【自主レポート】

第34回兵庫自治研集会
第13分科会 地域で再生可能な自然エネルギーを考える

 職場環境の改善から始まった、役場庁舎における「グリーンカーテン」設置の取り組み報告。



試行錯誤のグリーンカーテンづくり


大分県本部/玖珠町職員労働組合 柴田 公博

1. はじめに

 このレポートは、玖珠町役場の庁舎北側西面のグリーンカーテンの歴史を極々かいつまんでまとめたものです。基本的にはすべてがノンフィクションですが、文章の流れから一部において「捏造」、「脚色」、さらには「私見」がプラスされている個所も散見されます。悪意があるものではありませんので、あらかじめご了承願います。
 「環境自治体」の分科会で発表することになりましたが、当初は、そんなたいそうな思いがあったわけでもなく、ただただ夏場の西日の暑さをどうにかしたいとの“欲”から生まれたもの(?)です。このような発表でよいのか少し疑問に思うところでありますが、ひとつの事例としてお聞きください。


2. 農林業振興課というところ
資料1 玖珠町役場平面図

 私が勤務する、玖珠町役場農林業振興課のフロアは、L字の形をした庁舎の北側西面に位置しています。階は1階です。
 この農林業振興課のフロアは、夏季は西に傾いた太陽が窓をカンカンに照り付け、意欲減退を招く状態になってしまいます。特にここ数年、県内で暑くて有名な日田市や大分市犬飼町などを抑え、堂々の県内一暑い日、さらには日本一暑い日を何回も迎えてしまうほどの“パネ~(半端じゃない)”暑さ振り。できることなら現場へ出かけ、道中の車内クーラーを顔いっぱいに浴びたいと思うほど。ちなみに私は、その日の天気予報の最高気温予想などを見ながら着替えのシャツとタオルの枚数を調整しています。また、冬季は冬季でご案内にもれず、大分でも有数の極寒の地。玖珠らしさ全開の非常に寒い土地柄。北川西面のこのフロアは、放射冷却の煽りを午前中いっぱい受け、太陽光線を浴びた庁舎がようやく温もり始めた正午頃からやっと手足のかじかみが止まる環境。この農林業振興課に異動してきて30年くらい忘れていた「霜焼け」になってしまう有り様。
 地球が太陽系の惑星のひとつで、太陽の圧倒的な恩恵を受けいていることが再確認でき、四季の移り変わりを感じることができる、ある意味で“当たり前”な職場環境に農林業振興課はあります。これが、玖珠町役場農林業振興課というところです。


3. 巷で噂のグリーンカーテン

 玖珠町庁舎は、古式の水冷クーラー設備であるため、夏場の冷房の効きはあまり良くありません。また、先述のような位置に農林業振興課フロアがあること、さらに、西側の窓面の外は50㎝程の花壇を挟み、職員・来庁者駐車場としてアスファルト舗装していることも重なり、輻射熱や車のボディの照り返しなどで、さらなる温度の上昇を招いてしまいます。このような状況を少しでも打破したいと、2007年(平成19年)から西側の窓面の外の花壇に植えられていたツツジなどの低木を引っこ抜き、蔓性植物を新たに植えて“グリーンカーテン”を設置し、夏の暑さ対策に取り組もうということになりました。


4. 実践 グリーンカーテンづくり

 グリーンカーテンづくり元年の2007年(平成19年)。「さて、なにを植えようか?」と話し合われる中、手軽で管理も簡単、さらに日差しを遮る点では抜群な効果を発揮する『アサガオ』にするか、そこは農林課らしいものにしようかという喧々囂々、侃々諤々の議論があったかどうかはわかりませんが、比較的簡単な食をもたらしてくれる作物で蔓の勢いもあるキュウリを植えることにしようと落ち着いたそうです。当時総務課に勤務していた私も、家庭菜園の参考にさせてもらうため農林課の職員に栽培の注意点などを聞いたりしていました。夏場は太陽光線を遮り、昼食時には収穫したキュウリでお腹を満たしたりと、かなりの効果と満足度、達成感を味わうことができたようです。1年目にしては上出来で、来年以降も必ず続けていこうという意識付けができ今日も続いている点で、この年の英断は後世に語り継がれるものがあるのではと感じています。
 翌2008年(平成20年)、人事異動で私は農林課に。メディアでも環境にやさしいグリーンカーテンが話題に上り始めたこの頃、「キュウリの生長より早いゴーヤがいいんじゃない?」という意見が出たことから、ゴーヤがこの年のグリーンカーテンの素材に選ばれました。葉の伸びる勢いは評判通りに凄く、遮光、断熱効果はキュウリ以上であることが確認されました。しかし、その一方で、そのまま収穫して昼食タイムに口へ運ぶという楽しみがなくなったため、昼食時の職員間の会話も半減してしまうなど、別の意味での職場環境へ遺恨を残す結果とになり、翌年以降の課題となりました。
 翌2009年(平成21年)。この年の4月から農林課に別れを告げ、新たに農林業振興課が同じ場所でグリーンカーテンを引き継ぐことになりました(課名変更で人は一人も代わっていませんが……)。世論がグリーンカーテンの話題で持ちきりになってきたこの頃、これまでの2年間の経験を踏まえ、「それぞれの良いところをいただいちゃおう!!」ということでキュウリとゴーヤが植えられることになりました。さらには、見た目の彩を美しくするアサガオも茎間に植えることになりました。アサガオは良く茂るもののキュウリの生長はいまいち。よもやの連作障害?!を起こしたようでした。土づくりが十分でなかったことも起因してか、ウリ科の連続作付に土の方が悲鳴を上げたようです。すぐさま有機物の投入や追肥などを施して、50㎝×6mの畑も元気を取り戻し、夏から秋口までの収穫期には、キュウリ・ゴーヤそれぞれ良く実をつけてくれました。


 

連作障害とは?

