【自主レポート】

第36回宮城自治研集会
第2分科会 ~生きる~「いのち」を守る

地域における環境行政の最前線


京都府本部/自治労京都市職員労働組合 松井 延光

1. はじめに

 京都市全域において日々、家庭系ごみの収集・運搬を担当する部署が京都市内のまち美化事務所である。
 そして、地域における総合的な環境行政の最前線の拠点として、ごみ減量などの循環型社会の構築に向けた施策の実施を中心に、段階的に温暖化対策や公害対策も含めた環境全般に係る業務を遂行するのが我々、環境共生推進員である。
 2009年4月には環境拠点、2010年4月には、市民に開かれたまち美化事務所を築くとともに、市民の皆様が気軽にごみの減量に取り組める環境づくりを目的として、「エコまちステーション」が設置された。地域のイベントや児童館及び小学校での環境学習、地域のお祭りにも積極的に参加している。特にイベントにおいては、さらなる分別意識の向上や環境意識の向上が求められている若い世代にアプローチする重要な手段となっている。
 このように、地域行事に積極的に入り込み、地域事情に合った環境の取り組みを行わせていただけるようアプローチをしていくなど、ある程度、自分たちで活動内容を新しく創り出すことができる仕事である。
 そこで、その中の一つとして、私が取り組んできた事例を紹介したい。


2. 背景・着想

 「若い世代へのアプローチ」という点において環境教育の充実という大きい柱がある。
 これは具体的に言うと、収集の事業所であるまち美化事務所本体による出前講座(児童によるごみの積み込み体験、ごみの出し方クイズ、日々の苦労話など)であり、各まち美化事務所が小学4年生の児童を対象に実施しているものである。その他にも、エコまちステーションの窓口には毎日のように各種申請手続きに様々な業種の方が見えるが、ある日、京都女子大学付属小学校の教諭が周辺地域の一斉清掃の申請手続きに来られた。「所管内には大学が2校あり、うち1校には数年前からアプローチをかけていたが、なかなか入り込めずにいた現状がある」。そこで、どうにか繋がりをつくろうと、私立である京都女子大学付属小学校の4年生を対象にした環境学習を実施することを提案した。
 今までには例のない私立の小学校であるので、京都市以外に在住する児童も多数いた。クラスの半数以上が京都市以外に在住する児童であるため、従来通りの京都市の排出方法や京都市のごみの出し方を基準としたクイズを行うことが難しく、何度も打ち合わせが必要となった。その中で、私の方からは、以前、京エコロジーセンターの職員の話を聞く機会があり、その内容がとても興味深く充実したものであったことを紹介し、その職員を講師に招いて話をしてもらうと楽しく充実した授業となるのでは、と提案させていただいた。
 相手も快く受け入れてくれ、その後も数回打合せを行った結果、2部制の環境学習を採用し実施することになった。

 京都女子大学付属小学校環境学習プログラム
 ・1時限(授業) 温暖化の話
 ・2時限(体験) 本物のごみを使用した収集車への積込体験

 内容として、大きく地球温暖化や身近な環境負荷の少ない取り組みを楽しく紹介する、体験型の講義を1時限目で行い、2時限目で本来の母体であるまち美化事務所がパッカー車を準備し、積込み体験を実施した。これが、予想以上に児童や教諭に好評であった。
 この取り組みが付属小学校の教諭の共感を得て、以前から環境学習の機会の提供を行いたいと調整を行っていた大学側に話を通してくれることになり、学園祭に出展する運びとなった。

 

3. 準備からの苦労、経過

 かねてより、こちらが希望していた京都女子大学へのアプローチだが、若い世代への意識啓発をする中で、関心が高く、取り組みやすい内容の出展とすることが必要不可欠であるとともに、大学祭には幅広く様々な世代が来ることから、あらゆる世代に対応するため、啓発及び出展内容には拘った。さらに、出展が決まってからの大学側との打ち合わせは、女子大学がゆえの問題に直面したが、とにかく現場に足を運び、意見を聞き取ることに力を注いだ。
 しかし、従来より行っている回収方法を取り入れてもらうことはできなったので、一旦回収するのではなく、当日に回収するという代替案を採用していただいた。
 開催日である11月3日までには交換用の衣服を確保する必要が生じたので、急遽10月24日、25日に実施される他校の学園祭においても衣類の回収を行うことにした。同時に本体である南部まち美化事務所、3行政区のエコまちステーションとも連携をとり、月2回の定期回収で集めた衣類を提供してもらい必要数以上のものを確保することができた。


4. 当日の様子

(1) 交換・回収実績
 衣服 当日回収量 14.9kg  利用者 141人
 ① 持帰数 197着  ② 大人服 93着  ③ 子ども服 104着(70cm~150cm)

(2) エコまちステーションの活動内容
 下京エコまちステーション及び京都学生祭典と共同で出展。古着の交換会(衣料品の無料回収・提供)及び臨時資源物回収(使用済小型家電)に重点を置き、ごみ減量に関する啓発(「しまつのこころ条例」施行に関する周知ビラの配布及びリメイクレシピ集の配布)を実施した。

⇒来場者の声
家族保護者経済的にも助かるうえに、同世代の流行がそこにはある。
学 生捨てようと思っていた物が自分の欲しいと思う物と交換できて嬉しい。
姉 妹自分達では手の届かないような服を貰うことができて嬉しい。
地域の方若い人達のお洒落な服を無料でいただけたので、本当に嬉しい。

(3) 当日までの周知啓発活動
 開催の前週5日間において「衣服の交換・回収」(250枚)、「使用済小型家電の回収」(250枚)を中心とした環境啓発活動を行う旨の周知ビラを同大学構内2箇所(大学側指定場所)で配布。
  
 ⇒普段はあまり聞こえてこない、若い世代が実際に排出に困っているものや、処分方法についてなどの相談を受けられる。
 ⇒当日、使用済小型家電の入った紙袋一杯のものをいくつか持ち込まれた学生も十数人いた。このように若い世代の環境への関心度を知るきっかけにもなった。

 

5. さいごに

 今回の取り組みを通して、ごみを減らすという目的のために行った企画であるが、学生のニーズに合わせた工夫を取り入れることによって、双方が楽しみながら環境啓発を行うことができた。
 この企画のように、現場を知る環境共生推進員だからこそ、市民や地域の声を反映した取り組みを形にすることができる。また、この仕事、職種のやりがいを強く感じることができる瞬間であった。
 わたしの結論は、最前線の現場で働き、最前線で声を聴き、即座に現場に足を運べる環境共生推進員は、地域にとっては間違いなく必要な存在である。