【自主レポート】

第34回兵庫自治研集会
第13分科会 地域での再生可能な自然エネルギーを考える

 日田市職労では、「さようなら原発」署名活動のほか、地域に根ざす一事業者としての取り組みとして、環境美化ボランティア活動なども行っています。日田市職労が「一市民」として、環境保全活動に積極的に参加し、地域の環境を守る取り組みを紹介します。



市民協働による環境保全への取り組みについて


大分県本部/日田市職員労働組合 加藤  勝

1. これまでの経過

(1) 日田市環境基本計画の策定
 地球環境問題への対応をはかるための施策および地域の自然的・社会的条件に応じた施策を策定することを目的として、日田市では平成13年3月に日田市環境基本計画(以下、「基本計画」と表記)を策定しました。
 基本計画には、計画を市民・事業者・行政が協働で推進することが明記され、協働を促進するための施策の一つとして「ひた市民環境会議」(以下、「市民環境会議」と表記)の創設が掲げられました。

(2) ひた市民環境会議の設立
 基本計画策定を受けて、日田市では平成13年12月に「市民環境会議」を設立しました。
 市民環境会議設立の趣旨等については、以下のとおりです。


●資料① ひた市民環境会議設立趣旨(設立大会呼びかけのチラシから抜粋)

 地球規模になっている環境問題を克服していくには、市民・事業者・行政が対等の立場で意見を交わし、共通の目標に向け、各々の役割を明らかにして行動していかなければなりません。
 ひた市民環境会議は、より良い環境を将来世代に引き継ぐため、みんなが一緒になって考え、行動していくための会議です。身近な課題から地球規模の問題まで、現状の把握と解決の方向を一緒に考え、できることから着実に行動していきましょう。そして、一人でも多くの方がこの会議に参加し、環境を守る行動が市民運動として広がることを期待しています。

≪日田市環境基本計画の目標とする環境像≫
「人と地球にやさしい環境共生都市 ~水と緑あふれる安らぎのまち ひた~」
の実現を目指します。


●資料② ひた市民環境会議の活動内容(ひた市民環境会議会則 第2条抜粋)
(活 動)
第2条 ひた市民環境会議は、前条の目的を達成するため次の活動を行う。
(1) 日田市環境基本計画の進行管理に関すること
(2) 具体的な環境保全活動の企画・実践および支援
(3) 環境に配慮した市民行動普及のための情報交流および広報
(4) 日田エコロジーセンターに関すること
(5) その他ひた市民環境会議の目的に沿った活動

●資料③ 設立大会までの経過
① 平成13年11月12日(月)
 (内容) ・幹事会による会議立上げ(設立内容)の決定
      ・会議参加の呼びかけ方法について検討
② 平成13年11月12日~12月11日
 (内容) ・広報12月1日号、チラシ等を用いて設立大会及び会議への参加を呼びかけ
③ 平成13年12月11日(火)「ひた市民環境会議」設立大会
 (内容) 場所:市役所7階大会議室  時間:午後7時より
      ・記念講演「環境市民運動について(経験談)」 片山純子氏(1時間)
      ・市長あいさつ
      ・会議の設立趣旨と活動、ワーキングチーム等の説明
     ※設立と同時に第1回企画運営会議を開催し、以下を審議。
      ・会長、副会長、会則、今後の方針などを決定
      ・参加及び希望部会の把握

●資料④ ひた市民環境会議設立趣意書
 21世紀は地球環境時代。私たちはあらゆる活動場面で、「環境」のことを考えなければならない、もはや待ったなしの時期にきています。環境問題が私たちの日常生活や事業活動に起因している以上、従来の意識とライフスタイル、そして社会のシステムを変えていかなければなりません。
 水と緑に恵まれたここ日田市において、このかけがえのない地球を未来の子どもたちに残すため、私たち、市民・事業者・行政がともに手を取り合いながら、活動をはじめます。一人ひとりができることはささやかでありますが、力をあわせることにより、確かな一歩を踏み出します。
平成13年12月11日

