【自主レポート】

第34回兵庫自治研集会
第13分科会 地域で再生可能な自然エネルギーを考える

低炭素社会・循環型社会の実現にむけて


宮崎県本部/五ヶ瀬町役場職員組合

1. はじめに

 私たち五ヶ瀬町自治研推進委員会では、これまで、本町が合併をせず自立する道を選択したことに伴い「自主・自立」をテーマに本来の地方自治のあり方を模索すると共に、今日の社会が生み出した「協働」という地方分権の受け皿づくりから実践の時代へと変革する「地域の力」にクローズアップし、五ヶ瀬町の財政状況を基本として現状を検証、今後の五ヶ瀬ならではの「まちづくり」について、組合主導で地域に一歩踏み出すことを新たな課題と位置づけた取り組みを行ってきた。
 今回は、これまでの取り組みに加え、昨年、本町にて策定された第5次五ヶ瀬町総合計画の重点戦略である「循環型社会・低炭素社会の実現」( 「恵まれた豊富な資源を次代に引き継ぐため、本町の最大の資源である森林資源の適切な管理と環境にやさしい生活・取り組みを実践し、循環型社会・低炭素社会の実現に貢献し、森林や未利用の地域資源を新エネルギーとして活用する可能性を探り、新たなビジネスの創出・地域経済活性化のチャンスとして様々な施策を講じる」というもの)をテーマとし、エネルギー問題に触れ、町の財政分析を基調として組合主導で町民と連携できる省エネ・エコの取り組みや、太陽光や風力・小水力等、再生エネルギーの活用方策等を課題として、取り組んできた活動をここに報告する。

2. 低炭素社会の実現にむけたまちづくり・暮らし

 近年、中山間地域には、食糧・木材の供給、国土保全の場及び下流域への水源かん養の地としての役割はもとより、交通通信網の整備や人々の価値観の多様化を背景に、新しい役割を担う空間としての期待が高まっている。併せて地域に残る美しい自然・空間の価値も見直されてきた。
 本町では比較的自然環境に恵まれているため、環境問題を身近に捉えにくいという状況にある。だが、この自然環境を育て、守り、確実に次世代へと引き継いでいくことが今世代の視点として求められ、自然環境を地域住民が効果的に活用していくことが、新たなビジネスチャンスとして地域の豊かな生活へと繋がるのではないか。「農山村」「過疎」といったマイナスなイメージを逆手にとり、恵まれた自然環境を活用し、総合的な環境基盤整備を進めると共に「新たな暮らし」の視点を加え、五ヶ瀬ならではの活力あるまちづくりとして推進し、低炭素社会の実現にむけた取り組みを発信したいと考える。

(1)  地球温暖化防止
 森林は本町最大の地域資源であり、木材や緑を供給するだけでなく、自然環境の保全、水源のかん養など、多様な機能を有している。低炭素社会への取り組みを通して、地球温暖化の抑制と森林管理を促進するためのシステムを構築、森林施業を計画的に実施するための雇用を確保し、林業経営の安定と後継者の育成、生産性の向上・高付加価値化を推進することが望まれる。
 具体的には、森林の未植栽地の解消を図り、森林を活用したレクリエーション及び体験型観光の推進や、地球温暖化の要因とされるCO削減への取り組みを行っている企業に対して「森づくり」事業等への積極的な誘致・協力を行い、人と自然が共生する森林づくりを進める。また、低炭素社会の構築をめざした環境にやさしい燃料需要の促進・啓発、木質バイオマス等に代表される新たなエネルギーの活用を推進するといったことが考えられる。
 山林・河川の保護及び適切な治山・治水は、自然環境を守ることであり、災害発生の防止、さらには町民の人命と財産を守ることに繋がる。かけがえのない自然環境をはじめとする町土を次世代に引き継ぐため、適切な管理や土地の利用状況の分析を行い長期的視点に立った土地利用を進め、遊休農地や稲作終了後の水田を活用。食やバイオマスの観点でも利用価値が高い菜の花等の植栽をモデル的に実施するなど、町民への啓発を図りつつ景観保全を促進することが必要である。
 なお、前回の自治研では「菜の花」を利用した経費節減や環境の意識を地域住民へ発信し、住民協働の観点から組合員が実際に地域に出向き菜の花を広げていく取り組みを行い、収穫した種を各地域や学校、イベントなどで配布し「菜の花」を住民協働や都市住民との交流等の一つのツールとして活用した経緯がある。こういった地道な活動によって自治研活動を広めていくことも一つの手法であると考える。

