1. はじめに
(1) 広島県本部(自治研センター)の取り組み
広島地方自治研究センターは2008年2月に「男女平等参画条例づくりプロジェクト」を立ち上げ研究活動、実態調査・アンケートを行ってきました。これは自治総研が設置した「自治体の女性行政研究会」を参考にしながら、広島県内の自治体で「男女平等参画条例制定」を推進することを目的に取り組んできているところです。県内の制定状況は、2001年の呉市をトップに広島市・福山市・三次市・安芸高田市の5自治体が制定済みでしたが、2011年3月に三原市が6番目の条例制定となったので、今年5月の自治研広島県集会でレポート報告を行ったものです。
(2) 三原におけるこれまでの経過等の概要
三原市は、2005年3月に旧三原市・大和町・久井町・本郷町の1市3町が新設合併で新三原市としてスタートしました。合併前の三原市・久井町では「男女共同参画プラン」が策定されており、大和町・本郷町では取り組み中、と違いはありましたがそれぞれ一定の施策は実施されていました。
新三原市となり、2007年3月に「三原市男女共同参画プラン」を策定し、三原市男女共同参画推進条例の制定に向けた取り組みが開始され、2011年3月議会で条例化・10月から施行されました。現在は「認め合い 共に歩もう 多幸のまち」をスローガンに、本年度から5年間を目標とする「第2次三原市男女共同参画プラン」を策定したところです。
2. 「ひろしま女性大学三原ブロック“たらの芽”」の取り組みについて
この会は、1998年に旧三原市や久井町・本郷町のひろしま女性大学の同窓生が集まって結成されたものです。
春先に萌え出る若草色の淡いたらの芽のように、新鮮・輝き・ほろ苦さをモットーに女性も男性も、自分らしくのびやかに暮らせる社会をめざして、月1回の例会を中心に活動を続けているものです。
この会の特徴的な取り組みは、2002年8月に「三原市男女平等社会基本条例」の早期制定要望を市長宛に提出し、教育長との意見交換もされたことです。
この条例に盛り込む内容として、<前文><基本理念><市、市民、事業者などの責務><推進委員会の設置>が挙げられており、それぞれ細かく・具体的に明示されているすばらしいものです。特筆すべきは、<条例の名称>です。つぎのように謳われています。1.条例の名称を「三原市男女平等社会基本条例」とすること……<共同参画>と<平等>の意味の違いは大きいと私たちは考える。共同参画は平等実現のための手段ではあるが、性に基づく差別は依然として根強く残っており、事実上の平等はいまだに達成されない。また「基本条例」と明記することにより今後の三原市の施策の遂行上、常にこの条例の理念に即して、検証を行いながら、業務の遂行を図っていただきたい。
なお、この条例制定要望の取り組みをフォローすべく、私も2003年3月議会の総括質問のなかで、この条例制定要望の取り扱いについて理事者に質すなかで、条例化に向けた取り組みの強化を訴えました。
3. 「みはらウィメンズネットワーク」の取り組みについて
男女共同参画社会実現のため、意識啓発や入材育成を目的とした講演会などの男女共同参画推進事業を行う目的で2001年10月に設立。三原市女性会連合会・みはらLCS・三原商工会議所女性部会・三原市母子寡婦福祉連合会・国際ソロプチミスト三原・JA三原女性部・三原パイロットクラブ・城山女性の会・三原地区厚生保護女性会・ひろしま女牲大学終了生たらの芽の10団体および個人会員で構成。
2008年度から条例制定に向けた研修を開始し、条例の研究や先進地の取り組み事例などの学習ならびに座談会を開催。また、ミニ集会や男女共同参画講演会を企画するなど積極的な取り組みが行われました。
4. 条例制定に向けた取り組み(別紙資料参照)
2007年3月策定の「三原市男女共同参画プラン」において、市民・市民団体・事業者などの多様な主体の協働によりこれを進めることが必要とされ、その基盤整備として条例を綱定に向けての取り組みが開始されました。
2009年12月に市長からの依頼を受け、12人の委員で構成する「三原市男女共同参画推進懇話会」が設置され、爾来条例づくりに向けた協議が行われてきました。
この取り組みでは、公募市民のワークショップも3回開催し、意見を聞くなかで、懇話会を合計8回開催し、条例に何を盛り込むべきか議論を交わした後、2011年12月13日に、提言書として纏められました。
