【自主レポート】

第34回兵庫自治研集会
第9分科会 農(林漁業)から考える地域づくり

 名古屋市は、容器包装以外にプラスチック製品の資源化について、国に特区申請をしたが、国は「拡大生産者責任の徹底」(事業者の費用負担導入)につながる」として認めなかった。持続可能な社会構築の形成のため、国・地方公共団体・事業者及び国民の適切な役割分担・適正かつ公平な負担がされるよう、今後の組合活動を通じ、関係機関に訴えていきたい。



容器包装以外のプラスチック製品の資源化について


愛知県本部/自治労名古屋市連合労働組合・環境支部 川瀬  修

1. 経 緯

2008.5 名古屋市第4次一般廃棄物基本計画を策定。その中で、「容器包装以外のプラスチック製品」の取り扱いについては、「検討中」とする。(背景:鳴海工場ガス化溶融炉の稼働及び現在稼働中の焼却工場排ガス処理の高度化)
2008.9

現在「不燃ごみ」としているプラスチック製品処理のあり方を検討するため設置した「容器包装以外のプラスチック処理検討委員会」から報告を受ける。

報告内容

 (1) プラスチック製容器包装のリサイクルルートを活用して、プラスチック製品も資源化することが最もコストがかからず、市民負担も少ない。
 (2) 現行の法律の枠組みでは、容器包装リサイクルルートを活用することはできないため、国に対し構造改革特区の提案をしたらどうか。
 (3) 特区提案が認められなければ、プラスチック製品は可燃ごみに変更し、焼却・熱回収するべきである。

2008.11

国に対して現在の法律の枠組みを変えるために、実情にそぐわない規制を地域限定で緩和する制度「構造改革特区」の提案を行う。

要望事項

容器包装リサイクルルートを活用した容器包装以外のプラスチックの資源化 (低炭素社会に向けたプラスチック・リサイクル特区)

実施内容

容器包装リサイクル法の対象となっていないプラスチックを、プラスチック製容器包装とあわせて収集する。収集後、選別施設で他素材のもの等を除去し、容器包装以外のプラスチックも容器包装リサイクルルートで資源化する。その際、容器包装以外のプラスチックの再商品化経費は市が別途負担する。(再商品化手法について自治体の事情に配慮するよう務める。)

2009.02

特区提案は認められなかったが、国から「課題が少なくないと考えられるが、容器包装リサイクル協会と交渉いただいて差し支えない。」旨の回答を得る。

〈参考〉国からの最終回答

貴市が、容器包装以外のプラスチックと容器包装プラスチックとを混合した状態で、(財)日本容器包装リサイクル協会(以下「容リ協会」という。)に引き渡し、それら廃棄物の処理を委託する契約を、容リ協会との間で、同協会の指定法人業務とは別に独自に行うことは、現行法令上、妨げられていない。実際に契約を結んで実行するに当たっては、課題が少なくないと考えられるが、困難な点について、実務上容リ協会が対応可能か否かも含め、容リ協会と交渉いただいて差し支えない。なお、今回の貴市からの一連の御提案については、国としても、容リ協会に対し、誠実に伝達することとする。また、その他の御意見等については、必要に応じて今後個別の相談に応じたい。

2009.04~11

容リ協会と交渉を開始する。

容リ協会から回答

「容器包装に係わる受託業務以外の業務については対応できない」という旨の回答を受ける。

2010.12

今後の対応について記者発表を行う。

「今後の対応」についての発表内容

検討委員会からは、「容器包装リサイクルルートが活用できない場合は、次善の策として焼却による熱回収」という報告も受けております。本市としましては、引き続き国に対して資源化に向けた法整備を働きかけていきますが、2011年度以降、容器包装以外のプラスチック製品を「可燃ごみ」として収集し熱回収を行う方向で検討を進めていきたいと考えております。


2. 特区提案の内容

(1) 要望事項
 容器包装リサイクルルートを活用した容器包装以外のプラスチックの資源化 (低炭素社会に向けたプラスチック・リサイクル特区)

(2) 実施内容
 容器包装リサイクル法の対象となっていないプラスチックを、プラスチック製容器包装とあわせて収集する。
 収集後、選別施設で他素材のもの等を除去し、容器包装以外のプラスチックも容器包装リサイクルルートで資源化する。その際、容器包装以外のプラスチックの再商品化経費は市が別途負担する。
 (再商品化手法について自治体の事情に配慮するよう務める。)

