1. 地域包括ケアビジョンの策定
団塊の世代が75歳以上となる2025年(平成37年)を目途に、重度な要介護状態となっても住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最後まで続けることができるよう、医療・介護・介護予防・住まい・生活支援が一体的に提供される地域包括ケアシステム(図1)の構築を実現する必要があります。
また、今後、認知症高齢者の増加が見込まれることから、認知症高齢者の地域での生活を支えるためにも、地域包括ケアシステムの構築が重要です。
地域包括ケアの推進は、介護保険法において、国及び介護保険の保険者である市町村の責務として明記されており、地域や医療・介護の専門職等と協働しながら、地域の特性に応じて作り上げていくことが必要です。
福井市では、2025年にめざすべき地域包括ケアの将来像(地域包括ケアビジョン)を示し、地域や医療・介護の専門職等と共有しながら、推進していきます。
第5条
3 国及び地方公共団体は、被保険者が、可能な限り、住み慣れた地域でその有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう、保険給付に係る保健医療サービス及び福祉サービスに関する施策、要介護状態等となることの予防又は要介護状態等の軽減若しくは悪化の防止のための施策並びに地域における自立した日常生活の支援のための施策を、医療及び居住に関する施策との有機的な連携を図りつつ包括的に推進するよう努めなければならない。 |
2. 地域包括ケアビジョン策定の目的
目的1 市民、専門機関、関係団体、行政が目的とプロセスを共有する
地域包括ケアシステムは、自分でできることは自分で行う「自助」をベースに、お互いに助け合える部分は助け合う「互助」を活用し、専門的なサービスが必要な場合には介護保険や医療保険といった社会保険の「共助」や、福祉サービスとして行政が提供する「公助」を組み合わせながら、高齢者の在宅生活を支えていくことをめざしています。したがって、高齢者自身はもとより、各サービスを提供する実施主体が目的とプロセスを共有し、めざすべき将来像を共有する必要があります。
|
※ 「地域包括ケア研究会報告書 ~地域包括ケアシステム構築における今後の検討のための論点~」(2013年3月三菱UFJリサーチ&コンサルティング)より |
目的2 地域包括ケアの将来像(ビジョン)とその実現に向けた工程を明確にする
75歳以上人口が急激に増加する2025年(平成37年)に向けて、医療や介護が必要な状態となっても、できる限り自宅等の住み慣れた場所で生活できるよう、社会全体でどのように支えていくか、そのめざすべき姿を明らかにする必要があることから、本市の強みと課題を明らかにした上で、市の強みを活かした福井市の地域包括ケアの将来像を明確にします。
また、実効性のあるビジョンとするため、その達成に向けた具体的施策の取り組みについて、工程を明らかにします。
目的3 3年毎に見直すオアシスプランを継続性のある計画とする
オアシスプランは、老人福祉法に基づく老人福祉事業の実施に必要な事項に保健事業を取り入れた「老人保健福祉計画」と、介護保険法の規定に基づく「介護保険事業計画」を一体的に策定しており、3年に1度策定しています。3年という比較的短いスパンでの改定であることから、制度改正や社会状況に即応できるメリットがある反面、長期的な視点や継続的で一貫性のある計画とすることが難しいという側面もありました。10年間を期間とする地域包括ケアビジョンでは、オアシスプラン2024までの3期分のオアシスプランの長期的な方向性を示します。
目的4 地域特性に応じた地域包括ケアの推進
地域包括ケアシステムは、おおむね30分以内に必要なサービスが提供される日常生活圏域(福井市の場合は包括支援センターの担当圏域と同じ)を単位として想定されています。本市は、市域面積が広く、福井駅周辺部から中山間地域、新興住宅地域など地域性が多様であることから、地域特性を量的かつ質的に分析し、地域の特性に応じた地域包括ケアを推進していきます。
3. 福井市の高齢化の現状と課題
課題① 高齢化の進展と後期高齢者の急増
