【自主レポート】

第36回宮城自治研集会
第1分科会 ~生きる~「いのち」を育む・いかす、支えあう

 豊後大野市職連合労では、5年間をスパンに「組合員意識調査」を実施し、結果による数値の推移や内容を分析し、各種交渉での要求内容の前進につなげてきた。2015年調査においては、マタニティ・ハラスメントに関する項目を追加し、同年6月の「男女平等実現交渉」では、「介護休暇を2親等内4日の運用が可能」という回答を得た。このように職場の実態から、真の仲間の声を労働運動につなげる取り組みを考察していくことにする。



豊後大野市職連合労がめざす
ワーク・ライフ・バランスの実現について
―― 豊後大野市職連合労
「男女がともに担う自治労委員会」の活動報告 ――

大分県本部/豊後大野市職員連合労働組合・「男女がともに担う自治労委員会」事務局 佐藤 君代

1. はじめに

 豊後大野市職連合労「男女がともに担う自治労委員会」は、旧大野郡5町2村が合併し豊後大野市となった2005年に設置し、この10年間に「男女がともに担う自治労運動に関する組合員意識調査」(以下組合員意識調査)を3回実施し、委員会主催の組合員対象の各種講演会、学習会を開催してきました。
 2010年には豊後大野市「人権推進同和対策課、男女共同参画班」が「男女共同参画室」として新たに設置され、職員も1人から2人体制となり、啓発から政策へとステージを変えてきました。このように自治体も男女平等参画社会の実現に向けた取り組みを進めるなか、市職連合労「男女がともに担う自治労委員会」は職場の男女平等実現・各種ハラスメント対策・ワーク・ライフ・バランスの推進のため、「組合員意識調査」で合併直後(2007年)、合併5年経過(2011年)の調査結果を分析し、年間を通した各種闘争で職場や家庭、地域における組合員実態を当局に明らかにし、要求内容の実現につなげてきました。


2. 2015年度豊後大野市職連合労「男女がともに担う自治労委員会」の取り組み

(1) 2015「男女がともに担う自治労運動に関する組合員意識調査」から
 2015年に実施した「組合員意識調査」は、2011年と同様の質問内容とし、新たに「マタニティ・ハラスメント」に関する設問を加え、2011年と2015年の調査結果を分析することで2015年6月「2015人員確保・男女平等実現闘争」への具体的な取り組みや要求項目が可能となるよう調査時期を設定しました。
 また、この調査結果の分析により、各種ハラスメントについての実態、合併後10年間のワーク・ライフ・バランス、男女雇用機会均等法等による女性労働者の働き方、ポジティブ・アクションへの取り組み等の検証になりました。
 ここで、調査結果の分析について、ご報告したいと思います。では、まずその結果を資料でご覧ください。(資料1)
① ワーク・ライフ・バランスについて
分析内容:プライベートより仕事を優先する。職場での女性の事務量の負担が大きくなっている。休みがとりづらい。労働時間が長い(残業の増加)。⇒職場の男女平等が進んでいる。女性も責任ある仕事、ポジションへの配置が進んでいる。女性の収入が家計を支えている。女性も働き手の1人としてあてにされている。
課  題:女性に十分に研修を受ける機会が与えられているか。人員の配置は十分か。健康被害はないか。妊産婦への配慮はされているか。女性の休暇が十分に取得できているか。
② 男女労働者の仕事と生活の両立支援制度の充実について
分析内容:子どもの看護については、男性がサポートする数字が増加。家事・育児・介護はほぼ平等に負担できている。家事・育児・介護も夫婦でともに分担して行うことは、理解できている。 実行となると? 定年まで働き続けることへの不安。職場は男女ともに平等と考える⇒男性の育児休暇への認知度が低い。事務量等の増加による健康への不安。労働意欲、目的が希薄になっている。対等な相手として互いを認め合う。
課  題:女性もスキルが求められるか。男性の家事・育児・介護への積極的なサポート(分担)。男性の育児休暇(女性の早期職場復帰につなげる)。
③ 職場のハラスメントについて
分析内容:(セクハラ)2011年調査よりポイントは下がったが、まだある。(パワハラ)男女とも横ばいである。(マタハラ)女性同士でもあるのか。
課  題:相談窓口の整備。産前産後休暇・育児休暇復帰後の対応について。
④ ハラスメントのない快適な職場とは
分析内容:2011年との比較、新たなマタニティ・ハラスメントの項目については、職場での認識に差がある。
課  題: 管理職を含めた研修会の実施。相談窓口の環境が整備されていない。(専任のカウンセラーの配置がされていない)
ハラスメントにかかる事象が職場で存在していることは、許されないこととして当局責任で解消していくべきである。マタニティ・ハラスメントは男性の育児休暇取得等男女を問わず、研修を充実させていく必要がある。
※「2015人員確保・男女平等実現交渉」での当局への具体的要求のための資料となる。

