【自主レポート】 |
第36回宮城自治研集会 第1分科会 ~生きる~「いのち」を育む・いかす、支えあう |
近年注目されることが多くなったLGBTと言われる性的マイノリティへの支援や施策。その問題は外国や都市部だけのものでしょうか。福井県越前市に飛び込み、活動して感じたことについて報告します。 |
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1. はじめに
越前市は福井県のほぼ中央に位置し、市域面積は230.70km2です。人口は約83,000人で、世帯数は約29,000世帯です。越前と言えば越前ガニを思い浮かべる人が多いかと思いますが、越前市は海に面していないので、カニはとれません。越前和紙、越前打刃物や越前箪笥などの伝統産業が盛んです。また、大根おろしがたっぷりのった越前おろしそば、食べるとほっとする中華そば、オムライスの上にトンカツがのったボリューム満点のボルガライスが越前市3大グルメとして知られています。
LGBTはこれら4つの頭文字をとった言葉ですが、一般的にはこれら4つのカテゴリーに限定しない多様な性的指向(性的魅力を感じる性別)と性自認(自分の性別に対するイメージ)のあり方を表すために用いられます。(LGBTと医療福祉<改訂版>より) LGBTは性的マイノリティやセクシャルマイノリティと表現されることもあります。 20人から30人に1人はLGBTだと言われています。 |
2. LGBTを取り巻く環境
LGBTを取り巻く環境は2015年を境に大きく変化したように感じます。アメリカでは州ごとに同性婚の可否が決まっていました。2015年6月26日に、アメリカの連邦最高裁判所は「法の下の平等」を根拠に同性婚を合憲とする判断を下し、全米で同性婚が認められることとなりました。それを祝福してアメリカの大統領官邸のホワイトハウスやFacebook、twitterなどLGBTのシンボルである虹色に染まりました。
パートナーシップ制度が始まり、恩恵を受けるのは大人の同性カップルだけではありません。 越前市役所IJU課が行ったアンケート調査(※後述)によると、LGBTの約6割は中学生までの時期に自分がLGBTだと自覚しています。トランスジェンダーに限って見ると半数は小学生までに自覚します。自覚しても、LGBTに関する知識は学校で教わることはなく、テレビや周りからの情報では存在しない、普通じゃないという誤った情報が多く、ポジティブな情報を得られず、自己肯定感が育ちません。 宝塚大学の日高庸晴氏らによる調査では、ゲイ、バイセクシュアルの男性の場合、65%が自殺を考えたことがあり、15%が実際に自殺未遂を経験していることが分かっています。自殺リスクも高いLGBTにとって、正しく、肯定的な情報を得ることが重要です。 もちろん、自治体で取り組んでいることは、パートナーシップ制度だけではありません。1つ例を挙げると、大阪市淀川区は2013年にLGBT支援宣言を出し、電話相談やコミュニティスペースの運営、啓発冊子の作成などを行っています。行政が主体となって取り組むことで、運営主体が明確で安心感があり、自助グループにアクセスできなかった人たちがアクセスできたそうです。区の広報紙や区内の掲示板にLGBTについてのものを掲載することで、区民の認知も格段に上がってきています。淀川区以外にも、電話等で相談事業を行う自治体や、啓発活動に取り組む自治体も増えています。 また、自治体だけでなく、学校で取り組む事例もあります。文部科学省の人権教育研究指定を受けた愛媛県西条市の丹原東中学校はLGBTをテーマに取り組みを行っています。全生徒がLGBTについて学習し、生徒自ら新入生へ説明したり、地区の公民館でお年寄りに学習内容を発表したりしています。先進校の生徒として、学んだことを周りに広げていかなければならない立場だと自覚する生徒が増えたそうです。 LGBTは一人じゃない、みんなが当たり前に存在して良いのだ、ということを行政が発信することの重要性と、行政以外でも取り組みは進めていくことができ、取り組みの広がりの可能性を感じます。 |
3. 越前市での取り組み 誰も知り合いの居ない土地で、1からLGBTの取り組みを始めることは容易なことではありませんでした。LGBTや、セクシャルマイノリティという言葉を知る市の職員も多くはありませんでした。「福井は保守的だから理解は得られなさそう」という声や、「そういうのは都会の話で、福井にはLGBTは居ない」という声が当時は多く聞かれました。不安もある中での初めの一歩は、NPO法人丹南市民自治研究センターでの取り組みでした。
(1) NPO法人丹南市民自治研究センターでの取り組み
(2) アライ(ALLY/LGBTの理解者、支援者の意味)を増やす活動
(3) 越前市役所IJU課での取り組み
アンケートの結果 「当事者が行政に取り組んでもらいたいこと」のアンケートの結果をご紹介します。市民の生活を支える行政職員、子どもたちに身近な教員がLGBTの知識をもつための研修が多数の回答を得られました。次にパートナーシップ制度の整備が続きました。 コミュニティスペースについては、行政が運営することで運営主体が明確になり、安心して誰でも利用できる場が提供できるという声も聞かれました。 今回のアンケート結果から、学校でLGBTに関する正しい知識を教えること、安心して相談できる場を作ること、行政のサポートが求められていることが分かりました。
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4. 市議会での一般質問 2016年6月には、越前市議会定例会で越前市初のLGBTの一般質問が行われました。丹南自治研センターの代表でもある三田村輝士議員が質問を行いました。人権尊重の取り組みの推進として、LGBTの正しい知識の普及と啓発、相談・支援窓口の設置、学校現場におけるLGBTの正しい知識の普及と相談体制の充実について、市の取り組みや方針について質問しました。この一般質問をきっかけに、越前市や福井県内での取り組みがいっそう充実することを期待します。 |
5. おわりに
越前市に来て3年目になりますが、着実にLGBTの活動を広げられていると感じます。地方でも活動できる、理解は広げられるのです。 |