【自主レポート】

第36回宮城自治研集会
第2分科会 ~生きる~「いのち」を守る

 飽食の時代と言われる一方で、地域の農林水産業は、高齢化や後継者不足など様々な課題を抱えており、様々な活性化策が施されています。
 本レポートでは、地域の基幹産業である農業の活性化に向けて、組合として何ができるのかを検討するために取り組んだメーデーへの出店を通じて学んだ地産地消推進の意義や効果について報告します。



出雲市における地産地消推進の取り組み


島根県本部/出雲市職員連合労働組合

1. はじめに

 現代の私たちの食生活はまさに飽食の時代で、スーパーやコンビニにはいつでも様々な食品が並び、手を伸ばせばすぐそこに食べ物がある状態が当たり前の毎日です。食べ物も食の安全も、どこかで誰かが勝手に提供してくれるものだと、深く考えることなく過ごしてしまいがちです。
 一方、食生活を支える農業や漁業といった一次産業の現場では、高齢化や後継者不足、輸入品に対する価格面での劣勢など様々な課題を抱えています。
 こうした中で、地産地消の推進は、地域の農林水産業の振興につながるだけでなく、消費者にとっても、地元の新鮮な食材を食べることができる、食の安全面で安心して食べられるなどのメリットがあります。また、食育の分野でも、地産地消が豊かな食生活を送るためのひとつのキーワードになるなど、その意義は多岐にわたると言えます。
 特に出雲市において農業は地域の基幹産業であり、その活性化につながる地産地消の取り組みを推進していくことは地域にとって重要なことです。
 本レポートでは、出雲市における地産地消推進の取り組みを報告することで現状を整理し、今後組合としてどのような取り組みができるかを検討する契機としたいと考えています。


2. 出雲市の現状

(1) 生産の状況
 出雲市は県内最大の農業地帯で、穀物・野菜・果樹・畜産など多様な品目が生産されています。出雲平野での米の生産をはじめ、ぶどう・柿・いちじくといった果樹の産地や、和牛の産地にもなっており、農業分野の生産高は2013年度で約100億円と、県の農業産出額の4分の1以上を占めています。
 しかしながら、全国的な問題としてあるとおり、出雲市でも担い手の高齢化や後継者不足は大きな課題となっています。また、そのことによる耕作放棄地の増加も深刻です。

(農林業センサスより)

 加えて、私たちの食生活の変化による米をはじめとした農産物消費量の減少や、外食産業等の発展による輸入食材の増加なども農業経営を圧迫する大きな要因となっています。最近では2014年産の米単価下落が記憶に新しく、これは前年産の米あまりが原因と言われています。
 こうした農業の先行きに対する不安は、後継者確保の大きな壁となり、ますます農業の縮小を招いていると言えます。

(2) 地消の状況
 ここでは、地産地消の「地消」の面についての取り組みを報告します。
① 学校給食
 出雲市の学校給食では、毎月「いずも食材の日」を設けたり、地元産食材を使った料理の情報発信をしたりすることで地産地消を啓発しているほか、実際の調理においても市内産、県内産を優先して使用するよう努めています。
 しかし、現在6つの給食センターで約18,000食を調理していますが、地元産食材の比率を高めていくのには、量の確保や下処理にかけられる時間の制約等の課題があります。そこで、更なる地産地消の推進に向けて、2013年10月に「学校給食地産地消推進ネットワーク会議」を設置しました。
 会議には給食センター職員のほか、市の農林水産部局や、生産・加工・流通などに携わる関係者が参加しています。また、2014年11月には米粉と野菜について専門部会を立ちあげ、具体的な検討を行っています。
 その結果、小規模校における米粉パンの試験的提供や、需要と供給のマッチング会議の定例開催などが実施されることになりました。今後、米粉パンについては実施地域の拡大を、野菜については下処理が可能な事業者の掘り起こしの検討等を進め、取り組みの成果と課題を検証しながら、さらなる地産地消の推進に取り組んでいくこととしています。
② 食 育
 食育の面では、「出雲市食育のまちづくり推進計画」をもとに次のような教育・学習活動を実施しています。
 ・栄養教諭による「食の学習ノート」を使った食育授業
 ・農作業の大変さ、収穫の喜び、旬の野菜のおいしさなど、食への理解を深め食を大切にする心を育むための農業体験や調理体験
 ・食習慣や食生活改善を推進するための学校給食センターでのスクールランチクッキング
 ・地産地消、栄養バランスのとれた食事を学ぶ場として市民を対象にした学校給食試食会を開催
 ・郷土料理や伝統料理を掲載した広報の発行など、食文化伝承の情報提供
③ 地産地消推進事業
 農業振興の取り組みとして、市がJA、島根県と連携し、毎年地産地消促進のイベント等を開催しています。過去には、市内洋菓子店と協力し地元野菜を使ったベジタブルスイーツフェアを開催したり、産地見学会・試食会を実施したりしており、2014年度は「食べて採っておいしいたけ」と題し、親子を対象にしいたけレシピの紹介と試食、菌床ブロックからのしいたけもぎ取り体験を実施しました。
フードコーディネーターによる
しいたけレシピの紹介
しいたけのもぎ取り体験をする子どもたち

