【チャレンジサポート活動実績報告】

第36回宮城自治研集会
第8分科会 地域の子育て力が豊かな地域社会をつくる ~未来へつなぐ、子育て~

給食における食物アレルギー全市統一対応に向けての
その後と栄養士との協働の取り組み

京都府本部/京都市学校給食職員労働組合 橋本 正樹

 給食における食物アレルギー全市統一対応に向けてアレルギー対策検討会議を設置しました。食物アレルギー対策検討会議の構成者は、校長会・栄養教諭・給食調理員・京都市教育委員会体育健康教育室からなります。具体的にアレルギー対応を導入するにあたって何が重要で、どのように進めていかなければならないかを食物アレルギー対策検討会議で検討を重ね、我々調理員側からアレルギー対応開始にあたっての要望を出しました。内容は、除去について専用器具を使用するなら京都市教育委員会体育健康教育室から全市全校に配布すること、通常献立と並行して除去食の作業をできるよう人員の増加・確保をすること、管理職にもっと調理現場の声を聞いてほしいということ、一番重要なのは子どもの命であるということなどです。
 その後の検討会議において、体育健康教育室が国のマニュアルを元に作成したアレルギー対応マニュアル(案)について、委員それぞれの目線から考え、長い時間をかけて何度も検討し、京都市独自のマニュアル=「アレルギー対応の手引き」が作成されました。基本的な食物アレルギーをもつ児童への考え方や提供方法・事前の保護者との連携や確認事項等は制定されましたが、学校現場での取り組みをする上での課題は多く、教職員全体で取り組む体制を確立してから進めていくことであると申し入れし、一年間は試行期間としクラスで食事をする時の教員の指導・保護者との情報共有をスピーディーにはかるには、調理過程での動線・作業方法の確認等の準備段階として、2015年度から京都市でアレルギー対応の試行が始まりました。アレルギー対応の手引きには、給食調理員も参画してきちんと対応を進めていくために、調理員もメンバーとして入る「アレルギー対応委員会」の設置を盛り込みました。学校の年度当初の公務分掌に学校保健委員会・生徒指導委員会と並び、「アレルギー対応委員会」が発足され、学校の教職員全員で共通理解し、対応を進めていくようになりました。
 手引きで定めたことは、代替食については調理せず、卵の除去食のみを調理し対象児童に提供すること、アレルギー対応を希望される児童・保護者には必ず医師の診断を受け指示書等公的な文書を提出してもらうこと、保護者との面談の際に京都市では給食調理室の設備面からどうしてもコンタミネーション(アレルギー物質の微量混入)が避けられないこと、除去食の実際の調理・あたためは必ず給食調理員が調理室で行い、他の教職員が他の場所でしてはいけないこと、調理後の除去食の受け渡しについては食器にラップをして食札を貼り、受け渡し票に調理者・受取者のサインをすること、対象児童へのおかわりの提供はしないため予め増量して配食をすること、作業工程表・調理法や作業動線図にも除去食のものを記載すること、アレルギー対応は学校全体として取り組むものだということ、などです。試行実施の調理の課題、京都市の給食調理施設にはアレルギー除去食対応専用の調理設備はなく、専用の器具もありません。また、人員もそのままで加配・増員・定数の見直しは無く、通常献立を調理しながら除去対応をしなければならないので、アレルギー対応についての一定の指針は見えたものの十分なものにはほど遠いものです。専用の設備が無い、人が足りないということはとても大きな不安要素です。教員としての課題は、全ての児童に対して、食物アレルギーを理解させ、同じ給食を食べることが出来ないことを知識として持つようにさせること。
 誤食への課題等、クラス全体での取り組みをどう図るべきか、又アナフィラキシーショックを発症した場合の対応等に課題と問題がありました。
 1年間の試行・移行期を経て、2016年4月1日より正式に学校給食のアレルギー対応が京都市に導入されました。この間ずっと除去食調理専用の器具や配食用の食器、除去食調理用のエプロンを全市へ配布するよう求めて来たものの全く配布はされませんでしたが、やっと今年度さらに一歩進みました。専用の食器については、京都市では2015年から3か年計画でアルマイト食器からPEN食器へ変更が決まっていることから、学校使用のPEN食器とは色柄の違う全市統一のアレルギー除去食専用PEN食器が今年度初めに各校に必要数に応じて配布されました。但し、食器の違いは同じものを食べたいと思う子どもたちからみると、はっきりと区別されたものとなります。
 提供する側からすると、間違いが起こりにくく区別しやすくなり誤食への心配は軽減されます。この相反するとらえ方については、各学校において先ずは保護者に別の器で提供することを伝え理解をしてもらうことを前提とし、クラスでの子どもたちにも理解させることが出来た時に使用することとしました。除去食調理専用エプロンについては、今年度中の全市への配布が決まっています。
 アレルギー対応を進めていくにあたり、重要なことが見えてきました。今まで縦の繋がりばかりが重要視され、横の繋がりが軽視されてきましたが、子どもたちすべてに関わる、京都市・学校管理職・教師・栄養士・養護教諭・調理員といった教職員が、子どもたちが笑顔で健やかな毎日を送れるように考え協力していくことが極めて重要であり、そして保護者との共通理解をしっかりと持たないといけないことです。それがなければ、どれだけ子どもたちのことを思い取り組みを進めていても押しつけの施策となり協力も得られず、しいては子どもたちにとってより良い食育の場としての給食時間とならないのではないでしょうか……。
 ハード面の充実をどのように子どもたちに意義あるものとしていくかは、やはりソフト面であり、そのためには、給食が食育の場となることは当然ながら、それ以上に果たさなければいけない役割は大きく、調理員・栄養士・教職員全体で横の繋がりこそが大切であると考え、まずは給食にもっとも密接に関わる調理員、栄養士が一つのことに向けてそれぞれの職域を認めながら垣根をこえた取り組みを実現することが必要であることはわかっていても動いてこなかった、縦割り行政を地域を巻き込みながら少しずつでも子どもたちの為に変えていかなければ本当の食育は出来ません。その一歩として教育委員会と半年にわたる協議をへて、2016年11月28日に"京都市の児童館・学童保育所がつくる子どものためのお祭り"京都やんちゃフェスタ(やんちゃフェスタは遊びを通して児童の健全育成を図るイベントです。少子化の進行や世帯構造の変化、また、都市化の進展等により、子どもが外でいきいきと過ごすことが少なくなってきました。こうした時代だからこそ、子どもにとって大切な時間・空間・仲間の共有が求められています。児童の権利に関する条約の批准されたのを機に、遊びの復権・子どもの人権の尊重・ノーマライゼーションの推進をテーマに掲げ1990年第1回のやんちゃフェスタを開催しました)を行いました。
 このフェスタに現在の給食が健全な体の育成とみんなで笑顔で食べる心の栄養となることを市民の方により広く伝えることが子どもたちの食環境を豊かにすることと考え、4月より教育委員会と調理員、栄養士とで具体的な取り組みについての会議を開くこととなりました。
 栄養士と会議を開くにあたっては、体健室とまず交渉の場を持ち、調理員として現場で子どもたちの食べる姿からわかる現状と課題を提起し又、栄養士と調理員の職務の違いから生まれる垣根を説明することから始めました。

