【自主レポート】

第34回兵庫自治研集会
第9分科会 農(林漁業)から考える地域づくり

 京都府中央会は、中小企業経営者が結束して組織を作る協同組合等の支援機関です。その関連業種団体間で食品製造関係の横断的な組織として、社団法人京都府食品産業協会がある。そこでは、農林水産省より補助を受けた、京ブランド食品の推進事業、食の安全や安心のための「きょうと信頼食品認定」など、食文化及び食育に関する事業を行っている。今年はその最終年にあたり、その概要を紹介する。



農商工連携による地産地消の取り組み
京都産「京白丹波」(白大豆)の食品化を農家と食品加工業者が連携

京都府本部/京都府中小企業団体中央会職員組合・執行委員長 佐々木克己

1. はじめに

 私達の職場は、中小企業経営者が結束し組織を作る協同組合等の支援機関です。多種多様な業種の中小企業者が組織を作っています。具体的には、商店街振興組合、西陣織や友禅関係の事業事業者の商工組合、小売業者やサービス業者の事業協同組合等、さまざまな業種の組織があります。その数は、府下におよそ800の組合があります。組合の設立から運営を支援している半官半民の機関です。
 その関連業種団体間で食品製造関係の横断的な組織として、社団法人京都府食品産業協会があります。構成している業界組織は、パン組合、京菓子、生菓子等の菓子、漬物、ゆば、納豆、豆腐、かまぼこ、宇治茶、製麺などの京都を代表する業界組織の28団体が加入しています。
 そこでは、京ブランド食品の推進事業、食の安全や安心のための「きょうと信頼食品認定」などの府民のために食文化及び食育に関する事業を行っています。

2. 農商工及び行政・大学との連携

 農林水産省より競争研究資金の補助を受け開始した3年間にわたる事業であり、今年は3年目の最終年度を迎えます。第1年度は、新たな品種の栽培技術の確立、2年目は、食品加工事業者の研試作・研究を行い、3年目の今年は新食品の普及・新たな販路開拓を行っています。参加する団体は、八木町の農家、京都府立大学、社団法人京都府食品産業協会、京都府農林水産技術センターです。
 京都産として有名な黒大豆の「むらさき頭巾」があります、このむらさき頭巾の交配から突然変異として生まれた白大豆が、品種名「京白丹波」です。黒大豆の特徴を引き継いだ白大豆を育成し、市場化するプロジェクトです。
 今まで府農林技術センターは、新しい品種の開発をするところまで止まっていましたが、はじめて市場化をめざした食料品の開発・販路開拓まで参加した事業となりました。また、食品事業者にとっては、菓子業界、豆腐業界、ゆば業界、納豆業界などの各業界として取り組む画期的なものとなりました。また、大学の食品関係専門部門が連携し、新品種を科学的に分析するものをめざした。はじめての取り組みとなりました。

3. 思わぬ事態に遭遇

 さて、事業ですが、初年度においては、思いもよらない「青枯れ」という、大豆が畑の中で青い状態のまま残り、大豆にならない事態に遭遇しました。
 畑で枯らすのは、従来の手作業では採算が合わないため、大豆を畑で枯らし、それを大豆コンバインで刈り取るという機械化が進んでいます。
 そのため、当初予定していた数量の半分以下で事業を進めるということなりました。自然現象が大きく左右する農業では、このようことが起こりますが、消費者に販売する食品製造事業者にとっては起こってはいけないことでした。
 はじめに大豆の特徴や食感・食味などを調査するために、アンケートや試食などの事業を行いました。結果は、「柔らかい」「大粒」「クリミー」「皮の剥離が良い」等の意見がでる一方、事業者からは、「あまり特徴がない」「黒大豆と比べて見劣りする」「大きいだけである」などの意見が出て、なかなか進まない。
 とにかく大豆を使った食品加工をしようと、さまざまな食料品の開発に取り組み組ました。豆腐、湯場、納豆、かまぼこ、お菓子類などに挑戦しました。事業者にも宣伝・PRの機会を増やしました。

