【自主レポート】

第36回宮城自治研集会
第8分科会 地域の子育て力が豊かな地域社会をつくる ~未来へつなぐ、子育て~

 佐伯市職労保育所部会では、2014年から導入された「子ども子育て支援新制度」にむけて、ブロック別保育所連絡会をはじめとした学習会を行っています。今後、保育士の任用替え・離職も懸念されることから今後の取り組みについての考えも報告しています。



子ども・子育て支援新制度に向けての取り組みと
佐伯市公立保育所・こども園の現状

大分県本部/佐伯市職員労働組合・保育所部会・本匠保育所 大塚 千穂

1. はじめに

 大分県佐伯市は、2005年3月3日に1市8町村(佐伯市・宇目町・蒲江町・上浦町・鶴見町・直川村・本匠村・弥生町・米水津村)が合併して誕生しました。大分県南東部に位置し、九州で一番広い面積をもつ市で、人口は2015年5月現在で75,481人です。
 現在佐伯市には認可保育所が20園あり、そのうち9園が公立保育所で内1園が認定こども園です。子どもたちは自然豊かな環境の中でのびのびと日々生活しています。

2. 経 過

 佐伯市は、子ども・子育て支援を質量ともに充実するとともに、すべての子どもが健やかに成長できる社会の実現をめざし、「佐伯市子ども・子育て支援事業計画」を策定しました。社会全体で子ども・子育て・親育ちを支援していくため、策定にあたっては「佐伯市子ども・子育て会議」を設置し計画内容、事業運営、施策推進に関する事項についての協議を行いました。子育て支援が単に保護者の育児の肩代わりをするものではなく、子どもの健やかな育ちを支え、子どもたちを笑顔にするものであることから「いつも 子どもが まんなか」を基本理念に掲げています。
 2014年度佐伯市職労保育所部会では、「子ども子育て支援新制度」に向けて2014年2月13日に学習会を行い、同年7月29日のブロック別保育所連絡会でも議題に取り上げて新制度への意識づけができました(後日担当課より公立保育所・こども園職員へ説明会実施、説明会終了後部会員で話し合いが行われました。)。
 2015年度佐伯市職労保育所部会では、2015年2月12日に保育所部会学習会を開き(担当課長・市職労書記長・書記次長出席)、保育標準時間によるシフトの人員確保・短時間保育の保育時間パターンおよび延長保育の料金発生について・標準時間保育と短時間保育の差額について・保護者休日の際の保育時間について・公立こども園の類型及び職員について・新入所児と在園児の保育時間差の発生について・幼稚園教諭免許更新の手続き及び講義受講等への質疑・応答が行われました。
 市職労書記長・書記次長も出席ということもあり、職員の異動(通勤時間・距離の長さ)・正規職員の増員(臨時・非常勤保育士との比率)についても要望の声をあげることができました。
 同年2月23日に新制度開始に伴う保育所全体会議が開催されました。各園所長・主任・保育所部会連絡委員が参加し、佐伯市公立保育所の開所及び保育時間・延長保育時の対応について確認。今日に至る。
 ※ 保護者向け説明会を各園で行わず、本庁担当課が2015年度入所申込み時に保護者への説明を行ったこともあり、今のところ大きな問題点はみられない。

3. 現 在

 佐伯市は、人口・世帯・出生ともに減少傾向にあり少子高齢化により子どもの数は減少していますが、保育所の利用希望は増加傾向にあり、入所を待つ児童(空き待ち児童)が発生しています。

2015.4.1現在 市内の認可保育所の入所状況
  定 員 入所率 年齢別児童数
0歳児 1歳児 2歳児 3歳児 4歳児 5歳児 合 計
久部保育所 60 108% 4 9 16 17 18 1 65
本匠保育所 60 78% 2 11 15 8 11 0 47
直川保育所 45 44% 1 5 4 4 6 0 20
うめこども園 60 87% 1 8 6 14 12 11 52
蒲江保育所 60 57% 2 4 12 12 4 0 34
畑野浦保育所 60 48% 0 3 7 4 7 8 29
竹野保育所 30 83% 2 2 2 7 5 7 25
西浦保育所 60 25% 0 0 4 2 1 8 15
森崎保育所 45 78% 1 4 7 9 8 6 35
管外委託
480 67% 13 46 73 77 72 41 332

入 所 不 承 諾 児 童 数
  0歳児 1歳児 2歳児 3歳児 4歳児 5歳児 合 計
不承諾内訳 空き待ち 0 8 19 2 3 0 32
待 機 0 0 0 0 0 0 0

入所不承諾理由
・求職中の者 19
・特定の保育所のみを希望している者 7
・入所可能な保育所への斡旋に応じなかった者 0
・兄弟で同一の園を希望し同時でのみしか入所できない者 6
・その他 0
合 計 32

 子どもの数が減少していく中、施設を整備・管理する財源や、保育士・幼稚園教諭などの有資格者数も限られています。

2015.4.1 佐伯市内公立保育所職員数
(単位:人数)
  久部保 本匠保 直川保 うめ
こども園
蒲江保 森崎保 西浦保 竹野保 畑野浦保
正職保育士 6 5 3 5 4 5 2 3 4 37
臨時保育士(常勤) 9 7 3 7 4 4 2 3 4 43
臨時保育士(週3) 4 3 2 2 1 3 3 2 2 22
正職調理員 2 1 1 1 1 1 1 1 1 10
臨時調理員(常勤) 1 2 1 2 1 1 1 1 1 11
臨時調理員(週3) 1 0 0 0 1 1 0 1 1 5

