【自主レポート】 |
第36回宮城自治研集会 第8分科会 地域の子育て力が豊かな地域社会をつくる ~未来へつなぐ、子育て~ |
西東京市の田無公民館2014年度の社会問題講座(全5回)「子どもの貧困に向きあう地域をつくる」の受講者らが講座終了後立ち上げたサークル「西東京わいわいネット」は「自分たちの力で地域の子どもたちのために何かできることはないのか」を話し合い、子どもたちが無料で食べに来ることができる「子ども食堂」の活動を行うことを決めた。2015年度、2016年度田無公民館の主催事業として実習室(調理室)を利用して「わいわいクッキング」を実施しながら社会福祉協議会が展開する地域拠点事業(空き家を市が借り上げ居場所づくりとして利用する)の中に「子ども食堂」を作っていくことを2016年度の目標とした。現在、芝久保地域に「しばくぼーの」緑町地域に「放課後キッチンごろごろ」また、民間でも泉町地域に「木々(もくもく)」、田無町の「年輪(ねんりん)」が「子ども食堂」を始め、向台町地域にも地域拠点事業の「子ども食堂」のオープンを計画中。「年輪」以外は全て社会問題講座の受講者が関わって立ち上げた「子ども食堂」であり、自分たちの住む地域の子どもたちを守りたいという思いと公民館での学びが結びついて広がったまちづくりの一例である。事業の企画者として報告したい。 |
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1. 地域課題の解決に向けて
(1) 公民館の主催事業とは |
2. 「自分に何ができるか」を考える
格差社会の進行と貧困家庭の増加については西東京市も例外ではなく、都営アパートの多いこの市を直撃している深刻な課題でもある。事実、当講座を企画中の2014年7月29日に市内の都営アパートに住む中学2年生の男子が同居の無職の義父に、自力では歩けない程の暴行を受けた上に「24時間以内に首を吊って死んでくれ」と命令され、実行して死んでしまったという痛ましい事件が発生した。市民の中に(特に同じ地域に住む市民)「自分に何かしてあげられる事はなかったのか」という潜在的な思いが高まっていった。当講座はその事件が起きる前から企画していたが、偶然事件から半年後の実施となった。
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3. 講座の内容と講師のラインナップ 講座の1回目は市内在住のしんぐるまざぁず・ふぉーらむ代表の赤石千衣子氏に「貧困に追い込まれる母と子の現状」について話していただき、シングルマザーの貧困率の高さと、他国に比べても貧困率が高いことを知った。また、日本の女性の非正規労働率も高く、シングルで子育てしている女性はダブルワークを余儀なくされている実態が見えてきた。経済的困難によって離婚も自由に出来ない社会……。シングルマザーに対してあまりに冷たいこの国の実情も見えてきた。「貧困は自己責任ではなく、制度の脆弱さからくるもの」と共有化することができた。 ・講座の2回目は西東京市の生活福祉課の担当職員(主幹)に、西東京市の行政施策を話してもらった。若者への支援事業「ニート・ひきこもり対策事業(We)」の実践例や2015年4月から施行される「生活困難者保護法」に伴って実施していく事業の内容などを話してもらった。 受講者の感想から
・講座の3回目は西東京市で子どものために活動している団体の方たちの話を聞く。
・講座の4回目は西東京市 ニート・ひきこもり対策事業「We」担当者より、青年の「生きづらさ」について聞く。その後、グループに分かれて話し合い。子どもや若者は大人に何を求めているのか。私たちはどのように子どもや若者に関わるのがふさわしいのかを考えた。 受講者の感想から
・講座の5回目はこの講座のまとめをNPO法人文化学習協同ネットワークの代表佐藤洋作氏にお願いした。長年不登校の子どもたちを見続けてきた経験から、子どもや青年たちが育ってきた時代や社会の変化にもふれながら、どう支援し寄り添えば良いのかを具体的に話してもらった。 受講者の感想から
社会問題講座(全5回)の各回の受講者の感想から分かるように、どの受講者も他人事として参加しておらず、「自分も何かしたい」という思いに溢れた感想ばかりで、その為か非常に集中して講義を自分に引き寄せて聞いている事が読み取れる。ほとんどの受講者が全回出席していることからも積極的な姿勢が読み取れた。5回目を終えた時には参加者みんなの中に「早く、なにをやるのか話し合いたい」気持ちが溢れていることが熱く感じられた。 |
4. 「西東京わいわいネット」の誕生
講座終了後の2回の話し合い
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5. 「わいわいクッキング」の実施
公民館はサークルの自立を支援しつつ「子ども食堂」を西東京市の中に広げていくために社会福祉協議会とも連携し協力しながら工夫していくことを2015年度の目標とし、田無公民館の主催事業「月ICHIクッキング」を利用して「わいわいクッキング」を隔月の第3土曜日11時~14時で実施していく事とした。当面18歳以下は無料。19歳以上からは300円(材料費)をいただき、そのお金で子どもたちの分の材料費を捻出することを決め、食後に1時間ゲームなどを行い子どもたちと交流することにして始めることとなった。
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6. 2015年度社会問題講座「子どもの貧困に向きあう地域をつくる パート2」の実施
10/31~12/5
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7. 西東京わいわいネットの今後の予定と方向性 サークル参加者の中には既に自分の今後の自主的な活動として「子ども食堂」を展開していく計画を練っているメンバーもいて、2016年に入ってから出来た地域拠点事業の中に作られた2つの「子ども食堂」の運営にたずさわっている。ともに、子どもとの距離を縮めながら子どもの居場所づくりを進めている。民間で展開していく2つの子ども食堂は、そもそもレストランとして大人や高齢者の居場所にもなっているが、子どもの居場所になる日を設けていく。南町地域に学習支援と子どもの居場所(若者の住居も)を兼ねた施設を造ってしまった西東京わいわいネットの代表岸田久惠氏の(猫の足あとハウス)は子どもから若者まで毎日の居場所として機能していく。しんぐるまざー・ふぉーらむ理事長の赤石千衣子氏はメンバーのひとりとし西東京わいわいネットの宣伝活動に協力していく。それぞれが持ち場に分かれて活動を作っていくことになるが、ゆるやかなネットワークとして西東京わいわいネットは機能していくこととなると思われる。 |
8. 「子ども食堂」を軸に人に優しいまちづくりに発展させていく
社会福祉協議会所属の西東京わいわいネットのメンバーは、今後も地域拠点となる場所を探し更に「子ども食堂」を増やしていく努力をし、西東京わいわいネットのメンバーは自分の住む地域に「子ども食堂」が出来る可能性が生まれたら積極的にそのスタッフになっていくという合意が出来つつある。田無公民館としては主催事業は2016年度を持って終了していくが、「西東京わいわいネット」は、西東京の「子ども食堂」や無償学習支援を行う団体をネットワークしていく活動をめざしていくこととなりそうだ。そして、公民館を利用しながら「子どもの貧困に向きあう地域づくり」を進めていって欲しいと期待している。
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付属資料
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