本市の高齢化率は、平成28年4月1日現在27.5%となっており、団塊の世代が75歳以上となる平成37年度には30%を超え、その後も上昇していくことが見込まれます。
また、75歳以上の後期高齢者は、平成28年4月1日現在36,255人、総人口に占める割合は13.8%となっていますが、平成37年度には1.23倍に急増することが見込まれており、その後も平成43年度まで緩やかに増加し続けることが見込まれています。こういった傾向は、全国的な傾向とも言えますが、都市部の方がより急速に進展することが予測されています。
■高齢化の推移(平成12年~28年)(福井市)■ |
|
■高齢化の今後の見込み(平成29年~45年)(福井市)■ |
|
|
※ 各年度4月1日現在
※ 住民基本台帳による人口推移(平成12年~17年は、旧美山町、旧越廼村、旧清水町の人口を合算)
※ 人口推計は、コーホート変化率法(平成22年4月1日と平成27年4月1日の2時点の住民基本台帳による人口)を用いて推計。 |
課題② 高齢者のみで構成される世帯の増加
平成27年10月1日現在の高齢者のみで構成される世帯の数は23,748世帯、総世帯に占める割合は23.7%となっております。そのうち、高齢者の独居世帯数は13,228世帯で総世帯に占める割合は13.2%、高齢者複数世帯は10,520世帯で総世帯に占める割合は10.5%となっており、その数、割合ともに年々増加しています。
高齢者の独居世帯のうち、多くの高齢者は日常生活に支援が必要と感じており、そのうち後期高齢者ではその傾向が一層強くなります。
■高齢者のみで構成される世帯の推移(平成22年~27年)(福井市)■ |
| H22 | H23 | H24 | H25 | H26 | H27 |
総世帯数 | 94,011 | 94,961 | 95,646 | 98,506 | 99,376 | 100,207 |
高齢者のみで構成される世帯 (総世帯に占める割合) | 18,444 (19.6%) | 18,836 (19.8%) | 19,969 (20.9%) | 21,390 (21.7%) | 22,625 (22.8%) | 23,748 (23.7%) |
| うち 高齢者独居世帯 (総世帯に占める割合) | 10,171 (10.8%) | 10,522 (11.1%) | 11,186 (11.7%) | 11,907 (12.1%) | 12,608 (12.7%) | 13,228 (13.2%) |
| 前期高齢者 | 4,003 | 3,983 | 4,262 | 4,595 | 5,025 | 5,279 |
後期高齢者 | 6,168 | 6,539 | 6,924 | 7,312 | 7,583 | 7,949 |
うち 高齢者複数世帯 (総世帯に占める割合) | 8,273 (8.8%) | 8,314 (8.8%) | 8,783 (9.2%) | 9,483 (9.4%) | 10,017 (10.1%) | 10,520 (10.5%) |
※ 各年度10月1日現在。平成24年までは外国人世帯を含まない。 |
課題③ 認知症高齢者の増加
平成26年4月1日現在、日常生活に支障のある認知症の症状が見られる高齢者※数は8,331人で、全高齢者に占める割合は12.0%となっています。平成37年度には、11,329人まで増加し、全高齢者の14.9%を占めるようになり、平成23年度と比較すると約1.5倍になることが見込まれています。
※ 要介護認定に係る認定調査票での「認知症高齢者の日常生活自立度」Ⅱ以上の高齢者。
■「認知症高齢者の日常生活自立度」Ⅱ以上の数の推移と見込み(福井市)■ |
|
■「認知症高齢者の日常生活自立度」Ⅱ以上の数の推移と見込み(全国)■ |
将来推計(年) | H24 | H27 | H32 | H37 |
各年齢の認知症有病率が上昇する 場合の将来推計 | 462万人 | 525万人 | 631万人 | 730万人 |
(65歳以上人口に占める割合) | 15.0% | 16.0% | 18.0% | 20.6% |
