【自主レポート】

第36回宮城自治研集会
第9分科会 QOD(Quality of Death)を迎えるために ~地域でできること~

介護施設の食事サービスについて


京都府本部/京都公共サービスユニオン 武田 純一

1. はじめに

 京都公共サービスユニオンは特別養護老人ホーム京都八勝館、八幡市民文化事業団、八幡市社会福祉協議会の3支部からなる組合です。
 そのなかで、今回テーマに上げています介護施設ということで京都八勝館の紹介をさせていただきます。当施設は、1988年4月に八幡最初の特養として開設され、近辺には石清水八幡宮や松花堂庭園があり、自然に囲まれた場所に立地しています。定員特養70人、ショート14人、デイサービス25人からなる施設です。


2. 当施設の食事サービス

 当施設は開設以来直営で、現在は管理栄養士1人、調理師4人、調理員3人で業務を行っています。食数につきましては、毎日変動がありますが、朝食約80食、昼食約110食、夕食約80食の食事を提供しています。食事の内訳ですが、普通食、刻み食、超刻み食、ペースト食、ソフト食の5つに分類されています。現在は普通食が全体の5割を占め、ペースト食、ソフト食が全体の1割で、元気な方が多く入居・利用されている施設です。
 そこで、良い食事サービスをするうえで、重要になってくるのが、安心安全な食事を提供することであります。食は生活するうえで大変重要であり、安全な食材を安心して食べて頂くことはお客様(入居者・利用者)との信頼関係に繋がります。そしておいしい食事、喜んでもらえる食事の提供にも繋がっていきます。そのことを踏まえ当施設の食事サービスの取り組みを紹介します。

(1) 安心安全な食事~地産地消の取り組み
 地産地消とは地域で生産された農作物をその地域消費することであり、地産地消の良いところは産地から近いので新鮮である等色々とあげられます。当施設では出来るだけ地元の農産物を利用してより安心安全な食事を提供しています。

(2) 五感で食べる食事~イベント食の取り組み
 (入居者・利用者の目の前での調理)

 五感とは、視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚の5つを言い、普段食事するうえで、料理の匂い、作っている音等、料理を味わうために必要な五感があります。
 「視覚」食べ物のつや、色、姿、盛り付け
 「聴覚」煮る、焼く、揚げる、切る音、サクサク、パリパリと歯ごたえのある音
 「嗅覚」匂い
 「味覚」甘い、辛い、酸っぱい、苦い、うま味
 「触覚」むく、ちぎる、切る、こねる、混ぜる、硬さ、舌触り
 先ず食べ物を「視覚」で認識しそれと同時に、「嗅覚」で匂いを嗅ぎ、そして、食べ物を口に入れて噛んだときの「触覚」、や舌で感じる「味覚」と一緒になり、「聴覚」でサクサク、パリパリ等の音を感じて食べます。
 この五感を刺激されることにより、人の食欲は増加し、食べ物をよりおいしく感じることができます。そこで、作っているときの、音や匂いを楽しんでもらうサービスとして、入居者・利用者の目の前での調理を行っています。
 ・てんぷらバイキング
 ・握り寿司バイキング
 ・朝食パンバイキング
 ・デザートバイキング
 ・魚の解体ショー 

(3) 四季毎の松花堂弁当
 季節の食材を使用して、年に4回八幡発祥の地の松花堂弁当を提供しています。

(4) 朝食の取り組み
 朝食の充実を図り様々なメニューを提供しています。
 ・サンドイッチ、ご飯・お粥、スープ、スクランブルエッグ、サラダ


3. 他施設の食事サービス

 他施設でも当施設のような食事サービスを行っているところもあれば、委託事業の施設が、多く取り入れているサービスとして、給食サービス事業を展開する企業が参入して、セントラルキッチン(調理工場)で大量に調理されたのを、施設で湯煎、再加熱をして提供する食事サービスも増えてきています。
 施設にとっては、大がかりな厨房機器や調理スタッフを揃えることなく、安心安全な食事の提供が可能であります。非常勤職員だけでの運営が可能なので、人件費、コストの削減で施設側にはメリットになります。しかし、入居者・利用者の立場から考えるとそのようなサービスにも問題点がでてきます。その人にあった食事スタイルが必要になってきますので、これからの介護施設の食事サービスの課題でもあります。


4. 介護食品の充実

 介護食品とは、日常の食事から介護食まで幅広く使える食べやすさに配慮した食品で、種類も様々でレトルト食品や冷凍食品などの調理加工食品や、とろみ調整食品などがあります。どのメーカーの商品にも「かたさ」や「粘度」により区分されています。
 ユニバーサルデザインフード(日本介護食品協議会が制定した商品名称)で例をあげますと区分1「容易にかめる」区分2「歯茎でつぶせる」区分3「舌でつぶせる」区分4「かまなくてもよい」の4つの区分に分類されており、一人一人の状態にあわせた食品を選べます。流通している介護食品の種類は業務用、市販用があります。
 調理加工食品は、ばらつきがなく、常に同じ内容で提供でき、調理済みであること。そして長期保存が可能(レトルトで約2年、冷凍約1年)であることの特徴があります。
 メリットとしては、調理工程を省くことができ、調理技術もいらないこと、また栄養に関しては、栄養やエネルギーを強化して不足を補うことができ様々な利点があげられます。    
 加工食品が多く出回っている時代ですが、これから先の課題は、味の追求、コストの問題が多くでてきますが、最終的にはその人にあった食事形態での食事摂取が必要になってきます。


5. さいごに

 これからの介護現場における食事の提供は、5年後~10年後の高齢者増加において、介護する人はもちろん、食事を提供する調理員も減少してくる時代になってくると思われます。この業界は低賃金の上、肉体的、精神的に大変な仕事であり、離職者が多いのが現状であります。これから先、人間ではなくロボットが介護をする時代になっていくかもしれません。そうなると、他人へのおもいやり、愛情がない介護サービスになってきます。
 食事サービスも同様に、ただ栄養がとれたら良いだけの食事形態、見た目も味も重視しない食事サービスにならないように、いかにその人にあった食事サービスをして、食べることの楽しさを一緒になって分かち合えることがこれから大切になってきます。