【自主レポート】

第34回兵庫自治研集会
第13分科会 地域で再生可能な自然エネルギーを考える

 自治体の抱えた身近な環境問題の研究として、ごみ分別の手法を検証しリサイクルを促進することでエネルギー問題解決に住民参加をうながし、さらに地球温暖化対策を啓蒙する。



環境対策としてごみ問題を考える
県内のごみ分別方法について検証し無駄をはぶく

大分県本部/大分県地方自治研究センター・環境自治体専門部会 松本 義明

1. はじめに

 環境自治体専門部会では、地経温暖化問題の身近な解決策のひとつとして、無駄を省いていくことがエネルギーの節約になるという方針で、効果的なごみ収集・リサイクル方法の検証を行ってきた。具体的には、2008年度の初回検証以来「ペットボトル」や「廃プラスチック」の問題を整理しつつ様々な課題を掘り起こし、「ごみの分別・リサイクル」について政策提言を行い、ガイドラインとして提示したいとの方針のもと研究を持続してきた。ごみ問題には、市町村それぞれに個別の課題があり統一した解決は困難な場合が多いと予想されるが、現場に係わる職員相互の連携をはたしつつ、住民の立場にたった解決策の糸口になれればと切望する。

2. 経 過

 課題を整理しやすくするために、年度ごとに課題を設定して理解を深める手法をとった。簡単に経過をまとめてみる。
・2008年度(初年度) 「資源ごみ分別実態」についてアンケート調査を実施し、さらにペットボトルの分別回収の是非を検討。
・2009年度 分別のコストと有効利用度について調査。古紙・缶・ペットボトルは分別収集のコストを回収できる事を検証。
・2010年度 民間の廃棄物収集分別企業を現地視察し、分別の実態を確認、また廃プラの分別の研究と問題点を検証。さらに蛍光管のリサイクル事業について学習。
・2011年度 各市町村の「ごみ分別パンフレット」を収集し、政策提言の可能性について検証。
 ここで、パンフレットを活用し特徴的な部分を一覧表にまとめて、課題を見やすくして現状の把握を行ってみよう。
 表中の○印は分別収集を行っている項目で、(可燃)(不燃)とあるのはそれぞれのごみとして収集している。また、パンフレットの年次の都合上データが現状にあわない可能性があるが、市町村名の公表と共にご理解をもとめる。


分別状況のまとめ
① 表
市町村名
生ごみ
可燃ごみ
不燃ごみ
びん
ペットボトル
大  分
(可燃)
別府・杵築・日出
(可燃)
中  津
処理機補助
佐  伯
(可燃)
日  田
宇  佐
(可燃)
臼  杵
処理機補助
豊後大野
(可燃)
由  布
(可燃)
国  東
(可燃)
竹  田
(可燃)
津 久 見
(可燃)
(可燃)
豊後高田
(可燃)
(不燃)
玖  珠
(可燃)
九  重
(可燃)
② 表
市町村名
古紙類
古布類
資源プラ
乾電池
蛍光灯
大  分
別府・杵築・日出
(不燃)
(不燃)
中  津
拠点回収
佐  伯
(可燃)
拠点回収
拠点回収
日  田
宇  佐
(可燃)
拠点回収
拠点回収
拠点回収
臼  杵
(可燃)
拠点回収
豊後大野
(不燃)
(不燃)
由  布
国  東
(可燃)
(可燃)
(不燃)
(不燃)
竹  田
(可燃)
(不燃)
拠点回収
津 久 見
豊後高田
(不燃)
(不燃)
玖  珠
(可燃)
九  重
(可燃)


3. 考 察

 さらに理解を進めるために、過去のレポートの一部を抜粋引用する。

① ごみの出し方を検証してみると、市町村で差があることが分かります。ごみの分別方法が異なるため住民にとってはとまどうことが多いのではないでしょうか。
また、ごみ分別を細分化するほどリサイクルには役立ちますが、回収にかかる手間やコスト、住民への分別教育の徹底などクリアするべき課題も多いのが現状です。
② そもそも一般廃棄物の収集・処理・処分などの処理責任は市町村にあり、ごみ処理の歴史や処分場の残余年数、焼却炉の能力差などによって、ごみの分別方法は市町村によって様々です。しかし、各自治体の分別方法は、自治体の「環境行政」という観点からではなく、焼却炉や処理業者の施設の能力で決まっています。実際、ペットボトルの処理を委託している業者が機械でラベルをはがすことが可能な場合でも、住民に分別をさせています。これは、委託先が変わった場合、分別方法を変更すると住民が困惑するという理由からです。自治体はもっと「環境行政」という観点からごみの分別を考えるべきです。
③ 分別の種類が増えることで自治体の予算も増加しています。この点に関して今回調査は実施していませんが、他県の市町村の公表データを参考にすると、名古屋市では1997年には16億円だった予算が2004年には70億円にまで達したそうです。名古屋市のレポートには「資源化貧乏」という表現も見受けられます。
④ いくら分別を増やしても、住民は完璧にはできません。市町村は、分別が多いことを自慢する風潮がありますが、分別を少なくすることで住民負担と収集運搬経費などを削ることが必要ではないか。
⑤ 実際、分別という住民の労力が生かされていないケースもあります。住民の分別が不十分、マナーの悪いという理由でリサイクルできないこともあります。また、過剰な分別で焼却炉内の温度が上昇せず、重油を燃やしているところもあります。環境のためにごみを分別し、リサイクルしているにもかかわらず、そのことが逆に重油を燃やしCOを発生させているのであれば考え方を少し変える必要があります。つまり、分別の増加は、「住民の手間の増加」「収集コストの増加」「燃焼効率の低下」を招きます。だから、分別を少なくする事によって上述の3つを解決する必要があるのではないでしょうか。

