【自主レポート】

第34回兵庫自治研集会
第10分科会 「地域力」「現場力」アップにむけた学び合い

 尼崎市におけるごみの減量化に伴う定期収集業務の見直し・合理化の中で、直営清掃職員は、「市民サービスの向上」をめざし、「現場職員自らができること」を模索し、これまでも様々な取り組みを行ってきました。その取り組みを通じ、これからも地域住民との繋がり・協働を深化させ、「現場力」を活かしてさらなる市民サービスの向上をめざす必要がある。



「現場力」をより良い清掃事業に活かす


兵庫県本部/尼崎市職員労働組合・環境事業支部 宇野 克則

1. ごみの減量化と合理化の流れの中で

 私が所属している尼崎市経済環境局環境部業務課では、一般家庭ごみの収集運搬業務を行っており阪神間では例を見ない完全各戸収集です。
 はじめに、定期収集業務の若干の経過として、今から12年程前、2000年(平成12年)度当時は、収集車両にぶら下がり、いわゆる「ステップ乗車」をしながら収集作業を行っていましたが、労働安全面等の観点から「ステップ乗車」の廃止に向けた取り組みを進めてきました。試行錯誤しながら約3年をかけ、「ステップ乗車」の完全撤廃を行いました。
 その間、2000年度には、行政改革項目として、ごみ量の減少を事由に収集体制の見直しがされました。その当時54台体制を2002年度、2003年度、2004年度の各年度2台ずつ減車を行い、最終的には48台となりました。
 更に2005年度には「ピークカット方式」と称した合理化提案があり、当時、月・水・金曜日に燃やすごみ(可燃)、火・木曜日にビン・缶・ペットボトルや小型ごみ等の収集を行っていましたが、どうしても月曜日の燃やすごみ(可燃)に必要車両台数がピークになることから、月曜日ごみを月・火曜日に分散、水曜ごみを水・木曜日に分散、金曜ごみを金・土曜日に分散することで各曜日の必要車両台数の減を行うという内容で、それに伴い48台体制から42台体制となりました。
 その後、2007年には「委託比率の見直し」に伴い、危機管理体制を検討した結果、直営35%委託65%となり直営定期収集車両台数が2006年までの42台体制から2007年以降32台体制で業務を行うことになりました。この当時、別担当係での収集を行っていた、臨時・大型ごみを定期収集ごみ種の中にローテーションとして組み込むことになり、現在32台体制で、可燃ごみ、びん・缶・ペットボトル、金属製小型ごみ、臨時・大型ごみの収集業務を行っています。
 しかしながら、昨年(2011年)に、2013年向けの「一般廃棄物処理基本計画」に基づき「可燃ごみ週3回」から「週2回」への変更と、「ごみの減量化に伴う車両台数の見直し」が検討されました。
 過去、家庭ごみの定時収集は、1966年4月から週2回でしたが、その3年後には収集の能率化と危険防止に市民の協力を訴え、1969年6月2日には当時の篠田隆義市長が週3回の収集実施と共に、環境衛生モデル地区も自然消滅したという経過があります。
 ところが今回の「一般廃棄物処理基本計画」では、紙類・衣類を可燃ごみに混載されている現状を踏まえ、更なる分別とごみ量の減量化を促進するために2013年から可燃ごみ週2回へ戻すという内容でした。
 また、2013年以降は、ごみの減量化に伴い定期収集車両台数は32台体制から30台体制での収集業務を行うこととなりました。