(2) 2015組合員意識調査結果から「2015人員確保・男女平等社会実現交渉」の取り組みについて
 交渉前の総務課との折衝で、分析結果の具体的内容を示す。
① 交渉結果の合意事項
要求項目:4項 育児・介護休業法改正に伴い、次の所要の措置を講じること。
②家族介護休暇制度を創設し対象範囲を拡充すること。
回  答:家族介護休暇については、2親等以内4日とする(ただし、年休16日取得後認める。)→年次有給休暇が20日から24日に運用によっては拡大ができる。
要求項目:6項 セクシャル・ハラスメント、パワー・ハラスメントおよびマタニティ・ハラスメント防止の施策の実施にあたっては、次の項目を含む内容とすること。
⑤管理職を含め、全職員を対象とした男女平等とセクシャル・ハラスメント、パワー・ハラスメントおよびマタニティ・ハラスメントに関する研修を実施すること。
回  答:昨年度は実施するとの回答であったが、今年度は必ず実施する。
⑥上記の項目も含め、セクシャル・ハラスメント、パワー・ハラスメントおよびマタニティ・ハラスメント防止に向けた施策について、職員の周知徹底をはかること。また、具体的な周知方法を示すこと。
回  答:当局責任において、管理職をはじめとして職員に向け、あらゆる機会を通じて周知する。

(3) 「男女がともに担う自治労委員会」の学習活動について
 6月は「男女雇用機会均等法月間」ということで、市の主催する「豊後大野市男女共同参画市民のつどい」講演会に多くの組合とともに「市職連合労男女がともに担う自治労委員会」のメンバーも学習の一環として参加しました。
・講師は、食育の推進や婚活講座等で話題の九州大学大学院農学研究院助教の「佐藤剛史」さん
・講演テーマ「強くやさしく ―― 人生で大切なこと ―― 」
 ※参加者の感想をご紹介します。
◎講演会を受講して、男女平等や男女共同参画のまちづくり等について感じたこと。
・家庭においては女性だけでなく、男性も同じように家事を行うことにより、男女ともに仕事と家庭を両立し、よりよいワーク・ライフ・バランスがとれると思いました。
・今の若い世代の男性は積極的に家事や育児をしていると思います。
・土日や平日の夜を利用した男性料理教室や親子ふれあい教室をすると男性への家事や育児への取り組みがさらにすすむのでは。
・子育てを母親に任せるのではなく、父親も積極的にかかわるべきではないか。
・学生時代の「弁当」から家族の愛情を感じたという作文は、家庭での両親が共に支えないながら子どもを育ててきた様子が伝わりました。家庭での心がけが、男女がともに支え合う社会につながるのではないかと思いました。
・家庭において家事分業を行うなど、意識的に取り組みを行ってきたつもりですが、佐藤さんの講演を聞き新しい発見があり、常に高い意識を持って行動していくことが肝要であると再認識したところです。
・人を、相手を大事にすることができる人であれば、男女平等や男女共同参画につながるのではないかと思いました。
・将来の子ども達が育つうえで、とても大切な問題提起をされたので、女性とか男性とかでなく、一緒に考えていくことだととらえ、それぞれの立場でできることから始めたいなと、思ったところです。
・親から子への思い、愛情は食を通じて、自然にまた確実に子どもの心に浸透していくことを改めて教えていただきました。食育って人間形成なんですね。そのためには、女性の社会進出が推進されている現在は、男性も家事を一緒に行い、バランスのとれた食事は子どもに作ってあげてほしいです。
・女性は出産の部分で、心も体も負担が大きいなと思いました。
・私は独身で出産経験もないですが、死産された方の話のところは聞いていてつらくなりました。家族で食卓を囲むことが、将来に大きく影響することがあるのだと気づかされました。
◎講演会全般に関しての意見・要望。そのほかの意見
・男女共同参画についてだけでなく、食の大切さ、命の大切さ等様々なことについて気づき、考えることができました。
・若い世代に聞いてほしいお話でした。
・市長のあいさつに、市管理職や会議構成で女性の割合が低いという話がありました。今後増えることを期待します。
・全国的にも管理職や議会構成で女性の割合が低いことが新聞でとりあげられていました。なぜ少ないのかを考えると、能力ではなく環境が大きいと思えます。やはり議会などは男社会のような気がしています。女性も自分たちの声を伝えるのは女性だという意識を持つことが大事だと思います。


3. これからの取り組み

 次世代育成支援対策推進法に基づく「地域行動計画」は、2015年度からの5カ年を1期とした「第2次キラキラこどもプラン(子ども・子育て支援事業計画)」を昨年度に策定しました。豊後大野市において、2015年度「特定事業主行動計画」の見直しをするにあたり、男女がともに担う自治労委員会が実施した組合員意識調査の分析結果を十分に反映した内容になるように取り組みを進めていきたいと思います。
 そして、これからも「みんなで働きやすい職場、男女参画のまちづくり、家事も育児も介護も男女で楽しむ」社会づくりに、豊後大野市職連合「男女がともに担う自治労委員会」も積極的にかかわっていきたいと考えています。