【自主レポート】

第36回宮城自治研集会
第7分科会 若者力は無限大∞ ~若者と創り出すまちづくり~

 地方自治体による婚活イベントなどの事業が広がりを見せています。はたして婚活支援事業は少子高齢化社会の進行を遅らせ、自治体間競争を勝ち抜くための一つのツールとなりえるのでしょうか。このレポートは、自治体が行う婚活支援事業の現状と、出会いの場をサポートする側の心構えについて、試行錯誤も交えながら考えてみました。



自治体による婚活支援
そして僕らの婚活支援やってみました

愛知県本部/常滑市職員連合労働組合 片岡 靖貴

1. はじめに

(1) 自治体による婚活支援の現状
① レポート作成のきっかけ
 「婚活」という言葉が生まれたのは2007年であると言われています。当然のことながら、それ以前にも「結婚を目的とした相手探し」はさまざまな方法で行われていたのでしょう。そのことが、「婚活」という言葉で括られ、社会的に認知されることによって、その種類・方法などの幅も広がってきたのではないでしょうか。それでは現在、結婚相手との出会いの場はどこにあるのでしょう。
 国立社会保障・人口問題研究所が5年ごとに行っている調査での2010年の結果によると、出会いのきっかけについては、「『友人・兄弟姉妹を通じて』、『職場や仕事で』がともに29%台、次いで『学校で』の出会いが11.9%となっている。これら上位三つのきっかけが全体の約7割を占め、これまで同様に日常的な場での出会いが多数を占めている。」とあります。
 イメージでは婚活事業の広がりが著しいと考えていましたが、意外にも婚活イベントや紹介所で結婚相手を見つけたという人の割合は低いようです。また、「見合い結婚」は、1982年の29.4%から徐々に減り続け、2010年では5.2%となっています。出会いのきっかけはあまり変化していないにも関わらず、「見合い」をする人が減っているということです。しかし、ここで考えたのは、日常的な場での出会いが少ない人に対して、出会いの場を提供することが出来れば、もっと婚姻率が上がるのではないかということです。
② 自治体による婚活支援事業
 内閣府は、都道府県及び市町村が、結婚・妊娠・出産・育児の「切れ目ない支援」の先駆的な取り組みとして行う「地域少子化対策強化事業」を支援することとし、もって、地域における少子化対策の強化に資することを目的とした事業に補助をすることとしました。現在、さまざまな自治体において婚活支援事業が行われ、その形態は自治体の直営事業から、自治体から委託を受けた業者による婚活イベントの開催まで幅広く、内容も地域の特色を生かしたイベントとの結びつけなどが行われています。さらに、市役所に婚活をサポートする専門部署の設置をする自治体まで現れています。

(2) 自治体が「婚活」に取り組むわけ
① 少子高齢化の現状
 内閣府が公表している、日本の人口推計です。

年齢区分別将来人口推計
年少人口年 少生産年齢人口生産年齢老年人口老 年
(0~14歳)
(千人)
人口割合 (15~64歳)
(千人)
人口割合 (65歳以上)
(千人)
人口割合
2010 1680313.2%8103263.8%2924523.0%
2015 1582712.5%7681860.7%3395226.8%
2020 1456811.7%7340859.2%3612429.1%
2030 1203910.3%6772958.1%3685031.6%
2040 1073210.0%5786653.9%3867936.1%
2050 93879.7%5001351.5%3767538.8%

 14歳以下の子どもの割合は年々減少し、65歳以上の高齢者の割合は上昇していくという、少子・高齢化の予測となっていることは、あらためて述べるまでもありません。この流れを受けて、国が「地域少子化対策強化事業」に支援することとなります。
 そして、常滑市の最近の人口の状況は以下のとおりです。

常滑市
年少人口年 少生産年齢人口生産年齢老年人口老 年
(0~14歳)
(人)
人口割合 (15~64歳)
(人)
人口割合 (65歳以上)
(人)
人口割合
2006 7,193人13.8%33,301人63.6%11,807人22.6%
2007 7,218人13.6%33,545人63.4%12,210人23.0%
2008 7,394人13.7%34,050人63.1%12,498人23.2%
2009 7,618人13.8%34,618人62.9%12,800人23.3%
2010 7,746人14.0%34,739人62.5%13,040人23.5%
20117,935人14.2%34,777人62.3%13,102人23.5%
2012 8,035人14.3%34,961人62.0%13,354人23.7%
2013 8,211人14.5%34,860人61.3%13,745人24.2%
2014 8,387人14.6%34,906人60.8%14,133人24.6%
2015 8,543人14.7%34,858人60.3%14,429人25.0%
2016 8,703人14.9%34,976人59.9%14,676人25.2%

 常滑市は、2005年の中部国際空港(セントレア)開港の影響を受け、市内の雇用環境の変化と、住宅環境の整備により、若い世帯の転入が増え、年少人口は一時的に伸びているものの、老年人口の増加率の方がまさっており、今後は少子化に転じることが予測されています。
 この現状を少しでも良い方向へ向けるための一つのツールとして婚活支援事業があると考えました。