(3) 設立後の取り組み
 まず、会議全体を統括していくための組織である「企画運営会議」が設置されました。
 企画運営会議の役割は、① 具体的環境保全活動計画の取りまとめ ② ワーキングチームの設置及び運営に関する調整 ③ 市民、事業者、各種団体への広報及び情報の収集・提供 ④ 年次活動報告の取りまとめ ⑤ その他ひた市民環境会議に関する事項の立案などとなっています。
 また、企画運営会議の下に「エネルギー部会」「水と森部会」「ごみ・リサイクル部会」「まち・景観部会」という4つの部会が配置され、それぞれの部会が受け持つジャンルの環境保全活動を行うこととなりました。


●図① ひた市民環境会議組織図 ※平成24年4月現在のもの(現在、3部会)

 各部会では、年度当初に年間スケジュールを決定します。毎月1回行われる定例会では、年間スケジュールに基づく活動内容の具現化にむけた方策等について議論するとともに、部会員それぞれが旬な情報を持ち寄って情報交換を行い、環境保全に関する知識の習得に努めています。
 定例会を踏まえ、各部会では以下のような活動を行っています。


●資料⑤ ひた市民環境会議の活動状況(平成22年度版「日田市環境白書」抜粋)
【資料⑤-1 活動状況】
《エネルギー部会》
・自然エネルギー適地調査(小水力発電現地調査)
・自然エネルギーの適地探しに向けた情報提供の依頼活動(公民館に下記チラシを設置)
《リサイクル・景観部会》
・ひろえば街が好きになる運動
・放生会期間中のポイ捨て防止啓発活動
《水と森部会》
・川の通信簿(国交省との水質調査) ・広葉樹自然の森林づくりプロジェクト
・水生生物調査 ・ホタル調査 ・「えひめAI」水質浄化実験 ・大山ダム見学会 他

【資料⑤-2 市民環境講座(平成22年度 ひた市民環境会議主催)】
第1講(リサイクル・景観部会担当:H22.9.8)
講 師:ひた市民環境会議
    リサイクル・景観部会 梶原償子 氏
内 容:「エコクッキング」
第2講(エネルギー部会担当:H22.11.26)
講 師:各自然エネルギー施設の職員
内 容:自然エネルギー現地見学会
 
第3講(水と森部会担当:H23.3.9)
講 師:ひた市民環境会議
    水と森部会 財津忠幸 氏
内 容:「よみがえれ 水郷ひたの清流」
    下筌・松原ダム、大山川ダム、
    九電日田電力所、高瀬川ダム、
    柳又発電所、三隈川 見学会

【参加者数】
【市民環境講座の受講者数の推移】
講 座 参加者数
第1講
11人
第2講
23人
第3講
29人
合 計
63人
* 平成19年度以降は、年間を通じた受講生を募集せず、講座ごとに募集。
* 平成22年度は、講演会等ではなくフィールドワーク的な講座を実施。
《その他の活動》
企画運営会議(計7回開催)、環境パネル展(3月22日~25日)、総会(3月23日)ほか

2. 現状と課題

(1) 行政としての関わり方
 市民環境会議は、基本計画の目標とする環境像の実現にむけて市民の先頭に立ち、環境保全活動を全市的に広げていくための行動をすすめていく組織です。
 しかしながら、実際の会議の運営においては、基本計画との関わりをあまり意識することなくすすめられてきたことから、その位置づけが曖昧なままでした。
 平成22年から第2次日田市環境基本計画(以下、「第2次基本計画」と表記)の策定にむけて事務局(環境課)と市民環境会議で様々な議論が交わされましたが、その中では事務局に対して「自分たちは、ここで環境保全活動をやらなくても、それぞれの環境団体で活動している。市民環境会議としての役割が分からない」などの厳しい意見が出されました。
 確かに、市民環境会議からの意見のとおり、この時点ではまだ市民環境会議としての明確な位置づけがなされておらず、事務局としても会議の運営に苦慮していました。このため、第2次基本計画の策定と併せて、市民環境会議の位置づけ等を明確にしていくことが必要な状況となっていました。

