【自主レポート】

第34回兵庫自治研集会
第9分科会 農(林漁業)から考える地域づくり

 笹部新太郎氏は武田尾桜の園「亦楽山荘」にてヤマザクラの研究をされていました。没後、有志の方々で手入れされてはいたが、長らく放置され荒れ放題の状態でした。その後、ご遺族からのご寄付によって市有林となり、99年に宝塚市の里山公園としてオープンしました。市民によるヤマザクラの植樹会が開かれ、参加者が中心となり、「桜の園」を愛し、自然に親しみながら里山整備作業と、健康増進を目的として、ボランティアグループ-「櫻守の会」が設立されました。地域住民で活動している「櫻守の会」を紹介します。



市民に親しまれる森づくりをめざして
身近な里山の自然環境を守る活動に参加しませんか

兵庫県本部/「櫻守の会」代表 土井 喜夫

1. 「櫻守の会」の創設

サクラの木とキビタキ

 笹部新太郎氏は、1912年に宝塚市武田尾の山を主夕し、桜の演習林として研究していました。笹部氏は、武田尾の山に亦楽山荘を建てて、ヤマザクラやモミジなどの樹木を交配し、ヤマザクラの一種であるササベザクラなどの貴重な品種改良を行っていました。笹部氏の没後は、しばらく放置林となっていました。そして、笹部氏のご遺族は、亦楽山荘(武田尾の山)を宝塚市に寄贈されました。
 兵庫県による砂防工事終了後、市民の有志により1998から99年にヤマザクラの記念植樹をし、宝塚市は里山公園「桜の園」として1999年4月オープンしました。このオープン行事に合わせて里山の整備、会員の親睦を目的とした森林ボランティア「櫻守の会」が創設しました。


2. 笹部新太郎とは

カスミザクラとオオシマザクラを交配したササベザクラ

 笹部新太郎氏(1887-1978)は、東京帝国大学に在学中から桜に関心をもち、卒業と同時に武田尾の山(のちに亦楽山荘と名付けた)の持ち主となり、桜の演習林として研究していました。特にサトザクラヤマザクラの研究(ソメイヨシノに対抗して)をされ、のちに「桜博士」ともいわれました。
 笹部氏は、関西のヤマザクラの復活を願い、琵琶湖周辺や吉野山へこの演習林で育てたヤマザクラの幼木を無料で出荷していました。
 戦時中は花見どころではなく、多くのサクラの樹は薪として切り倒されていきました。大阪造幣局の「通り抜け」の桜も1945年の空襲で大きな被害となり全滅しました。しかし、笹部氏は、1946年に武田尾の山からトラック3台分のヤエザクラを送り、造幣局の「通り抜け」行事を復活させ近隣の人々に希望を与えました。
 また、1960年には、岐阜県にある御母衣ダム建設により、水没間際に樹齢400年の老桜(エドヒガン)を高崎達之助(当時電源開発総裁)の依頼を受け、移設したことは有名です。この桜は荘川桜と呼ばれ、移設から50年経た今日でも立派な花を咲かせています。
 そして、水上勉の小説「櫻守」に出てくる竹部は、笹部新太郎氏のモデルと言われています。
 笹部氏の晩年に居住した家跡である現在の岡本南公園(神戸市)では、毎年サクラ祭りが行われています。また氏の所有していたサクラ細工の工芸品やサクラに関する収集品の数々は白鹿記念酒造博物館(西宮市)にて管理され毎年春に「笹部新太郎翁特別展」が開催されています。