4. 新食品の販路開拓

 2011年9月10日・11日に、「夏の名残り 竹で彩る京の食文化」として京ブランド食品の野外販売と京のそうめん流しを、地域の小学生と京都に避難されている福島から被災者を招待したイベントを下鴨神社にて開催しました。その場に白大豆を使った豆ご飯や湯場、納豆等の消費者への試食を実施しました。
 イベントは大変好評で、のべ3,000人が参加しました。試食も活発で、多くの消費者から高い評価を頂きました。この催事に参加していた大手スーパーのバイヤーの方から、ぜひ商品化をとの依頼から、10月末に、近畿圏の大手スーパーでのテストマーケティグが行われ、予定していた2,000個の納豆が完売する大きな成功を収めました。また、10月から開始した大手百貨店での京野菜と白大豆の「かまぼこ」も好評でした。
 11月には、連携を組んでいるメンバーで「ゆば」と「納豆」の販売を行いました。商品販売にはほど遠い、慣れないメンバーの販売のため、売れないのではという予測に反して、多くの納豆と湯場を販売することができました。
 12月には、東京の百貨店において、京都展が開催され、白丹波を使った食品が最も売れました。それは、デザインやチラシ、企画が良かったこともありますが、京都産の白大豆を使ったということも大いに貢献しました。
 課題も明確になってきました。大豆の価格が通常の2倍となることが予測されます。また、農産物は自然から作るものであることから、安定した供給を確実に行うことは難しい。食品加工事業者は、できるだけ安価な原材料供給と、毎年、安定した品質と確実な量を求めています。農家経営と中小企業者経営との相互理解が必要なところです。
 10月初旬の日曜日に、収穫を前にした白大豆の畑作地で白大豆野耕作農家と食品加工業者の交流会を開催しました。青々とした豆畑と澄みきった青空のもとで、農家の方達の夏場の水やりや野生動物からの防御や農作業の苦労話などを聞いて、帰りには枝豆を手に帰路に着きました。
 2011年秋の収穫は順調でしたが、課題がでてきました。採れた大豆を100%購入することになります。丁寧に扱っても機械などによるキズが付く、病気や虫害による変色、泥が付いているものがあります。加工品の品目やレベル、使用方法などを変える必要があります。
 今年1月は、京都の大手百貨店で販売を行いましたが、また、新たな課題がでてきました。「ゆば」や「豆腐」は賞味期限が短いために、表示の課題や期限切れ商品、売れ残り商品の取り扱いについて検討する必要があります。
 2月にもテスト販売をしました。清水寺の商店街に面した観光地での販売のために、観光客はまとめ買いをしました。まとめ買いをした観光客の方は、「納豆を京都のお土産品として隣近所に配る」というのです。京都産の大豆を使って京のブランド品を売ることが受けているようですが、まだ売り方や商品力が不足しているようです。
 大豆の価格については、農家のモチベーションを上げることが必要ですが、農家にとっても最低限の資金・費用を維持していくこと求められます。農作物にとって最も怖い台風や冷害などをはじめ、大豆の病気に対する対策も迫られます。農業者と食品加工業者の抱えている課題はかみ合わないように見えますが、お互いの悩みを理解し、信頼関係を構築していくことは、これからさらに大切なこととなります。食の安全は、農家や食品加工業者の日夜の努力と使命感にも近い食品へのこだわりにもなります。生産者の顔が見える食品は、やはり安心にもなります。豊かな食文化は人間形成にも大いに役立ちます。
 今年は、3年間の事業の最終年度になっています。4月以降、東京百貨店から要請を受けたイベント参加は、ゆばが2回目となっています。それぞれが、完売の状況です。
 5月には、京都府立大学にてお菓子の試食会を開催しました。当初7品ほどの予定でしたが、参加は15品となりました。内容も和菓子・洋菓子と多くの種類が参加しました。関係者及び行政や学生、マスコミなど40人による試食会が実施されました。

5. これからの展開

 5月25日に、京都府立大学において開催した菓子類の試食会には、関係者および学生による試食が行われました。参加事業者は7事業者、14種の和・洋菓子が発表され、大手新聞社3社や業界新聞3社の、計6社のマスコミ関係の取材を受けて記事にもなりました。また、当日のアンケート調査では、大豆の価格や甘さなどに対して、さまざな意見が出されました。
 PRに関しては、京都のデザイン関係の大学をはじめ、全国にキャラクターの募集を行いました。みごとに最優秀となったのは青森県の方でした。このキャラクターのシールを作って「京白丹波」の宣伝をしていくことを計画しています。
 販路開拓として、生協や社員食堂に、京都産の大豆として、ゆば、納豆、豆腐等を白大豆メニューとして採用していただこうと働きかけをしています。また、豆腐の事業者は、京都からのお土産品としてインターネットで販売するという、今までにない取り組みを行っています。
 京都の大豆を使った食品を小学生などの学校給食としていこうなどの取り組みが、次から次に生まれています。
 昨年、収穫された京白丹波(白大豆)は僅かに2トンです。事業者が使う量としては、あまりにも少ない量です。今年は、栽培面積を倍にし、4トンの大豆生産をめざしています。また、農家の方からも白大豆を栽培したいとの要請を受けています。
 京都には、「豆腐」や「ゆば」をはじめ、大豆を主原料とする京ブランド品が数多くあります。「むらさき頭巾」が京都産から生まれた付加価値の高い商品に育ったように、白大豆も、京を代表する豆腐やゆばなどの新たな京ブランド品に育て上げ、京都の食文化と食育に貢献したいものです。