【自主レポート】 |
第34回兵庫自治研集会 第11分科会 地域から考える「人権」「平和」 |
埼玉県、東京都の飲料水の水源となる荒川上流に位置する秩父市。 |
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1. 県民・都民水源地への最終処分場計画 (1) 発端は31年前の建設許可 |
☆印が秩父市影森地区。荒川は秩父山地の水を集めながら東京湾に注ぐ。荒川の水は秋ヶ瀬取水堰で取水され朝霞浄水場を経て都民の飲料水として送水されている。 |
(2) 懸念が現実のものに
埼玉三興(株)は、産廃埋め立て終了直後の2001年1月10日、親会社である三興企業(株)が2回目の不渡り(負債100億)を出し連結倒産しました。翌11日土地所有者である柳生商事(株)から秩父市に、同社としては当面埼玉三興(株)の維持管理を行っていくとの考え方が示され、柳生商事(株)が維持管理を行ってきました。 その後、柳生商事(株)は、水処理施設に管理者を常駐するが、施設の維持管理を続けることは無理との理由から、2006年11月30日をもって管理業務から撤退してしまいました。 ② 水処理停止後の動き 2006年12月5日、秩父市は柳生商事(株)に、公害防止協定に違反するとして管理を再開するよう内容証明で催告文書を送付しました。2007年2月28日、柳生商事(株)から分社化した秩父管財(株)が設立され、同日、土地所有権と処分場に関する一切の権限が柳生商事(株)から引き継がれたことから、同年8月31日、秩父市から埼玉県知事宛てに、産業廃棄物最終処分場の諸問題の抜本的な改善対策について要望書が提出されました。 また、2010年11月25日には、埼玉県と秩父市が柳生商事(株)を訪問し、処分場維持管理の文書による要請が行われています。 ③ 埼玉三興産業廃棄物最終処分場の問題点 埼玉三興(株)が名前だけの会社となり、柳生商事(株)が維持管理を始めていた時点で、処理施設等の維持管理について、廃棄物処理法上継承されておらず、現在もその状態が続いています。 柳生商事(株)が維持管理を行ってきた行為は、土地所有者としての道義的責任、また、秩父市との協定書に基づき、許可権限である埼玉県の責任と監視の下に行ってきたことで、民法に基づく契約による補償によるものではあるものの、廃棄物処理法上の強制力は無いものと思われます。 県は、現状の排出水の水質結果によると、まだ、産廃処分場を廃止する段階ではないと判断しており、安定するまでは、まだしばらく維持管理が必要であると見ています。 |
2. 「守る会」の取り組み (1) 荒川湧水対策の経過
2005年1月11日、「守る会」は、埼玉三興(株)産業廃棄物最終処分場脇の荒川に流れ込んでいる湧水の汚染源究明と汚染水の荒川流入阻止の対応について、秩父環境管理事務所に要請を行いました。 同年12月20日、県が地元町会に対し荒川湧水の汚染状況把握と原因究明調査及び今後の対策について、報告会が開催され、2006年2月25日~3月13日、浸透性反応壁(PRB)実証事業が始動され、同年8月29日には、荒川湧水の汚染状況対策として、ミニPRBが施工されました。 2010年2月8日、「守る会」と埼玉県との話し合いを経て、同23日、同年8月26日、翌年の2011年3月29日、同年4月25日、に関係住民説明会が開催されてきました。 ② 後退する見解 2012年3月29日に行われた埼玉県による「埼玉三興処分場・荒川湧水対策関係住民説明会」では、これまでの見解から後退し、①湧水対策については、砒素濃度は下降傾向で2006年7月以降排水基準を上回るヒ素は検出されていないため対策は不要で、これまで設置していた汚水中の砒素等を吸着し固定・安定化させるPRB処理についても撤去する。問題は臭い(硫黄)で、なるべく空気に触れないように荒川に流す。②埼玉三興管理型最終処分場水処理については、現在の水位は堰堤の半分位であるが、処分場の堰堤・法面は安定しており、当面の崩壊は想定されない。水質についてもそのまま流出しても問題ないものだが、今後もモニタリングは継続し、関係者には引き続き適切な維持管理の実施を指導するというものでした。 (2) 現状と問題点など |
埋め立て終了から12年が経過し今や管理者不在となっている影森地区最終処分場。県民・都民の水源となる荒川にヒ素や硫化物イオンを含む湧水が放出され続けていることを、釣り人は知っているのだろうか。 |
3. おわりに
環境後進国の制度の不備、権限のある人間の、全ての生き物の「生命」に対しての思考停止により、産業廃棄物処分場が建設されてきました。その時の産廃建設の必要性、理由として、「雇用が生まれる。」「産廃はどこかに作らなくてはいけない。」「どこかに産廃を押し付けてはいけない。」などの声がまことしやかに言われてきました。そして、極めつけが「県が責任を持つ」という言葉でした。 |