※ 「日本における認知症の高齢者人口の将来推計に関する研究」(平成26年度厚生労働科学研究費補助金特別研究事業 九州大学二宮教授)による速報値より |
課題④ 要介護認定者数及び介護給付費の増加
平成12年の介護保険制度の創設以来、本市の要介護認定者数、介護給付費はともに年々増加し続けています。
平成27年4月1日現在、65歳以上の要介護認定者数は12,688人となっており、37年度には後期高齢者の増加に伴い、要介護認定者数は16,935人と大幅に増加することが見込まれています。
また、平成26年度の本市の介護給付費は20,468百万円で、平成18年度と比較すると約1.5倍に増加しており、37年度の推計値では27,206百万円、26年度の約1.3倍になることが見込まれています。
■要介護認定者数の推移と見込み(福井市)■ |
|
※ 2号被保険者を除く
※ H27までは、介護保険事業状況報告(平成27年4月分)による実績値(各年度4月1日現在)
H28以降は、平成26年9月末までの実績をもとに、国から提供された介護保険事業計画ワークシートにより推計 |
■介護給付費(年間)の推移と見込み(福井市)■ |
|
※ H26までは、各年度の実績値。H27以降は推計値。
H29、H37については、H29.4からの新しい総合事業に伴う訪問型サービス、通所型サービスの見込み量を含む。 |
課題⑤ 介護人材の不足
福井県における2025年時点での需給ギャップは1,772人と推計されており、需要に対する供給見込を示す充足率は85.8%と、全国平均の85.1%とほぼ同程度となっており、介護人材の確保が急務となっています。
※ 「2025年に向けた介護人材にかかる需給推計(確定値)について」(厚生労働省・平成27年6月24日)より
4. 福井市の強み
強み① 元気高齢者率※(前期高齢者)と就労意欲の高さ
※ 介護認定を受けていない高齢者の割合
平成27年4月1日現在、要介護認定を受けていない前期高齢者(65歳から75歳までの高齢者)の割合は96.7%で、全国の県庁所在市の中で第1位となっています。
また、平成24年10月1日現在、本市の高齢者の有業率※は24.07%で、県庁所在市及び人口30万人以上の都市(85市)の中で第8位となっており、高齢者の就労意欲が高い現状にあります。
※ 有業率:ふだん収入を得ることを目的として仕事をしており、調査日以降もしていくことになっている者及び仕事は持っているが現在は休んでいる者の割合
■元気高齢者率(県庁所在市)■ |
|
※ 厚生労働省「介護保険事業状況報告(平成27年2月サービス分)」より |
■高齢者の有業率(県庁所在市及び人口30万人以上の市)上位10市■ |
順 位 | 都市名 | 高齢者人口 | 有業者数 | 有業率 |
1 | 豊橋市 | 80,800 | 21,900 | 27.10% |
2 | 長野市 | 97,900 | 26,300 | 26.86% |
3 | 岐阜市 | 102,300 | 27,200 | 26.59% |
4 | 特別区 | 1,895,900 | 500,800 | 26.41% |
5 | 市川市 | 89,700 | 23,600 | 26.31% |
6 | 四日市市 | 68,800 | 17,500 | 25.44% |
7 | 豊田市 | 76,100 | 19,200 | 25.23% |
8 | 福井市 |
66,900 |
16,100 |
24.07% |
9 | 佐賀市 | 56,200 | 13,100 | 23.31% |
10 | 浜松市 | 189,300 | 44,100 | 23.30% |
※ 厚生労働省「平成24年就業構造基本調査」人口・就業に関する統計表(平成24年10月1日現在)より |
強み② 充実した介護保険施設及びサービス付き高齢者向け住宅の整備
本市の平成25年10月現在の介護保険施設の定員数は、高齢者1万人あたり424.6床となっており、全国平均の約1.4倍となっています。また、介護保険3施設(介護老人福祉施設、介護老人保健施設、介護療養型医療施設)、地域密着型介護老人福祉施設ともに全国平均を上回っており、現時点での施設整備はかなり進んでいる状況にあります。
