1. 経過及び現状
南あわじ市は2005年1月17日に三原郡4町(緑町・西淡町・三原町・南淡町)が合併して市となりました。学校給食は、合併前は緑町を除く3町の幼稚園(西淡町のみ6校)、小学校(14校)及び中学校(4校)に三原郡給食センター(公称能力最大6,000食)から配送(ほか沼島給食センターも2校所管)されており合併後も継続されています。
他方、緑町には、町立倭文小学校及び倭文中学校と隣接する洲本市との間での組合立広田小学校及び広田中学校があり、この4校を対象に組合立給食センターが稼働しています。合併後の学校給食は、2つの給食センターからサービス提供している状況です。
合併時に現施設は継続することで合併協定書に定義(「緑町と洲本市との協議を尊重し、その協議結果を新市に引き継ぐ」)されていましたが、合併後、南あわじ市学校等適正規模及び教育施設検討委員会の提言書(2010年6月)において、「南あわじ市・洲本市小中学校組合給食センターについては、施設の老朽化や設備、備品等の改善、充実を図り、より一層安定した学校給食事業を行うために南あわじ市給食センターに統合することが望まれる。今後、統廃合については、洲本市との協議のうえ関係地域住民の充分な理解を得ながら進めることが必要である。」とされました。
その後、南あわじ市教育施設再編計画(2011年4月)においては、学校給食センターの再編について、「南あわじ市・洲本市小中学校組合給食センターの耐震化や衛生管理面の改善を行うには、現在の施設に代わるものを、別の場所で建てるか、南あわじ市学校給食センターへ統合するかのどちらかになります。新築には多額の費用を必要とすることから、現施設で充分に調理能力のある南あわじ市学校給食センターへ統合することとします。なお、給食単価については統一することとし、食物アレルギー対応については改善する必要があります。統合時期については、2013年度を目途とします。」と提言されたことから、2013年4月を目途として統合の計画が進むことになります。
一方、市職労に対して、当局からの統合計画について事前協議協定があるにも関わらず、協議等の要請はありませんでした。市職労から申し入れして初めて協議の場につきましたが、協議できる状況にはないとの対応に終始しています(本格的に統合が決まってから協議したいとの回答)。
2. 教育委員会当局の動き
2010年12月21日2010年度組合立給食センター運営委員会・給食委員会(以下「給食センター委員会」という)が開催され、給食センターの統合について教育委員会から提言書について説明(市立給食センターへの統合を前提に進めたい)が行われました。
2011年4月に「南あわじ市教育施設再編基本計画」が公表され、2013年度の統合目標が示されました。
2011年7月15日に2011年度給食センター委員会が開催(PTA役員は交代している)され、学校給食センターの再編について説明(2013年度の統合目標)が行われました。
教育施設再編基本計画説明会が2011年7月25日19:30~倭文小学校(約60人参加)で、8月2日19:30~緑公民館(約20人参加)で開催されました。そこでは、倭文校区では約8割が中学校統合(広田中学校への統合)に関しての質問意見、広田校区では約9割が給食センター統合に関しての質問意見でした。
12月19日には、再申入書の回答を中心にした説明会が開催され23人が出席しています。そこでは、統合のメリットやデメリットについて市の明確な回答は得られず、アレルギー対応についても確約は取れませんでしたが、統合に関しての確認書の締結は約束しています。最終的に判断は各PTA会長に一任されました。
3. 市職労の取り組み
(1) 前段の取り組み
2010年11月19日開催の小中学校組合議会定例会において、K議員が「小中学校の学校給食のあり方についての基本的な考え方について」質問(耐震改修を行い建て替えるのか、市給食センターに統合するのか)し、課題を克服したうえで統合を前提に進めるよう当局に要望したことを契機に、市職労及び現業・公企評議会で統合問題対策会議(以下「市職労対策会議」という)を2010年11月30日に開催し、当局の対応について、①この間一度も市職労に対して統合についての協議がないこと、②自校方式とセンター方式での優位性は自校方式にあること、③統合の場合に組合立給食センターで働く職員の処遇に関して、④PTA、協力議員、教職員組合との連携など数点にわたって方針を確認しました。
2010年12月27日にPTA会長4人、南あわじ市の教職員組合委員長及び市職労対策会議委員(組合立組合員含む)をメンバーとする第1回組合立給食センター統廃合問題対策委員会保護者会等合同会議(以下「合同会議」という)を開催し、基本的には自校方式維持(統合反対の立場)で取り組むことを確認しました。また、給食センター委員会では説明があるものの全保護者に対して情報提供がこの間ないことから、当局に保護者説明会の開催申し入れを1月19日に行うことも確認しました。
(2) 意見の対立
