【自主レポート】

第36回宮城自治研集会
第3分科会 石巻に虹を架けよう~被災地の今を見る、知る、触れる、考える~

 2011年3月11日14時46分に発生した地震は、東日本を中心に甚大な被害を与えました。千葉市においても地震により道路の亀裂・隆起・沈下等などの被害が発生しました。特に区全域が埋立地域である美浜区を中心として液状化現象が発生し、多くの土砂が噴出したことが大きな特徴といえます。災害から復旧までの取り組みについて一年半の歩みについて報告するとともに、今後の災害について皆さんと考えて行きたいと思います。



東日本大震災・千葉市の災害
液状化による災害と復旧

千葉県本部/千葉市職員労働組合・建設支部 五木田晴幸

1. 東日本大震災の状況

(1) 地震の概要
① 本震の状況
 全体
 地震名称 : 2011年東北地方太平洋沖地震
 発生日時 : 2011年3月11日(金) 14時46分
 発生場所 : 三陸沖(牡鹿半島の東南東、約130km) 深さ24km
 マグニチュード : 9.0
 各地の震度 : ・宮城県栗原市の「震度7」が最大
 ・宮城県・福島県・茨城県・栃木県の4県28市町村で「震度6強」を観測
 ・東北地方を中心に、北海道から九州地方にかけ震度6弱~震度1を観測
 地震のメカニズム : 今回の地震は、プレート境界型地震であり、海側の太平洋プレートが陸側の北米プレートに潜り込み、それに伴い、北米プレートに蓄積されたひずみが限界に達したことにより発生したものと考えられる。
 その他 : M9.0という地震の規模は、1923年(大正12年)の関東地震(関東大震災)のM7.9や1994年(平成6年)の北海道東方沖地震のM8.2を上回る日本国内観測史上最大の巨大地震であった。また、揺れの継続時間は3分以上となり、1995年の阪神・淡路大震災や2004年の新潟県中越地震の20~30秒と比べて、長時間続いたことも特徴的である。
② 千葉市
 2011年3月11日14時46分に三陸沖を震源としたマグニチュード9.0の地震が発生した。
 この地震により、宮城県において最大震度7を観測したほか、東北から関東の太平洋側では震度5強~6強と近年に類を見ない巨大な地震であった。
 また、本地震では、太平洋沿岸において巨大な津波が発生し、これにより甚大な被害が発生している。一方、本市をはじめとした東京湾内の埋立地域等においては、液状化現象により建築物や道路・地下埋設物等の被害が生じている。


2. 震災による千葉市の被害状況

(1) 千葉市の被害概要
 本市においても、地震により道路の亀裂・隆起・沈下等などの被害が発生した。特に区全域が埋立地域である美浜区を中心として液状化現象が発生し、多くの土砂が噴出したことが大きな特徴といえる。また、家屋等の傾斜や下水・ガス・水道・電柱等のライフラインについても損壊を受け、日常生活に大きな被害が発生した。
【千葉市の被災状況】
① 人的被害
 死亡0人、重症2人、中等症4人、軽症10人
② 住宅被害(2013.1.31現在 り災証明の被害認定基準に基づく)
 全壊31世帯、大規模半壊282世帯、半壊414世帯、一部損壊54,354世帯
③ 物的被害(市管理のもの)
 ア 道路約44km(液状化による土砂約8,740m3
東日本大震災における震度分布図(気象庁)
 イ 橋梁7橋
 ウ 下水道約7km
 エ 公園緑地等75公園
 オ 学校施設150校
④ ライフライン
 ア 電気停電148件
  ※3月12日午前2時頃復旧
 イ ガス供給停止214件
  ※3月17日復旧
 ウ 水道約12,000戸が断・減水
  ※3月15日にひび野、真砂地区が復旧
  3月24日に全面復旧
⑤ 千葉市内の損害額
 (概算)約89億円