さらに、高齢者の生活に適したハードとソフトを併せ持つサービス付き高齢者向け住宅(以下「サ高住」という。)の整備戸数は、平成27年6月現在、高齢者1万人あたり95.2戸となっており、全国平均の55.0戸の約1.7倍となっています。
■介護保険施設の整備状況(全国・都道府県・福井市)■ |
|
※ 平成25年介護サービス施設・事業所調査・基本票編・閲覧表(介護保険施設数-定員(病床数)、市区町村、施設の種類別)及び地域密着型サービス(地域密着型介護老人福祉施設数-定員、都道府県-指定都市・中核市(再掲)別)より(平成25年10月1日現在) |
■サービス付き高齢者向け住宅の登録状況■ |
|
※ 国土交通省「サービス付き高齢者向け住宅の登録状況(H27.6末時点)」より |
強み③ 先行した認知症施策及び在宅医療・介護連携施策の取り組み
認知症施策については、認知症初期集中支援チームの配置や認知症地域支援推進員の配置について、国は平成30年度から全ての市町村で実施することを目標としていますが、本市では平成26年度より専門家で構成する福井市認知症施策検討委員会を設置し、各種の取り組みを既に開始しています。また、平成28年4月現在、人口に占める認知症サポーターの養成率は7.2%となっており、県庁所在市中第4位となっています。
さらに、在宅医療・介護連携推進事業についても、実施可能な市町村は平成27年4月から取り組みを開始し、平成30年4月には全ての市町村で実施することとなっていますが、本市は平成26年度より専門職で構成する福井市在宅医療・介護検討協議会を設置し取り組みを開始しており、国が示す8つの事業項目のうち8項目すべてを既に実施しています。8項目すべてを既に実施している自治体は、全国の市町村中2.5%となっています。
■認知症施策及び在宅医療・介護連携施策の取り組み状況■ |
| | 福井市 | 開始時期 | 全国の状況※1 |
認 知 症 施 策 | 認知症初期集中支援チームの配置 | 実施済 | H26 | 17.6% |
認知症地域支援推進員の配置 | 実施済 | H23 | 48.2% |
認知症カフェの設置 | 実施済 | H26 | 16.1% |
認知症徘徊・見守りSOSネットワークの構築 | 実施済 | H26 | 35.4% |
キャラバンメイト養成研修の実施 | 実施済 | H28 | 29.1% |
市民後見推進事業の実施 | 未実施 | - | 10.9% |
人口に占める認知症サポーター養成※2率 | 7.5% | H22 | 5.5% |
在 宅 医 療 ・ 介 護 連 携 施 策 | 地域の医療・介護の資源の把握 | 実施済 | H26 | 38.5% |
在宅医療・介護連携の課題の抽出と対応策の検討 | 実施済 | H26 | 43.8% |
切れ目のない在宅医療と在宅介護の提供体制の構築 | 実施済 | H26 | 19.0% |
医療・介護関係者の情報共有の支援 | 実施済 | H27 | 25.2% |
在宅医療・介護連携に関する相談支援 | 実施済 | H26 | 21.8% |
医療・介護関係者の研修 | 実施済 | H26 | 38.8% |
地域住民への普及啓発 | 実施済 | H26 | 29.7% |
在宅医療・介護連携に関する関係市町の連携 |
未実施 | H28 | 31.5% |
※1:全国の市町村のうち、事業を実施している市町村の割合(在宅医療・介護連携施策については平成27年7月末現在、認知症施策については平成27年12月末現在)
※2:認知症サポーター養成数には、キャラバンメイト養成数も含む |
5.-1 在宅医療の充実と在宅医療・介護連携の強化
高齢化の進行とともに長期療養を必要とする慢性疾患患者の増加が見込まれる中、医療においては「病院完結型の治す医療」から「地域完結型の治し支える医療」への転換を方針の一つに掲げている。医療と介護の両方を必要とする高齢者が住み慣れた地域で安心して暮らせるためには、各専門職種が各々の役割を発揮しながら、医療・介護サービスを切れ目なく一体的に提供できることが重要である。
