【自主レポート】

第34回兵庫自治研集会
第8分科会 都市(まち)と地方の再生とまちづくり

 阪神大震災をはじめ、東日本大震災でも問題となった地域コミュニティの分断問題を受け、地元の自治組織「自治公民館の未加入問題」について考えました。現状の自治公民館組織について勉強し、未加入問題について現在どのような取り組みがされているか確認したうえで、今後どのような対策が有効な手段であるか考えました。



自治公民館未加入問題


宮崎県本部/都城市役所職員労働組合・賃金教宣局

1. 自治公民館とは?

 自分たちの地域をより良くするため、地域でかかえる課題に自主的に取り組んでいる任意の団体で、任意で加入している地域内の住民で構成されています。
 他の市町村での、「自治会」や「町内会」にあたります。


自治公民館の組織

2. 自治公民館の活動

① 防犯灯の設置と維持管理
② 地域の防災活動
③ 交通安全パトロールや通学路の見守り
④ 町内の清掃や環境美化
⑤ 道路の維持、補修などについての連絡
⑥ ごみステーションの維持管理
⑦ 健康づくりの拠点
  (ウォーキング大会、健康づくり研修会)
⑧ 市への要望
⑨ 市の広報誌や回覧の配布

3. 自治公民館は今……

(1) 自治公民館の加入率


年度別加入率

(2) 未加入の理由
・子育てや仕事、介護などで忙しく、公民館活動に参加する時間がない。
・役員を引き受けるのが負担に感じる。
・近所づきあいがわずらわしい。
・加入する必要性やメリットを感じない。
・行事の参加を強要されるため。
・高齢のため。
・会費が高い。(もったいない?)

(3) 未加入者が増えると……
・公民館役員の担い手がいなくなる。
・運営費が不足して、満足な活動が出来なくなる。
・ごみ置き場をめぐるトラブルの増加。
・市などからの情報(広報誌など)が十分に行き届かなくなる。
・公民館活動の停滞、低下。
(それに伴い)
・伝統行事、地域文化の衰退。
・住環境が悪くなる。
・治安が悪くなる。

4. 加入率アップのために

(1) 自治公民館の開放
 公民館をいつも(又は定期的に)開放し、飲み物などを準備して、誰でも気軽に立ち寄って、雑談できるような場所にする。
 いつでも気軽に利用できることで自治公民館を身近に感じることができ、住民同士のきずなを深める、子どもからお年寄りの方までが集うことで、世代を超えた交流につながるなどの効果も期待することができます。

(2) 魅力ある自治公民館
 単純に魅力がないなら、魅力のあるものにしよう

(3) 部会について
 現在、自治公民館には班がある。これは自治区をさらに細かく分け近い人(近隣)同士で班を形成している。この班に加えて部会を組織してみるとどうだろうか? 例えば、世代別であったり、有志同士であったり……。自治区の中でも集まりやすい人がいるので、それを組織してあげる仕組みにし、イベントがしたい未加入世帯に出向き公民館加入促進に努めてもらったりなど、自分たちがしたいことをさせてあげるといいのではないか?現在このような制度はなく、「活動したくても出来ない人」もいるのではないか? 何事も成功するには必ずといっていいほど「キーパーソン」が必要である。これらを発掘するためにも、部会制は有効な手段だと考えられる。もちろん自治区で集めた資金で運営するためしっかりとした事業計画・予算書の提示等、運営に伴うルールは必要となってくる。

(4) 公民館だより
 現在、自治公民館単位で発行している「公民館だより」であるが、それぞれ個性あふれる地域の情報がつまった媒体である。しかし、今日の情報媒体は「より目立つよう」「より便利に」とお金や技術を用いて姿や形を変えているため、現在の「公民館だより」は今の時代に見合わないものになっているものが多く、埋もれてしまっているのではないか?そうなると、未加入者の多い若者世代にとって「公民館だより」は見づらいものである。つまり、現在発進している「居住する地域の情報」の充実はもちろんでるが、工夫を凝らしたレイアウトや配信方法(端末ひとつで情報が得られる地域ツイッター?)など+αが、今後必須項目である。
 もちろん、公民館長は経験豊富な方も多く現在まで様々な方法で「公民館だより」を配信されている。また上記の工夫を凝らしたレイアウトや配信方法を活用するためには、お金や技術が必要とされる。その為、スキルアップ講習等を行える環境作りが大事である。さらに考えを変えて、大学生や高校生など学生と公民館で事業を試してみる。きっかけ作りをしていくアプローチを行政側に要請する方向もあるのではないか?すると、お金や技術を多く使わないで、さまざまなアイデア・手法が見つかる可能性がある。ただ、その必要性に配信する側が気付く事が大事である。

5. まとめ

 現代社会は、「無縁社会」という言葉に代表されるように、「人と人とのつながり」、「人と社会とのつながり」が希薄になっていると言われています。このことは、「高齢者の孤独死」、「若者の引きこもり」、「児童の不登校」、「子どもや被介護者への虐待」といった「深刻な社会問題」として表れています。
 自治公民館への加入率低下も、「人と人とのつながり」、「人と社会とのつながり」が希薄になっていることを表しています。
 自治公民館の未加入問題を解決するための「特効薬」はなく、非常に難しい問題です。しかし、この問題を解決することは、根っこが同じであるこうした「深刻な社会的問題」を解決することにつながります。
 未加入者は高齢者で寂しさを感じているかもしれません。介護や子育てについて悩んでいるかもしれません。引きこもっているけど誰かとつながりたいと思っているかもしれません。こうした寂しさや問題をかかえながら誰にも助けを求める人がいなくて苦しんでいるかもしれません。
 自治公民館は自分が住んでいる家の近所の人々の集まりで、一番身近な「社会とのつながり」です。自治公民館本来の目的である、「住民同士の助け合い」の精神を忘れずに、未加入者を「排除」するのではなく、理解し、受け入れていくという姿勢が必要だと思います。
 最後に、自治公民館未加入問題解決のヒントとなるよう、町おこしの成功例として「やねだん」の名で全国的に有名な、鹿屋市串良町柳谷公民館長 豊重 哲郎さんの言葉を紹介します。


「土台づくりは人づくりです。だから、集落から一人の補欠もつくってはいけない。相性が合わない人をそっちのけにしてはいけない。一人でも“蚊帳の外”に置いてしまったらその集落はだめになる。柳谷はそれができたから今がある。」


「自治活動は「楽しさ」「感動」がないと続かない。お互いに考え、汗し、成果を出す過程で得られる。命令や無理強いはもちろんダメ。住民総参加の素地をつくる1つの手法は子どもの興味をくすぐること。すると親が動き、祖父母が動く。」