【自主レポート】

第34回兵庫自治研集会
第10分科会 「地域力」「現場力」アップにむけた学び合い

 網走では、学校給食を教育の一貫として長年捉え、様々な闘争を経過しながら近年の「食育」というキーワードにたどり着き、これまで主張してきた「直営で実施」という目標が正しかったと改めて実感しています。今も続く行革合理化・財政健全化・アウトソーシングという逆風の中で、近隣校での親子給食の拡大へと大きく判断しました。今回は改めてこの間の運動の流れを思い返し今後に向けてレポートしました。



親子給食の開始に伴う影響と課題


北海道本部/網走市役所労働組合・現業評議会

1. 学校給食の経過

 網走での学校給食は、市内・周辺校含め(一部を除き)自校給食で実施され、調理員は嘱託職員で実施されてきました。その後、自治労現業運動の高まりの中で、現業職員の正規職員化運動が活発化し、時代背景とともに学校職員も正職へと移行されていくことになります。
 しかし、80年代の臨調行革合理化が推し進められて、学校校舎老朽化に伴う施設の更新必要に迫られる中で大きな課題となり、学校給食センター化提案が当局から示されました。市労連としては、学校給食の運営について、自校給食が児童・生徒への「食」を教育の一貫としてもっとも適した運営方法であり、断固「センター化反対」を表明し、当時の地区労(市労協)への協力要請を行い、市民団体「明るい学校給食を守る会」を結成しながら共闘体制を固めました。
 一方、議会の中では、組織内を中心とした市労協推薦議員団への要請と自校給食の堅持を要請することになりました。市労連としても住民チラシ配布・アンケート集約などたたかいの先頭になって取り組み住民へ自校給食の優位性を訴えてきました。また団体交渉では、現場調理員を中心に「生の声」をぶつけ、これまでの自校給食ならではの実態や優位性を教育的観点から追求する中で考え方を改めさせようと努力しました。
 最終的に、当局からはセンター化を白紙にするとの回答を受け、議会の中でも現在の自校給食を継続させる方が有意だとして議会答弁を行い、このたたかいが終結しました。
 しかし、当時の議会の中では、付帯決議として「親子給食の実施については今後も検討していく必要がある。」とした内容で集約されました。
 その後、行革合理化の流れは、正規職員の削減に重点が置かれ、臨時職員が配置、数年後には臨時職員のパート化へと変わり、新規採用を抑制するとの当局方針により激減、本来の定数とは程遠い実態にあります。
 そうした中、市内中規模小学校の建て替え構想が打ち出され、近隣中学校との親子給食案が示されました。団体交渉の中では、メリット・デメリットが大きな争点となる中で、最終的には「親子給食やむなし」との結論で闘争を終結しました。
当時、文科省からの指導で、「施設の改修に当たってセンター化を進めること。」とあるように補助金に対して、単独調理施設については、ゼロベースが前提であったようです。市の財政も火の車状態でした。


2. 親子給食実施に当たって

 財政的な理由もさることながら議会の動きも、センター化闘争時に判断された付帯決議が持ち出され、直営化・委託化の議論も一部では話されていました。
 市労連としては給食調理員だけの問題にするのではなく、学校職員全体で議論し、調理員・用務員・事務補のそれぞれがそれぞれの立場で関わり「自校給食により近い学校給食を作り上げよう」という結論を出し、実施に向けて交渉と現地調査を徹底的に行い(実際の運搬経路・積み込みコンテナの試作・配膳方法など)当局への提案を積極的に行いました。


3. 学校職員の役割

 自校給食のメリットとして、これまで私たちは「作り手の顔が見える」を一番に掲げ、調理員は給食調理と配送先での配膳を担当し、運搬は2t車を使用して用務員が積み込み・積み下ろしを行い、各フロアーへの配膳作業は、事務補が行うとして一連の流れを想定しながら作業を確認、全学校職員がそれぞれの役割の中で学校給食に関わり、業務として確立させ、学校給食を「より安全に、責任を持って実施しよう」と位置付けています。
 こうして、中規模校における親子給食が始まり約10年が経過しました。正職員も定数は認めつつ、配置人員についてはパート職員に置き換えられてきました。


4. 施設の改築と親子給食の拡大

 そうした中、昨年、教育委員会から校舎耐震調査結果に基づく改修と老朽化調理施設への対応として、親子給食の拡大が出されました。
 3・11大震災を受けての耐震調査の結果では改修の必要があり、同時に調理場のドライ化の必要性が求められ、調理施設を改修したいとの考えと、さらに、調理員を合理化削減するという提案でした。
 市労連としては「財政赤字」を子どもたちに転化するのはおかしいと親子給食拡大に反論しましたが、議会での付帯決議をはじめとして民間委託提案も見え隠れする中において、「親子給食は直営堅持と自校給食により近づけることが出来るのではないか?」という結論から当局提案を受け入れることになりました。
 今回の提案では、新たに2つの親子給食が行われることになり、学校職員各々に大きく負担が掛かることになりました。しかし、直営を守ることが最善の道として、3つの職種が連携して学校給食を実施することの意義を見出すことになりました。
 現在、各校において耐震化の改修工事に着工し、今年中度に完成予定、来年度に掛けて、給食調理施設の改修・受け入れ口の改修等を行いその後に本格運用となる予定です。 
 当局の「着工が当初の予定から半年ほど遅れたため」という理由で、当局説明が遅れていることへの不満の声を上げる組合員もいることから、今後は業務として市教委との議論を進めなければなりません。3職種の役割分担の明確化とその責任の重さを再確認する必要があります。


5. 学校職員として

 市労連としては、現評を中心として「直営堅持」するために学校職員全体で分担し、それぞれが業務の重さに責任を持つことで市民・当局・議会への直営の自信を持つことが出来ると考えます。
 この間実施してきた自校給食から親子給食の実施校が大半を占めることとなりますが、当面学校給食の直営を堅持することに対し「食育」というキーワードで、自らの責任の重さを感じつつ自治体の業務としての位置付けを再認識し、児童・生徒はもとより、保護者へのアピール活動にも広げていければと考えます。


6. 住民へのアピール(市民健康まつりに参加)

 市民健康まつりへの学校給食の参加は、給食部会を中心に6年目をむかえ、これまで様々な学校給食メニューを調理・販売し、チラシによる市民へのアピール(前日・当日)を行い、毎年、予定数量すべてを完売してきています。
 市教委・管理当局からも「是非続けて欲しい」、と言われるなど、当日は長蛇の列で、学校給食コーナーを期待している市民も年々増加してきています。
 こうした取り組みを通じて市民アピールを行うことは、日ごろ子どもたちに接することが多いですが、職員として一般市民との関わりが少ないことから大きな意義があると実感しています。今後も実施に当たっては議論を行いながら息の長い取り組みにしていきたいと思います。
今年も完売しました。
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市民健康まつりで配布したチラシ