多職種の顔の見える関係づくりが構築され、介護職とかかりつけ医をはじめ医療職との連絡、相談が日常的に行われるとともに、入退院時には多職種間の円滑な情報共有により切れ目のないケアが提供できている。
在宅での暮らしを望む医療的ニーズのある高齢者が、状態が安定し、かつ安心して療養生活を送ることができるよう、医師、歯科医師、訪問看護師、リハ職、薬剤師、管理栄養士等医療専門職による適切なサービス提供体制が構築されている。
かかりつけ医が浸透することで本人や家族の希望に沿った在宅療養生活を選択し、送ることができている。
|
(1) 適切な在宅医療・介護サービスの提供と多職種間の連携の推進
在宅における医療・介護サービスの提供、そのための多職種の連携推進にあたっては、お互いの役割を理解し、日頃から連絡、相談できる関係づくりが必要である。
また、病院では専門多職種による適切な医療により身体状態が改善し退院しても、在宅において同等の医療が提供されず再入院することも少なくないことから、かかりつけ医を中心とした医療・介護の多職種による専門的なサービスが提供される体制を確立することが必要である。
【施策の方向性】
・医療・介護の多職種がお互いの役割を理解し、日常的な連携につながるよう「顔の見える関係づくり」を推進する。
・在宅医療・介護間連携の取り組みを支援するため、医療・介護関係者等の相談対応体制を整備する。
・医師は医療の司令塔であり、中核的役割を担うことから、介護支援専門員等多職種に対する医学的な助言、教育等を担ういわゆるサポート医体制を推進する。
・入退院時には医療機関と介護支援専門員による円滑な情報共有により、切れ目のない支援が提供されるよう取り組む。
(2) 在宅療養等に関する普及啓発
高齢者が安心して在宅療養を選択するためには、在宅療養生活に対する不安を払拭することが必要である。
【施策の方向性】
・医療・介護サービスを利用しながら在宅で療養生活を送ることについて、具体的なイメージができるよう、周知啓発に取り組む。
5.-2 介護サービスの提供体制の充実
中重度の要介護者、単身・夫婦のみの高齢者世帯、認知症高齢者の増加の中、自宅での生活を続けたいという高齢者のニーズに対応できるよう在宅・施設それぞれの介護サービスを整備するとともに、それを支える介護人材の確保や資質を高め、必要とされるサービスが可能な限り提供されることが重要である。
市内全域において、介護ニーズに対応できる在宅・施設それぞれのサービス提供体制が整っており、必要な介護サービスを利用しながら住み慣れた地域で安心して生活を続けることができる。
介護サービスを安定的に利用できるよう、介護人材が質・量ともに十分確保されており、本人や家族が快適にサービスを受けることができている。
|
(1) 介護サービスの整備及び地域拠点化の推進
介護が必要になっても自宅に住み続けたいという高齢者のニーズが多いことから、在宅ケアの限界点を上げることのできるサービスを重点的に整備する必要がある。
また、地域が一体となって支え合う観点から、介護サービス事業所が地域における高齢者福祉の拠点としての活動を進める必要がある。
【施策の方向性】
・本市の介護保険事業計画において、国の掲げる介護離職ゼロ政策も考慮しながら、施設系・在宅系を含め、適切な介護サービスの整備数を定め、積極的に推進する。
・事業所の配置については、日常生活圏域内のあらゆるサービスが連携しながら、利用者に最適なサービスが提供されるよう圏域を基礎に整備を進める。
・重度要介護者に対する在宅ケアの限界点を引き上げるため、定期巡回・随時対応型訪問介護看護、看護小規模多機能型居宅介護等の在宅サービスの整備と制度に対する周知を推進する。
・介護保険施設等の介護サービス事業所が長年培ったノウハウや人的・物的資源を活用し、積極的に地域貢献活動の実施を促進し、地域拠点化を進める。
・地域包括支援センターの機能を強化するため、市が地域包括支援センターの基幹的役割を担う。また、市民の相談機関であるとともに地域包括ケアの中核機関であることを市民に広く周知する。
(2) 介護人材の確保及びサービス内容の充実
地域包括ケア及び介護離職ゼロの推進のため、介護サービスの供給量を増やしていくには、事業所の整備だけでなく、そこで働く職員の質・量ともに充実させる必要がある。
