【自主レポート】

第36回宮城自治研集会
第1分科会 ~生きる~「いのち」を育む・いかす、支えあう

京都府の労働相談から見える問題


京都府本部/自治労京都府関係職員労働組合 東  明子

1. 京都府内の労働相談

国、京都府、労働組合等で実施

(1) 国(京都労働局、各労働基準監督署)
 「個別労働関係紛争の解決に関する法律」に基づき実施
 同法に基づき、「あっせん」、当事者に対する「助言及び指導」も行う
 「あっせん」とは……紛争当事者間の調整を行い、話合いを促進することにより、紛争の円満な解決を図る制度

(2) 京都府(京都テルサ内の「京都中小企業労働相談所」で実施)
「個別労働関係紛争の解決に関する法律」第20条第1項
 地方公共団体は、国の施策と相まって、当該地域の実情に応じ、個別労働関係紛争を未然に防止し、及び個別労働関係紛争の自主的な解決を促進するため、労働者、求職者又は事業主に対する情報の提供、相談、あっせんその他の必要な施策を推進するように努めるものとする。

●京都府が実施する労働相談は「働くことに関することであれば何でも受け付け」
たとえば
・「委託契約」であっても、実態として労働者であれば相談を受ける。労働者でない場合も、相談機関を紹介。
・労働相談に付随する生活相談についても、関係機関を紹介。 
・「ちょっとした職場の人間関係」の問題もお聞きし可能な範囲でアドバイス


2. 京都府が実施する労働相談

表1 京都府が実施する労働相談と相談件数の推移
(件)
相談件数 2012年度 2013年度 2014年度 2015年度
一般の労働相談 1,757 1,876 1,790 1,832
非正規労働ほっとライン
(土曜日 9:00~17:00)
322 317 399 449
若者等労働ホットライン
(月~金 17:00~21:00)
65 112 687
相談件数合計 2,079 2,258 2,301 2,968
前年度増減 20.2% 8.6% 1.9% 29.0%

相談件数は2012年度のほぼ1.4倍

(1) 一般労働相談(京都府嘱託職員による相談)
 2012年度から2人体制

(2) 非正規労働ほっとライン(社会保険労務士による相談)
 土曜日の相談 2008年度から実施

(3) 若者等労働ホットライン(社会保険労務士による相談)
 夜間相談 2015年度から、実施日を拡充(金のみ→月~金)

(4) 特別労働相談(弁護士による相談)

(5) 働く人のためのメンタルヘルス相談(産業カウンセラーによる相談)
 2010年度から


3. 雇用形態別の労働相談件数

表2 雇用形態別相談件数の推移

(1) 正規労働者からの相談
 相談全体の約半数
 近年は比率が徐々に減少

(2) 非正規労働者からの相談
 相談全体の38%
 前年度の1.5倍
 特にパート労働者、契約労働者からの相談は70%以上の増加

(3) 使用者からの相談
 2.5% 
 周知が課題?

(4) 「その他」の相談者
 契約の形式は請負など、労働契約ではないものの、実際の労働実態は労働者である者など
 どこに相談すればよいかわからない方も多いのではないか。


4. 労働相談の内容別件数

表3 相談内容別件数の推移

※相談内容別件数については、1件の相談で複数の相談内容がある場合があるため相談件数と一致しない。

(1) 近年の特徴
1位 勤労者福祉   618件
・社会保険労務士の相談枠の拡大、社会保険の適用拡大、会社に相談しにくい
2位 人間関係    599件
・パワーハラスメント(パワハラかどうか不明、加害者にされた 等を含む)
3位 退職・退職金  578件
・人手不足を背景とする
   「辞めさせてもらえない」「どうすれば辞められるか」
4位 賃 金     569件
 ・賃金未払い、残業代未払い(定額残業代を含む)、一方的な減額、最低賃金
5位 労働時間・休日 566件
 ・年次有給休暇を取得できない(ないと言われた)、労働時間管理が曖昧

(2) 雇用形態別の相談内容

表4 雇用形態別相談内容
正規労働者からの相談
2015年度2014年度
順 位 相談内容 件 数 相談内容 件 数
退職・退職金333 退職・退職金295
勤労者福祉316 労働時間、休日267
労働時間、休日305 賃 金262
賃 金301 勤労者福祉253
人間関係282 人間関係237

非正規労働者からの相談
2015年度2014年度
順 位 相談内容 件 数 相談内容 件 数
人間関係265 労働契約207
労働契約243 賃 金148
勤労者福祉225 勤労者福祉139
労働時間、休日208 人間関係129
退職・退職金206 退職・退職金127

【正規労働者からの相談の特徴】
・退職手続きに関する相談が多い。
 退職届を受け取ってもらえない。辞めたら損害賠償請求すると脅された。等
・勤労者福祉に関する相談のほとんどが労働保険・社会保険
 雇用保険及び社会保険(傷病手当金等)の受給、労災申請に関すること 等
・労働時間の管理がされていない。
 裁量労働制など、非定型的な労働時間制度を導入している場合、使用者が労働時間管理の必要性を認識していないケースもある。
・その他の問題
 評価基準が不明確、懲戒処分の手続き等 件数は少ないが深刻な問題も

【非正規労働者からの相談の特徴】
・人間関係に関する相談は幅広い。
 雇用形態に起因する深刻なパワーハラスメントもあれば、職場での人間関係ができないという相談も。人間関係を作りにくいことも一因か。
・労働契約が不明確であることがトラブルに。
 シフトの決め方や契約更新の有無などが曖昧、労働契約書(雇い入れ通知書)がないケース 等  


5. 京都府の労働相談から見えてくる問題

(1) 京都府の労働相談ができること・できないこと
・解決機関ではないので、相談者が問題を解決することができたのか把握できない。
・適切な助言、適切な関係機関への紹介により、相談者自身が解決できるようアドバイス
・関係機関との連携、継続相談により相談者をサポート

(2) どんなアドバイスが最適か
・正確な情報、わかりやすい説明、そのほかに……相談者が「どうしたいのか」を聞き取り、希望に応じた解決方法をアドバイス(まず、傾聴)
・「相談者の希望に添うアドバイス」のみでよいのか?
 一番問題なことに、相談者本人が気づいていない場合もある。たとえば
・相談者が希望を持って職業生活を再びスタートできるために自己尊重感を高められるように相談者をサポート

(3) 労働法の基礎知識は必須
・労働法の基礎的な知識があれば、問題に直面したときに「おかしい」と感じるのではないか。
・少しでも「おかしい」と感じたら、気軽に相談(確認)を。
・そのためには、「労働教育」を。労働教育と労働相談は車の両輪。

☆行政機関で働く皆さんにお願いしたいこと
・住民の皆さんと接するときには、その方の労働環境や労働条件にも関心をはらってください。
・利用できる制度、適切な働き方のアドバイスができるかも




≪自治研活動について≫
 我々、自治労組合員は、地域公共サービスの担い手として、住民の暮らしを支える幅広い仕事に従事しています。それぞれが"よい仕事"をするためには、"今、何が起きているのか"、政治・経済などの社会情勢に対して常にアンテナをはりめぐらし、"自分に何ができるのか"、考えていく必要があります。
 そのため、自治労では、組合員の生活を向上させて労働者の権利を守ることとあわせて、"やりがいのある仕事ができるように話し合い、考える場を提供する"こととしており、その一環として自治研活動を展開し、その成果発表の場として自治研集会を開催しています。