 出雲市は2013年のしいたけ生産量が300トン以上と県内2位の生産地ですが、子どもたちに嫌われがちな食材ということがあり、そのイメージを払拭し、消費につなげてもらおうとイベントが企画され、親子21人が参加しました。ひき肉の代わりにみじん切りのしいたけを使ったシュウマイや麻婆豆腐などが好評だったほか、子どもたちももぎ取り体験を楽しむなど、参加者にしいたけに親しみを持ってもらうことができたと感じられる活動でした。    
しいたけ麻婆豆腐 しいたけボローニャ

④ おむすび大作戦
 おむすび大作戦とは、米消費拡大と地元産農産物の消費拡大を目的として市職員を対象に呼びかけているものです。2014年11月にスタートし、毎月第3金曜日を「おむすびの日」として職員の昼食におむすびを推奨しています。また、おむすびの日に合わせ、出雲の特産品やその調理方法を紹介し、職員の地産地消に対する意識を高めることをねらいとしています。
 2015年4月からは、この取り組みの趣旨を市民にも伝えていこうと、市の公式フェイスブックで地元産食材を使ったメニューの紹介などを行っています。
【情報発信の一例】
しまねっこおむすび 地元養鶏農家が設置している
たまご自動販売機


3. 市職の取り組み

 このように市で各種の取り組みが行われる中、組合でも地産地消を推進していこうと、2015年の出雲地区メーデー開催にあわせ、島根県産コシヒカリを使ったおむすびを販売しました。
 4月29日のメーデー当日、自治研推進部の部員と子どもたちが朝から集合し、念入りな手洗いの後に皆でおむすびを作りました。握るのと海苔を巻くのは主に大人がしましたが、5歳と6歳の子どもたちも漬物を添えたり、パックの封をしたりのお手伝いをしてくれました。また、6年生の子は慣れない手つきで大人に交じっておむすび作りに挑戦し、1時間足らずでおむすび100個が完成しました。
 子どもたちにとっては、学校などで「クッキング」の機会はあっても、食品として生産・販売まで行う経験はなかなか無く、良い機会となったようです。
子どもたちもお手伝い 自治研推進部員がおむすびを手作り

 また、パックには「今から50年前、日本人は1年間に約112キロのお米を食べていました。今は何キロ??」というクイズを貼りつけ、米消費拡大の意識を高めてもらえるよう工夫しました。(ちなみに答えは約57キロ。約半分に減少しています。)
 様々な出店が立ち並ぶ中、おむすびは受け入れてもらえるだろうかと不安に思いながら販売を開始しましたが、早々に完売といううれしい結果となりました。

メーデーでの出店の様子

4. おわりに

 地産地消推進は、私たちのとても身近な課題です。たくさんの商品がある中で、どうすれば地元産食材を選んでもらえるか、それはやはり、地産地消の意識があるかどうかにかかっているのではないでしょうか。その点では、地産地消の意義、効果を継続してアピールしていくことが必要と考えます。価格の安い他の商品と並んでいても選んでもらえる、そうした意識付けのため、「安心・安全・新鮮の地産地消」「地域の産業を支える地産地消」を広めていくことが重要です。
 今回、地産地消をテーマにメーデーの出店に取り組みましたが、やってみて感じたのは、身近な課題ゆえ、子どもから大人まで楽しんで実践できるということでした。出店に限らず、組合活動の中でほかにもいろいろな取り組みにつなげていけるのではと感じています。先に述べた意義や効果をアピールしながら、これからも組合活動としてできることを検討し、地産地消とそれによる地域活性化を実現できるよう、今後も取り組みを進めていきます。