【論文】 |
第36回宮城自治研集会 第1分科会 ~生きる~「いのち」を育む・いかす、支えあう |
コミュニケーションに困難を抱える人の強い感情表出や感情爆発、執拗な訴え等を、その困難を抱えるが故のSOSとして積極的に捉えなおし、より適切な相談支援とは何か、「構造化」をキー概念とした生活保護ケースワークの実践から考察したい。 |
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はじめに 知的障害や自閉症スペクトラム、重度の依存症、パーソナリティ障害、その他の脳疾患、あるいは幼少期の愛着形成や独特の認知・思考の影響により、コミュニケーションに困難を抱える人の中でも、特に対人トラブルを起こしやすい人に悩む生活保護ケースワーカー(以下CW)は多い。コミュニケーションに困難を抱える人の生活保護ケースワーク(以下ケースワーク)では、コミュニケーションが円滑に図れないことから、ケースワークもその人の社会生活も機能不全を起こすことがある。 |
1. ケースワークの構造化とは何か (1) 構造と機能について (2) 構造化について (3) 言語化による明示の必要性について |
2. ケースワークを構造化する ケースワークの現場でケースワークを構造化していくために、実際に相手とやりとりをしていくにあたって、必要だと思われるステップを順に述べたい。 (1) ルールを明示する (2) できること・できないことを明示する (3) 約束をする (4) 期限を明示する (5) 組織的、統一的な対応を図る |
3. コミュニケーションを促進する コミュニケーションとは、多様な可能性を秘めた創造的な行為の一つであるが、そのあり方が無数であるため、返って意思疎通を複雑に錯綜させてしまうことがある。このことを踏まえ、コミュニケーションは、双方向のやりとりにより為されるものであることを考えれば、意思疎通を円滑に図るためには、その双方向性のあり方が問われることになる。 (1) 一対一対応について (2) 関係性、立場性に変化をつけ、力動を生み出す (3) 複数対応について |
4. 構造化への抵抗や回避に対応する ケースワークを構造化することは、コミュニケーションに困難を抱える人に、自身の課題に直面することを必然的に促す。そのため、この促しへの拒否反応として、ケースワークを構造化することへの抵抗や回避が生じやすい。この抵抗や回避の手段として、逸脱行動や無理な要求、揚げ足取り、強い感情表出、感情的な巻き込み、体調不良を理由とした回避、主張の代弁者としての第三者活用がある。 (1) 体調不良を理由とした回避 (2) 主治医に主張の代弁を求める場合 (3) CWに核心の話をさせない場合 |
おわりに 以上述べてきたケースワークの方法と留意点は、SVをはじめ諸先輩方の指導・助言、同僚の支えにより、実践し効果があったケースワークを、筆者なりに概念化し整理したものである。しかしながら、紙面の関係で事例や実践する際の留意点の多くを割愛したため、一連の内容を十分に伝えることができたとは言い難い。 |