  千葉市
  本市における震度(気象庁HP)
  震度5強 : 中央区・花見川区・若葉区・美浜区
  震度5弱 : 稲毛区・緑区

(2) 液状化の代表的な被害状況
 本市の液状化の代表的な被害状況は、千葉県環境研究センター「平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震による東京湾岸埋立地での液状化-流動化被害(第1報)」2011年3月15日作成より参考資料として抜粋し以下に記述する。
① 美浜区幸町
 噴砂を主体とした被害が確認されている。
② 美浜区稲毛海岸2丁目付近、同区高洲2丁目・高浜1丁目付近、新港付近
 構造物の傾動・沈降、地下タンクの浮上、電柱の傾動・沈下など液状化に伴う著しい被害状況が確認された。さらに、噴砂は、非常に大量で、地表面の沈下や隆起も確認された。稲毛海岸公園では、100m以上も連続する非常に大規模な噴砂が確認されている。
③ 美浜区稲毛海岸3丁目、高洲3丁目、高浜4丁目、高浜7丁目付近
 地盤亀裂からの大量の噴砂が確認されている。亀裂は、50~100mm程度のものが多く確認されている。海浜公園内では、噴砂による被害程度が著しく芝生公園では、50m×50m程度の大規模な沈下を伴っている。
④ 美浜区真砂1~2丁目、磯辺3~5丁目
 京葉線以北での被害程度はやや小さいが、京葉線以南の被害度は著しい。
 特に中磯辺公園周辺では大量の噴砂を伴う著しい沈下や一戸建て住宅・ブロック塀・電柱の傾動や沈下が確認されている。中磯辺公園内では、この大量の噴砂・噴水により幅30m×長60m程度の範囲で数十センチから1m程度の沈下が確認されている。

⑤ 美浜区真砂4~5丁目、磯辺6~7丁目
 京葉線以北での被害程度はやや小さいが、京葉線以南の被害度は著しい。
 特に、磯辺7丁目では、噴砂による沈下や地波を伴う著しい被害が確認されている。
土砂に覆われた道路(新港)
⑥ 美浜区若葉1・2丁目、海浜幕張駅周辺、幕張の浜
 この地帯は、噴砂量が比較的多く、道路のめくり上がりや沈下が確認されている。
⑦ 美浜区浜田1丁目
 地盤の亀裂を伴う噴砂が確認されている。
⑧ 美浜区幕張西
 噴砂は、帯状分布というより埋立地一帯に液状化現象が発生したと確認されている。被害程度は、電柱の傾動・沈下、ブロック塀の沈降、一戸建て住宅の傾動が確認されている。

3. 震災直後の緊急な対応

(1) 地震発生直後の対応
 地震発生直後より、災害対策本部が設置され、本庁の建設局職員及び各土木事務所の職員による、被害状況の把握と交通の安全を確保するための市内全域のパトロールを行った。
 公共交通機関が運転を見合わせたことや、高速道路が通行止めになったことから、市内の幹線道路は類を見ない交通渋滞に陥った。そのため、幹線道路全てのパトロールを行うには一昼夜の時間を要した。また、パトロール班との連絡には防災無線や携帯電話を使用したが、回線が混み合いほとんど役に立たず、本部への被害状況報告は困難を極めた。
 一部連絡がとれたパトロール班からの被害報告で、美浜区については至るところで液状化現象が見られ、道路上に大量の噴出土砂が堆積していることが判明した。
 土砂の堆積箇所は100箇所以上にものぼり、土砂の堆積による通行止めが各所で発生した。特に、海浜幕張駅北口のバスロータリーでは、噴出土砂により連節バスが立ち往生し、交通の確保のための土砂撤去は急務を要した。そこで、千葉市建設業協会が11日深夜から土砂撤去を行い、地震発生から約1日後となる12日の17時に全面通行止めの解除を行い、交通の確保を果たすことができた。

(2) 被害把握及び報告
① 震災直後のパトロール及び被害把握
 震災直後、庁舎内の安全確保をした後、ただちに建設局長の指示のもと、市民からの電話対応及び被害情報の集計等を行う対策班(維持管理課に設置)と市内全域の被害状況を把握し測量を行うパトロール班(土木部・道路部の全職員)を組織した。
 まず、緊急車両の通行や物資輸送に重要となる緊急輸送道路及び幹線道路の確認を中心に被害状況を確認するためパトロールを実施した。パトロールには、公用車を利用したが、数分ごとに何度も起こる余震の中、商業ビル等から退避し道路の中央分離帯付近に多くの方々が避難したため、追い越し車線の通行は出来なかった。また、地震発生が学校の下校時間に近かったことや、公共交通機関が運転を見合わせたことから、家族を迎える車等も多かった。
 さらに、NEXCO東日本は地震発生からわずか5分後に岩槻管制センターから管轄高速道路の全面通行止めを発令し、高速道路の安全確認を行ったため、千葉市内を通る京葉道路・東関東自動車道が通行止めとなった事も重なり、市内の幹線道路は類を見ない交通渋滞に陥った。そのため、パトロール車も交通渋滞に巻き込まれ、千葉市役所から美浜区の市境まで到達するのに通常30分程度だが、3時間を要するほどだった。
※第3配備
配備基準
1 市域に震度5強の地震が発生したとき。
2 気象庁が東京湾内湾に「大津波」の津波警報を発表したとき。
3 気象庁が東海地震予知情報を発表したとき、又は警戒宣言発令の報を受けたとき。
4 地震及び津波により局地災害が発生、又は津波により大規模な災害が発生するおそれがある場合で、市長が必要と認めたとき。
配備体制
1 突発的災害等に対する応急措置をとり、救助活動及び情報収集、広報活動等が円滑に実施できる体制とする。
2 事態の推移に伴い速やかに第4配備に移行しうる体制とする。
配備経緯
大地震直後第3配備
3月13日12:00~第2配備
3月14日18:00~第1配備