 そして具体的なフェスタの取り組みとして6月に第一回の会議を開催し、調理員が学校給食を移動式の回転釜を都メッセに搬入し人気の給食だけではなく、手作りの良さ、栄養価を考えた献立を提供し栄養士が栄養価を考えた食事の大切さを説明し、調理員もその場で日々子どもたちを思い調理している調理技術の説明することを柱に進めることを確認し、献立に関してはまずは栄養士が栄養価のバランスを考えた献立を考えて提示することとなりました。
 その後会議を重ね、出汁の旨味を生かした京都らしい和食献立(がんもどきのあんかけ・つみれと水菜のはりはり鍋)を提供することとなりました。フェスタには長い列が出来る盛況ぶりで、食べられた市民の方々から、薄味でありながらしっかりと出汁の旨味を感じられて、使用食材についても安心して子どもに食べさせられると、中々文字や言葉では伝えられなかった給食への思いや努力そしてなによりも"手作りの味"を伝えられ、給食を身近に感じて頂けたと思います。
 この、フェスタ参加によって栄養士・調理員・委員会が市民の方と直接話し伝えることが出来たことは、これからの子どもたちへより良い給食提供に向けて大きな一歩となりました。
 これをステップにこれからも地域と公務で働く私たちが両輪となり子どもたちに食を通して心身ともに健康で、健やかな成長の為に日々の業務に邁進していきたいと思います。

