨の中で姫路と宝塚からのバスで洲本市由良港に到着、成ヶ島に渡船しました。現地では雨も上がり、国立公園成ヶ島を美しくする会の花田晃一会長のガイドで希少な動植物の生態に関する説明を受けた後には、参加者自ら動植物に触れる観察が行われました。バスは往路は淡路島公園・ハイウェイオアシス、復路は道の駅あわじで休憩しました。
  成ヶ島では主催者を代表して甘中公企評議長が、「大雨でどうなるかと心配しましたが、雨も上がり安心した。大阪湾のガラパゴスと言われるほど希少動植物が生息する島です。しかし、大阪湾のごみが漂着する環境破壊も同時に問題とされている。自然と環境破壊を同時に学んでほしい」とあいさつしました。国立公園成ヶ島を美しくする会の花野晃一会長からは、成ヶ島に漂着するペットボトル対策に多くの費用が必要なこと、県内レッドデータ500種のうち60種が同島に生息していること、子どもが空と海と生物など自然に触れることの大切さについて説明がありました。
  その後、花田会長のガイドで群落しているハマボウとその黄色い花の生態を説明してもらいました。塩湿地の干潟では、参加した子どもたちがカニと貝を手にとっては花田さんにその名前を聞く場面がありました。なかには、珍しいシオマネキというカニも見つかりました。ごみ被害と希少生物が共存する成ヶ島で環境について学ぶことが出来ました。
③ 子どもとともに「森と水の恵み」に親しむツアー
  県本部公企評は、平和・人権・環境実行委員会の取り組みの一環に位置づけてきた第25回自治労水週間として「子どもとともに『森と水の恵み』に親しむツアー」を行いました。このツアーは2009年8月6日にグリーンピア三木で取り組まれたもので、NPОである「ひょうご森の倶楽部」の協力のもと環境を守る上での森や水の役割について小学生などの参加により学びあいました。15単組・2団体95人が参加、小学生など子どもの参加は45人となりました。
  当日が広島に原爆が投下された日に当たることから参加者全員による黙祷で始まった全体集会では、主催者を代表して川本公企評議長が、「このツアーでは森の探索により森と水の関係や役割について学んでほしい。健康な森は、保水力も強く災害を防ぐこととなる。夏休みの自由研究や工作などに活用してほしいと思い、クラフト作業にも取り組むことにしている。森に学び、クラフト作業を楽しもう」とあいさつしました。続いてひょうご森の倶楽部の福田会長が、同倶楽部の取り組み内容を紹介するとともに豊かな森を育てる活動の重要性を話されました。
  参加者はAグループとBグループに分かれて、倶楽部の森の探索とクラフト講習を交互に行いました。倶楽部の森の探索では、10人単位で倶楽部のガイドによる案内で探索コース沿いの樹木について説明を受けたり、多い茂った樹木の間伐を実演したりで、健康な森についての理解を深めました。クラフト講習では、小学生や参加者が樹木の幹や実などを細工してブローチや置物などを作製しました。
④ みんなで考える武庫川の旅
  県本部は2008年8月6日に「みんなで考える武庫川の旅」に取り組みました。武庫川上流の三田市藍本地区日出坂を訪れ、水生生物を通した水質調査などを行いました。夏休み中のため家族参加も多く、10単組87人が楽しい1日を過ごしました。
  午前は兵庫県立「人と自然の博物館」で関西学院大学非常勤講師の足立勲さんから、武庫川の状態と日出坂の河川工事の概要の説明を受けました。自然環境豊かな武庫川上流には、たくさんの生物が住んでおり、河川工事はあらい堰や床止工などの技術を用いて、環境に配慮した形で行われているなどの話を聞きました。
  また午後からの河川調査に向けて、サワガニなど「きれいな水」にしか生存していない生物と、「少し汚い水」で見られる生き物を子どもたちにわかりやすく伝えていただきました。
  昼食休憩後、日出坂を訪問しました。子どもたちは一斉に川に入って、魚・虫・貝などの水生生物をつかまえました。事前に説明を受けた床止工やあらい堰の姿も確認しました。
  短時間で楽しみながらも、かなり精度の高い調査を実現。この日はカワニナ、スジエビが最も多く見つかり、「河川の状況は水質階級Ⅱに該当する」と足立さんが調査結果をまとめました。
  この日は宝塚と姫路からバスを出して「旅」を実施しました。それぞれの道中では、「水の商品化」によって世界各地で発生している地盤沈下や環境汚染、ペットボトルのごみ問題などを考えるビデオ鑑賞も行いました。
⑤ 県立コウノトリの郷公園視察・交流
  公営企業評議会は、2005年7月30日に平和・人権・環境実行委員会とともに「第21回自治労水週間」の取り組みの一環として、豊岡市にあるコウノトリの郷公園で視察・交流を行いました。神戸・宝塚・姫路からバスによる参加者に但馬の仲間をあわせ16単組115人が、県立コウノトリの郷公園と豊岡市立コウノトリ文化館を訪れ、コウノトリの野生復帰への取り組みを学びました。往路のバスのなかでは、コウノトリの絶滅から自然放鳥にむけた取り組みを解説したビデオを鑑賞することで参加者の予備知識としました。
コウノトリの野生復帰の学習
(兵庫県豊岡市)
  午後1時からはコウノトリ文化館多目的ホールで「コウノトリいよいよ大空へ」というテーマで元コウノトリ飼育長の松島さんから、コウノトリの生態や食物連鎖の再構築について話を聞きました。このなかでコウノトリ絶滅については、環境に対する人間の社会意識の変化と農薬などによるドジョウの減少という2点が考えられると説明されました。県立コウノトリの郷公園研究部長の池田さんは、自然回復の実践を通じ「まだまだ日本の自然は回復力を持っている。今の内に何とかしなければならない」と述べ、この年の9月24日のコウノトリ放鳥がその一歩になることを訴えていました。
  2班に分かれての現地視察では、コウノトリの絶滅を防ぎ野生に返すためには、河川や田んぼの自然再生が必要であり、参加者は現地ガイドの説明を受けながら文化と自然の関係について考えあいました。時間的制約もあり、充分な視察ができないという問題も残しました。交流会には組合員の他、家族の参加もあり、環境問題について考える一助となりました。


3. まとめ

 自治労「水週間」は、水辺環境や水循環について地域住民や関係団体とともに協働していく取り組みが求められます。
 本部公企評の塗り絵と写真コンテストでは、兵庫県本部からも応募し入選しています。
きき水と「水の相談所」を行う尼崎水労
(阪神尼崎駅前)
 阪神淡路ブロック水道部会が中心となり、2004年から継続した取り組みの宝塚市の桜の園「亦楽山荘」の下草刈り活動は、櫻守の会にお世話になり、遊歩道の下草刈りと松や樫の木の伐採などを行っています。引き続き、里山の果たす水循環の環境学習を深める取り組みが求められます。
 また、播磨ブロック公企評の取り組みは、駅頭での県本部作成の水きりペーパーを活用した街頭宣伝を通して、町職を含めて多くの参加がありました。単組の取り組みのモデルとなるように、地域住民とともに自治労水週間の活性化を図る必要があります。
 単組の水週間の取り組みでは、高砂市職では独自のバスツアーの環境学習を、尼崎水労は阪神尼崎駅前で水の相談所を開き、宝塚市職労では逆瀬川駅前でブロック作成のエコバックとビラを配布しています。少しずつ取り組みに広がりが見えますが、取り組みができていない単組が多く、引き続きブロック内で共同したイベントの開催の検討や、取り組みが出来ていない単組では内容の充実が求められます。