 ア 高速道路の通行止め期間
 現場からの報告については、防災無線を活用するように努めたが、無線回線数が少ないこと、一回の通話が3分に限定されること、無線基地局が少なく海浜幕張駅付近では電波が届かないなど、ほとんど防災無線は活用できなかった。また、携帯電話も通じ難かったことから、報告は、主に帰庁後の口頭での回答となり、被害状況の集計等を行う対策班への情報伝達は困難を極めた。
 以上のような状況から、幹線道路のパトロール報告は深夜にまで及んだが、幹線道路は概ね通行できることが確認された。
 イ 幹線道路の通行止め状況
 幹線道路のパトロールと並行して、エレベーターの閉じ込めの有無確認や都川における津波遡上の警戒パトロール、駅前広場、生活道路、横断歩道橋などの施設の調査をし、12日の明け方までかけ美浜区全体の道路状況の把握を行った。美浜区の生活道路では、噴出土砂が道路上を覆い尽くし通行不能な箇所が多数発生していることが確認され、危険個所については、パトロール時にカラーコーンやバリケードを設置し、通行止め等の処置を施し、最低限の安全対策を講じた。
 また、市民からは、3月11日~12日の2日間で中央区・美浜区で電話対応できただけで140件余りの通報があり、これらの通報も被害の把握に大いに役に立つものとなった。報告では噴砂による通行障害や舗装の隆起・沈下が多かったが、これらの調査報告の中に橋梁の被害が報告されたことから、13日に橋梁調査班を選定し、美浜区を中心に全橋梁の異常時点検を行った。(2班4人)
② 被害状況の初動調査
 情報を整理し、速やかな緊急対応が図れるよう対策班ではパトロール班からの報告を待つ間、千葉市建設業協会と連絡を取り、応急工事への対応準備や災害箇所把握・調査のための図面の作成などを行った。図面は道路台帳システムを利用して美浜区全体の図面を作成した。(2,500分の1の縮尺でA0サイズ50枚程度)
 また、国庫負担による災害復旧事業を行うには、その後、国による災害査定等が実施されることから、応急工事で現場を補修する前に被災状況写真の撮影や測量を行うことが急務となり、震災翌日から2日間、リボンテープや測量ポールを使った測量を職員(延べ31班97人)にて実施した。
 被災状況の把握と併せて、写真の撮影や測量を終了した箇所を美浜区一円の平面図(A0サイズ)「被災箇所図」に記載した。
 3日間の初動調査により、道路の被害延長は約44km、概算被害額50億円と想定され3月15日に市長に報告を行った。
③ 応急工事
 道路パトロール及び市民からの通報から液状化現象による被害が多数確認され、土砂撤去などの早期の応急対応が喫緊の課題となった。そこで、防災協定に基づき、土砂の撤去及び応急工事を千葉市建設業協会に依頼し、11日の24時には、応急工事に着手し、その後、一連の応急工事作業が実施されることになった。
 被災箇所図を基に、土砂撤去、応急復旧の場所や期間等について、毎晩、千葉市建設業協会と工程会議を行い全体の進捗管理を行っていった。土砂撤去については、中央・美浜土木事務所に対策本部を設置したが、噴砂土砂は、乾燥すると粉塵となり、また、締め固まると固くなり、土砂の取扱いや撤去作業は、思うように進捗が図れなかった。
 震災発生からおよそ1週間後の週末に、発生当時より懸念していた雨の予報が出された。水対策については、万全ではなかったため、排水の2次災害にならないように公園まわりに土嚢を用意し、市民の協力を得て、必要に応じて運搬していただく等、排水の緊急対策とした。
 噴出土砂の撤去が進むにつれ、道路の沈下、隆起及び陥没の規模が明確となっていき、災害復旧事業を行うための更なる調査が必要であることが判明していった。
④ 職員配備
 地震は、3月11日金曜日に発生したが、防災計画において震度5の場合は、第3配備となり100%の職員が動員されることとなっており、全職員が各作業に従事することとなった。しかしながら、災害復旧が長期化することが見込まれたことから、夜間の勤務においては、車・自転車等、自主的に通勤できる職員を帰宅させ、2交代の体制を作った。
 12日・13日は土・日曜日であり、災害業務に専念できたが週明けの月曜日からは、通常業務が加わったこと、また、職員の疲労の蓄積により、非常に繁雑な状態となった。そこで、災害対応に従事する職員と通常業務に従事する職員とを分けて対応することとし、また、夜間勤務については、平常時宿直当番制度により2名/日の職員にて緊急の電話対応等を行っているところを、震災直後から3月26日までは、全土木事務所で夜間対応することとした。
⑤ 直営作業
 千葉市には直営作業班(技能労務職)がいることから、全区の直営班が美浜区の土砂撤去作業、道路排水清掃作業に震災後から集結し作業にあたった。