4. まとめ

  生ごみについては、日田市はバイオマス発電という特殊環境があるので分別収集のメリットがあるが、県下で生ごみ分別を統一するのは困難である。ペットボトルを可燃ごみとして収集している津久見市もまた、セメント工場での可燃ごみ燃料化という特殊事情があるので統一も困難だと思う。カン類を不燃ごみ収集している豊後高田市は、不燃ごみ集積場で再分別しているとのことだが、その手間と資源化の啓蒙という観点を考えると再検討を望みたい。これらを考慮しても、①表全部と②表の古紙までは大分市・中津市・臼杵市を先進事例とし統一が可能であると思う。②表の乾電池と蛍光灯だが、分別している市町村も資源ごみの袋に別梱包でまとめる程度で、分別量や再資源化のコスト等が不明である。分別収集のコストと啓蒙の観点を鑑みると要所にポストを設置する「拠点回収」がベストではないかと考える。資源プラについては、2010年度のレポートで検証したとおりその種類ごとに(PP、PE、PS、PVC等)分別しなければいけないため、リサイクルに出す側としては困難である。食品トレーにのみ分別・収集を特化することも可能だが、スーパー等で拠点回収している事例もあり重複の可能性もある。さらに、塩化ビニル系の廃プラは燃やすと有毒ガスを発生する可能性もあり、より問題を複雑化させている。廃プラの燃料化としての潜在熱量は大きいので、排ガスのダイオキシン除去が可能で、ごみ発電の可能な焼却施設ならあえて分別せず可燃ごみ化する方法もある。古布は、綿製品はウェスとして産業現場の油拭き取り用として活用されている部分と、リサイクル業者の視察・聞き取りから全体を再分別して古着として輸出できる需要があるそうだ。しかし、有効利用化するコストとその需要は社会情勢に依存しており、販路が安定していないようだ。また、古着の輸出に公共団体がかかわって良いのか?という倫理面でも課題と思う。

5. 政策提言

 これまでの調査・研究の集大成として、ごみの分別について政策提言を行いたい。

(1) ごみ焼却施設の高機能化の手法として、広域的処理を推進する。

 実際に、「別府・杵築・日出」地区は広域圏として運営し、ごみ焼却施設の更新も推進している。また、「宇佐・豊後高田・国東」地区も広域焼却施設の建設更新をめざしているようだ。ごみは、熱量としてはかなり有効なので発電燃料としてリサイクル(サーマルリサイクル)することが望ましい。ただし、排ガス浄化や地球温暖化対策の進んだ最新鋭の施設に更新する必要があり、その維持管理コストもまた莫大なものになる。費用対効果や規模効果をかんがみ、広域的処理場の建設が妥当と考える。

(2) ごみ処理の広域化にともない、分別方法を<ガイドライン>を参考にできるだけ統一・単純化する。

<ガイドライン>
 ごみの分別は、大きく可燃ごみ・不燃ごみ・資源ごみとし、さらに資源ごみとしては、缶・びん・ペットボトル・古紙に大別する。また、乾電池・蛍光灯は本庁舎・支所・公民館等に拠点回収ボックスを設置し分別回収の意義を啓蒙する。生ごみはコンポスト化や生ごみ処理機の普及をはかり、できるだけ有効利用を促進する。民間の食品トレー回収や子ども会の古着回収等の情報を共有・発信し、分別収集に協力する。自治体独自の政策による分別の高度化は、決してこれを否定するものではなく、付加価値の創造だと認識・啓蒙する。地方公共団体のライフラインに携わる部門は、住民の目線にたった行政課題の最前線だと考える。今回のレポートにより、5年間の調査研究に一応の区切りをつけたいと思うが、この間、環境自治体部会の参加メンバーや自治体のごみ問題にかかわる職員の皆様に、多大なるご協力をいただいた事に感謝する。