【自主レポート】 |
第36回宮城自治研集会 第1分科会 ~生きる~「いのち」を育む・いかす、支えあう |
格差社会の拡がりとともに「官製ワーキングプア」が増えているといわれる昨今、私たちの身近なところで、官製ワーキングプアといわれる状態で苦しんで働く仲間がどれほどいるのでしょうか。本レポートでは官製ワーキングプアといわれる労働者、とりわけ非正規公務員(臨時・非常勤等の公務員)に焦点を当て、官製ワーキングプアを解消し、よりよい公共サービスを提供するための提起を行います。 |
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1. はじめに
地方自治研究としてこのテーマを取り組むことになった私たちは、あらためて、「格差社会」とは、「官製ワーキングプア」とは何であるか、という議論から始めた。私たちの身近なところで、官製ワーキングプアといわれる状態で苦しんでいる働く仲間がいるのだろうか。 |
2. 格差社会とは
近年、日本の中で「格差社会」及び「格差拡大」について議論となっているのは、主に「経済」、「教育」、「社会的地位」といった分野である。 |
3. 官製ワーキングプアとは
日本でワーキングプアという言葉が頻繁に唱えられるようになったのは、先に述べた若年層の所得格差拡大が顕著になってきた1990年代からである。 |
4. 身の回りでの官製ワーキングプアの実態
では、私たち公務職場で働く臨時・非常勤職員の中に、ワーキングプアとして当てはまる実態はあるのだろうか。2009年の自治労の調査(自治研作業委員会「臨時・非常勤等職員の実態調査報告完全版」)では、公務職場で働く臨時・非常勤職員は全国に約60万人いるとされている。任用期間や勤務時間等の違いの点で、三重県内の自治体に雇用されている非正規職員の人数が把握しづらいところであるが、およそ10,000人と推測される。 イ 20代 315人 ウ 30代 345人 エ 40代 506人 オ 50代 605人 カ 60代以上 416人 無回答 5人 ③ 性別 ア 男性 341人 イ 女性 1,848人 無回答 11人 ④ 勤務年数 ア 1年未満 379人 イ 1年以上3年未満 444人 ウ 3年以上5年未満 302人 エ 5年以上10年未満 577人 オ 10年以上 474人 法令で「六月をこえない期間で臨時的任用を行うことができる。」とされつつも同じ職場で引き続き働いている実態を見てみると、上記のとおりであった。自由記入欄の記述を見ると、10年以上、キャリアを積み戦力として必要とされているにもかかわらず、賃金に反映されていないことが読み取れる。勤続年数により上乗せがある自治体もあるが、格差を埋めるには至っていないようである。 次に、賃金の実態についてであるが、月平均で13万円以上16万円未満の割合が最も多く、一般的に生活最低年収と言われる200万円のラインに達していない人は8割にものぼっている。但しこれらには、家族の生計を担う人、そうでない人が混在するため、ワーキングプアという定義に当てはまる実態について、のちほどもう少し詳しく検証していく。 ⑤ 賃金(月平均) 10万円未満 102人 10万円以上13万円未満 541人 13万円以上16万円未満 804人 16万円以上20万円未満 419人 20万円以上 98人 月収166,666円未満(年収換算200万円)の割合 ところで、これらの回答者のうち、現在の仕事に対する満足度はどうであろうか。 ⑥ 今の仕事に満足していますか。 はい 1,033人 いいえ 1,167人 ⑦ 今の仕事に満足していると答えた理由は?(複数回答可) 収入面に満足している 112人 業務内容に満足している 772人 その他 178人 収入面に不満がある 952人 業務内容に不満がある 293人 雇用条件が不安定である 438人 勤務時間に不満がある 99人 その他 93人 さらに、今の仕事に満足していないと答えた1,167人に質問を行った。 ⑨ あなたは主に生計を担っていますか。 はい 366人 いいえ 702人 無回答 99人 また、今の仕事に満足していない、かつ生計を担っていると答えた366人に質問した。 ⑩ 現在の働き方で生計を担っていけるか? 生計を立てるにあたり不自由はない 10人 生計を立てるにあたり不自由ではないが将来的に不安 160人 生計を立てるにあたり困難な状況である 136人 その他 13人 無回答 37人 雇用条件について満足していない1,167人のうち、生計を担っていると答えた人は366人おり、この中で、「現在生計を立てるのが困難」と答えた人は136人存在した。 今回のレポートで「官製ワーキングプア」と位置づけられる136人の内訳は、次のとおりであった。また、将来的な官製ワーキングプア予備軍として、生計を担っている366人のうち、「生計を立てるのに将来的に不安」と答えた人が160人いることも注視する必要がある。 性 別
年 齢
職 種
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5. 臨時・非常勤職員の皆さんの声
今回のアンケートの自由記入欄には、想像以上に多くの記述をいただいた。アンケートの回答内容如何にかかわらず、圧倒的に多かった意見は「正規職員と仕事内容が同じであるのに賃金格差がある」というものであった。同様に「少しでもいいからボーナスがほしい」という意見もあったが、一時金が支給されれば問題が解決するものではなく、通常の給与に満足出来ていない表れであると考える。 |
6. 「正規公務員定数削減」と「不足する労働力の確保」の両立
自治体職員の人員削減や業務内容・職員配置の見直しについて、議会や労働組合との折衝を行ってきた各自治体の人事担当部署の苦悩は並々ならぬものがあったに違いない。 |
7. 官製ワーキングプアを生み出さないために
新たな官製ワーキングプアを創り出さないためには、何をどう取り組んでいくべきなのであろうか。 |
8. おわりに
格差是正と一口に言うのは簡単であるが、事実、格差のない社会は存在し得ない。問題は格差を埋める方法、不公平をどれだけ公平にできるかである。 |