(2) 会員数の減少
 平成13年12月に設立された当時は、数百人の参加があったといわれる市民環境会議も、現時点では40人程度まで減少しました。また、設立当初から会議に参加する会員がほとんどを占めており、新規会員の入会があまりないというのが現状です。会員の高齢化も進んでいることから、新規会員の獲得により会議全体としての若返りをはかっていくことも必要とされています。
 さらには、会員のほとんどが環境保全に対する知識に専門性を有しており、一般の市民に比べて環境保全に対する意識も高くなっています。このため、新規会員が入会しても、各部会での議論に着いて行くことができず、楽しみややりがいを見つけることができないまま退会していく方も多くいました。このようなことから、新規会員を獲得すると同時に、会議としての運営方法についても見直していくことが必要とされていました。


3. 今後の方向性

(1) 市民の自主行動計画の策定
 先に述べた課題に対応するため、日田市では第2次基本計画において行政と市民環境会議の位置づけ、役割、立場等について明確にしていくことを打ち出しました。
 そして、そのための具体的な施策として「市民の自主行動計画」の策定を掲げました。環境先進市においては、積極的に進められている取り組みの一つであり、その例としては京都市の「京のアジェンダ21行動計画」や高槻市の「たかつきアジェンダ21」などが挙げられます。
 地球規模や地域における環境問題を引き起こしているのが、一人ひとりの人間であるとするならば、環境保全活動を全市的なものとして広げていくために市民との協働を促進することは「必須条件」であるといえます。
 このため、「市民の自主行動計画」を策定することによって、環境基本計画との関わりや市民・事業者・行政の役割をより明確にするとともに、このような「足元固め」を踏まえて新規会員の獲得にむけた活動を促進し、市民との協働による環境保全活動への取り組みをより一層充実させていくこととしています。


4. 日田市職労としての環境保全活動への関わり

(1) 原発問題・エネルギー問題を踏まえた世論形成
 日田市職労においては、県本部の方針を踏まえて「さようなら原発 1000万人アクション」に参加し、署名行動に取り組んできました。日田地区における獲得目標は18,000筆とされ、そのうち日田市職労に割り当てられた署名数は12,000筆となりました。特に、今回の署名行動においては、その重要性を鑑みて「署名をお願いする方に理解いただいた上での署名」を行動の基礎として取り組むことが必要となっていました。取り組みの方法としては、①組合員一人に対し10筆の獲得を要請 ②執行委員等による訪問や街頭での署名行動を行っていくこととしました。
 最終的に獲得した筆数は、およそ9,000筆と目標の達成には及びませんでしたが、交渉など組合としての行事を除くほとんどを署名活動に費やし、目標の達成に努めてきました。取り組みをすすめる中で、市民からは多くの激励をいただくと同時に、「原発は必要であり署名はできない」などの厳しい意見もいただきました。
 このような中、日田市として目標署名数に近い署名数を獲得できたことも成果の一つではありますが、取り組みをすすめていく過程で、署名をお願いする際に市民と様々な議論を交わし原発のことを考える機会を提供できたことも大きな成果であるといえます。

(2) 地域に定住する一市民としての環境保全活動への積極的な参加
 日田市職労では、先に述べた署名活動のほか、地域に根ざす一事業者としての取り組みとして、環境美化ボランティア活動なども行っています。
 このように、日田市職労も「一市民」として、環境保全活動に積極的に参加し、地域の環境を守る取り組みをすすめています。


5. 総 括

 組合活動においては、自らの勤務労働条件の向上をはかると同時に、地域の事業者や市民と共生し、安心・安全で快適な社会の形成にむけ取り組んでいくことも必要です。また、さようなら原発1000万人署名行動の取り組みに象徴されるように、市民が地域の環境について考える機会を提供していく意味でも、今後も日田市職労においては、その時代の社会の実情を踏まえ、環境自治体の形成にむけた取り組みを積極的にすすめていきます。