3. 河北病院でボヤ
2009年10月19日午前2時30分頃、河北病院5階の病室から出火、すぐにスプリンクラーが作動したことにより延焼はありませんでした。原因は、入院患者が持参した電気毛布のショートによるもので、カーテンとベッドの一部が焦げた程度でした。5階の病棟に入院中の患者は、1階まで無事避難し、死傷者はありませんでした。
火災発生時、消防隊はもとより、町内の各消防団・団員に招集がかかり、真夜中にも関わらず、5階の入院患者53人を1階まで全員無事に搬送・避難誘導した後、スプリンクラーの構造上タンクが空になるまで水が出続け、足首まで溜まった水の後始末をしてくれたのが地元消防団の皆さんでした。
私たち、病院職員だけでは、到底対応できるものではありませんでした。
2009年10月19日知事記者会見の内容 |
本日10月19日午前2時30分頃、県立河北病院で火災が発生いたしました。
火災の発生場所は5階の5病棟502号室で、発生当時502号室の5人を含む53人の患者さんが5病棟に入院されておりましたが、1病棟、3病棟、7病棟、急患室等に避難誘導を行いまして、この火災で怪我等をされた方はいらっしゃいませんでした。
火災の状況ですけれども、502号室のカーテン及びベッドの一部が燃えました。ですが、午前3時15分には鎮火が確認されております。現在患者さんの一部は5病棟の病室に戻っておられますけれども、502号室とスプリンクラーの散水により水漏れが発生した4階の一部病室の患者さんが別病室に避難しておられます。原因については、現在、警察が調査中ということであります。なお、本日の外来の患者さんについては、平常通りの診療と言うことで行われます。
今回は、不幸中の幸いと申しましょうか、怪我等をされた方は確認されておりませんけれども、入院中の患者さん及び関係の皆様に大変ご迷惑、ご心配をおかけしましたことをお詫び申し上げます。
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4. "地域との連携"による"恩返し"
(1) 消防団への感謝の表し方
私は、当時河北病院に勤務しており、山形県職員連合労働組合西村山支部河北病院分会の書記長で、居住しているところに消防団がないため消防団員ではない河北町民です。
出火した時に、他の地区の消防団員の友人・知人の多くが病院に駆けつけ、患者搬送と水の後始末にあたっていただきました。後日、友人数人にそれぞれ感謝を申し上げると、その全員が「当たり前のことをしただけだ」と話すのでした。
病院として、町内の消防団への感謝の気持ちとして、「恩返しとして何かできるものはないか」という思いはありましたが、具体的な行動をどうするかが課題でした。
(2) 町と病院へ相談
私は、河北町の防災担当者に会い、率直に河北病院分会(労働組合)として何かできることはないものかと相談をしました。その結果、町の総合防災訓練に、(2009年度は終了していたため)2010年度参加できないかとのことでした。そこで、河北病院の交渉窓口である事務局次長兼総務課長に町の担当者と話した内容を伝え、河北病院の赤十字医療救護班として参加する方向となりました。
(3) 赤十字医療救護班の活動
河北病院の場合、普段は、県内各地域で行われる防災訓練への参加要請を受けて、消防署員や他病院の医療救護班、DMATとともに、看護学校の学生や地域住民などが傷病者役となり参加している中で、救護所における2次トリアージ、応急処置、後方搬送などの訓練に参加しています。
災害発生時には、被災地に赴き任務に就くことになります。
トリアージタッグ |
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START法によるトリアージ |
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(4) トリアージ訓練とは
赤十字医療救護班が普段行っている訓練で、町の総合防災訓練で行われていないのが傷病者のトリアージ訓練でした。
トリアージは、救助者に対し傷病者の数が特に多い場合に、判定基準をできるだけ客観的かつ簡素化したものをSTART法といい、ABCDEアプローチに基づき、自分で歩けない場合、
A:呼吸をしているか?
B:呼吸数はどうか?
C:循環状態(CRT)はどうか?
D:意識レベルはどうか?
で判定し、その結果をトリアージタッグ
黒:カテゴリー0(死亡群)
赤:カテゴリーⅠ(最優先治療群)
黄:カテゴリーⅡ(準救急治療群)
緑:カテゴリーⅢ(保留群)
で表示していくものです。
ちなみに、搬送や救命措置の優先順位はⅠ→Ⅱ→Ⅲ→0となります。
(5) 新たなメニューとして追加
町と病院当局との調整、分会役員等との議論の結果、病院に医療救護班(医師1人、看護師2人、事務1人)を派遣してもらい、分会組合員から選出した傷病者役(5人)で、救護所を設置、傷病者トリアージ訓練のデモンストレーションを行う内容になり、総合防災訓練の新たなメニューとして追加することになりました。
この訓練を行うことで、次のようなことが期待されました。
① 災害発生時における傷病者トリアージの方法や「トリアージタッグ」の存在があまり知られておらず、見たことも聞いたこともない町民が多いのではないか。
② 災害時に傷病者になった時、どのようなことが行われるのか地域住民の方々に知ってもらえるのではないか。
③ 町の消防団が毎年参加している訓練に一緒に参加することによって、少しではあるものの恩返しになるのではないか。
④ 河北病院として訓練に参加することで、河北病院の職員も災害に対して準備していることを知ってもらうことができるのではないか。
⑤ 地域に根差した病院との認識をもってもらえるのではないか。
5. 河北病院として総合防災訓練へ
(1) 河北町総合防災訓練の内容
町の総合防災訓練は、毎年10月に町内の小学校学区持ち回りで小学校のグランドを主な会場として行われています。訓練の内容は、「町の西側に存在する活断層を震源とした大地震が発生した」との想定で行われ、町長を統括として、町役場職員をはじめ、開催小学校学区の住民と町内の消防団、消防署員(消防隊、救急隊、消防防災ヘリコプター隊員)などの参加を得て、避難訓練、消火訓練(消火器、放水、バケツリレー)、炊き出し訓練などが行われています。
そこに、新たなメニューとして傷病者トリアージ訓練が加わります。 |