(3) 土砂の発生及び被害状況
 液状化現象により大量の土砂が噴出し、一時道路上は湖のような状態に様変わりした。時間とともに水が引いた後は、大量の土砂が道路上に堆積し、路線バスや自動車が動けなくなったことや、駐車車両が埋まるなどの被害が発生した。また、道路側溝にも土砂が流入し、内部を土砂が閉塞したため、雨水排水が処理できない状況となった。道路内に噴出した土砂は、約8,740m3であった。
① 土砂の撤去方法
 ア 道路上の土砂撤去
 初動調査の結果、液状化現象により噴出した土砂は道路上に堆積するだけではなく、道路側溝や雨水管へも堆積し閉塞させたことが判明した。撤去にあたっては、まず道路上から進めなければ通行する車両や歩行者に支障を来たすうえ、道路側溝や雨水管の内部に堆積した土砂が撤去できないため、道路上を最優先に行った。
 さらに、雨水排水機能を応急的に復旧するために、道路上と合わせて集水桝及び取付管の土砂を撤去した。
 イ 道路側溝内部の土砂撤去
 道路上の土砂撤去作業完了後、道路側溝内部の土砂を撤去した。当初は、①と合わせて側溝内部の土砂を撤去したが、施工方法が異なる作業で同時に行うと効率が悪かったため、2つを切り離して行うこととした。ただし、道路側溝内部の土砂撤去が完了しなければ道路内に降った雨水が処理できないため、道路冠水する場所にはポンプや土のうを使って応急的に対応した。
 ウ 土砂の撤去作業
 地震発生の当日、重要な交通結節点である海浜幕張駅北口付近にて噴出土砂により延長19mもある連結バスが立ち往生し通行障害となっているとの通報が23時頃あり、最優先に土砂撤去をするよう努めた。作業は建設業協会の昼夜間におよぶ土砂撤去作業の末、翌日には車両を移動することが可能となり、ロータリー入口付近での折り返し運転などの対応で、最低限の通行は確保出来ることとなった。
 さらには、防災協定に基づき、千葉市建設業協会に道路上の土砂撤去を依頼していたため、翌日の12日から本格的な撤去作業を開始した。作業は、舗装や側溝等の既存道路施設を損傷することなく、その上に堆積した土砂のみを撤去する必要があることから、小型機械や人力により施工し、懸命な作業の結果、8日後の3月19日に作業が完了した。
 次に、道路側溝内の土砂については、防災協定に基づき千葉市建設業協会及び千葉市下水管路維持協同組合に協力を要請し、撤去作業を行った。作業としては、高圧洗浄車で側溝内に水を噴射し、吸い出して土砂を撤去した。
 道路上の土砂撤去が概ね完了してきたころから、宅地内の噴出土砂を道路上に放置される事例が相次ぎ、一度撤去完了した道路で、再度撤去するなどの手戻りが多く発生したことから、民地から出される土砂は土嚢袋に入れて頂き、自宅前に積み上げるよう市民に協力を要請した。
 美浜区役所が市民への周知及び土嚢袋の配布を行い、土木事務所が土砂を回収との役割分担を図った。
 エ 土砂の仮置場
 噴出した土砂を処理する中で重要なことは、置場の確保であった。道路上の土砂を学校に仮置きしたい旨の交渉を周辺住民が学校と行い、一時的な使用場所として学校敷地内に土砂を仮置きした地域もあった。土砂の置き場確保に苦慮する中、住民の自発的な動きと学校の協力を得られたことは非常に大きかった。しかし、学校では多量の土砂全てを搬入することができないため、幕張新都心で都市基盤整備をしている千葉県企業庁に事業用地の一部の借用を要請し、地震発生の翌日3月12日から事業用地の一部(美浜区若葉3丁目地内)に土砂を仮置することとなった。
 なお、側溝内に堆積した土砂は汚泥に分類されるため、中央・南部浄化センターへ搬入することとなった。

