【自主レポート】

第34回兵庫自治研集会
第11分科会 地域から考える「人権」「平和」

 地域における平和運動の取り組みの報告として、明石に於ける平和運動体としての「ピースネット明石」の取り組みの報告と、平和イベントとして多くの団体・市民の方と共に取り組んでいる「ピースフェスタ明石」の取り組みを紹介するとともに、全国の地域にある自治体労働者の使命として、地域の労働運動、平和運動を積極的に担っていく必要があるのではと問いかける。



ピースネット明石&ピースフェスタ明石
明石に於ける地域の平和運動について

兵庫県本部/明石市職員労働組合・副委員長 狩郷 將弘

1. ピースネット明石

(1) 有事法制に反対するネットワーク明石を発足
 今から10年前の2002年に、当時の自民党を中心とする政府与党は、有事法制3法案(「武力攻撃事態における我が国の平和と独立並びに国および国民の安全の確保に関する法案(武力攻撃事態法案)」「自衛隊法改正案」「安全保障会議設置法改正案」)を国会に提出しました。
 これらの法案は、今までの米国支援の「新ガイドライン法」「周辺事態法」「テロ対策特措法」などの法を更に踏み込んで、日本自体が米国とともに戦争に参画できるようにするもので、平和憲法と言われている日本国憲法の精神を大きく踏みにじり、日本国民を戦時体制へと引きずり込む内容となっています。
 そのため、私たちはこれらの有事法制に断固反対の立場で自治労や県下の他の自治体の仲間とも共同歩調を取りながら様々な行動をしてきています。
 また、明石の地でも“今の危険な政治情勢の中で声を上げなくてもいいのか”となり、地域の様々な団体・個人などに呼びかけて「有事法制に反対するネットワーク明石」を発足させ、2002年5月31日に明石駅前のアスピアの7階にある明石市生涯学習センターの学習室で「有事法制に反対する緊急市民集会」を開催し、神戸大学教授の和田進さんから「私たちにとって有事法制とは」と題して有事法制の問題点を具体的な例もあげながら分かりやすい講演をしてもらいました。
  集会開催前の5月28日には明石駅前で街頭宣伝行動を行うとともに、各新聞社へも働きかけて新聞記事で取り上げてもらうなどしながら広く市民にも呼びかけをし、集会当日には会場を埋め尽くす100人程の市民、労働者の方が参加してくれました。
 また、明石市議会に対しても「有事三法案の撤回を求める請願」を出し、政府に対して「有事三法案を撤回し、憲法を生かした平和外交を進める」ように意見書を提出することを明石市職労の組織内議員である永井俊作市議会議員などの紹介で2002年6月11日に提出するなどもしました。
 2003年5月の国会において有事関連3法が可決されてしまいましたが、「有事法制に反対するネットワーク明石」は、法案可決後も戦争反対の声をあげ続けていきました。
 この「有事法制に反対するネットワーク明石」は、その窓口を明石市職労の狩郷副委員長が事務局長として地域労働運動・平和運動に取り組んでいる明石地労協人権平和センターが担い、運動の趣旨に賛同してくれる個人や団体に賛同人として、賛同金(年間1,000円から)を得ながら、幅広く手を広げて地域の様々な団体・個人で形成されました。

(2) ピースネット明石に名称変更
 2003年8月21日に開催した「有事法制に反対するネットワーク明石・賛同人会議」において、名称を「ピースネット明石」と変更し、①有事法を発動させない、②戦争反対、③平和憲法を守る、の三点で一致できる個人・団体で緩やかなネットワークを作り、明石の地からも平和運動をさらに広げていこうと再結成され、明石地労協人権平和センターがその事務局を引き続き担いました。
 2003年9月24日には有事法可決後の情勢などを学習しようと大阪経済法科大学の澤野義一教授を講師に招き、「明石市民平和講座」をアスピアで開催し、60人の参加がありました。
 開催に先立ち、賛同人会議、事務局会議を重ねるとともに、市民にも呼びかけるため明石駅前にてビラまき行動などを行いました。