しかし、その後市職労対策会議委員の考え方が統一されていないことが露呈し、2011年1月18日及び1月31日に緊急5役会議(委員長・副委員長・書記長・書記次長・現業議長・事務局長・休職専従の特命担当執行委員)を開催し、給食センターの方向性について協議(意思統一)を行いました(これまでの対応については、特命執行委員の独断と受け止められている)。内容は、①市の方針(施策)に対して市職労が反対するべきではない、②市職労の関与は控えるべき(保護者が主体的に行うべきではないか、事務的な手伝いであってもPTA担当の教師に依頼する)、③恣意的(市職労の考え方=自校方式が「メリットあり」を押しつけない)な情報を提供すべきではない(保護者の保護者による保護者のための決断=保護者の自立的対処)、④組合員の処遇改善(分限処分など)に限定して取り組むなど市の政策に関して労働組合として関与(反対)するべきではないとの意見(市民(保護者)を巻き込んでの運動はできない)について、特命担当執行委員以外は①~④に賛成でした。しかし、⑤労組として、市の政策が市民にとって誤った方向(行政サービスを低下させるなど)に行っているなら当局に提言するべきであるし、市職員としての立場であるなら市の方針に従うのは当然とも言えるが、市職労の立場(執行委員)だから言えることはあるはず、⑥市職労定期大会での方針に「公務公共サービスを守る取り組み項目のなかに、『住民にとって質の高い公共サービスは何かを問うための、特に学校給食をめぐる状況を地域住民と協働する取り組みを実施します。』」と提案し承認を得ていることからも、何もしないで見過ごすことはできないとして、市職労の中で統合に関しての関わり方で一時的に役員間に対立ができました。
今後の合同会議の運営方法に課題(役員間にしこり)を残すことになりましたが、後に、自校方式(現状維持)かセンター化(統合)かの判断はPTAに委ねることと、さらに、これまでどおり事務局は市職労で行うこととして今後の合同会議を開催していくことになりました。
(3) 合同会議の開催を通じたPTAとの連携
2011年1月20日に組合立給食センター組合員オルグ、1月31日に市立給食センターの組合員オルグを実施し組合員の統合に関する意向、問題点や課題などについて意見交換しました。
2011年2月2日に第2回合同会議以降、2012年2月29日開催の第10回合同会議まで開催しています。第2回合同会議では、2月開催の当局説明会に関して、自校方式のメリットを唱えながらセンター方式のデメリットなどの質問事項などについて確認、3月の第3回合同会議ではアンケートの結果(説明を聞いても統合の必要性が判断できないが大半)、6月の第4回合同会議は新年度で役員交代があったことからこの間の経過など、7月の第5回合同会議では、再度説明会の開催要請(当局主催で)、8月の第6回合同会議では、当局主催の説明会での意見集約、11月の第7回合同会議では統合に関する申入書、12月の第8回合同会議では12月の説明会開催(当局主催)について、1月の第9回合同会議では当局との確認書について、2月の第10回合同会議では、アレルギー対応が維持できることでの統合を認めるとの確認及び各保護者への案内文書の確認を行いました。この統合を容認することによって、センター化を市職労として認めることになりました。
4. 保護者会(PTA)の対応
2011年1月19日保護者説明会の開催についての申入書を提出し、2月中の説明会開催を要請しました(保護者会が主催して当局が説明する)。保護者説明会が2011年2月12日19:00~緑公民館(参加者26人)で、2月18日19:00~倭文小学校(参加者23人)で開催(保護者会が主催で)されました。また、出席者にはアンケート調査(保護者会作成)の記入をお願いしました。説明会の質疑内容は、統合しても現状のアレルギー対応が維持(レベル4)できるのかなどに集中しました(他給食費の値上げ、なぜ今統合などかなど)。
2011年3月29日に「小中学校組合主催の保護者説明会での回答及び追加要望についての申入書」を提出し、再度の説明会開催(教委主催で)と申入書の文書での回答を求めました。
2011年11月16日に「組合立給食センター統合に係る再申入書」を提出し、再度の説明会開催(教委主催で)と申入書の文書での回答を求めました。
第9回及び第10回の合同会議で統合の是非について、容認することを前提に確認書案について協議し、3月1日付けで締結、3月中に各4校の保護者に統合を認める内容の文書を発送し理解を求めました。
5. 総括(まとめ)
(1) 統合の判断
自校方式とセンター方式での優位性は、コスト論からみる以外は自校方式にあることは明白です。当局が主体的に保護者に情報提供する姿勢が無かったこと(市の決定は議会承認があれば市民も了解したことになる)から、自校方式の組合立の給食センターが残せるように説明会(当局主催又は保護者会主催)の開催や資料提供(会議録や統合のメリットデメリットなど)も行いましたが、保護者説明会などの開催においても出席者は多くなく、保護者が統合に関して無関心であるとも想定できます。
最終的に、統合の是非に関しての結論は、各PTA会長に一任することになり、最低限の統合の条件として「現状のアレルギー対応が維持できるなら」ということでセンター化を容認することになりました。
(2) 市職労の課題
市職労として当初は、市の政策に異議を唱えることができるのか、組合員の処遇改善の取り組みをするのが組合員を守ることになるのではないかなど、市が決めたことに対しては反対するべきではないという意見もあり、公共サービスを守るうえで市民(保護者)と協働での十分な意思統一ができなかったことは結果からみれば否めません。合併前の各町職は、町村会準則(県町村会と県本部町職連協で確定期などに交渉し、各町が準則(交渉結果)として条例規則改正を行っていた)に寄りかかっていたために、労使で十分に交渉などを行ってきていなかったことが要因ではないかと思われます。当然このような状況においては、住民と労組と協働で公共サービス維維を取り組む下地はありませんし、特に施策に反対する考えも生まれるはずはありません。当然当局にも同様の考えが生まれても不思議なことではありません(労組が町(市)の施策に反対など考えられない、どのタイミングで事前協議するかわからない、労使交渉の必要性を理解(管理運営事項)しない)。
市職労としては、最終的に保護者会の判断に委ねる(自校方式、センター方式)こととなり、公共サービスを守るうえから、結果として自校方式を維持できなかったことは市職労としても反省すべき点ではないかと思います。今後は、組合立給食センター組合員の処遇についての交渉に場面は移りました。 |