 

正職保育士 37 55 臨時保育士(常勤) 43 65 臨時調理員(常勤) 11 16
正職調理員 10 臨時保育士(週3) 22 臨時調理員(週3) 5

 佐伯市においては、合併前の市町村を単位として地域を形成しており、地域によって教育・保育施設や子育て支援施設の配置が大きく異なり、幼稚園又は保育所しかない地域、少人数の保育所や幼稚園が複数存在する地域など様々です。
 少子化の中、子どもたちの健やかな育ちにとって必要となる同年齢や異年齢児との交流や集団生活等を提供していくことが難しくなる地域も想定されることから、地域の状況やニーズに対応できるよう、その地域の実情にあった施設の整備を検討しています。
 現在、検討している施設は次のとおりです。(実施済み含む)

「うめこども園」統合協議経過
日 付 対 象 出 席 意 見 ・ 概 要
2014年1月10日 地元議員 矢野議員、吉良議員 ・保護者の意見を尊重してもらいたい
2014年2月6日 宇目区長会長
及び副会長
小間会長、
上村・首藤副会長
・丁寧な説明が必要。
・反対でも賛成でも無い。
・良いものにしてもらいたい。
2014年2月18日 小野市こども園
保護者
19人中8人出席 ・バスでも送迎はできないか。
・開所時間を早められないか。
2014年2月19日 千束こども園
保護者
30人中12人出席 ・統合により保育士の数は増えるのか。
2014年3月3日 宇目地域の区長 区長会にて説明 ・保護者説明会の状況を説明。
・特段の反対意見無し。
2014年6月3日 小野市、千束
こども園 保護者
小野市こども園10人出席
千束こども園2人出席
反対意見・賛成意見・統合により予想される困りを聞き取り
2014年7月22日 小野市、千束
こども園 保護者
小野市こども園7人出席
千束こども園3人出席
統合による困りへの対応について説明
2014年8月25日 小野市、千束
こども園 保護者
小野市こども園7人出席
千束こども園3人出席
市の困りへの対応を踏まえて小野市こども園の保護者会からの統合に対する要望について協議。
→統合への理解を得る。
2014年10月27日 小野市、千束
こども園 保護者
小野市こども園8人出席
千束こども園3人出席
要望への対応及び統合の時期(来年統合)について説明。
 →一部の保護者から反対意見あり。
2014年11月10日 小野市、千束
こども園 保護者
全ての小野市こども園
及び千束こども園保護者
文書により統合の時期をお知らせ
2015年3月5日 宇目地域の区長 区長会にて説明 2015.4.1からの統合について、経過を踏まえ報告。
2015年4月1日 小野市こども園と千束こども園が統合され、「うめこども園」となる。

4. 久部保育所の建て替え

・施設の老朽化により(築34年経過)現在施設の維持管理のため毎年多額の修繕費用が発生。
・敷地面積も狭く、園庭や駐車場が十分に確保できていない。
・取り付きの道路は、交通量が多く、車の流れが速く送迎等で園児の安全確保に相当な注意を必要としている。
・現定員60人を100人に増員し、在宅で子育てをする保護者を支援する子育て支援スペースを設ける。
・2015年度 用地購入・設計、2016年度 建設工事、2018又は2019年度開園予定(最短で)。

5. 蒲江地区認定こども園(仮称)の建設

【建設の目的・背景:児童数の減少、施設の老朽化、道路整備、津波対策】
 既存の保育所・幼稚園(竹野保育所、西浦保育所、森崎保育所、蒲江保育所、蒲江幼稚園)を閉園し、120~130人規模を想定した認定こども園を2017年4月開校予定の統合小学校付近の高台に建設予定。(畑野浦保育所については、1園だけ距離があるため存続する。) 保護者説明会を行い、2015年内に用地買収開始。

6. おわりに

 このたびの「子ども・子育て新制度」の開始にあたり現場に情報が下りてくるのが遅かったことに加え、既存のこども園2園の統合の時期が重なり、慌ただしく不安な2014年度末及び2015年度始めでした。しかしいざふたを開けてみれば、在園児措置のため短時間利用の子どもが少なかったので、2015年度は現在の職員体制でどうにか対応を維持できそうですが、2016年度以降はどうなるかわかりません。
 なお2018年度以降には9園ある保育所が6園になり、保育士の任用替え・離職も懸念されるところですが、今後の取り組みへ向けて各園保育士が結束していかなくてはなりません。
 今後は、以下のことを取り組んでいく予定です。
・佐伯市職労保育所部会の連絡委員を、各園より1人選出。
 (現在は蒲江地区保育所のみ連絡委員ローテーションあり。)
・3歳児の保育士の配置が現在20:1なのを、15:1に改善。
・本年7月末にブロック別連絡会を開き、こども園について意識・知識を高める為、議題にあげる。(資格・免許の取得及び更新、既存こども園との意見交換等)