(3) 市民と共に運動を進める「ワールドピースアクション」
 新ガイドライン法、周辺事態法、テロ対策特別措置法によりアメリカ軍の支援をより明確にしながら、危険な道へと進んでいた当時の小泉内閣は、更に進んで、日本自体が戦争のできる国にしていこうとしていました。
 すでに、インド洋に自衛隊の海外派遣を行い、集団的自衛権にまで踏み込んでいましたが、更に、イラク特措法により、イラクに自衛隊を派遣していくなど、平和憲法の趣旨を踏みにじる、このような戦争への道は断じて許すわけにはいきません。
 そのため、ピースネット明石は様々な活動を続け、事務局会議や賛同人会議などをさらに積み重ねながら、世界の反戦運動に呼応して2003年10月25日の土曜日の午後、明石公園の東芝生広場で世界中のイラク戦争反対の行動に呼応して、ピースネット明石の主催による「ワールドピースアクションin明石」と銘打った平和行動を行いました。
 当日は晴天にも恵まれ、300人の組合員、市民の方が集会に参加し、イラクに人間の盾として行かれた高薮さんの報告、ピースコンサートとしての歌声や大道芸などを楽しみながら、聞いて、平和について考えるピースパークとなり、その後、明石駅周辺をピースウオークして、戦争反対、平和を市民に訴えました。
 また、イラクへの自衛隊派遣の反対行動として12月24日、2004年1月14日、2月17日、3月5日に明石駅で街頭宣伝活動などを取り組みました。
 2004年3月20日には明石駅周辺で米英のイラク攻撃一年に反対するワールドピースアクションイン明石2の行動を行いました。
 当日はビラまき行動、プラカードによる訴え、リレートーク、歌声などを行うとともに、市民の皆さんにイラク戦争反対・自衛隊の早期撤退に向けた横断幕に寄せ書きをしてもらいながら戦争反対、平和を訴えました。
 その後、三宮で行われた「一万人ピースウオーク集会」に明石駅で取り組んだ寄せ書きの横断幕と昨年秋に取り組んだワールドピースアクションin明石での横断幕と一緒に三宮をピースウオークしました。


