【自主レポート】

第36回宮城自治研集会
第4分科会 安全な場所・逃げる場所ってどこなの? ~防災を知ろう~

 昨今頻発している予想もつかない大規模災害に備え、糸島市職員労働組合現業評議会が2011年から独自に取り組んでいる防災訓練は、2015年で5回を数えることとなりました。訓練風景はNHKで放送され、また新聞等でも紹介されるなど、大変注目を浴びています。今後もこの取り組みを継続し、自治体の現業職員が担う役割を広くアピールしていきたいと考えています。



防災への取り組み
―― 非常時における給食調理員の役割について ――

福岡県本部/糸島市職員労働組合・現業評議会

【目 次】

1. 非常時における給食調理員の行動計画
2. 防災研修
 (1) 2011年8月22日(月) 研修報告
 (2) 2012年8月23日(木) 研修報告
 (3) 2013年8月21日(水) 研修報告
 (4) 2014年8月20日(水) 研修報告
 (5) 2015年8月19日(水) 研修報告


1. 非常時における給食調理員の行動計画

<災害発生時対応>

給食室・ランチルームの安全点検
① 万一の出火に備え、初期消火対策。
② ガス・水道・電気・ボイラーの復旧状況。
③ 窓ガラス・壁・天井・床の亀裂、落下等の確認。
④ ガス・水道・電気・ボイラーの復旧に伴い業者に確認。

飲用水道水の安全確認手順
① 長期休業終了時と同様に、給食室のすべての蛇口から流水し、その後次の点検を行う。
 ア 水道水に濁りや異常はないか確認をする。(異味・異臭)
 イ 試薬又は測定器を用いた水質検査をし、残留塩素濃度は0.1mg/L以上であるかを確認する。
② ①の結果、アまたはイの異常がある場合は、校長・学校教育課へ連絡し、指示を受ける。
③ ①の結果にかかわらず、水道(配)管の破裂・ずれ、水漏れ等の修理を行った場合は、校長・学校教育課へ連絡し、指示を受ける。
④ 火災時に備え、水槽やポリバケツ等に水を汲む。

確認ポイント
 井戸水(学校の施設内)の蛇口がどこにあるか確認。
 防災時に使用できる食器、箸の把握。
 地域に飲料用の湧き水があるか把握。

応急措置
① 避難者に対し備蓄食材や供給された食料を均等に配分できるよう人数の確認を行う。
② 災害発生当初は混乱が予想されるため、調理を必要としないものから配分する。
③ 教育委員会は学校給食施設・設備及びパンその他の給食物資の納入業者の被害状況を速やかに把握し、必要に応じ学校給食の献立変更または中止などの措置をする。

動線図

2. 防災研修

(1) 2011年8月22日(月) 研修報告
 調理員18人が参加し、回転釜による炊飯研修を実施しました。
  A 7.5キロ……水から炊飯 (水加減1.3倍)
  B 7.5キロ……熱湯による炊飯 

A 水から炊飯時 間B 熱湯による炊飯
洗米し、ザルにあげておく。8:30洗米し、ザルにあげておく。
米を水につけ、強火にかける。9:30お湯を沸かす。
 9:35沸騰したお湯に米を入れ強火にかける。
沸騰して3分強火で炊く。9:40沸騰して3分強火で炊く。
泡が立ったら弱火。9:43泡が立ったら弱火。
    12分      12分
火を止め、蒸らす。9:50火を止め、蒸らす。
    15分      15分
出来上がり。10:05出来上がり。

Aは ふんわり、米の甘さが引き立っていた。
Bは パラッとしてカレーやピラフによい。
  ※ 米の量が大量になった場合、沸騰で強火の3分の間に1度混ぜた方が良い。
  ※ 無洗米の場合は、水に浸水し、ザルにあげ、1.3倍の水加減で炊く。

 
 
 
回転釜炊飯と午後の研修の様子

(2) 2012年8月23日(木) 研修報告
 2012年8月23日(木)野外での炊き出しを想定して加布里漁港にて炊飯の研修を行いました。

○炊飯のマニュアル
 米5キロ 水7L
火加減など時 間
無洗米を水に浸水する1時間
火にかける(強火)14分
蒸気がでて1分1分
弱火にする12分
火を止める 
蒸らす10分~15分

 
 
 

 午後からは、志摩庁舎の会議室で研修の反省や野外での炊き出しの注意点等について話し合いました。

○野外で炊き出しする場合
※一人暮らしや寝たっきりの方、乳幼児など避難所に来るのが困難な方への食事の配慮

 

(3) 2013年8月21日(水) 研修報告
 2013年8月21日(水)志摩ふれあいセンター広場で野外での炊き出しを想定した炊飯を行いました。
 野外での炊き出しは昨年に続き2回目の実施であり、昨年のマニュアルを参考にできたこともあって、事前の準備等を含め手際よく実施できました。

○炊飯のマニュアル
 米5キロ 水7L
火加減など時 間
無洗米を水に浸水する1時間
火にかける(強火)14分
蒸気がでて1分1分
弱火にする12分
火を止める 
蒸らす10分~15分
 

 
 
 