 オ 土砂の利用
 土砂は盛土の材料として土地造成等に利用できる有用な資源であることから、撤去した土砂については処分するのではなく、再利用できないかの検討を行った。
 まず、土砂を再利用するためには安全面で問題無いことを確認する必要があったため、撤去した土砂の地質分析を行った。その結果、土砂の安全基準を満たしていることが確認できた。
 次は、土砂の受入先についてとなるが、庁内の関係部局に問合せ、稲毛海浜公園内の「いなげの浜」において、浜の養浜(造成)に土砂を必要としていたため、撤去した土砂を搬入した。作業にあたっては、いなげの浜に工事車両を進入させるため、防潮堤をまたぐ構台を仮設した。海開きが行われるまでに搬入を完了させる条件があり、6月13日から6月24日までの短期間で約8,700m3の土砂搬入を完了させた。


4. 復旧に向けた対応

(1) 復旧体制
① 道路災害復旧事業班の設置
 震災発生直後から災害査定を念頭に入れながら、建設局の各課に区割りを行い被災写真の撮影及び測量、災害査定設計書の作成を行ってきたが、早期に道路の本復旧を図るため、設計、工事調整、工事管理、災害査定を行う専門部署として4/11(月)建設局職員21人による「維持管理課道路災害復旧事業班」を設立し、美浜区役所内に執務室を設置した。
 維持管理課への兼務辞令を19人に発令し、結成当初は総勢21人の体制とした。作業の進捗に合わせ、10月に4人、12月に2人の兼務を解除し、平成24年度からは6人体制で災害復旧事業に専念した。
② 自転車による移動
 道路災害復旧事業班が美浜区役所に設置され、美浜区の現場に近いことから、職員の現場等への移動手段として自転車を利用した。自転車での移動は、車に比べ駐車スペースが少なく、また小回りもきくため、非常に有効な移動手段となった。また自転車の利用が、非常に有効だったことから、本庁舎及び各土木事務所で、災害時の移動用として自転車の配備を行っている。
③ 土木部予算の確保
 災害復旧に必要な予算については、3月12日から、市の財政部局より「緊急修繕が必要なものについて」調査が開始された。
 震災後4日目の3月15日には、被害状況調査に基づく、道路の被害延長約44kmの復旧に必要な、応急工事費・測量・設計等の調査・委託費及び復旧工事に必要な工事費の概々算額50億円を算出し3月16日より財政部局との調整を開始した。
 ア 専決処分(3月25日市長専決)
 本復旧工事までに必要な、応急工事費及び調査・委託費については、その後精査を行い、3月23日に財政部局との調整が完了し、3月25日に2010年度補正予算として855百万円の専決処分を受け予算を確保した。
 イ 6月補正(6月24日2011年第2回定例会)
 本復旧工事に必要な予算については、専決処分で確保した調査・委託費により災害査定調書の作成を進め、5月16日からの「公共土木施設災害復旧事業国庫負担法」に基づく道路災1次の災害査定結果等を反映させ、2011年度補正予算として復旧工事費2,573百万円の予算を確保した。

(2) 災害査定
 災害復旧事業は、道路、下水道、公園などの公共土木施設の早期復旧を目的として「公共土木施設災害復旧事業費国庫負担法(以下「負担法」という。)」に基づき、災害復旧事業費の国庫負担を受け、災害復旧事業を行うものであるが、この国庫負担額を決定する際に、自治体が災害復旧にかかる事業費を申請し、それに対して国の災害査定が行われることとなる。