2016年度やんちゃフェスタの取り組み

【検討経過】
 2015年
  4月 京都市教育委員会体育健康教育室と調理員で協議
  6月 栄養教諭・給食調理員・体育健康教育室 初顔合わせ
  9月 栄養士・給食調理員・体育健康教育室 合同打ち合わせ
  11月            〃
    *体育健康教育室で参加申し込み・各方面の調整・食材&調理器具調達等。
  11月28日(土) やんちゃフェスタ 当日
          学校給食ブース出店

【試食献立】 
 『水菜とつみれのはりはり鍋』300食 提供
 『がんもどき(あんかけ)』 300食 提供
【献立決定の経過】
 未就学児童が多いことで食べやすさを考慮し、寒い時期であることから温まる献立、アレルギーの心配のない献立を考えました。また、京都市の学校給食では昆布とけずりぶしで出汁をとっているので、その旨みを感じられるものと、手作りの良さを知ってもらえるように考え、手作りでひとつひとつ"つみれ"を作る『水菜とつみれのはりはり鍋』と『がんもどき(あんかけ)』にしました。"あんかけ"についても出汁の香りと旨みが効いています。現在の京都市の学校ではこういった献立も提供しているのだということも知ってほしいと思いました。
【名称について】
 対象が子どもや子育て中の家庭をはじめとする全ての市民ということで、来場者は未就学児が多い予想されることから、未就学児が給食を楽しみにできるような名称にしたいと考えた結果、『おいしい たのしい 学校給食』に決まりました。
【ブース内のレイアウト】
 栄養教諭の方々の展示や食育おりがみなどの体験コーナーと我々の給食メニューの試食コーナーとの配置を考え、子どもたちや保護者のみなさんがスムーズに参加できるよう検討しました。また、給食調理員が日々、学校で調理している風景を写真に撮り、展示することにしました。  
【食器について】
 エコの観点からリユース食器とお箸をレンタルすることにしました。他のところに捨てられてしまわないように、学校給食ブース前に返却のお知らせ表示を出し、返却場所を設けました。
【提供時間について】
 11時~12時30分の1時間半とし、無くなり次第終了することにしました。

やんちゃフェスタ実施要項

○事業目的 【学校給食の普及・啓発に向けた新事業】
 京都市教育委員会体育健康教育室
 小学校学校給食研究会(栄養士・給食主任等)
 京都市学校給食研究会(給食調理員)

 家庭や地域の方に学校給食について知ってもらうための取り組みの更なる充実のため、市民を対象とした学校給食に関する情報発信の場を小学校学校給食研究会と京都市学校給食研究会とで新たに企画開催する。

 
○事業名称『おいしい たのしい 学校給食!!
○日にち 2015年11月18日(土)
○時 間イベント開催時間
10:00~15:30(集合及び準備開始 8:00)
○会 場京都市勧業館 みやこメッセ 第三展示場(3階)
○対象者子どもや子育て中の家庭をはじめとする全ての市民
○来場者約9,000人
○試 食◇試食品目 「水菜とつみれのはりはり鍋」 300食
      「がんもどきのあんかけ」   300食
○時 間11:00~12:30
○食 器リユース食器(どんぶりM・箸)を使用し、試食後に回収。
○調理場3階 第4厨房
*調理したものを同階の学校給食ブースまで運び、ブース内の長テーブルの上で配膳し、提供する。
○掲示物 他京都市の給食が大切にしていること(手作り・季節感・地産地消・実施している取り組み等)のポスター、和献立等。
人気献立のレシピ配布。
○栄養士給食についてのもの・ビデオ・読み聞かせ・ゲーム・クイズ・人気レシピ配布・パズル・給食PR など
○給食調理員各校での給食調理作業風景の写真