【自主レポート】

第34回兵庫自治研集会
第8分科会 都市(まち)と地方の再生とまちづくり

 神石高原町では、高齢者世帯などを対象とした買い物支援、軽作業の支援、コミュニケーションの確保、緊急時の連絡体制の構築などに取り組むことが必須の課題となっている。これらの課題に対応するため、集落における安否の確認、買い物支援などの生活支援ニーズと現状のサービス体制を把握するとともに、行政、地元自治会、集落支援員、町内の商業者、大手コンビニエンスストアなどの多様な担い手による生活支援のあり方を実証的に検討し、高齢化の進んでいる集落における諸課題を総合的に解決するための先駆的なモデルの構築を目的とする。



過疎地域が抱える買物困難者の課題解決に向けて


広島県本部/神石高原町職員労働組合 岡﨑  謙

1. 神石高原町の概況

 神石高原町は、2004(平成16)年11月5日、旧4町村(油木町、神石町、豊松村、三和町)が合併し誕生した町で、面積は381.81km2 、標高400m~500mで、中山間地域である。現在の人口は10,852人(2010年国勢調査)、世帯数4,155世帯であるが、2016年には人口9,500人となり、1万人に満たない状況になると推測されている。高齢化率は、現在42.5%で過疎化、高齢化は現在も進行しつつある。


(単位:人、%)
区 分
1965年
(昭和40年)
1985年
(昭和60年)
2000年
(平成12年)
2010年
(平成22年)
実数
増減
実数
増減
実数
増減
実数
増減
総 数
23,297
-
14,834
△36.3
12.512
△15.7
10,350
△17.3
うち15歳から29歳
3,464
-
1,438
△58.5
1,197
△16.8
955
△20.2
65歳以上
2,999
-
3,456
15.2
5,072
46.8
4,622
△8.9
高齢化率
12.9
-
23.3
 
40.5
 
42.5
 

2. 課題の背景

 神石高原町は、2009年度から集落支援員制度を導入し、限界集落の抱える多くの課題解決に向け取り組みを進めてきた。集落機能の維持、再生を重要課題として取り組みを行ってきたが、更に重要な課題として集落支援員も提起している、「個々に対しての支援」が多くの独り暮らし世帯や、高齢者からあげられている。
 特に買物に対する支援、ちょっとした修理等の依頼、コミュニケーションの維持、緊急連絡等といった総合的な支援である。
 買物支援では、限界集落において個人商店が廃業し、移動販売に頼らざるを得ない高齢者も増加しつつある。しかし、移動販売業者も高齢化し、仕入から長時間の運転など労力的な課題を抱えながらの営業となっている。
 また、高齢者の一人暮らしの見守りについても、町内全域において重要な課題となっている。民生委員等との連携を図りながら、定期的で頻繁な訪問を期待する世帯が増加している状況がある。

3. これまでの取り組み

 2009年度から「神石高原町美しい源流の里条例」を制定し、小規模・高齢化集落の維持再生に向け「集落支援員」制度により取り組みを進めている。10人が49集落を分担し集落の見回りから話し合い、課題の共有化、維持再生に向けての計画策定の支援など行っている。
 また、2011年度は集落支援員と連携しながら、町単独費により維持再生のための事業に取り組んでいる。事業の実施にあたり集落の総合的な維持・再生の困難さを痛感するとともに、個々に体する個別支援のあり方を模索しているところである。
 そのような中、大手コンビニのCEOと面会の機会を得ることができ、地元が主体となり限界集落などに極小の店舗を出店する計画、現在移動販売を行っている業者と連携し、田舎商品のみでなく数少ない若者にも全国展開するコンビニの商品を提供する計画、併せて高齢者の安否確認を行う計画、さらには大手コンビニのネットワークを活用し、田舎から特産品、特徴ある商品等を逆に販売する計画など提案したところその提案内容に同意を得ることができた。
 そして、2011年度から総務省の過疎地域等自立活性化推進交付金事業によるモデル事業としてスタートしたところである。

4. 支援体制

 地域住民の希望に基づき、自治振興会、集落支援員、買物支援事業に参加する商業者(以下「商業者」という。)、コンビニエンスストア、神石高原町の連携により、希望者に対する買物支援を行う。


主 体
役 割
備 考
希望者(住民)
・神石高原町への買物支援申請書、個人情報の提供に関する同意の提出
・買物支援への協力
・町に申請書、同意書等を提出
自治振興会 ・希望者への説明、周知
・事業に関する連絡調整
・町、商業者、自治振興会、集落支援員による協定を締結
集落支援員 ・希望者への説明、周知
・利用者、希望者等の相談等への対応
商 業 者 ・買物支援事業の実施
・訪問時の安否確認
・結果の神石高原町への報告
コンビニエンスストア ・商業者の買物支援への協力
神石高原町 ・買物支援希望者の審査、利用者登録
・商業者への買物支援の依頼、結果報告の受理
・商業者に対する経費の一部助成等の支援
・自治振興会、集落支援員との連絡調整


5. 事業の実施方法

(1) 買物支援対象者の選定
○ 事業を実施する自治振興会の区域に居住しているもの(長期入院者等は対象外)
○ 世帯構成員の全員が75歳以上の高齢者、障害者又は18歳未満の子どもの世帯であること
○ 町長が、買物支援を行うことが必要と認めたもの

(2) 対象者名簿の作成・管理
神石高原町が、対象者名簿の作成・管理
対象者名簿を、商業者、自治振興会及び集落支援員に提供

(3) 買物支援の対象とする商品一覧
対象者の日常生活に必要な次の商品
① 野菜、魚、肉などの生鮮食品
② パン、乳製品、惣菜などの加工食品
③ 菓子、デザート、アイスクリームなど
④ ジュースなどの飲料、酒類
⑤ 紙製品、医薬品、洗剤等の衛生用品
⑥ その他の日用・雑貨品
⑦ その他、日常生活に必要な物品

(4) 買物支援の方法
① 神石高原町、商業者、自治振興会及び集落支援員による、4者協定の締結
② 商業者は、取り扱う商品のカタログ等を作成し、対象者に配布
③ 商業者は、毎週、販売又は配達時の聞き取り、電話連絡
  対象者の注文把握、注文受付表(次頁例示参照)に記入
④ 商業者は、注文受付表に基づいて、毎週1回以上、原則として注文受付後1週間以内に、商品を対象者に届ける。

(5) 安否確認
① 商業者による声かけ、対象者の安否を確認
<声かけの例>
○ 体調はどうですか?最近変わりないですか?
○ 食事はとれていますか?
○ 夜眠れていますか?

(6) 関係機関との連携
 警察、消防、保健所、社会福祉協議会、民生委員・児童委員協議会等の関係機関に対して必要な情報提供や、関係機関との連携を強化

6. 今後の課題

 2011年度にモデル事業としてスタートし、2012年度において2地区で引き続き実施している。事業の成果を踏まえながら、今後一層進む高齢化・少子化等をはじめとする過疎地域が抱える多くの課題を総合的に支援する必要がある。
 そのためには、行政のみならず、地元自治会、集落支援員、地域おこし協力隊、産直市場、地元商店、大手コンビニエンスストアなどの「官」と「民」が連携して行うことにより幅広い分野においての「支援システム」を早急に構築する必要がある。
 この取り組みが実現することにより、全国に存在する多くの限界集落の課題解決と、中山間地域のモデルとなり、地域実情に合致した取り組みにアレンジして活用できる可能性があると考える。


支援システムの将来像