【自主レポート】

第36回宮城自治研集会
第1分科会 ~生きる~「いのち」を育む・いかす、支えあう

 2016年4月から「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」が施行されましたが、わたしたちが働く職場はその法律の主旨に合う環境となっているでしょうか。仕事と家庭を両立させるためには、職場での環境づくりだけでなく、働き方や業務分担の見直しも求められています。徳島県阿波市での女性の活躍に向けた取り組み事例を報告するとともに、全職員が「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)」のとれた職場環境づくりを提言します。



阿波市における女性の活躍と職場改善の取り組み


徳島県本部/阿波市職員労働組合連合会

1. はじめに

 阿波市は2005年4月に4つの町が合併して誕生した市で、人口約4万人、市職員は380人、組合員数は306人であり、そのうち女性組合員は168人です。合併後10年目の節目となる2015年1月に、市役所新庁舎および交流防災拠点施設「アエルワ」が完成、行政としても庁舎が一つとなり安定飛行に入りました。
 2016年4月から施行された「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」により、阿波市においても「阿波市特定事業主行動計画」が策定されました。その基本的な考え方として、「~職員みんなで支えあう仕事と家庭の両立~」を掲げ、職員を雇用する事業主の立場から、自らの職員の子どもたちが健やかに生まれ育成されるため、職業生活と家庭生活の両立のために必要な職場環境をめざし、さまざまな支援対策に取り組むとしています。
 仕事と家庭の両立支援の取り組みを進めるにあたり、まずは子育て世代に対する制度の充実や利用促進に向けた働きかけ等が直接的な対策としてあげられますが、それらの対策を有効に進めるためには、すべての職員における理解やサポートが必要です。また、子育て世代の職員だけでなく、家族の介護を抱える職員など、さまざまなライフスタイルを持った職員が一緒に働いています。
 そこで、特定事業主行動計画では、さまざまなライフスタイルを持つ、すべての職員が仕事と家庭の調和、いわゆるワーク・ライフ・バランスのとれた生き生きとした働き方ができるよう職場環境の整備を行い、「元気いっぱい仕事に励み、人が輝くまち」となるよう取り組むとしているため、男女平等に関する要求事項や職場状況、職員同士のかかわりなどを報告したいと思います。


2. 労働組合から要求

 合併当時にみられた以下の2つの問題について、女性職員の活躍推進や男女平等をめざし、阿波市職労連として当局に要求、前進を勝ち取りました。
 ①合併前の旧町においては、夫婦で管理職に登用されたという実績はほとんどありませんでした。町単位では、もともと管理職数が少なかったこともありますが、ほとんどの場合、夫が管理職に登用されており、妻は除外されていました。しかし、これは女性職員が仕事で積み重ねてきた経験を軽視するものであり、公正平等とはいえないものでした。阿波市職労連は、すべての労働者が十分な能力を発揮できるようにするため、このような人事配置について改善を求め、合併後は夫婦でも管理職に登用されることができるようになりました。
  なお、2015年度は管理職数74人のうち、男性管理職数が45人、女性管理職数が29人であり、登用率は39.2%となっています。ただし、女性管理職数には専門職員(保育士・幼稚園教諭・保育教諭・保健師・看護師・栄養士)の管理職15人が含まれています。女性管理職が増えたことで、職員や住民から「内容によっては相談しやすくなった」などの反応もみられており、阿波市特定事業主行動計画でも、この女性管理職登用率について40%をめざすとしています。
 ②合併直後に、阿波市直営の高齢者福祉施設で感染症が発生し、施設職員が感染し休んでいたため、保健師等が支援と感染拡大の予防を行いました。しかし、長期化したため福祉部局の女性職員が除染作業につくことを提案されました。福祉施設という事情もありましたが、慣例として「一般職の女性職員」という提案がありました。実際作業にあたった女性組合員が、なぜこういう時にいつも作業にあたるのが女性なのだろうと疑問に思いつつ、自身や家族への感染拡大を不安に思い、阿波市職労連の執行部に相談。執行部が当局に確認し、「女性職員」を撤回させ、男女問わず除染作業に参加することになりました。この慣例を払拭したことは、性別役割分担の意識の転換ともいえます。かつては、知らず知らずの間に決めつけられて辛い思いをした女性職員もいたかもしれませんが、その思いを声に出し、執行部はその声をしっかり受け止めることが職場改善につながりました。


