【自主レポート】

第36回宮城自治研集会
第3分科会 石巻に虹を架けよう~被災地の今を見る、知る、触れる、考える~

熊本地震に係わる京都市上下水道の支援状況等について


京都市水道労働組合 臼居  聡

1. はじめに

 4月16日未明、熊本県熊本地方を震源とするマグニチュード7.3の大地震が発生した。その2日前の最大震度7の前震を含め、複数回にわたり最大震度6弱以上の強い揺れが熊本・大分両県をはじめ九州各地を襲い、多数の家屋倒壊や、大規模な土砂崩れによる被害等、各地で甚大な被害が生じた。一連の地震災害によって亡くなられた方々に謹んで哀悼の意を表すとともに、負傷された方、住まいを失った方に心からお見舞い申し上げます。
 この地震によって、水道、エネルギー、交通機関などの生活インフラに大きな影響が出ており、一時的には多数の住民が避難所での生活を余儀なくされた。現在では、食料や生活物資が不足する事態は減ってきているが、今後は避難の長期化による生活面の課題、特に失業者が増え雇用への影響も懸念される。
 このような状況の中、京都市上下水道局としても現地で支援活動を行った。本稿では、その内容について報告する。


2. 京都市上下水道局の支援状況等

(1) 応急給水活動について
 熊本市における応急給水に係る派遣要請に基づき、4月16日(土)に第1次応急給水部隊が被災地に出発して以後、第4次隊が応急給水拠点の縮小に伴い活動を終了した5月2日(月)までの17日間、合計36人(組合員22人、管理職14人)の職員が、熊本市内7箇所の拠点において、応急給水活動を行った。
① 応急給水部隊について
  ・派遣職員数  第1次隊 ―― 12人、第2~4次隊 ―― 各8人×3隊 計36人
  ・車両     給水車(2t)2台、先導車1台、トラック1台 計 4台
② 応急給水活動箇所について
  ・熊本市内7箇所 ―― 熊本市役所、白川公園、城西小学校、城西中学校
             花園小学校、荒尾団地公園、池亀公園
③ 応急給水活動の内容について
 給水拠点として主に避難所での給水活動を実施。
 ア 給水活動箇所(避難所等)で拠点を構え従事するグループや、補水(給水車の給水タンクへの補充)をするための遊撃グループ等、役割分担を明確にし、終日活動に従事した。
 イ 第1次隊派遣期間の途中から、熊本市内の行政区ごとにリーダー都市を決定し、リーダー都市が全てを運用することとなった。京都市は熊本市西区のリーダー都市担当。西区担当には全国から応援に駆け付けた各都市が従事した。
  (豊中市、岐阜市、佐世保市、長崎市、福知山市、木津川市 等)


○ 応急給水活動の様子
   

 

 
   


(2) 応急復旧活動について
 熊本市における給水管の修繕に係る派遣要請に基づき、職員4人が第1次隊として4月27日(水)に被災地に出発して以後、第3次隊が活動を終了した5月11日(水)までの15日間、合計18人(組合員14人、管理職4人)の職員が、給水管の漏水調査及び修繕などの応急復旧活動を行った。
 なお、修繕工事には、京都市公認水道協会及び指定給水装置工事事業者合計11社23人に協力していただいた。
① 応急復旧部隊について
・派遣職員数  第1次隊 ―― 4人、第2~3次隊 ―― 各7人×2隊  計18人
 (京都市公認水道協会及び指定給水装置工事事業者 合計11社23人)
・車両     計2台
② 応急復旧活動箇所について
・熊本市全域をブロック分けし、該当地域を担当。(主に中央区)
③ 応急復旧活動の内容について
・京都市が受け持つ復旧対象地区について、音聴調査による漏水箇所の特定及び給水管修繕工事に従事した。

○ 応急復旧活動の様子


 
 


(3) 下水道の被害状況調査について
 熊本市から、「21大都市災害時相互応援に関する協定」及び「下水道災害時における大都市間の連絡・連携体制に関するルール」に基づき、下水道の被害状況調査(下水道管きょやマンホールの破損、隆起等の状況確認)に係る応援要請を受けて、4月19日(火)に第1次隊が出発して以後、第6次隊が活動を終了した5月26日(木)までの38日間、合計20人(組合員14人、管理職6人)の職員が、下水道の被害状況調査に従事した。
① 被害状況調査部隊について
・派遣職員数 第1次隊から第6次隊、第1班から第9班で編成 計20人
       (第1、2班 ―― 3人×2班、第3~9班 ―― 2人×7班)
・車両    計2台
② 被害状況調査の内容について
・第1次隊 ―― 現地での事前調査及び被害状況調査等を実施。
・第2次隊以降 ―― 現地での2次調査(TVカメラによる管きょ内の詳細調査等)及び資料整理を実施。


○ 下水道の被害状況調査の様子


 


