【自主レポート】 |
第36回宮城自治研集会 第3分科会 石巻に虹を架けよう! ~被災地の今を見る、知る、触れる、考える~ |
東日本大震災を踏まえた国の想定により、日本最大の津波予想が出された町の苦悩と、その苦悩から見出した新たな町の取り組みについて述べるとともに、町の取り組みの中での筆者の気づきを報告する。なお、本文中の「震災前過疎」とは、筆者らの造語であるため、「"最悪"想定とどう向き合うか~『2つの災害観』と『関係性の再構築』によるアプローチ」、『第34回兵庫自治研集会第3分科会レポート・報告書集』を参照されたい。 |
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1. はじめに
34.4mという想定津波高により、私たちの暮らす黒潮町は「存続の危機」にさらされた。 |
2. これまでの黒潮町の防災体制と住民意識
黒潮町は、県都高知市から約100km西に位置している。気候は温暖で、県内でも風水害が少ない地域であり、実際のところ近年は大きな災害は発生していない。これは高度経済成長期においても、爆発的には人口が増加せず、危険区域に住宅地があまり拡張していないからかもしれない(ただ、急峻な山地を控えた土地柄、油断はできないのは当然である)。 |
3. 「津波予想高34.4m」の衝撃と防災の町への転換
東日本大震災を受け、国中の様々な仕組みが大きな変化を求められたのはご案内のとおりである。もちろん、私たちの町でも様々なものが見直されることとなった。 想定が出ただけでこのような危機的な状況を生んだということは、ある意味「防災意識」は高いのかもしれない。しかし、このままでは弱体傾向にある自治体としての機能が一気に低下し、自治体経営が立ち行かなくなる危惧があった。この「2つのあきらめ」を解消することが大命題となり、町として住民の不安を払拭し、前向きな対策を明確にするため「犠牲者ゼロ」を目標に掲げ、徹底的に防災対策を推進することとしたのである。 |
4. あきらめさせないための津波対策
まずは避難放棄対策として、約200人の町職員を地域の防災担当とする「防災地域担当制」を導入した。地域担当職員が、各地域の懇談会に参加し、ワークショップを運営、まち歩きで避難経路の点検を行い、地域ごとの課題について意見交換を経て整理し、防災担当セクションに集約した。新想定公表から約半年で300路線近くの整備計画を作り上げた。おそらく住民との合意形成を経た点を加味すると特筆すべきスピードで事務処理をしたと言えるのではないかと思う。現在は、その計画をベースに粛々と避難道の整備や避難タワーの建設を進めている最中である。 |
5. もう一つのあきらめ対策、新産業創造事業(we can project)
次に町が取り組んだのは「震災前過疎」への対策である。住民が町から出ていくことは、自治体経営に直接ダメージを及ぼす。
雇用の場を守るべく会社を立ち上げたものの、地域に根のないベンチャーであり、かつ民業に縁のない町役場が経営に主体的にかかわる体制であるため、経営は困難で厳しいものはある。しかし、町として覚悟を決め自立した産業化をめざすからには、まずはしっかりとした製品作りに徹しつつ売り上げを伸ばし、企業体としての基礎体力をつけることが急がれる。
こうした機能を生かし、「雇用」と「外商」という行政目的を担った第三セクターとしての役割をフルに発揮できるよう育てなければならない。町内事業者の販路として、事業者が生業を続けることにつながれば、町の会社としての存在価値を高めることもできるし、町の産業が維持できる。つまり町の未来への「希望」が生まれ、「夢」が育まれることになるのだ。 |
6. 結びに、まちづくりに夢を
「震災前過疎」「災害減」など、自治体経営に影を落とす負の要素に対し、何をすべきだろうか。 |