3. 武庫川と亦楽山荘(武田尾)
桜の園と武庫川

 兵庫県の南東部にある武庫川は、篠山市の山系を水源とする2級河川である。水域は篠山市、三田市、神戸市、宝塚市、伊丹市、西宮市、尼崎市などである。全長65kmと言われているがその中間点ぐらいのところにJR武田尾駅(宝塚駅から約8分)がある。
 宝塚駅から新三田駅まで複線と電化工事が1986年に実施され生瀬駅から武田尾駅までのルートも変更され、廃線敷きは、手軽に楽しめる人気のハイキング道(9km)となりました。昔は、武田尾駅から亦楽山荘まで、時刻表で汽車の往来を確認しながらトンネルを2つ越えていましたが、今は、廃線跡を歩け安全です。
 亦楽山荘は、2つの尾根と一つの小川があり、武庫川の重要な水資源の一つになっています。
下草刈りを行う自治労さん
 2004年に宝塚市職員労働組合の三宅一茂さん(現櫻守の会員)から自治労「水週間」のイベントを亦楽山荘でしたいと協力を要請されました。イベントは水源の森を守る活動をしたいとのことでした。
 具体的には、サクラの樹の下で下草刈りをしたり、枯松を切ったりの仕事をして頂いています。毎年の行事として夏の暑い日に参加して貰っています。時には、蜂にさされるというハプニングもありました。自治労のみなさんは、若い方が多く、継続していただきありありがたく思っています。


4. 「櫻守の会」の活動

 櫻守の会は、創立13年目の森林ボランティアの会であり、会員数は、180人(男70%、女30%)で構成しています。

(1) 活動拠点
 活動地点は、宝塚市立の公園と兵庫県(六甲グリーンベルト)の5カ所で、それぞれ月1~4回を活動しています。
① 武田尾(桜の園)……… 宝塚市立公園
② 山手台緑地………………   〃
③ ゆずり葉の森…………… 兵庫県(六甲グリーンベルト)
④ 青葉台……………………   〃
⑤ 武庫山の森(支援)……   〃

(2) 櫻守の会の活動内容
① 里山整備活動
  主に、園路整備(階段の補修・通路の安全確保)、枯木伐採・間伐、草刈り、植樹、蔓切り、樹木名札取付等の作業をしています。
  これらの作業をするために、ノコギリ・剪定ハサミ・ヘルメットの配布や貸し出しをしています。共通の道具は大ノコギリ、クワ、カマ、チルホール、ロープ、ナタ等もあります。
② 会員研修
  体験実習(入会前に体験出来る制度)、新入会員研修(各活動地見学)、刈払機実技講習会、里山入門講座観察会(サクラ・モミジ・冬芽)、研修バスツアー、同好会(パソコン)などをしています。
③ 安全関係
  あんぜん手帳の配布、各地救急箱の設置、保険(共済保険・行事保険・森林保険)をしています。


(3) 次世代へつなげる取り組み
親子森づくりの100回を記念して植樹
 
 里山整備活動が主体の会であるが、次世代を担う子どもたちに対しても、子ども教育に取り組んでいます。
① 市内中学2年生
  兵庫県では中学2年生に社会体験としてトライやる・ウィークを設定しています。当会では毎年2~3校の生徒を受け入れ、森の整備作業を体験活動しています。
② 市内小学3年生
  環境学習の時間があります。毎年2校程度の学校を受入れ、森をテーマにした環境学習をしています。
③ 親子森づくり
  市内小学校へ参加案内を配布していただき、年に数回であるが、親子で森づくりをしています。体験活動では、樹木等の自然観察、草刈り、間伐等を行いながら、時には、クラフト作成、木々の名前の学習などを通して、里山整備の一部を体験してもらっている。毎回、小学生中心の参加ですが、家族での環境学習の機会として好評を得ています。

5. 最後に

 メンバーの平均年齢は、60歳代後半です。40代の会員もいますが大半は定年退職者が活動しています。
 個人の体力に合った仕事を選んでやることに心がけています。活動日(年間計画を立てている)を心待ちにしている人も多いようです。山での仕事は健康管理にとっても大変良いことだと思います。山仕事は、共同作業が多く会話も弾んできます。また、ひと汗を流した後の、野外で食べるお昼の弁当の味も最高です。機会があれば活動体験の参加をお待ちしています。
 ホームページで「櫻守の会」の活動を紹介しています。