(3) 提案理由
 本市では、容器包装リサイクル法の完全施行にあわせ、2000年度からプラスチック製容器包装のリサイクルを開始した(年間約3万トン)。リサイクルの成果としてプラスチックごみが半減した。この結果、廃棄物処理に伴うCO排出量もほぼ半減した。
 CO排出量をさらに削減するため、容器包装以外のプラスチックについてもリサイクルしていきたい。
 そのため、すぐれたシステムである「容器包装リサイクル」ルートを活用し、容器包装以外のプラスチックをリサイクルできるようにする。
 このことにより、
① 市民は分別に迷う容器包装以外のプラスチック(クリーニングの袋、家庭で使用したラップ、CDのケースなど)をプラスチック製容器包装と同じ袋で出すことができる。市民が分別時に迷うことがなくなり、さらに、プラスチック製容器包装の回収率も向上させることができる。
② 「容器包装リサイクル」ルートを活用することにより、低炭素社会に向けたプラスチックのリサイクルを促進することが可能となる。

(4) 提出日
 2008年11月12日

3. 今回の特区申請に対する国の回答について

 循環型社会形成推進基本計画において示す「循環型社会・低炭素社会・自然共生社会を統合した持続可能な社会に向けた展開」という点に主眼を置いた今回の特区申請におけるリサイクスシステムは、COの歳出削減及びプラスチック製容器包装の回収率向上という点で、大きな成果が得られるという期待があった。しかし結果は、「容器包装以外のプラスチックについても拡大生産者責任の徹底を求め、関係事業者にリサイクル費用の負担を課す方法を目指すべきとしているが、仮にこうした事業者費用負担について、中身を消費後に廃棄せざるを得ない容器包装以外の品目についても導入することを前提とした特区提案は、受け入れられないものである。」として、認められなかった。
 容器包装リサイクル法は、経済産業省はじめ環境省、農林水産省などの共同所管ではあるが、内実は経済産業省の影響力がかなり強いものであることを痛感した。この間の審議会の議論においても、産業構造審議会≫中央環境審議会であることは事実である。
 持続可能な社会構築の形成のための措置が、国・地方公共団体・事業者及び国民の適切な役割分担の下に講じられ、かつ、当該措置に要する費用がこれらの者により適正かつ公平に負担されることが肝要であり、このことを今後の組合活動を通じ、関係機関に訴えていきたいと思う。


資料1
国の第一次回答に対する本市意見(概要)
国の第一次回答
(2008.12.11)
市 の 意 見
(2008.12.17)
できるだけリサイクルしたいとする考えは、「循環型社会形成推進基本法」の考えに合致し、循環型社会・低炭素社会などに資すると考える。
しかし、以下の点から特区としての対応は不可能である。
「特区としての対応は不可能」という回答にとどまらず、プラスチックリサイクルについて積極的な展望のご教示をお願いしたい。
(1) 容器包装と容器包装以外のプラスチックの各々の割合を、合理的方法により算出することが出来ない。 (1) 容器包装リサイクル協会が毎年実施している「ベール品質調査」を活用すれば算出可能である。
(2) 混合されたプラスチックは、材料リサイクルが困難。 (2) 家庭系プラスチックの多くがPEとPPであり、材料リサイクルが困難とはいえない。
(3) 「分別意識の希薄化」に繋がる。 (3) 「分別向上への熱意」ゆえの提案であり、「分別意識の希薄化」に繋がる ものではない。
(4) 「拡大生産者責任の徹底」(事業者の費用負担導入)につながる特区提案は、受け入れられない。 (4) 「拡大生産者責任の徹底」は本市のかねてからの考え方であるが、今回の提案は、本市負担によるリサイクルである。


資料2
国の第二次回答に対する本市意見(概要)
国の第二次回答
(2008.12.26)
市 の 意 見
(2009.1.9)
(1) 「ベール品質調査」による負担割合の決定は、単なる運用ではなく、法の根拠をもって行うことが必要になる。 (1) 具体的な方法を協議し、特定事業者及び市の双方が納得できる方法を採用すれば、解決可能と考える。
(2) 容器包装以外のプラスチックを混合することは、分別基準適合物の品質の確保とその向上の流れに反する (2) 家庭用品プラスチックの大半はPP、PEであり、塩化ビニルはごくわずかである。また、塩化ビニルは容易に除去できる。材料リサイクル手法の質を高めることに反しない
(3) 本提案は容器包装以外のプラスチックも拡大生産者責任を求めていく過度的な措置と見て取れ、認められない (3)  拡大生産者責任に関する「将来展望」についての見解の相違を理由に、「当面の提案」を否定する論拠とすることは、不適当と考える。
(4) 混合状態にあるプラスチック製容器包装は分別基準適合物に該当しない。したがって、再商品化費用については、容器包装部分も含め一切負担することはない (4) 容器包装以外のプラスチックについてのみ本市の負担とすることが、適切であると考える。


容器包装以外のプラスチックにかかる資源化について(回答)