2. 自治体婚活は成果を出しているか

(1) 大人気のイベントも多数存在
① 各自治体が工夫を凝らしたイベントを開催
 検索してみると、自治体が工夫を凝らしたイベントが多数見られます。
 こちらは、ほんの一例です。
  ・餅つき  ・馬そり体験  ・農ガール紹介(男性ターゲット)  ・Iターン、Uターン
  ・観光地めぐり   ・クルージング  ・恋愛パワースポット   ・街コン
  ・温泉施設宿泊   ・ボランティア体験    など
 各自治体がPRしたいものを前面に出した企画が多くあると感じます。婚活支援にとどまらず、観光振興などにも繋がる事業として捉えられているということでしょう。
 また、自治体が主催するイベントであるということで、参加者には安心感を与えるのではないでしょうか。大人気のイベントも多数存在するようです。
② 成果は出ているか?
 自治体婚活支援の取り組み内容はさまざまですが、「その成果は?」と問われた場合、明確なものはなかなか出て来ません。婚活支援に取り組んだ結果、本来の目的の一つと考える「少子化」への対策となっているのか、証明することは難しいと思われます。それこそ、参加者一人ひとりの追跡調査でしか、それを証明することは不可能です。単発的なイベントの開催程度では、数値的な成果は、自治体全体の事業規模や人口規模から考えれば非常に小さなものであるでしょうし、そこにこだわるのはあまり意味の無いことなのかもしれません。


3. 組合主催の婚活事業への取り組み

(1) 婚活支援事業に取り組んでみました
① 20人対20人のオトナの婚活パーティーを実施
 自治体による婚活支援の現状を考えてきましたが、人と人の出会いをサポートするのは、容易なことではないのでしょう。組合では、婚活支援をする側の心構えも重要であると考え、独自に婚活支援事業に取り組むこととし、2016年2月、第1回目の婚活イベント「~きっと見つかるステキな出会い~ 大人の婚活応援パーティー」を開催しました。
② パーティーの進行
 今回は、民間労組及び関係団体の協力のもと、幾度もの打合せを行い、パーティーを成功させるための下準備を入念に行うこととし、計画を作り上げました。以下が、その概要です。

 ・参加者は共に独身の組合員男性20人と関連団体からの声掛けにより集まっていただく女性20人
 ・参加は本気で出会いを求める方限定であること
 ・年齢の幅を少なくし、参加者は20歳代後半から40歳代前半に限定
 ・非日常での高揚感を得るため、会場は結婚式場のビュッフェスタイルを選択
 ・参加費は男性6,000円(内2,000円は各組合が補助)、女性4,000円で設定
 ・会場に到着した順にウェルカムドリンクでリラックスしながら、自己PRカードに記入して会話のきっかけを整理
 ・すべての異性と話せるよう、一人あたり3分間の自己紹介タイムを用意
 ・カップリング後は、そのまま二人きりの時間を過ごせるよう、時間帯は昼で設定  など

 各組合、関係団体のネットワークによる声掛けで参加者は難なく集まり、最後はキャンセル待ち状態に……

~ そして、いよいよ当日を迎えました ~

③ パーティーの記録
・こちらは会場の外観
(素晴らしいロケーションです。市内の結婚式場を使うことで、成婚に至った場合もこの会場を挙式に使ってほしいという願いが込められています。)

・自己紹介タイムの様子
(1対1でも話が盛り上がる様、話のきっかけは
主催者側から事前にアドバイスがあります。)
・カップリングシートに記入している様子
(カップリングは、自己紹介タイムの後と、
フリータイム終了後の合計2回行われます。)


・カップリングのチェックの様子
(慎重にチェックします。チェックは間違いのないようリハーサルを行って当日に備えています。)


 さて気になる結果は……
 なんと、9組のカップルが成立しました。20分の9というのは素晴らしい結果ではないでしょうか?


4. むすび

(1) 事業実施後の考察
① 婚活事業の難しさなどが分かりました
 組合として婚活支援に取り組んだ結果、さまざまな意見を得ることが出来ました。進行に関しては、素人ながら比較的良い感触で、「また参加したい」という意見もいただきましたが、それでも何点かの反省点があります。
 一人3分間×20人の自己紹介については、「全ての相手の印象を覚えきれない。」「席の移動だけで疲れてしまう。」といった意見が多く出されました。スケジュールの進行に追われ、ビュッフェが楽しめなかった方もいたようです。また、本気で出会いを求めて参加されている方ばかりなので、プライバシー保護の観点から、個人が特定されるような写真撮影は控えるべきとの意見もありました。自治体や組合など、公的な団体が主催するこうしたイベントの場合、記録として写真を多く残しておきたいものですが、参加者へのプレッシャーとならないような配慮が必要です。
② 成果は短時間では出ませんが……
 先に述べたとおり、婚活支援事業を少子化対策として捉えた場合、すぐに、目に見えて成果があがるものではないのは当然です。各自治体の婚活支援事業についても、その目的を少子化問題の解決としてのみ捉えているのではなく、観光振興や街のイメージアップなど、PRとしての効果も大いに期待しているのではないでしょうか。
③ 最後に
 組合として婚活イベントを実施してみて、自治体が期待するようなイメージアップ効果としては、組合も得るものがあったと実感しています。また、9組のカップルのその後についても気になるところですが、今回の実績を基に、第2回イベントの開催など、次の展開にも繋げていきたいと考えています。