【自主レポート】 |
第36回宮城自治研集会 第2分科会 ~生きる~「いのち」を守る |
2011年3月11日に発生した東日本大震災と東京電力福島第一原子力発電所事故を受け、運転を停止している(た)各地の原子力発電所について、再稼働に向けて、原子力規制委員会による新規制基準への適合性確認審査が行われている。島根原子力発電所2号機についても、再稼働の方向性を決める時期が近づきつつある。 |
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1. はじめに 2011年3月11日発生した東日本大震災と東京電力福島第一原子力発電所事故を受け、日本の原子力発電所(以下「原発」という。)は、順次運転を停止した。 |
2. 新たな原子力規制 (1) 原子力規制委員会の設置 (2) 規制の厳格化 ② 新規制基準 想定外の事故の可能性を極小化するため、設計基準は格段に強化されている。例えば、津波の評価と対策やその他の自然現象への考慮は新設事項となっている。また、安全機能維持の観点から、火災、電源喪失、内部溢水等への備えが拡充された(▼表2)。
イ 重大事故対策
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3. 適合性審査等の状況 東日本大震災時の自動停止や定期点検等によって、全国の原発は順次運転を停止した。その後、関西電力大飯原発が2012年7月、欧州諸国のストレステストを参考とした安全評価を経て再稼働したが、2013年9月定期点検のため停止した。 (1) 敷地内断層調査 (2) 適合性審査
② 今後の見通し 敷地内断層調査中の原発については、その評価について一定の方向性が出ることが適合性審査の前提となっている。また、基準地震動の確定も耐震設計を固める上で重要な論点であり、川内原発、高浜原発、伊方原発に続き、九州電力玄海原発3・4号機の審査が進んでいる。 加圧水型原子炉(PWR)の審査は、川内原発を先例としてよりスムーズに審査が進むものと見込まれるが、沸騰水型原子炉(BWR)の審査は遅延している。 |
4. 川内原発をめぐる論点 (1) 適合性審査と再稼働 (2) 地域防災計画 (3) 火山リスク |
5. 再稼働差し止めをめぐる司法判断 (1) 高浜原発の差し止め訴訟 (2) 川内原発の差し止め訴訟 |
6. 島根原発の対応状況 (1) それぞれ状況が異なる3機 島根原発3号機は、福島第一原発事故の発災時建設途上にあり、当時の工事進捗率は93.6%。最終段階の燃料装荷直前でのトラブルで工事が中断していたものの、完成まであと一歩の状況にあった。 民主党の野田佳彦政権は福島第一原発事故後の2012年12月、「2030年代に原発稼働ゼロを可能とするよう、あらゆる政策資源を投入する」との「革新的エネルギー戦略」を閣議決定。原子力に依存しない社会の実現に向け、(ア)40年運転制限制を厳格に適用する、(イ)原子力規制委員会の安全確認を得たもののみ再稼働とする、(ウ)原発の新設・増設は行わない、の3つの原則を掲げた。 その際、既に着工済みであった島根原発3号機、電源開発大間原発、東京電力東通原発については、「(既に原子炉設置許可が終了しており)新設ではない」と位置付けられ、建設が継続されてきた(現在新規制基準に基づく全体の工事計画が立てられないとの理由で、工事進捗率は発表されていない)。この「新設ではない」との考えは、安倍政権にも引き継がれている。なお、現時点3号機については、新規制基準に基づく適合性確認申請は出されていない。 |
7. おわりに 独立性と専門性の高い規制機関の設置、規制基準の大幅強化、審査の厳格化といった原子力規制の抜本的な見直しは、東電福島第一原発事故を教訓としたものである。 |
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(注1) 原子力を、エネルギー需給構造の安定性に寄与する重要なベースロード電源(発電(運転)コストが低廉で安定的に発電することができ、昼夜を問わず継続的に稼働できる電源)とした上で、「原子力規制委員会により世界で最も厳しい水準の規制基準に適合すると認められた場合には、その判断を尊重し原子力発電所の再稼働を進める。その際、国も前面に立ち、立地自治体等関係者の理解と協力を得るよう取り組む」としている(「エネルギー基本計画」(2014年4月11日閣議決定))。 |