(2) 循環型社会
 近年の環境問題は多様化・複雑化しており、ごみ等の身近な問題から、前に記述した地球温暖化やオゾン層の破壊等、地球規模の問題まで広がりをみせている。このことから、資源のリサイクルやエネルギーの有効利用を図るなど、循環型社会の転換にむけた取り組みが求められている。
 本町においては、1995年の容器包装に係る分別収集及び再商品化の促進等に関する法律、いわゆる容器包装リサイクル法の施行に伴い、1997年度から西臼杵郡内において有料ごみ袋と、ステーション化によるごみ収集方式が導入されたこと、加えて1998年の特定家庭用機器再商品化法(以下「家電リサイクル法」という。)の施行により、再資源化の意識が高まり始めている。
 本町における一般廃棄物処理は西臼杵3町で構成する西臼杵郡衛生組合で行っている。現在、分別収集された一般廃棄物のうち燃やせるごみは延岡市クリーンセンターにて焼却処分され、紙、缶、金属及びペットボトルは民間業者、プラスチック容器は民間団体、ビン類は、容器包装リサイクル協会指定業者に引き取られている。過去、すべての一般廃棄物は最終処分場に埋却処分されていたが、現在においては、燃やせるごみと燃やせないごみのうち資源化できないもの以外は、再資源化されている状況にある。
 以上のような分別化の取り組みや家電リサイクル法等の施行、ごみ袋有料化及びごみの減量化の啓発により、一般廃棄物については再資源意識が浸透してきており、ごみの量は減少傾向にある。一方で、一般廃棄物の山林等への不法投棄が後を絶たないことが各地域住民にとっても大きな課題となっている。今後もさらに、ごみの減量化や再資源化への意識の向上をめざし、環境にやさしいまちづくりを進める必要がある。
 本町の再資源化活動の取り組みとしては、地球温暖化防止推進員、くらしのアドバイザー及び社会福祉協議会等を中心として広く一般住民に公募を行い、ダンボールコンポストやEM菌を使用した生ごみの堆肥化に関する研修会を実施している。この取り組みは、住民に広く浸透しつつあり、ごみの減量化はもとより循環型社会への意識啓発に繋がっている。また近年、竹の利用方法として、竹が持つ浄化・殺菌作用の特性を活かした様々な取り組みが研究されている。従来その処理が問題となっていた放置竹林を資源として捉え、粉末加工することで、農作物の肥料・堆肥や家畜の飼料等、幅広い分野への応用が期待されている。
 このように竹の活用をはじめとし、地域資源・農業・畜産・消費・廃棄物を循環させた新たな取り組みについて、様々な方向で模索していく必要がある。
 本町では、庁舎内や公の施設におけるごみの減量化・リサイクル活動の実施を進め、限りある資源を大切に活用するとともに、住民に対し、コンポストや竹粉の活用を通して、再利用・再資源化(ごみの減量やリサイクル)意識の高揚を図り、循環型社会を実現していきたいと考える。

(3) 新エネルギー
 本町は、都市部に比べ家庭で使用される機器類での電気機器の割合が低く、特有の冬場の寒冷な気候による灯油及び重油の消費や、交通手段が自動車主体であることからガソリン及び軽油の消費が高く、石油エネルギーへの依存が大きいという現状がある。
 このことから、本町における低炭素社会を実現するには、冬場の暖房エネルギーを化石燃料から非化石エネルギーへ転換することと、運輸部門における自動車燃料の削減が近道であると思われる。
 現在、本町内の新エネルギーの供給施設は、以前から民家で見られる太陽熱利用による温水施設以外には、全くないのが実情である。町境の山間部において、事業者による風力発電の検討が行われているが、現況では、設置には至っていない。
 本町においても、従来型エネルギーの新しい利用形態と自然エネルギー及びバイオマス等のリサイクルエネルギーを組み合わせた、環境にやさしいエネルギー供給について新たな取り組みが課題となっている。
 本町は、2010年度に地球温暖化防止対策推進法に基づく地域協議会「五ヶ瀬クリーンエネルギー推進協議会」を組織し、薪ストーブの普及を中心に活動を行ってきたが、引き続き本活動を行うと共に、町面積の大部分を占める森林資源を活用し、間伐廃材等を利用した木質バイオマス導入の可能性を探ることも必要である。
 また、本町の気象条件は、九州中央山地に位置し風力を利用した発電について、好条件が整っていることが報告されており、この風力発電の実現にむけての可能性や、水力分野では、事業者が行う大規模な発電とは別に、用水路や小川を利用する小水力発電においては、比較的低コストで設置することができ、土地改良区等と協議を進め、集落単位での設置をめざしていけたらと考える。
 運輸部門の低炭素化を図るためには、公用車の更新時における低燃費車(電気自動車及びハイブリット車)の導入を図るとともに、事業所及び住民に対して、低燃費車の導入促進とあわせて、電気自動車用充電施設の設置促進を図ることも考えられる。
 本町の最大の資源である森林をはじめとして、未利用であった地域資源を新エネルギーとして活用する可能性を探りながら、この取り組みを新たなビジネスの創出と地域経済活性化のチャンスと捉え、まず地域住民の意識の変革を施すことが必要であると考える。