【施策の方向性】
・県と協力し、介護業界に対するイメージアップを図り、介護人材を確保するため、特に小中学生に対する普及啓発を推進する。
・介護職員の身体的負担及び過度な家族介護の負担を軽減するため、レベルに応じた介護技術修得への支援や介護ロボット等の最先端テクノロジーの普及を促進する。
・介護サービスを適切かつ効率的に利用できるよう、ケアマネジャーのケアマネジメント能力の向上を図る。
5.-3 高齢者の住まいの確保
地域包括ケアの基盤として高齢者個々のニーズに応じた住まいが提供され、その中で必要な生活支援を受けながら人生の最期まで希望する場所で個々の尊厳が確保された生活を送れる体制が整備されていることが重要である。
要介護状態になっても自宅で安心して生活ができる住環境が整備され、さらに地域における生活支援体制が整っている。
また、高齢者の状態や経済的負担など、本人の状況に合わせて希望する「住まい方」が選択できるよう、必要な住居が確保されている。
特に、高齢者に適したハードとソフトを併せ持つ住まいとして期待されるサ高住については、市のまちづくり計画等に整合する形で計画的に整備されるとともに、拠点型や分散型などの多様なサ高住が、既存ストックを活用する形で整備されている。
|
(1) 自宅で安心して生活ができる環境の整備
高齢者が要介護状態になっても、自宅で安心して生活し続けるためには、ハード面においては、バリアフリー化など自身の状態にあわせた住環境を整備するとともに、ソフト面においては、公助による福祉サービスはもとより、互助による地域での見守りや生活支援の充実が必要である。
【施策の方向性】
・要介護高齢者の在宅生活に配慮した住宅環境を整備することは、要介護高齢者本人だけでなく、介護者の負担軽減にもつながることから、改修等を促進する。
・高齢者が安心して自宅で生活が継続できるよう、地域における見守り、生活支援体制を強化する。
(2) 多様な住まいの提供
高齢者独居世帯や高齢者夫婦世帯が増加していく中で、高齢期の「住まい方」は多様化しつつあり、生活の最も基本的な基盤である高齢者の住まいを確保することが重要である。
そのため、高齢者に適したハードとソフトを併せ持つサ高住については、市のまちづくり計画等と整合する形で供給目標を設定するなど立地に対する的確なマネジメントを行う必要がある。また、既存ストックを有効的に活用しながら計画的に住まいを確保していくとともに、調査・指導を強化し介護サービス利用の適正化を図るなど、質を向上していく必要がある。
【施策の方向性】
・市の介護保険事業計画やまちづくり計画と整合する形で、サ高住の計画的な量の整備とサービス提供の質の向上を図る。
・地域の要介護者等の住まいとしての機能と、地域に開かれた活動の場や地域へのサービス提供の拠点としての機能を併せ持つサ高住の整備を推進する。
・空き家などの既存ストックの活用を促進し、サ高住等高齢者向け住宅の整備を図るとともに、低所得高齢者に対する住まいの確保を推進する。
・サ高住における介護サービスが適正に利用されるよう、調査、指導を強化する。
・「生涯活躍のまち(日本版CCRC)」については、地域の消費活動を喚起するなどの効果もある一方で、その後の社会保障費の増加なども懸念されることから、現時点では、先行モデル地域の状況や制度の完成を見定めながら、慎重に検討する。
5.-4 効果的な介護予防の推進
今後ますます高齢化の進展が見込まれる中、活力ある社会を築いていくには、高齢者が年齢に関わらず、これまでに培った能力や経験を活かし、社会や地域の支え手として活躍し続けることが重要である。
また、高齢者が健康で生きがいを持って生涯活躍するためには、自らが心身の状態を管理して、元気なうちから日常的に効果的な介護予防活動に取り組むことができる環境整備が重要である。
元気な高齢者は、多様な就労ニーズに合わせた働き方が可能になっているほか、支援が必要な高齢者に対するボランティア活動等の地域活動に積極的に参加し、社会の支え手として生きがいを感じながら充実した高齢期を迎えることができている。
