【自主レポート】 |
第36回宮城自治研集会 第6分科会 復興・再興・新興!! ~消滅でも創生でもない地域づくり~ |
宇宙開発という人類の大きな夢の一翼を担う重要な施設が宮城県角田市にある。 |
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1. はじめに 本稿では、人口減少が不可避な現実の中で、宇宙をテーマしたまちづくり再生の視点から、宮城県角田市の宇宙関係団体との連携や角田市の宇宙に関してのまちづくりの事例をケーススタディとして検討し、地域の資源を最大限に活用し、地域再生に向けた取り組みを提案するものである。 |
2. 角田市の概要 角田市(かくだし)は宮城県の南部、仙台市より南へ約40kmの伊具盆地内に位置する豊かな田園都市である。市の面積は147.58km2(東西約15km、南北約18km)で、阿武隈川が南から北に貫流している。人口は約30,000人、約11,000世帯ほどであり、少子高齢化の進展により、人口減少の一途をたどっている。人口減少が不可避である現実を踏まえ、人口減少に伴う地域の変化に柔軟に対応しつつ、地域の資源を最大限活用して地域が抱える課題の解決をすることが求められている。 |
3. 明日の宇宙を拓くまちづくりの背景 2012年から米、豆、梅、夢、姫の5つの「め」の魅力で角田ブランドづくりへの取り組みが進行している(※Fig.1)。角田市の食の象徴としての米、豆、梅では、食の角田ブランドづくりの一環として「角田うめ料理コンテスト」「かくだ利き酒3酒(地酒、地ビール、梅酒)競技会」の開催や贈答用の「角田の食の3め(米、豆、梅)セレクション」の販売が行われている。角田市の歴史の象徴としての姫は、伊達政宗公の次女(五郎八姫の妹)である牟宇姫が伊達家一門筆頭の角田領主、石川宗敬に嫁いだ際に嫁入り道具として持参したとされる雛人形が展示してある郷土資料館があり、牟宇姫ひなまつりと称して毎年2月中旬~3月中旬にかけて開催されている。
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4. JAXA連携協定及び銀河連邦の加入による連携について 2015年12月には、角田宇宙センター開設50周年を迎え、角田市とJAXA角田宇宙センターとの間で、連携協定を締結した(Fig.3)。この協定は、人材育成・地域づくり支援活動としてスペースタワーやコスモハウスなどの施設、宇宙関連イベントの企画運営支援、産業振興支援活動として、地域企業に対する技術課題解決などに向けた企業強化支援、教育支援活動として、宇宙航空教育のカリキュラム、教材提案などの学習支援等があり、JAXAとの連携により、今後、産学官の連携が図られることにより、JAXAと地域企業との連携による商品開発や宇宙に関する教育の振興が期待できる。
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5. 地域資源の活用と今後の連携協定の課題について 角田市は、宇宙関連施設を有するJAXA角田宇宙センターがあることから、宇宙関連施設等の地域資源を活用し、さまざまなイベントを開催することにより、まちづくりを展開してきた。その結果、JAXAとの連携協定の締結や銀河連邦への加入にいたっている。しかし、連携協定は、絵に描いた餅にならないように相互に研究機関や行政、住民間の交流が非常に大切となる。人口減少に伴い、地域の課題が多種多様となっている現在、限りある地域資源をフル活用し、連携する機関とそこに住む地域の住民をまきこんだ思い切った施策を展開しなければ、地域再生が進まず、活性化することはないであろうと考える。今後は、宇宙に思いをはせる『夢』の実現に向けて、産学官で連携し、官民一体となって、この取り組みを推進していく必要がある。 |
6. むすびに 角田市の宇宙をテーマにしたまちづくりの事例について紹介したが、2016年度から角田市でも連携先との相互の交流が事業としてはじまった。どの自治体でも喫緊の課題は、少子高齢化による人口減少社会を迎えるにあたり、いかに地域資源を最大限に活用し、地域を活性化させ、人口減少に歯止めをかけながら、より良いまちづくりを持続的にできるかではないだろうか。本稿がその課題に対してのひとつのケーススタディとなれば、幸いである。 |