提言を受けた後、庁内の推進本部を開催し、これを基に条例の素案づくりを開始しました。また、広く市民の意見を聞くためのパブリックコメントも行われました。
以上のような取り組みを経るなかで2011年3月市議会で可決され、同年10月1日から施行となりました。
5. 三原市条例の特徴について
① 第1章第3条の基本理念のなかで、第5号に「互いの性についての理解、生涯を通じた健康的な生活等」を加えている。
② 第7条に「教育に携わる者の責務」を明記している。
③ 三原市の特徴として、ワーク・ライフ・バランスに努める事が必要との考えの下、「調和」や「両立」という言葉を使用している。
第3条第1項第4号(基本理念)、第6条第1項(事業者の責務)、第10条(家庭生活における活動とその他の活勤との両立支援)
④ 第11条では、女性だけではなく、男女の生涯を通じた健康支援の規定を設けている。
⑤ 第15条で表彰を規定しているが、対象を事業者に限らず、男女共同参画を協働して推進するための責務を果たした、すべての人にと広げている。
⑥ 第4条の市の責務のなかで、市の責務にだけ、積極的改善措置を含むとしている。
ここでいう積極的改善措置とは、男女間の格差を改善するため必要な範囲内において、男女のいずれか一方に対し、当該機会を積極的に提供することと定めている。
6. おわりに
三原市の条例制定は、県内で6番目と決して早くはありませんでしたが、事前の取り組みはそれなりに着実に行われたものと考えています。とりわけ、「男女共同参画祉会の実現をめざして。知って学んで行動する女(ひと)に」をスローガンに活動する「たらの芽」の皆さんを初めとする「みはらウィメンンズ・ネットワーク」に結集された女性団体の方々の積極的取り組みが大きな推進力になったものと言わなくてはなりません。
最後に、男女共同参画社会の実現をめざす、女性問題や男女共同参画推進条例の市行政の担当窓口についてであります。これが教育委員会となっているのは、県内では三原市と熊野町だけと聞いております。現行の「青少年女性課」から「女性課」に独立させ「人権」の視点からの取り組みとすることが大切で、市長部局に移管してはと考えるものです。
<別紙>
三原市男女共同参画推進条例の制定について
三原市議会議員 岡崎敏彦
Ⅰ.はじめに
日本国憲法が謳う「個人の尊重と法の下の平等」の精神に基づき、男女平等をめざす「男女共同参画社会」の実現に向けた「男女共同参画社会基本法」が1999年6月23日に制定されました。この法律は、基本理念を明確に示したうえで、「国・地方公共団体・国民の責務」を明らかにしながら、これが社会の形成に関する取り組みを総合的かつ計画的に推進していくことを目的としています。
この法律制定後、国では翌年12月に「基本計画」を、5年後に「第2次基本計画」続く5年後に「第3次基本計画」を策定しました。
広島県では、2001年に「広島県男女参画推進条例」を制定し、2003年3月に「第3次基本計画」が策定されました。
三原市は、2005年3月に旧三原市・大和町・久井町・本郷町の1市3町が新設合併で新三原市としてスタートしました。合併前の三原市・久井町では「男女共同参画プラン」が策定されていましたが、大和町・本郷町では取り組み中との違いはありますがそれぞれ一定の施策の推進が図られていました。
新三原市となり、2007年3月に「三原市男女共同参画プラン」を策定し、三原市男女共同参画推進条例の制定に向けた取り組みを開始し、2012年3月議会で条例化・10月施行されました。現は「認め会い 共に 歩もう多幸のまち」をスローガンに、本年度から5年間を目標とする「第2次三原市男女共同参画プラン」を策定したところです。
Ⅱ.「ひろしま女性大学三原ブロッグ“たらの芽”」の取り組みについて
この会は、1998年に旧三原市や久井町・本郷町のひろしま女性大学の同窓生が集まって結成されたものです。
春先に萌え出る若草色の淡いたらの芽のように、新鮮・輝き・ほろ苦さをモットーに女性も男性も、自分らしくのびやかに暮らせる社会をめざして、月1回の例会を中心に活動を続けているものです。
この会の特徴的な取り組みは、2002年8月に「三原市男女平等社会基本条例」の早期制定要望を市長宛に提出し、教育長との意見交換もされたことです。