(4) 森林資源等を活用した交流・定住
 近年では、余暇時間を活用した旅行や様々な学習活動など、多様なライフスタイルの選択が可能な環境づくりを進める動きが活性化している。このような個人の志向の変化に応じて、都市から地方へと流れる人の動きを地域資源と組み合わせ活性化に繋げていく必要がある。
 都市住民との交流は中山間地域に新たな活力を生み出す原動力となる一要素であり、交流がもたらす様々な情報は、住民にとって日々生活する場である地域の魅力の再発見に繋がる。
 美しい景観、豊かな自然は先人から守り伝えられた宝であり、次世代に受け継いでいかなければならない。都市住民にとっても自然の魅力や地域住民の温かい心に触れる機会は貴重であり、中山間地に対する理解の深まりが期待でき、現在進めている夕日の里づくり(五ヶ瀬版グリーンツーリズム)や総合公園Gパーク、五ヶ瀬ハイランドスキー場への合宿誘致と森林資源の活用を組み合わせた新たな施策は、地域経済への波及効果をもたらすものと思われる。これらの取り組みについては、住民自身が積極的に地域をアピールすることにより地域づくりに誇りを持てるよう実践していくことが重要と考える。
 また、そういった取り組みにより農林業の振興、商工業の活性化、観光による地域経済への波及効果が望まれ、雇用の場の創出を図ると共に、人口流出に歯止めをかけたいと考える。これまでの定住者を確保する視点に加え、多様なライフスタイルを求める都市住民やU・I・Jターン者の増加を念頭に、環境分野と融合した新たな定住促進を図ることも必要である。

3. まとめ

 昨年3月の東日本大震災。東京電力福島第一原発は制御不能、1号炉から3号炉までが炉心溶解(メルトダウン)する最悪の状況が発生、高濃度の放射性物質が放出され、平穏な暮らしが奪われる状況に陥り「核と人類は共存できない」ことが明確になった。
 わたしたち五ヶ瀬町職労においても、これまでも「反核」「脱原発」の取り組みを行ってきたが、福島第一原発の事故により、より一層強めていく必要性を感じた。しかしながら一方で「脱原発」の世界的潮流の加速に反し、地球温暖化対策の手段として意図的に原発に焦点を当てようとする動きや「計画停電」などのように「エネルギー危機」を前面に出して原発の存続を図ろうとする動きが依然としてある。
 五ヶ瀬町自治研推進委員会では、そういった動きに反するべく、原発に変わる総合エネルギー政策の確立による脱原発社会をめざし、環境にやさしい太陽熱、風力発電等の自然エネルギーへの転換にむけ、今回のテーマを「低炭素社会・循環型社会の実現」とし、研究を進めたところである。
 本町においては、用水路や小河川からの小水力発電、豊かな森林資源からの木質バイオマス活用、太陽光及び太陽熱の活用といった再生可能エネルギーの利用が見込める環境に恵まれている。
 しかしながら、本町の持つ再生可能エネルギーのポテンシャルはまだ十分に生かされておらず、低炭素社会を実現するためには、従来の化石燃料を前提とした社会基盤や暮らし方から、このような再生可能エネルギーを利用した社会基盤の構築や暮らしへと変革させることが必要である。
 その為の最重要課題が町民の意識改革である。循環型・低炭素社会の実現には、主役となる町民自身が、その意義を理解し、楽しみながら生活の質そのものを高めていく仕組みづくりが重要と考える。
 私たちは自治研の視点から町の財政分析を行い、本町を取り巻く情勢の厳しさを実感し、大きな資金を投入することなく組合主導で町民と連携してできる省エネ・エコの取り組みの提案を行うべく活動を行ってきた。
 CO排出量の約半分を占めるガソリン車のエコドライブの徹底等、身近に実践できる取り組みを推進し、あわせて、町民全体で支えていく新しい環境型サービスなどの導入の研究等、新規雇用創出も視野に入れ展開したいと考える。
 また、未来にむけたまちづくりそのものを、子どもたちが自ら体験し、教材として使用する環境教育(エネルギー教育)を推進していくことも必要である。
 全国で展開されているエコタウンの多くは、自然を守るために新たな施策を導入するという“環境”保護に比重が置かれている。本町の取り組みは、“環境”を経済資源として捉え、町民が共存してきた自然と先端テクノロジーを町民視点で融合させていくことで、その独創性、先進性を引き出し、そして、なによりも町民ひとりひとりが、未来のまちづくりの方向性に共感し、楽しみながら推進していきたいと考える。
 おわりに、低炭素社会・循環型社会をめざしたこの取り組みもまだ始まったばかりである。私たちの取り組み結果を当局へ提案しながら、引き続き計画の検証を行うとともにこれまで自治研で取り組んできた実績を生かしつつ、低炭素社会・循環型社会の実現にむけて町民とともに今後も活動を継続していきたい。