(4) 人的支援のための職員派遣について
 行財政局からの熊本地震に係る人的支援の依頼を受けて、熊本市において合計4人が、避難所運営補助、家屋被害調査などの業務に従事した。
① 避難所運営補助について
・5月4日(水)から11日(水)までの8日間、職員2人(組合員)が熊本市内の避難所運営補助業務に従事した。
② 家屋被害調査について
・5月18日(水)から24日(火)、24日(火)から31日(火)までの延べ15日間、職員2人(組合員)が熊本市内で家屋被害調査業務に従事した。

(5) その他
 その他、物資支援や職員有志による募金、義援金箱の設置等に取り組んだ。
① 物資支援について
 ア 災害用備蓄飲料水「疏水物語」    36,000本
 イ 給水容器             約3,000個
② 募金・義援金について
 ア 職員有志による募金(京都市水道労働組合と上下水道局の連名)
                    602,746円
 イ 義援金箱の設置
  a 本庁舎、営業所、琵琶湖疏水記念館 6,597円
  b 一般公開イベント会場(鳥羽・蹴上一般公開)
                   1,026,775円


3. 現地に派遣されて

 私は、4月21日(木)に現地入りし、活動を終了した27日(水)までの7日間、応急給水部隊の第2次隊として派遣された。第2次隊の、基本的な1日の流れについて以下に示す。

 1日の流れ 

4:30 宿泊場所を出発
6:00 本部でミーティング
7:00 給水活動開始

給水活動 : 2t給水車
現場移動 : 先導車1台

21:00 給水活動終了
22:00 本部に報告、給水車に補水
23:00 宿泊場所に到着

 

 派遣期間当初は、本震発生から1週間と経たない状況であり、熊本市上下水道局や、給水拠点である避難所でも、人手不足や情報の少なさからか、かなりの混乱が発生していた。そのような中、熊本市西区のリーダー都市として、4つの給水拠点(城西小学校、城西中学校、花園小学校、荒尾公園)の運営を任され、西区担当である各応援都市の管理や指示、各給水拠点からの補水依頼を受けての遊撃部隊への指示、熊本市上下水道局本部での全体会議の出席等、その時々での判断や対応に追われた。
 応急給水活動としては、避難所でもある西区の城西小学校での活動に終日従事した。城西小学校は、自衛隊の災害派遣部隊も常駐しており、市内のなかでも大きめの避難所であった。給水時間は7時から21時までであり、宿泊場所からの移動や本部でのミーティング等も含めると、4時半から23時過ぎまで、1日のうち約19時間を2交代制で活動に従事した。
 このような状況でも頑張ることができたのは、なにより「被災された方の力になりたい」その一心であった。また、被災されていても気丈に振る舞ってくれた現地の方、特に、子どもさんの声で頑張ることができた。私たち第2次隊が意識していたのは、「水を届けるだけでなく、笑顔や元気も一緒に届けたい」という思いであり、お礼の手紙や感謝の言葉をいただき、被災された方々と直接接している時間は短くとも、「相思相愛」であったように思う。


 

4. 労働組合としての取り組み

 現時点で、78人の職員を被災地に派遣し、内、54人にも及ぶ組合員が現地で支援活動を行った。私が派遣されている間も、労働組合としてさまざまな案件について、協議・交渉、バックアップ等を行った。取り組み内容について以下に示す。

(1) 現地に派遣された組合員の労働条件を当局と協議・交渉
 ⇒派遣組合員からは、「労働組合が当局と、派遣時の労働条件について協議、交渉してくれるので、安心して活動に従事できる。」との声も。

(2) 派遣組合員を通じての現地の情報収集
 ⇒機関紙を発行するなどして、全組合員への情報発信、情報共有に努めた。

(3) 募金・義援金の取り組み
 ⇒募金・義援金としては、職場での混乱を考慮し、当局に働きかけ、災害時には垣根なく「被災された方の力になろう」という思いから、京都市水道労働組合と京都市上下水道局の連名でカンパ活動を行うこととした。
 特に震災発生後、早急な現地入りが求められたこともあり、当局との確認事項も整理できないまま現地に派遣された組合員が多くいた。それにも関わらず、自ら手を挙げ、現地での活動に従事してくれたのは、組合と組合員の良好な信頼関係の表れであるように思う。
 また当局とも、派遣組合員の労働条件や環境等についてスムーズに協議・交渉することができた。これは、東日本大震災後の災害派遣の経験や実績あったからこそである。


5. さいごに

 このような震災や災害が京都で起こったら。今回の熊本地震に係る支援をきっかけに、いろいろな課題が浮き彫りになった。受け入れ態勢や指揮系統の確立、被害規模の想定、スピーディーな情報共有、また京都市の他部局間との連携や情報共有等、乗り越えるべき課題は山積している。
 しかし、現地での活動を通じて強く感じたのは、「人と人とのつながり」の大切さや強さであり、「助け合い・支え合い」の精神である。現地では、避難所生活1週間が過ぎた頃から、ごく自然とリーダー的な人物が現れ、私たち派遣職員への協力や地域のボランティアの方々への指示を出していただき、避難所運営における協力体制が確立されていった。この「相互扶助」の精神を忘れなければ、どんな課題も乗り越えられると確信している。