この条例に盛り込む内容として、〈前文〉〈基本理念〉〈市、市民、事業者などの責務〉〈推進委員会の設置〉が挙げられており、それぞれ細かく・具体的に明示されているすばらしいものです。特筆すべきは、〈条例の名称〉です。つぎのように謳われています。1.条例の名称を「三原市男女平等社会基本条例」とすること…〈共同参画〉と〈平等〉の意味の違いは大きいと私たちは考える。共同参画は平等実現のための手段ではあるが、性に基づく差別は依然として根強く残っており、事実上の平等はいまだ達成されない。また「基本条例」と明記することにより今後の三原市の施策の遂行上、常にこの条例の理念に即して、検証を行いながら、業務の遂行を図っていただきたい。
なお、この条例制定要望の取り組みをフォローすべく、私も2003年3月議会の総括質問のなかで、この条例制定要望の取り扱いについて理事者に質すなかで、条例化に向けた取り組みの強化を訴えました。
Ⅲ.「みはらウィメンズネットワーク」の取り組みについて
男女共同参画社会実現のため、意識啓発や人材育成を目的とした講演会などの男女共同参画推進事業を行う目的で2001年10月に設立。三原市女性会連合会・みはらLCS・三原商工会議所女性部会・三原市母子寡婦福祉連合会・国際ソロプチミスト三原・JA三原女性部・三原パイロットクラブ・城山女性の会・三原地区厚生保護女性会・ひろしま女性大学終了生たらの芽の10団体および個人会員で構成。
2008年度から条例制定に向けた研修を開始し、条例の研究や先進地の取り組み事例などの学習ならびに座談会を開催。また、ミニ集会や男女共同参画講演会を企画するなど積極的な取り組みが行われました。
Ⅳ.条例制定に向けた取り組み(別紙資料参照)
2007年3月策定の「三原市男女共同参画『プラン』において、市民・市民団体・事業者などの多様な主体の協働によりこれを進めることが必要とされ、その基盤整備として条例を制定に向けての取り組みが開始されました。
2009年12月に市長からの依頼を受け、12名の委員で構成する「三原市男女共同参画推進懇話会」が設置され、爾来条例づくりに向けた協議が行われてきました。
この取り組みでは、公募市民のワークショップも3回開催し、意見を聞くなかで、懇話会を合計8回開催し、条例に何を盛り込むべきか議論を交わした後、2010年12月13日に、提言書として纏められました。
提言を受けた後、庁内の推進本部を開催し、これを基に条例の素案づくりを開始しました。また、市民の意見を聞くべくパブリックコメントも行われました。
以上のような取り組みを経るなかで、2011年3月市議会で可決され、10月1日から施行となりました。
Ⅴ.三原市条例の特徴から
1 第1章第3条の基本理念のなかで、第5号に「互いの性についての理解、生涯を通じた健康的な生活等」を加えている。
2 第7条に「教育に携わる者の責務」を明記している。
3 三原市の特徴として、ワーク・ライフ・バランスに努める事が必要との考えの下、「調和」や「両立」という言葉を使用している。
第3条第1項第4号(基本理念)、第6条第1項(事業者の責務)、第10条(家庭生活における活動とその他の活動との両立支援)
4 第11条では、女性だけではなく、男女の生涯を通じた健康支援の規定を設けている。
5 第15条で表彰を規定しているが、対象を事業者に限らず、男女共同参画を協働して推進するための責務を果たした、すべての人にと広げている。
6 第4条の市の責務のなかで、市の責務にだけ、積極的改善措置を含むとしている。
ここでいう積極的改善措概とは、男女間の格差を改善するため必要な範囲内において、男女のいずれか一方に対し、当該機会を積極的に提供することと定めている。
Ⅵ.おわりに
三原市の条例制定は、県内で6番目と決して早くはありませんでしたが、事前の取り組みはそれなりに着実に行われたものと考えています。とりわけ、「男女共同参画社会の実現をめざして、知って学んで行動する女(ひと)に」をスローガンに活動する「たらの芽」の皆さんを初めとする「みはらウィメンズ・ネットワーク」に結集された女性団体の方々の積極的取り組みが大きな推進力になったものと言わなくてはなりません。
最後に、男女共同参画社会の実現を目指す、女性問題や男女共同参画推進条例の市行政の担当窓口についてであります。これが教育委員会となっているのは、県内では三原市と熊野町だけと聞いております。現行の「青少年女性課」から「女性課」に独立させ「人権」の視点からの取り組みとすべく、市長部局に移管してはと考えるものです。 |
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