【自主レポート】 |
第34回兵庫自治研集会 第9分科会 農(林漁業)から考える地域づくり |
地産地消に取り組む県内生産者や飲食店の取り組み支援や先進事例調査等を通して、豊かな農産物に恵まれる群馬ならではの「食で地域の人がつながる」方策を検討した。人と人がつながるには、地域をよく知り、適材適所でつなげることができるコーディネーターの存在が重要となる。この「地域で生きる人材」という視点が、行政における人材育成や活動支援に求められている。 |
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1. 背景および目的 地産地消とは、「地元で作られたものを地元で食べよう」という呼びかけから始まり、今ではこの考え方が広く浸透し、県内外でさまざまな形で取り組まれている。その中では、地産地消を核とした地域振興が行われている事例も多い。そこで、地産地消を推進する県内の生産者、飲食店の取り組みや、先進地事例を通して、地産地消における課題を明らかにし、地域が活性化するために必要なこと、それに対して行政が何をすべきかを検討した。 2. 食を通じたものづくり・ことづくり
(1) ものづくり ~群馬リンゴPRに向けたジュース商品化~ |
② 商品化へのプロセス |
(2) ことづくり ~「生産農家と消費者をつなげるレストラン」の運営支援~
① オーナーシェフの農家訪問による地産地消への意識向上 オーナーシェフが生産現場に出向き、直接生産の様子を見たり、農家と意見を交わしたことで、「地元の食材をもっと使いたい」と地産地消への意識が変わった。そのため、これまで食材は卸業者から一括購入していたものを、農家直接取引と地元直売所での購入にシフトした。 ② 農産物取引方法の見直しと地産地消メニュー開発 農家との直接取引は供給が不安定で、食材調達に手間もかかるが、その時々に仕入れた野菜を中心にメニューを組み立てることで、地元農産物に特化し、旬を意識したメニュー構成となった。地産地消のイタリアンという新たなスタイルが確立され、顧客層が従来の20~30代女性から、50~60代女性も含めた幅広い層で集客でき、客単価アップにもつながった。また、直接取引を始めたことで、様々な地産地消メニューの開発が可能となった。農家出荷の規格外品も調理方法によってボリューム感を出せ、新鮮な食材を豊富に使えるメリットが生まれた。 ③ 食を通じた消費者への情報発信 店舗のコンセプトをより強調し、地産地消をアピールするため、顧客を集めた勉強会を5回開催した。開催季節の旬の野菜・果物をテーマに、多方面で活躍する講師がそれぞれの方面からレクチャーする形式をとる。顧客・生産農家・店舗間のコミュニケーションの場として成果が上がっている。
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(3) 地産地消を取り巻く現状と課題 3. 「食をつなげる人」全国で活躍するコーディネーター 全国の先進事例について現地聞き取り調査を行い、それぞれの取り組み内容やポイントを以下のとおりまとめた。 (1) 地域密着型・有機農業を中心に地域をつなげる人
このように、それぞれの強みや魅力を最大限に生かした取り組みがされている。一方で、地産地消を取り巻く課題には、前述のとおり、地元の豊かな農産物を地元の消費者や実需者が知らない・手に入れにくいという点がある。そこで、食でつながる群馬らしい取り組みとして、食材を周年供給できる産地という強みを活かし、「作る人と食べる人をつなぐ移動八百屋」というコンセプトで、新たな「つなぐ人」を次項で提案したい。 4. 「作ると食べるをつなぐ人」新たな食流通の提案~移動八百屋シミュレーション~ 「作る人と食べる人をつなぐ移動八百屋」とは、ものを運ぶだけの八百屋ではなく、産地や農産物を熟知しているコーディネーターが、飲食店や消費者に、農産物の旬や食べ方等を教えたり、食材の調理方法や生産農家の想いも含めて、農産物を届けるシステムを想定している。これにより、地元の新鮮な食材を使える強みを活かしたり、それを元に消費者が地元を知るなどのメリットがあるが、このためにはスーパーや直売所、ネット販売でもない、新たな食流通システムが必要となる。そこで、運送会社への聞き取り調査をもとに、ここでは「作る人と食べる人をつなぐ移動八百屋」の運営をシミュレーションした。 |
【移動八百屋(仮称:JUN&HARU)の期待される効果】 |
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5. 考察~行政に求められること~ これまでの2年間で実施してきた県内での地産地消活動や全国の事例調査、移動八百屋シミュレーションなどを通じ、地域が「食」で活性化するためには、地域をよく知り、適材適所で人をつなげることができるコーディネーターを育成することが重要であるとわかった。 |