(3) 復旧工事と関係機関の調整
① 復旧方針・復旧仕様
 災害復旧事業の原則は、施設を原形に復旧(原形に復旧することが不可能な場合において従前の効用を復旧するための施設とすることを含む)することである。
 今回の道路災害復旧事業においても、道路を被災前の原形に復旧することを基本方針として、『平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震による災害』における道路災害復旧工法の基本方針について(2011年4月千葉市)を定め、復旧工事を行った。
 ただし、原形に復旧するよりも経済的に安価でかつ効用等が原形の施設と同等以上の効果が得られるもの等については、国土交通省及び地元自治会と協議のうえ、原形復旧ではなく、以下のように、これに代わる代替施設などを用いて復旧した。
 代替施設等を用いて施工した事例
 「タイル舗装」を「透水性平板ブロック舗装」で復旧
 施工個所例:JR海浜幕張駅、JR検見川浜駅
 全面的に復旧する個所については、既存のタイル舗装と同等品で安価かつ、平坦性・透水性などに優れた平板ブロックを用いた。
 「細粒度アスファルト舗装」を「開粒度アスファルト舗装」で復旧
 歩道舗装の材料については、開粒Asの方が細粒Asに比べ高価であるが、透水性・すべり抵抗等に優れているため、差額分に単独費を充当し、一部を除いて開粒Asで復旧した。
② 地元説明
 災害復旧工事の実施には、住民の理解と協力がなくては行えないため、地元住民へ工事内容等の説明を重点的に行った。特に被害が甚大であった地域については、自治会単位による全体説明会を開催した。また、被災状況が世帯ごとに異なることから、工事個所に隣接する戸建て住宅については、職員が世帯ごとに個別説明(約2,000世帯)を実施した。さらに、商業施設が集まる地区については、商業施設ごとに個別説明を行った。(これらの説明に要した職員は延べ約680人)
③ 道路占用施設の復旧工事との工程調整
 ア 工程調整会議
 東日本大震災により、道路に埋設されている下水道、水道、ガス等や道路上の電柱等の占用施設についても破損や傾動などの被害を受け、各関係機関において、それぞれ復旧工事をする必要が生じた。道路工事を行うにあたっては、これらの各関係機関・関係企業の占用施設の復旧工事を道路工事よりも先に完了させる必要があるが、各復旧工事が輻輳しており、道路工事が遅れる要因となってしまう。そのため、工事を円滑に進めるには、工程調整を図る必要があり、当初から各関係機関・関係企業と工程調整会議を実施した。
 イ 国との変更協議
 災害査定で決定した工法などの内容に対して、これらの設計を変更する場合には、軽微な変更を除き、国土交通省水管理・国土保全局防災課と協議をし、主務大臣(国土交通大臣)の同意を得なければならないこととなっている。千葉市においては、全47地区中30地区で変更協議を実施した。
④ 成功認定・会計検査
 国庫負担の対象となった災害復旧事業を実施したときは、査定決定(変更協議を実施している場合は、変更協議で同意を受けた内容)どおりにその目的を達成しているかどうか、国土交通省水管理・国土保全局防災課(都市災の場合は、国土交通省都市局都市安全課)による成功認定を受けなければならないこととなっており、この成功認定において、災害復旧事業の事業費を精算し、最終的な国の負担金を決定する。また、その後、該当する災害復旧事業について会計検査院による会計検査を受検する。
 ア 道路災・橋梁災の成功認定
   期間:2012年8月31日(金)
   検査件数:45地区
   (※2012年度に繰越した2つの地区については、2013年度以降に成功認定を実施予定。)
   所管:国土交通省水管理・国土保全局防災課
   検査官:2人
 イ 都市災の成功認定
   期間:2012年6月28日(木)~29日(金)
   検査件数:1地区
   所管:国土交通省都市局都市安全課
   検査官:2人
 ウ 会計検査(道路災・橋梁災対象)
   国土交通省道路局所管分
   期間:2013年1月15日(火)~1月18日(金)
   会計検査院
   検査官:4人
 エ 会計検査(都市災対象)
   国土交通省都市局及び水管理・国土保全局下水道部所管分
   期間:2013年1月7日(月)~1月11日(金)
   会計検査院
   検査官:4人
 上記の日程において、道路・橋梁及び都市災害復旧事業が対象となる会計実地検査が行われたが、特段問題がなく完了した。


まとめ

 道路については市民のライフラインであり、救援物資の輸送路でもあります。災害時には早期の復旧を求められます。今回は液状化した土砂が問題となりましたが、一年半の短時間で復旧出来たのは、建設局が一丸となり各業界団体との連携・協働が図れたことと、自治会をはじめ多くのマンパワーが要因だと思います。
 今後の課題としては、多くの自治体職員が削減されるなか、どのような形で市民の安全で安心した生活を守っていけるのかが重要になります。

美浜区磯辺
美浜区新港
美浜区新港