(4) 市民と共に考える「市民平和講座」
 2004年5月には南京大虐殺の史実を描き、毒ガス関係などのレプリカも展示した「南京・閉ざされた歴史」明石展を1週間開催、2004年6月14日には、国会で昨年に続いて戦争体系法の仕上げとなる有事関連7法が可決されたことに対する抗議の緊急街頭宣伝行動を明石駅で行いました。
 2004年9月22日に「ピースネット明石」としてのはじめての総会を開催し、記念講演とともに、①市民平和講座、②街頭宣伝活動、③世界・全国・県下の平和を願う人たちとの連携としてのピースアクション、④PEACE LETTERなどの発行、⑤賛同人・会員の拡大、などの方針を確立しました。
 10月5日には、大江健三郎さんたちの呼びかけで発足した「九条の会」の発足記念講演のビデオ上映を行いました。
 12月8日には明石市民平和講座として、イラクに数度行かれている「NGOイラクの子どもを救う会」の西谷文和さんを講師に迎え、「イラク、戦場の子どもたち」と題した講演会をアスピアで開催しました。
 2005年3月20日の日曜日にラポス5階の市民ホールにて米英のイラク攻撃2年に反対するワールドピースアクションin明石として「明石ピースコンサート」を行いました。
 みんなで歌おうよっ! をテーマに、当日までにリクエスト曲なども募集し、「イラクへ届け平和のうたごえ」として開催し、5つの団体の歌声メンバーが持ち歌とリクエスト曲をそれぞれ披露しながら、参加した市民や労働者150人の会場と一体となっていきました。
 5月11日の賛同人会議では、「今、平和憲法の危機」として、兵庫憲法会議の松枝事務局長に日本の平和憲法を取り巻く情勢と課題などについて講演をしてもらい、9月22日の「市民平和講座」では、無防備地域宣言全国ネットワークの事務局長の枡田俊介さんから「地域から戦争をなくす無防備地域宣言運動を」と題して講演を受けました。
 2005年12月7日には、市民平和講座の一環として映画「日本国憲法」の上映会をアスピアにて、午後2時、4時、7時の3回上映し、延べで200人の方が日本国憲法の生誕の歴史と世界から見た日本国憲法のすばらしさに触れてもらえたと思います。
 各市民平和講座の開催に向けては、多くの市民の方にも知ってもらい、参加してもらえるように新聞社などにも情報提供するとともに、駅頭での街頭宣伝活動では、リレートークだけでなく歌声なども取り入れながら、様々な工夫をしながら行いました。
 イラク開戦4年を迎えた2006年3月20日の明石駅前での街頭宣伝活動、3月24日には「自民党『新憲法草案』を斬る」と題して名古屋大学大学院の浦部教授を講師に招いた「明石市民平和講座」を開催。さらに、5月20日の土曜日には、「米軍基地再編問題……岩国からの報告」と題して、「ピースリング広島・呉・岩国」の世話人である湯浅さんを講師に招いて、9回目となる明石市民平和講座を開きました。
 また、ピースネット明石のような運動が他の地域でも広がってきていることを踏まえ、5月31日にピースネットワーク東播・北播地区交流会をはじめて開催し、各地域のピースネットや9条の会との活動の交流を行いました。
 その後も市民平和講座として「占領下のパレスチナを訪ねて」と題して高薮繁子(たかやぶ・しげこ)さんからスライドを上映しながら講演、この間の明石市の「国民保護計画」の流れや、ピースネット明石として市に申し入れた諸行動、意見書などの報告を行った後に、「明石市国民保護計画を考える」と題して松山秀樹弁護士から記念講演、イラクに何度も足を踏み入れている西谷さんに2回目の「報道されなかったイラク戦争」と題して映像を交えての講演、ジャーナリストとして有名な島本慈子さんから「この時代に生きること働くこと-改憲を戦争と労働の現場から考える」と題しての講演をしてもらうなど、市民平和講座を3ヶ月に1回開催するとともに、その間の、街頭宣伝行動などを実施してきました。


(5) 大規模な映画会も開催
 そのような中、日本国憲法の誕生の史実を描いた映画「日本の青空」の上映を明石でも行おうとピースネット明石で考え、上映に向けての実行委員会を作り、2008年の2月3日に、映画「日本の青空」の上映会を行いました。
 この実行委員会は、ピースネット明石の関係者だけでなく、多くの市民団体などにも参加してもらいながら取り組もうと、2007年の秋から取り組みを進めてきました。
 2月3日当日は、3回の上映を行い、延べ450人の労働者や市民の方が参加しました。
 実行委員会では、上映会に向けて幅広く市民の方に呼びかけるとともに、若者に憲法生誕の歴史的な意義を知ってもらいたいと、1月14日の成人式の日に新成人に対して名刺サイズの呼びかけ文を配布するとともに、新テロ対策法反対、インド洋への給油活動再開反対の街頭行動も併せて行いました。
 また、市民平和講座はその後も継続して開催していきました。講師には、神戸大学の二宮先生、前岩国市長の井原さん、神戸学院大学の脇田先生、神戸空襲を記録する会代表の中田政子さん、京都沖縄県人会の会長である大湾宗則さんなど、多才な顔ぶれ講師の方にお願いしながら講演をしてもらっています。


