【自主レポート】

第36回宮城自治研集会
第6分科会 復興・再興・新興!! ~消滅でも創生でもない地域づくり~

挑戦し続ける町へ


北海道本部/津別町職員組合

1. 津別町における人口減少を取り巻く状況

(1) 人口動向
 津別町の総人口は、1960(昭和35)年の15,676人をピークに減少し、2010年(平成22年)の総人口は5,646人となっており、ピーク時に比べ64.0%の減少となっています。
 津別町における結婚・出生に関する傾向をみると、津別町の20歳~39歳の有配偶率は男女ともに減少傾向で推移しており、また、2010年の出生数における30歳以上の母が生んだ子どもの数は5割を超え、晩産化が進んでいます。
 一方、人口の傾向をみると、「15歳~19歳」「20歳~24歳」の進学・就職による転出が多く、特に「15歳~19歳」は恒常的に転出超過となっています。また、中高年世代においては、子どもの小・中学校への進学、高齢者の介護等を機に転出するケースもみられます。こうした状況が今後も改善されなければ、2040(平成52)年における津別町の総人口は2,845人まで減少すると予想されます。
(出典)2010年までは国勢調査(合併も考慮)、2015年以降は「日本の地域別将来推計人口(平成25(2013)年3月推計)」(国立社会保障・人口問題研究所)に基づき作成

(2) 経済・社会
 津別町の販売農家の世帯員数は、1995年の1,434人から2010年には775人に減少しており、今後も農村部の人口減少が進むと予測されます。他方、人口減少に伴い、津別町の農地は年々集約化が進んでおり、1戸当たりの経営耕地面積は、1995年の16.7haから2010年には26.2haに拡大しています。
 林業においては、林業従事者数の減少と高齢化が進んでおり、60歳以上が、5割弱となっています。津別町は、町の総面積(716.60km2)の86%が森林であり、古くから木材の加工・木製品の製造など、林業に関連する産業が発展してきました。
 津別町を代表する製造業である「木材・木製品製造業」工業出荷額は137億6,000万円となっており、オホーツク管内(298億7,000万円)の46.1%を占めます。また、「木材・木製品製造業」就業者数は、397人となっており、オホーツク管内の木材・木製品製造業の就業者数(1,518人)の26.2%を占めています。
 こうした人口動向の現状と将来推計を踏まえ、津別町では①「まちなか地区」の10年間の人口維持、②「まちなか地区」以外の「周辺地区」における基礎的な生活関連サービスの維持を「津別町まち・ひと・しごと総合戦略」において基本方針としています。
 この2点の基本方針を踏まえ、津別町において取り組むべき事業として考えたのが以下の3点です。まず、一つ目は「アセットマネジメント事業」、二つ目に「空き家活用事業」、そして最後に「再生可能エネルギー事業」です。それぞれの事業について以下に示します。


2. アセットマネジメント事業

 日本では、公共施設等の老朽化対策が上記のように大きな課題となっています。地方公共団体においては厳しい財政状況が続く中で、今後、人口減少等により公共施設等の利用需要が変化していくことが予想されることを踏まえ、早急に公共施設等の全体の状況を把握することが必要になっています。さらにこのように公共施設等を総合的かつ計画的に管理することは、地域社会の実情にあったまちづくりを進める上で不可欠であるとともに、昨今推進されている国土強靭化に資するものとしています。
 そのような中、津別町においても今年度「公共施設等総合管理計画」を策定します。また、この計画と並行して、公益社団法人土木学会技術推進機構の「地方公共団体におけるアセットマネジメントシステムモデル事業」に選定され、土木学会、事業支援者である筑波大学とともに「積雪寒冷地の低密度自治体におけるアセットマネジメント最適化計画策定事業(以下、アセットマネジメント事業)」を行います。事業の概要は、前述した通り面積716.60km2、人口約5,100人、人口密度は7.1人/km2と低い状況の中、人口1人当たりのインフラ維持管理コスト負担が極めて大きな課題となっています。公共施設等の情報、データ管理及び維持管理データのシステム化による総合的な管理手法を整備し、持続可能なアセットマネジメント手法の確立を図ります。その中で築57年が経過する耐震化未済の役場本庁舎は、中心市街地の再整備など公共施設の統廃合や再配置計画の策定手法を検討する中でその他の公共施設等のアセットマネジメントも適切に行える体制を整備し、持続可能な自治体運営のための施設として整備します。役場本庁舎の再整備を検討する中で人口減少・過疎化、積雪寒冷地の課題先進地のアセットマネジメント手法を確立することで、課題解決先進地となり、他自治体の先進地モデルとなることを目標とします。そのためには公共施設等総合管理計画およびアセットマネジメント事業を行うための固定資産のデータ整理を早く行う必要があります。データの整理終了後はシステム構築に関する具体的な検討を行い、後述する再生可能エネルギー事業と関連して、今後は公共施設等において再生可能エネルギーを導入する際の参考データとしても利用可能です。