2. 「改革改善運動」に職員自らが参画

 このような経過の中にあっても、直営清掃職員は、「市民サービスの向上」をめざし、「現場職員自らのできること」を模索し、これまでも様々な取り組みを行ってきました。
 尼崎市は各戸収集であり、個別に排出され、野良猫やカラスなどに荒らされて散乱しているごみを、各収集車両にほうきとちりとりを積んで、「ハキハキ運動」と称し職員自らが散乱したごみを、丁寧に清掃を行ってきました。市民からお礼の電話や手紙をたくさん頂き、現在でも継続した取り組みを行っています。
 そして、職員自らの声もあり、「声かけ運動」と称し、市民に「おはようございます」「こんにちは」などの挨拶を元気良く行う取り組みも行っています。市民と触れ合う現場ならではの取り組みであり、市民の方から「ご苦労様です」などの返事を頂くときには、私達職員も非常に気分がいいものです。
 また、「ふれ愛収集」と称し、福祉収集の取り組みも検討しましたが、縦割り行政の隔たりなどがあり、紆余曲折の末、残念ながら実現化することはできませんでした。
 しかしながら、「YAAるぞ運動」の一環で、2007年度から尼崎市全庁的に「改革改善運動」が行われる事を知り、開催当初から業務課職員は常時参加し、職員自ら企画立案し、パワーポイントと多少の演出を交えたプレゼンテーションを行ってきました。
 一つ目は、パッカー車両に企業広告をラッピング掲載し、スポンサーからの掲載料を尼崎市の収益にする「広告事業」です。現在4社程度の掲載を行っておりますが、車両1台につき10万円程度の掲載料で年間約800万円の収益を毎年得ています。
 二つ目には、ごみの分別や尼崎市のごみ排出状況など、小学校4年生を対象に「出前教室」と称して各小学校から依頼があれば、パッカー車両やプレス車両と共に職員が学校へ出向き、ごみ分別の啓発を兼ねてクイズ形式を取り込みながら、また、ごみを収集している所を実演するなどの取り組みを行っていることです。小学生児童や学校の先生からも非常に評判がよく、尼崎市の小学校は43校ありますが、現在でも毎年十数校の学校を回っています。
 三つ目には、公務災害を無くす取り組みとして、長年改善されていなかった簡単な冊子の作業マニュアルを、現場職員の経験から改良を加え、更に分かりやすくアニメ形式や写真などを取り込み、電子媒体で整理した「安全作業マニュアル」を完成しました。
 これまで公務災害発生件数が多かったことを受け、労働基準監督署から「指定事業所」としての指定を受けてしまった為、このマニュアルを完成させ、職員への研修を徹底した結果、劇的に公務災害が減りました。いまでは、「指定事業所」の指定から外されることとなりました。
 四つ目には、カラス被害によるごみの散乱を防ぐ取り組みとして、「カラス対策」について職員自らが研究、検討した結果、カラス除けネットの掛け方や市民への啓発、呼びかけを行う取り組みも行ってきました。実際、確実にカラス被害を無くすことは夜間収集以外には無いのかもしれませんが、少しでも被害を最小限に食い止める研究を引き続き行っていきます。
 五つ目には、「発火性危険物による車両火災を無くす」取り組み発表を行ってきました。本来、ダンプ車両による別収集が最善の策ですが、処理の機械費用や人件費を考えると、できるだけ予算をかけずに、いかに現行の業務の中で出来るか検討を重ねた結果、発火性危険物の積み込み方や、市民への啓発のしかたなどをまとめました。現、稲村尼崎市長から、「この課題については引き続き取り組んで下さい」との激励を受け、今年度も再度取り組みを進めています。
 また、大型ごみなどの積み込み時にガラスやプラスチック片が飛散することによる公務災害や車両事故につながる事例があることを受けて、車両投入口にシートをカーテンのように装着する考案を職員自らが行い、現在、試験的に装着し作業を行っています。検証結果で問題が無いようであれば大型車両全車に装着実施を検討しています。

3. 市民と共に「クリーンキャンペーン」を実施

 この他にも、業務課の取り組みで、たばこのポイ捨てを無くす取り組みとして「クリーンキャンペーン」と称して、職員と近隣企業や市民団体など多数の参加により、尼崎駅前で、たばこのポイ捨てを無くす呼びかけをマイクで行い、たばこの吸殻や空き缶・ごみの掃除をみんなで行っています。毎年恒例行事となっていますが、業務課職員も自発的に多数の参加をしています。
 直営定期収集車両台数や職員の減少傾向にある中でも、常に向上心を持ちながら、考え行動し、数年前の業務課職員の意識に比べ、現在の業務課職員では、レベルが非常に高いものとなっていることは事実です。

4. 引き続き現場からの発信を

 業務課現場職員の業務は、ごみを収集するだけでなく、現場でしか分からない、現場の職員だからこそ出来る、いわゆる「職人魂」を十分発揮して、このような取り組みを自律的に行い、日々作業の改革改善を検討しながら他都市清掃職場や委託業者に向け、尼崎の業務課から発信していきます。
 将来的には縦割り行政を払拭するべく、清掃・環境に対する啓発や市民指導を行っていき「市民サービス」の更なる向上をめざしていきたいと考えています。