【自主レポート】

第34回兵庫自治研集会
第9分科会 農(林漁業)から考える地域づくり

地域活性化イベントの軌跡と奇跡


北海道本部/小清水町職員組合

1. はじめに

 オホーツク海に面した小清水町は、北海道遺産に選定された小清水原生花園やラムサール条約湿地登録の濤沸湖、山や森林など自然環境に恵まれた町です。
 基幹産業である農業は、小麦、じゃがいも、ビートの畑作三品を中心に栽培しており、その品質は非常に高く評価されています。
 しかし、その反面「小清水と言えば○○○」と言う自慢の名物・名品が乏しく、魅力ある小清水を発信することができていませんでした。
 「将来を担う子どもたちに郷土を自慢できる何かを作ってあげたい」、「魅力ある小清水町を後世に伝えたい」という思いから、2011年1月に地域活性化団体「これぞ小清水 実行委員会」を設立した。メンバーは、やる気はあるが、初めて体験することばかりで、手探り状態の中、2月26日をイベント開催日として約1ヶ月と短い準備期間の中、自己紹介も無いまま、連日遅くまで話し合いが進められた。
 委員会では、まず、小清水産農畜産物の魅力を町内外に発信していくことが重要であると考え、安心・安全な地場産品の良さを伝えること、それを生かした地元の名品を作ること、また、町民へ「これからの地元の食」について今一度考えてもらう場を提供すること等を目的に、地産地消を基本とした地域活性化イベント「小清水屋台村」を開催することとしました。


2. 「これぞ小清水!! 実行委員会」

 実行委員は、代表・副代表の同級生・知り合い・仲間など、「小清水町を活性化させたい」という想いに賛同する異職種の自治体職員5人・農業者6人・商工業7人・JA職員1人 計19人の仲間が集まり、結成されました。
 会では、小清水産農畜産物の魅力を町内外に発信していくことが重要であると考え、安心・安全な地場産品の良さを伝えること、それを生かした地元の名産を作ること、また、町民へ「これからの地元の食」について今一度考えてもらう場を提供すること等を目的に、活動が始まりました。
 まずは、地産地消を基本としたイベント「小清水屋台村」を開催し、じゃがいもを原料とする澱粉と金時豆で作る「でんぷんだんご」を名産とする活動が企画されました。


3. 地域活性化イベント「小清水屋台村」

 第1回小清水屋台村は、出来合いのものは認めず、地元食材を使った料理を各店舗に販売してもらい、料理を買った人にアンケート用紙を配布し、その結果を会で集計し、B-1グランプリを視野に入れた小清水のご当地グルメづくりの研究素材とした。また、冬のイベントが何もなく、子どもたちの記憶に楽しい思い出を作ってあげたい趣旨ではじめた屋台村なので、子どもらしく、雪にまみれて楽しんでもらおうと、滑り台の制作を思いつき、雪を町内から集め、重機で大きな雪の滑り台を作り、その上にイルミネーションを通したり、そのほか、おもちゃの販売も行った。
 また、第1回目のメイン企画として行った「巨大デンプン団子つくりに挑戦」は、小清水町民が、町の食べ物として何と答えるかといえば、小清水町で生産・加工・販売しているでんぷん・金時豆を使った郷土料理の「でんぷん団子」で、これの世界一大きい「でんぷん団子」を作って、小清水町をアピールすることを考えついた。


4. 「でんぷん団子」世界一にむけて

 話し合いの中で世界一を証明するには、「ギネス」しかない。「ギネス」に挑戦するには具体的にどうしたらいいのか?調べていくと、いろいろ問題点が浮上してきた。
・無料で申請する事が出来るが返信に時間がかかりすぎる。
・短時間で申請出来るが費用が数万円かかり、却下されても返金されない、そもそも間に合うのか。
・申請や問い合わせすべて英語。
・「焼きちくわ」で却下された自治体がある。
・「でんぷん団子」を外国人にどういう風に伝えるか
 以上のことをふまえ協議していたが、「金がかかろうが、却下されようが、やることに意味があるから……大丈夫」と、代表による根拠もなく、無謀と思われる一言により有料申請で申請。
 申請は、もちろん英語パソコンによる和訳・英訳を駆使しながら、幾度となく「ギネス」とのやりとりが行われ、最終的には、「団子」ジャンルにエントリーしてよいとの連絡があり、100kg以上のでんぷん団子の作成にチャレンジすることとなりました。


5. 「小清水屋台村」と「でんぷん団子」ギネスに挑戦

 「第1回小清水屋台村」は2012年2月に開催されました。
 屋台村では、出来合いのものは認めず地元食材を使用した料理を提供する約束で、各店舗、販売時間を大幅に上回る早さで完売されました。
 また、併設した雪の大滑り台は、普段外で遊ぶことの少ない子どもたちに大盛況で、楽しい思い出を作っていただけたと思います。
 また、メイン企画として行われた「巨大デンプン団子つくりに挑戦」は、縦2.55m×横1.25m×厚さ3cm総重量155㎏のでんぷんだんごを木枠の中に流し入れ約1時間蒸し焼きにして完成し、観客を魅了しました。
 巨大でんぷんだんごは、後日ギネスに認定され、その名のとおり世界一となったでんぷんだんごで小清水町及び小清水の名産をアピールすることができ、小さな一歩を踏み出したと思います。


6. 活性化イベントの奇跡

 屋台村での「巨大デンプン団子つくりに挑戦」が広くTVやラジオの放送に取り上げられ、その放送を偶然にも聞いていた九州博多の辛明太子製造、食品卸売りの老舗 山口油屋福太郎の山口社長からメディアを通じて小清水町に連絡が入りました。
 話によると、近年せんべいの原材料である、でんぷんの確保が困難になりつつあり、入手先を探していたところ毎日就寝前に聞いていたNHKラジオで、地元で生産された澱粉を使い小清水町の若者が巨大でんぷん団子をギネスに申請したことを知ったそうです。
 JA小清水と山口社長が、澱粉を将来的に12万体確保したい旨の話を進めている中で、JA組合長より小清水町に工場を建設してはどうかと提案がなされました。
 統廃合となった小学校を再利用することによりコストダウンすることで、工場の建設と澱粉の積極的な販売に取り組むことを相互に約束し、閉校予定であった小学校2校が小清水町から山口油屋福太郎に売却されることになりました。
 このことにより売却された内1校は、2013年5月頃に明太子せんべい「めんべい」工場として生まれ変わり、従業員数50人程度で生産規模20億を予定。もう1校は、2014年5月頃をめどに外食産業向けの第3次野菜加工工場として生まれ変わり、従業員20人程度として操業が開始される計画となりました。
 この工場新設に当たり、6億円の資金を投下する事となったが、雇用と地域経済の活性化が期待できる企業誘致が実現でき、また閉校となる小学校が地場産品・地場農産物加工工場に生まれ変わる事が出来ました。


 上記のとおり、これぞ小清水実行委員会は、これまでに「小清水屋台村」や町内外のイベント出展等、様々な活動に取り組み、各方面から大きな反響を呼び「小清水のまちおこし」は、実を結び始めました。
 小清水屋台村での「巨大デンプン団子を作りに挑戦」でギネス認定を受けたことをきっかけに、小清水町及び小清水の名産をアピールすることができ、さらには企業誘致や廃校の再活用にも繋げることができました。「小清水町を活性化させたい」と想うメンバーが集まり、始まった町おこし。これから、もっと小清水の魅力を伝えるために、ご当地グルメつくりや子どもたちに地元素材を活かした「食」を通じた楽しいイベントを提供できるように、活動の幅を広げて行きたいと思います。