3. 空き家活用事業

 津別町では、2013年度より「津別町空き家等撤去促進事業」を行っており、町の予算1,000万円(約20件分に相当)で、解体費用の1/2、上限50万円で申請者に対して補助を行っており、今年度で4年目を迎え、累計で申請件数は80件となり、町内の危険な空き家の撤去については順調に進んでいます。また、空き家の利活用として、「津別町空き家等情報登録制度」を行っており、現在2件の登録しかありませんが、今後は、「北海道空き家バンク」との連携を図り、空き家の利活用にも積極的に取り組んでいきたいと考えています。2017年度には「空き家等対策計画」の策定を予定しており、その準備として昨年度のまちなか再生事業の一環として協働相手である筑波大学の先生や学生の皆さんの協力を得て、事前に固定資産台帳、住民基本台帳、水道データ等を利用して作成したデータを基に市街地における空き家を調査し、データベースを作成しました。今後は空き家バンク等への登録を所有者の皆さんに対し積極的に行い登録件数を増やし、その結果として少しでも人口減少の抑制に繋がればと考えています。

図1 津別町空き家等情報登録制度の登録・利用の流れ


4. 再生可能エネルギー事業

 津別町では、役場庁舎、中央公民館、農業トレーニングセンター、温水プール、特別養護老人ホームおよびデイサービスセンター(2014年民間企業に譲渡)、認定こども園の9施設に対して町内で製造された木質ペレットを燃料としたペレットボイラーによる暖房用や給湯用の熱を供給しています。そして現在、西町団地4棟16戸(公営住宅2棟8戸、地域優良賃貸住宅2棟8戸)と団地内にペレットボイラーを設置した熱源供給施設も建設中で、そこから各住戸に暖房用の熱を供給する予定で、積極的に木質バイオマスエネルギーの導入を行っています。今後はエネルギーをバランス良く効率的に使用できるようなシステムの構築が必要であると考えています。具体的には、地域熱供給システムのように、供給エリアを増やし、規模の大きいボイラーにより暖房だけではなく給湯も供給できるようにし、エネルギーの地産地消を行うことです。今まで町外へ流出したお金を地域内で回すような仕組みを作ることにより、雇用の創出や地元企業への利益にも繋がることが考えられます。
 このような仕組みづくりを行うべく、2015年度に津別町モデル地域創生プランを策定し、その中で公民連携による木質バイオマスを活用した熱エネルギーの供給について考えており、「津別町再生可能エネルギーマネジメントセンター(仮称)」の設置をめざしています。これは再生可能エネルギー導入のマネジメントを請け負う公民連携事業体であり、エネルギーの供給だけではなく、エネルギー消費状況等について調査分析し、施設に最適なエネルギーを導入するためのコンサルティング業務を展開することも想定できます。これ以外にも他のエネルギー事業を行うべく、地元企業や一般の住民の皆さんも一体となり、共に定期的に勉強会等を行っており、広く理解していただけるように努めています。


5. まとめ

 津別町ではここで記載している以外にも様々な事業を行っていますが、やはり重要なのは持続可能な町として存在し続けるためには、何事にも挑戦し続けなければならないということです。単に事業を行えば良いわけではなく、人々が生活していく上で必要不可欠なもの、それは「衣食住」であり、ここを軸にしなければならないと考えています。今回のレポートで記載している内容は、これを基本とした事業です。私共のような小規模自治体にとっては、今後ますます財政状況や職員減少等で職場環境が厳しくなる中で、ある程度の効率や合理性が求められ、自治体職員だけでは乗り切れない問題や課題に直面し、住民の皆さんと協働する機会もこれから増えてくることが考えられます。今津別町はそのターニングポイントであり同時に新たなスタートラインに立っていると感じています。