3. 阿波市の職場環境

 働きやすい職場であるかについて、いくつかの面から考えてみます。時間外勤務ですが、2015年度において男性職員は月平均9.2時間、女性職員は月平均8.5時間となっており、ほとんど差がありません。また、職員全体の年次休暇取得日数は、特定事業主行動計画では設定目標日数を14日としていますが、実際に取得できたのは平均11.09日となりました。
 退職についてですが、合併直後は業務等の混乱により早期退職者もみられましたが、現在は合併して10年がたち、市政も安定してきたため、専門職員も含めると定年退職まで働く職員がほとんどです。もちろん女性職員も定年まで働いています。そして、復帰した際の業務分担や配置の見直しをしたことで、現在はメンタルが原因で休職している職員はいませんし、家族の介護のために退職する職員もいません。再任用制度も確立され、2016年度は保育士や一般職の女性も含め8人が再任用職員として働いています。
 育児休業の取得期間も、1年から1年半が一番多い状況です。産前産後、育児休業取得に対する代替職員の確保ですが、保育士・調理員などの専門職において臨時職員や嘱託職員を確保していますが、一般行政職については異動等により対処しています。しかし、産前産後・育児休業に関しては、取りやすい職場であるといえます。それは、育児休業に入る職員がいる職場では業務分担の見直しが行われており、必要に応じて代替職員の確保をめざしているからです。
 子どもの看護休暇は年間5日で「中学校就学の始期に達するまで」とされており、取得している職員も数多くいます。また、配偶者および1親等の親族、2親等の同居の親族を看護するための家族看護休暇は子どもとは別に制度化しています。いずれの休暇制度も、休暇取得に対する相談を早めに促し、詳しい制度や休暇中の賃金の説明も行うようにしています。
 2016年4月現在、21人の女性職員が産前産後休暇および育児休業を取得中であり、これをふまえると、第3次阿波市集中改革プランの最終年度の職員定数を上回る削減人数となっています。臨時・嘱託職員も多くなるなかで、行政サービスの質を落とすことなく運営し、しかも職員が家庭的責任を果たしながら働きやすい職場を継続していくことが、今後大きな課題となっています。


4. 男性の働き方の見直しと子育て促進

 男女共同参画社会とは、多様な生き方を尊重し、すべての人があらゆる場面で活躍できる社会であり、男性にとっても暮らしやすい社会であることから、男女共同参画を男性の視点からも捉えることが不可欠です。時間外勤務の削減などによる働き方の見直しや、男性にも直面している介護の問題に対応するために、男女共同参画の理解に向けた男性に対する働きかけも必要となっています。
 阿波市の男性職員の育児参加についてですが、子どもの学校行事や病気のため休暇を取得している職員が多くみられます。行政に携わっていると、おのずから「子育て支援」という言葉を耳にするからでしょうか。民間企業で働く職員と比べると、子育てに協力的な男性職員が多いことは事実です。男性職員が子育てを担っていることから、女性職員も「子どもの家庭訪問で休みます」「子どもを病院に連れて行くので休みます」と言いやすく、「そろそろ遠足の時期では」などの声掛けもあります。
 これは、男女を問わず職場の仲間の理解があるからであり、「職員みんなで支え合う環境」がつくられているからだともいえます。


5. 今後の課題

 男女の配置の差異は、窓口事務は女性の配置が多く、建築・土木、産業経済関係は男性の配置が多く、男女の差異は歴然としております。
 職員数及び年齢構成では、近年は年齢の幅も拡大し一定数を採用しておりますが、年齢構成は合併直後の採用抑制などにより歪化しております。こうしたことから、管理職に登用される年齢も若年化してくると考えられ、一定の経験年数等を経ることなく登用されることが危惧されます。
 また、管理職の職務は、課員の管理・監督、指揮命令を担う役割として責任も伴います。2016年4月からは人事評価も本格的に施行され、評価者として部下を評価することに対する不安も聞こえます。
 女性職員の管理職登用も目標が設定されていますが、行政施策における女性の参画拡大には、阿波市の横断的な推進体制の整備も図られなければなりません。「~職員みんなで支えあう仕事と家庭の両立~」は、性別による役割分担意識をなくし、いままで以上に職員のニーズや社会環境に適応させながら、職場全体で職業生活と家庭生活に必要な環境づくりに取り組むことで広がっていくと思います。