住民ボランティアや専門機関が提供する介護予防活動に、多くの高齢者が主体的に参加するなど、日常的かつ長期的な介護予防への取り組みが普及し、高齢者に占める要介護者の割合が現在より低下している。
|
(1) 社会参加の推進
本人の介護予防と活力ある地域社会を構築するため、高齢者が社会や地域を支える担い手として活躍し続ける環境を整備する必要がある。
【施策の方向性】
・高齢者の多様な就労ニーズに対応できるよう、多様な雇用機会の拡大と創出を図る。
・老人クラブ等、高齢者が地域で活動する団体の活性化を図るとともに、その活躍の場を確保する。
・高齢者の社会参加を促進するため、社会参加や生涯学習に対する市の各種施策の一体的な情報提供を進めるとともに、セカンドライフ形成に向けたサポート体制を整備する。
(2) 介護予防の推進
高齢者全体の元気を底上げするための介護予防活動と、要支援者等虚弱な高齢者が要介護になるリスクを軽減するための介護予防活動を切れ目なく提供する必要がある。
【施策の方向性】
・心身機能が低下した高齢者を早期発見するため、できる限り多くの高齢者が基本チェックリストによる自己診断を行える仕組みをつくる。
・口腔機能が低下し、その他の機能は問題がない高齢者も多いことから、より手軽に機能改善に取り組めるメニューが必要である。
・介護予防活動に関わる住民ボランティアを増やすとともに、介護事業所の交流スペースや集会場も活用し、高齢者が気軽に集い地域特性に応じた介護予防活動を実践する拠点を整備する。
・多様な要支援者等のニーズに対応できる介護予防・生活支援サービス供給体制を構築する。
・PDCAサイクルにより、効果的な介護予防活動を推進するため、評価の仕組みを構築する。
5.-5 高齢者を支える生活支援体制の構築
高齢化の進展に伴い、在宅での生活に不便や不安を感じる高齢者の生活支援ニーズが増加しているため、地域の多様な主体が相互に連携しながら日常生活を支援することが重要である。
また、地域のつながりが希薄化する中で、地域の多様な主体が相互に連携しながら、地域で孤立しがちな高齢者を見守ることが重要である。
介護サービス事業者や、地域住民によるボランティア活動など多様な主体により、適切な生活支援サービスが切れ目なく提供されている。
また、地域から孤立しがちな高齢者を見守り、支援するための仕組みが構築されており、すべての高齢者が安心して生活できている。
|
(1) 日常的な家事等の支援体制
在宅で生活支援が必要な高齢者に対して、介護サービス事業者が提供する専門的なサービス等とあわせて、住民主体によるサービスなども整備し、高齢者のニーズに合わせた多様な主体により多様なサービスを提供する必要がある。
【施策の方向性】
・要支援者等の生活支援ニーズに応じた在宅での自立した生活が継続できるよう、現行の介護サービス事業者のほか、ボランティア、NPO、民間企業、社会福祉法人、協同組合等の多様な事業主体の参入を積極的に促す。
・住民主体による生活支援サービスを提供する団体設立を支援し、多様なサービス提供体制を確立する。
・元気高齢者が生活機能の低下した高齢者を支える活動を支援するため、介護サポーターポイントの対象となる活動を在宅高齢者の生活支援に拡大し、親族等からの支援が受けられない高齢者のごみ出し等を支援する。
・多様な要支援者等のニーズに対応できる介護予防・生活支援サービス供給体制を構築する。
・日常的な軽作業が必要なひとり暮らし等高齢者に対し、市が継続的に福祉サービスの提供を行う。
(2) 地域の見守り体制
ひとり暮らし高齢者や高齢者のみで生活する世帯の増加により、地域の中で孤立しがちな高齢者が増えることが見込まれるため、地域における効率的な見守りや、支え合う仕組みを一層強化する必要がある。
【施策の方向性】
・高齢者の身体状況に応じた適切な福祉サービスを提供できるよう、ひとり暮らし等高齢者の実態把握を進める。
・高齢者が安心して自宅で生活が継続できるよう、住民参加による地域における見守りや生活支援体制を構築する。
・福井市あんしん見守りネットワークに、団体、事業所の参加を促すとともに、個人単位での協力も呼びかけながら、ネットワーク活動を拡充する。
・支援を必要とする者と支援する者とで情報を適切に共有する仕組みを構築する。