(6) ピースウオーク明石も開催
 2010年6月に続き2011年6月、そして2012年6月2日と、明石空襲の戦跡を巡るピースウオーク明石に3年連続して取り組んでいます。
 明石観光ガイドの方から詳しい説明を聞きながら、明石の戦跡巡りを約2時間から3時間かけて行いました。
 前日と後日にも、新聞が大きく取り上げてくれるなど、明石に於ける平和活動の一環として定着してきており、毎年、40人から60人の市民の方が参加してきてくれています。

(7) さようなら原発1000万人署名
 2011年10月15日には、反原発のたたかいを描いたドキュメント映画「ミツバチの羽音と地球の回転」の上映を行いました。
 また、3・11の原発事故を踏まえて、大江健三郎さんたち9人の人が呼びかけている「さようなら原発1000万人署名アクション」の成功に向けて、10月以降毎月の街頭署名行動を今年の6月まで多くの市民団体とともにピースネット明石が主体的に取り組み、また、2012年2月4日に行われた兵庫県集会の成功に向けて、全力をあげていきました。

2. ピースフェスタ明石

 明石に於ける平和運動体としてのピースネット明石ですが、その運動体とは別に、毎年夏に行っている平和イベントとして「ピースフェスタ明石」があります。
 戦後50年の1995年から始まり反戦平和を訴え続け、夏の恒例イベントとなっていた「明石平和の集い」は、2005年の戦後60年という節目の年に、さらに広範な運動体、さらに大きなイベントにしようと企画を進め「ピースフェスタ明石」として開催してきました。
 今年で8回目(明石平和の集いからだと18回目)となりますが、毎年1月に実行委員会を立ち上げ、実行委員会の中で議論を積み重ねながら8月開催に向けて準備をしてきています。
 この実行委員会には労働組合だけでなく、ピースネット明石などの多くの市民団体、諸団体、個人など幅広い方に参加してもらい、ピースフェスタ明石を成功させてきています。
 毎年「平和・いのち・子ども」をメインテーマに、昨年は8月3日から7日にかけて、いわさきちひろ安曇野美術館から、ちひろさんの描いた原画の複製画を24点お借りしてギャラリー展示するなど、1,000人を超える多くの家族連れや市民の方から好評を得ました。
 今年は、8月1日から5日にかけて勤労福祉会館で開催することが決定し、1日からは絵本「ヒロシマのピアノ」(文:指田和子 絵:坪谷令子)の原画展と「原発はやめられないの」と題した原発関連の展示、侵略戦争の歴史と明石空襲、復帰40年のオキナワ、などの手作りパネル展示をギャラリーで開催、4日の土曜日は、長崎・神戸・明石でそれぞれが体験した市民自らが戦争の悲惨さを語る戦争体験談があります。
 5日の日曜日はメインイベントとして被爆ピアノコンサート「ヒロシマからフクシマに、そして私たちに」と題して、サブタイトルとして「被爆ピアノが語りかけてくれるもの」とし、「ヒロシマのピアノ」の原画のスライド映像や絵本の朗読などとコラボレーションしながら、ピアノ演奏がされます。
 また、この被爆ピアノコンサートの前段に、今のフクシマの現状を話してもらおうと、福島の子どもたちの支援を続けておられる煙山さんに「フクシマからの声」と題してお話を受けます。
 また、午前中は「平和の集い」として絵本読み聞かせ、沖縄音楽、ジャズダンスなどを行うとともに、お昼は明給労が主体となって行う「らんらんランチ」や健康チェックコーナーなど多彩な催しを行います。
 小さな子どもから、戦争経験のある年配の方まで、幅広い層に働きかけながら「平和・いのち・子ども」について優しく語りかけるとともに、戦争の悲惨さ、残虐さについて考えてもらえるような企画を多数考えています。
 このピースフェスタ明石は、市内の多くの市民団体、労働組合、諸団体、個人などにより実行委員会が構成され、その窓口を明石地労協人権平和センターが担っています。
 自治労の組織は全国各地にあります。自治体労働者として、地域の労働運動、そして平和運動に積極的に関わっていくことが必要なのではないでしょうか。