同じ場所に同じ作物や同じ種類(科)の作物を連続して栽培することを連作と言い、連作で育成が悪くなったり病気になったりと障害を起こすことを連作障害と言います。その理由として挙げられるのは、
①それぞれの作物によって養分の吸収の強さが違っているので、連作すると特定の養分や微量元素が不足してくる。
②作物の根から分泌される毒物やそれぞれの作物につきやすい特定の病原菌(糸状菌)や線虫(根コブ線虫)の増加で中毒を起こす。
などと言われていますが、私自身専門的なことはよくわかりません。ただ、連作をしない方がよく育つということだけは知っています。


 この2009年、課内を揺るがす大問題が発生してしまいました。「農政係側は十分日影ができていいけど、畜産係、農林土木係の日差し軽減には影響してないぞ」とのこと。もともと、花壇スペースは5mしかなく、西側の壁面の1/3程度しかカバーしていません。そこで、この花壇スペースを延長し、さらなる日よけ面積を拡大させ、職場環境の改善を図り、より効率的なグリーンカーテンつくりを目指そうということになりました。早速、同年末に行われた農林業振興課の組合の分会要求として「夏季の気温上昇による冷房効率のアップと省エネルギー対策が見込めるため」との理由から花壇の増設を要望しました。熱心な日陰要望のおかげか、翌2010年(平成22年)6月25日に花壇増設工事が完了し、より効率的なグリーンカーテン運用がスタートしました。工期が6月末までずれ込んだことから、生長の早いゴーヤ、花壇完成を待って別所で育苗していたキュウリ苗、ミニトマトをすぐさま定植、遮光性の高いアサガオの種を花壇にばらまき、新たな壁面緑化の歴史が幕を開けました。悲しいかな、ばらまきすぎたアサガオの間引きもあまりしなかったため繁茂し、素晴らしい遮光カーテンになった反面、ミニトマトはほとんど実をつけることなく、なぜか、ゴーヤもとばっちりを受けてあまり実をつけずシーズンが終了しました。
 そして今年。2011年(平成23年)は、ヘチマやヒョウタンなど、新たな仲間も加わり、日々生長を続けています。6月20日現在、まだまだグリーンカーテンというレベルまで達していませんが、キュウリ、ミニトマト、ヘチマ、ヒョウタン、アサガオとカーテンの素材も様々。今年も日差しを遮り、収穫の喜びをもたらしてくれる素晴らしいカーテンになってくれることを期待してやみません。
 原稿締切ギリギリの6月30日、悲しいかなミニトマトが全滅してしまいました。推測ですが、水捌けが悪いことによる根腐れを起こしたのではないかと結論付けました。別の農園に植える予定だったポットに育てていたトウモロコシを少し分けてもらって、ミニトマトを引っこ抜いた後に植えることにします。しかし、このトウモロコシも水捌け対策をばっちりしないとけない作物であるので、収穫までこぎつけられるか心配です。

5. これまでの取り組みを通して

 手をかけずに、植物を育てることはやはり難しいもので、水やりの程度や管理方法を間違うと途中で枯れてしまう株もいくつかあります。少なくとも、こまめな草むしりや、害虫の駆除など手をかけた分だけ、成果としてその青々と茂った姿を見せてくれることは間違いないようです。
 早くから、このグリーンカーテンに取り組んできた先進的な自治体や事業所も数多くあります。遅ればせながら、今では、玖珠町役場庁舎の壁面の幾面かでグリーンカーテンが設置されています。単なる日よけならば“よしず”を用いて屋内の室温上昇を抑制することも一つの手だと思います。しかし、地球温暖化問題という大きなテーマで今一度環境を考えた時、一定の時間と労力を要するグリーンカーテンの設置は、電力利用を抑えたCO削減、植物の光合成によるO排出とCO削減、さらには副産物を生み出し食につながるという広い意味での資源循環にもつながり、様々な視点から環境のことを見つめ直せる点で一人一人の意識付けとしては効果の高いものだと感じています。また、始業前、入職1~2年のヤング職員の水やり風景も役場の風物詩となってきています。

 玖珠町内は、ご案内のようにほとんどの土地が林野、田畑などで緑や土が多い郷です。コンクリート造りの建造物等もあまりなく、これまで取り組んできたグリーンカーテンやその背景にある環境問題に関していうと、危機感の薄い地域かもしれません。
 しかし、今後は全庁的、また、あらゆる公共施設、さらには全町民を巻き込んだ運動として、一人ひとりの意識が重要になってくるものと思われます。
 エネルギー問題がいろいろと取りざたされている今日、このような取り組みを一つのきっかけとして、省エネ、エコの輪を一歩一歩広げ、これまでヒトがしてきたエゴも見直せるのではないかと考えているところです。


これまで取り組んだ
  グリーンカーテンの歴史

07 キュウリ    豊作 
08 ゴーヤ     豊作 
09 キュウリ    豊作
  ゴーヤ     良作
  アサガオ    元気
10 キュウリ    豊作
  ゴーヤ     まあまあ
  ミニトマト   まあまあ
  アサガオ    元気
11 キュウリ    ?
  ゴーヤ     ?
  ヒョウタン   ?
  トマト     全滅
  ヘチマ     ?
  トウモロコシ  ?
  シソ      ?
  アサガオ    ?


今年はこれからです