・ICTを活用した、効率的な安否確認等の仕組みを構築する。
・高齢者と養護者を支援する体制を構築するため、高齢者虐待防止ネットワーク関係者間の相互連携を深める。
5.-6 認知症の人を支える体制の構築
認知症高齢者の増加が見込まれる中、「認知症になると何もできなくなる」または「自分は認知症にならない、関係ない」など認知症への理解が進んでいない。
認知症になっても住み慣れた地域で自分らしく暮らし続けるためには、認知症への理解を深め、早期発見から適切なケアにつなげる体制を整備するとともに、認知症の人と家族にやさしい地域づくりを推進していくことが重要である。
子どもから高齢者まで幅広い世代に、若年性認知症を含めた認知症の正しい理解が浸透し、認知症の人や家族が安心して暮らし続けることができている。
認知症の人と家族、地域住民が気軽に集うことができる居場所が身近なところにあり、認知症の人は役割をもって、生き生きと過ごし、介護者は地域の人や認知症に関わる専門職との交流を通して、精神的・身体的負担が軽減でき、仕事と介護の両立ができている。
また、認知症を初期の段階で発見し、進行の抑制を図るため、気軽に相談したり受診できる体制と容態にあった医療・介護・福祉などのケアを適切に提供できる体制が整備されている。
|
(1) 若年性認知症を含む認知症への理解を深める普及・啓発
地域全体で認知症の人と家族を支える仕組みをつくるため、認知症への偏見を払拭し、認知症の正しい理解を普及・啓発する必要がある。
認知症を正しく理解することは、自分自身や身近な家族の異変に早期に気づくとともに、認知症の症状からくる介護者の不安や負担の軽減を図り、虐待を予防するためにも必要である。
また、若年性認知症については、本人が就労中で生計中心者であることが多いため、就労や生きがいなど生活全般を支えるための施策を講じる必要がある。
【施策の方向性】
・幅広い世代において、認知症の人と家族を正しく理解する人を増やすため、「早期発見の重要性」、「発症予防と進行抑制」、「認知症になっても自分らしく生活できること」を重点的に普及・啓発する。
・若年性認知症への取り組みとして、企業を通じて働く世代へ疾病の理解、早期発見のポイントを周知するとともに、診断を受けた本人と家族への支援体制を構築する。
・認知症への正しい理解の普及・啓発に取り組む認知症サポーター(注1)やキャラバン・メイト(注2)を育成し、活動を支援する。
(2) 認知症の人と介護者を支援するやさしい地域づくり
認知症の人と家族の気持ちに寄り添い、日頃から声を掛け合える地域をめざすため、地域全体でノーマライゼーション(注3)の意識の醸成と、地域力の向上を推進していく必要がある。
【施策の方向性】
・認知症の人と家族にとって居心地の良い場所を増やすとともに、本人同士、家族同士が話し合い、悩みや思いを共有できる場所を設ける。
・地域の住民や団体、関係機関が、認知症の人や家族の視点に立って、それぞれにできることを考えるとともに、一緒に取り組みを検討する機会を設ける。
・認知症による徘徊・行方不明者が早期に発見・保護される体制づくりを推進する。
・認知症の人の尊厳を守るため、成年後見制度(注4)など権利擁護の取り組みを推進する。
(3) 早期診断・早期対応の推進と認知症の発症予防・進行抑制
認知症の初期症状に早期に気づくことで、認知症の進行を抑制し、日常生活の機能維持を図るため、気軽に相談や受診できる体制を整備する必要がある。
認知症の人の容態に応じた適切なサービスにつなげるため、早期診断から対応までの切れ目のないケアを提供する体制を整備する必要がある。
また、認知症の発症の予防や進行を抑制するための効果的なプログラムを提供する必要がある。
【施策の方向性】
・早期の相談や受診につながるように普及・啓発を行うとともに、気軽に認知機能をチェックできる仕組みをつくる。
・早期に相談、受診した人を、容態に応じた医療、介護、福祉などの適切なケアにつなげる体制を整備する。
・認知症の人のケアに関わる医療・介護従事者の認知症対応力の向上を図る。
・効果的な予防プログラムの提供や予防教室の開催を通じて、認知症の発症予防や進行抑制のための取り組みを推進する。
|