[研修の反省と来年度の研修内容について]
・今回は2回目の野外での研修ということで、前準備の器具、道具、材料分担等の手際が良く調理もとてもスムーズでした。
・ガスコンロ、炊飯釜の保管場所と数量の把握が必要ではないか。
・ガス会社の電話番号を把握しておく。
・来年度の研修について
 寒い時期のメニューや在庫食材で炊き出し。
 缶詰を使って作る炊き込みご飯等。
 炊飯釜で汁物または炒め物等してみる。
 手軽に使用出来るカセットコンロでどの位の量に対応出来るか等。
 他市町村の防災に関する情況を調べる。

 

(4) 2014年8月20日(水) 研修報告
 今回で3回目となる野外炊き出し訓練を、2014年8月20日(水)志摩ふれあい広場で実施しました。
 今回は、新たな取り組みとして、栄養士による講習を実施しました。

<当日のスケジュール>
8:15~8:50会場準備(机4台・椅子12脚志摩庁舎より運ぶ)
志摩ふれあい広場に器具を運び入れる
9:00~10:30教育事務所 鏡栄養士を講師に迎え
「野外防災炊飯での衛生について」研修
10:40~12:00野外炊飯実習
12:00~13:00カレー提供・片付け
14:00~15:30防災研修の反省
15:30~17:00セクシャルハラスメント研修
職場会議

教育事務所 鏡栄養士による研修

 

・災害時の野外炊飯の衛生は、学校給食の衛生が基本。
 違うところは、野外という事で、外から物が飛んできたり、揺れにより天井から物が落ちてくることがあるのでシート等で外からの物の侵入を防ぐことやラップやシートで覆うことで異物の混入を防ぐ。特に食器はビニール袋に入れるなどして注意する。
 また、仮設テントなどを利用するときは、直射日光が当たらないようにする。
・学校給食の衛生と同じところは、まずは水で手を洗うことが基本で、調理する人だけでなく食べるだけの人でも手洗いをすることが大切。

 
 

・肉や卵などは保冷庫に保管し、取扱い時は使い捨て手袋を使用する。肉は、野菜から離れた場所で取り扱う学校と同じです。
・容器は、十分に洗えないときは使い捨ての容器などを利用する。
・野菜のサイズを揃える事で、煮え方を同じにする。
・提供前に十分に加熱する。
・手袋やラップ、乾物、ふりかけなどの準備については計画しておく必要がある。
・手袋がないときは、肉の使用を控え、レトルトのツナ缶や野菜中心の献立にする。
・牛乳パックでごはんを炊く実習などしている事例があるので、今後の参考にしてみては。

 

野外炊飯

 

 今年度で4回目となる防災研修です。
 志摩ふれあい広場で野外炊飯をしました。
 カセットコンロ12個を使ってごはんとカレーを作り研修しました。
 米7㎏を6個の鍋で炊きました。
 カレーは2個の鍋で肉と玉ねぎを炒め、4個の鍋で人参とじゃがいも、かぼちゃを鶏ガラで煮ました。
 味付けは肉と煮た野菜をあわせて、3個の鍋でカレーを仕上げました。
 今回は、志摩庁舎の方に事前に200円でカレーの購入をお願いしていたので、25人の方がふれあい広場に買いに来てくれました。


 

[野外炊飯の反省・まとめについて]
・野外のため風があり、沸騰するまでに時間がかかる。(風対策が必要)
・カセットコンロで作ってみて、かなり大きな鍋が使用できることがわかった。
・水の準備等をしていたので、スムーズに出来た。(実際に水の確保が重要では。)

(5) 2015年8月19日(水) 研修報告
 東日本大震災が発生した2011年から始めた防災研修。5回目となる今回は、台風や地震など大規模災害の発生を想定した野外炊き出し訓練を市役所前の丸田公園で行いました。
 避難所での調理場を想定し設営したテントでは、事前に作成した安全面・衛生面を点検するチェックシートにもとづき、消毒場の設置やガスコンロの適切な配置を迅速に行いました。
 今回の訓練では、限られた数のガスコンロや調理器具しかないなか、100食分のカレーと白ごはんの炊き出しを行いました。給食調理員として培ってきた日頃の衛生知識を活かし、安全・安心な炊き出しを心がけることはもちろんのこと、調理の手順を意識することで、予定していた時間よりも早く完成し、短時間で大量の支援にも対応できることが確認できました。
 また、白ごはんについては、災害時に炊飯器具がないことも想定し、「防災用炊飯袋」を使用する試みも併せて実施しました。

   

 訓練に訪れた市民の方には、無料でカレーライスを振る舞うと同時に、災害時に備えた食料の備蓄状況や防災用品の有無等についてアンケート調査を実施することで、地域の実情を把握することができました。アンケート結果からも、防災に対する意識は、まだまだ高いとは言えず、啓発活動を今後より一層行っていく必要があると考えます。
 今回の訓練をもとに、災害発生時の炊き出しに必要なリストや、安全面・衛生面を考慮した調理器具等の配置図などを作成しマニュアル化することで、実際の災害時には迅速かつ適切に支援が行えるよう努めます。