4. 研究の成果と将来展望
(1) 子育て支援センターのオープン
多くの先進施設の実践を学ぶなかで、①育児不安の解消はもとより、児童虐待や貧困家庭の早期発見など切れ目のない支援のスタートは、0~2歳児とその保護者を対象とした子育て支援センターが本来担うべきである。②しかし子育て支援センター(正確には同センターが開設する「集いの場」)を訪れることのない親子こそがリスクを孕む家庭であり、支援が必要な家庭である可能性が高い。③そこでハイリスク家庭を捕捉し的確に支援を行っていくためには、"待ちの姿勢"にとどまることなくアウトリーチ型の福祉事業を展開していくことが期待される。ということを学びました。
これらの研究成果を受けて、私たちは2015年4月よりアウトリーチ型事業(=※「越前市夢を育むはじめの一歩事業」)の一拠点として「子育て支援センター一陽」をオープンするに至りました。
今回、子育て支援センターを創設したことで、社会福祉法人越前自立支援協会は、児童家庭支援センター、児童養護施設、子育て支援センターの3事業を実施する組織となりました。今後は、行政(越前市)と私たち法人組織との協働型自治研活動によって、これらの事業を一体的かつ統合的に実施していくことで、要保護児童家庭への支援の継続性や悉皆性をより一層高めていければと思っています。
※「越前市夢を育むはじめの一歩事業」とは、生後5か月の母子に絵本をプレゼントする事業。「子育て支援センター一陽」は、絵本の受け渡し場所であるとともに、受け取りに来られない家庭を(同センター所属のソーシャルワーカーが)直接訪問し、絵本を届ける事業を行っています。
(2) ケアラー支援拠点及び福祉人材育成施策に関する研究成果の発表
「人を支えるのは、あくまで人である」との強い信念のもと、ケアラー及びケアワーカーへの支援システムに関する研究、並びに未来の支援者=福祉人材=の育成に関する研究を行ってきました。また「人材確保・育成には、大学等人材養成校と福祉施設職場との連携領域(のりしろ)拡大が不可欠である」との認識のもと先進事例等の研究を進めてきました。
その研究成果(=ケアラーの疲弊実態等)は、2015年5月に発行された「連合総研DIO(No.305):特集 となりに潜む、子どもの貧困」誌上に「疲弊する社会的養護ケアワーカー ~求められる支援者への支援~(p12~p15)」と題して掲載されました。また子ども食堂やスーパー学童保育等の先進実践事例は、2015年11月に完成した自主制作ブックレット「社会的養護からの挑戦(p88~p92)」で報告しました。
一方、大学等養成校との連携のあり方に対する提言については、2016年2月に発行された「日本の科学者Vol.51(特集:貧困問題と社会福祉の役割)」に「社会的養護組織人材マネジメントに関する一考察(p45~p47)」と題して取り纏めるとともに、2016年4月に発行された「市政研究No.190(特集:子どもの貧困~世代間連鎖を防ぐ支援を考える~)」に「児童養護施設の子どもたちへの支援とその課題」と題したレポートを提出し、児童養護施設出身児童の進学や自立に関する現行制度上の幾つかの懸案について論点化を行いました。その結果、地元越前市に拠点を構える仁愛大学では、(資生堂社会福祉事業財団の児童福祉奨学金制度とジョイントする形で)2017年度入学以降、児童養護施設入所児童や里子であって将来児童福祉分野での就労等を前提とした進学を希望する学生を対象に、授業料支援金として年間30万円を減免給付する制度を創設しました。
さらに2016年5月22日には、越前市で開催された北信地連福祉交流集会にて「子ども食堂とケアラー支援に学ぶ、地域福祉の未来」と題したパネルディスカッション(=市民啓発型オープン集会)を開催し、子ども食堂やケアラーズカフェの実践事例や役割について、市民への周知・啓発に努めました。
(3) さらなる挑戦……協働カンパニー創造への挑戦
今後、私たちは、これらの研究成果等を十分踏まえた上で、いよいよ当地でも本格的に「ケアラー支援拠点づくり」及び「大学共創・福祉人材育成」に向けた取り組みを進めていく所存です。
その際(=殊に子ども食堂やケアラーズカフェを運営する際)には、これらの支援拠点を、①"(地域のみんなが個性を活かしつつ、その能力や強みに応じて)大いに働き合い、認め合う"場として位置付けるとともに、かような労働機会を通して、②"(従来の制度枠では、ただ単に)支援される側であった者が、支援する側にまわることが可能となる"システムが本格稼働していくよう、仕事の捉え方等を工夫していきたいと思っています。なお、このシステムは、近年、厚生労働省がめざそうとしている"誰もが支え合う地域の構築"を先行的に具現化するものであり、"社会的課題を措置費(=扶助費)で解決するだけでなく、事業(=起業)で解決していく"ことの実践に他ならないと確信しています。
私たちは、このようなシステムの主柱となるべき事業体="協働カンパニー"を、自らが暮らす地域(福井県越前市を中心とする丹南地域全域)のど真ん中に創り出すためにチャレンジを継続していきたいと思っています。
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