【自主レポート】

第36回宮城自治研集会
第9分科会 QOD(Quality of Death)を迎えるために ~地域でできること~

 地域医療を取り巻く状況は、医師・看護師等の不足が続く中、依然厳しい状況にあります。保健・福祉分野との更なる連携強化や、地域住民と協働による病院づくりなど、地域が一体となった取り組みをしていく必要があります。また、国の施策でもあります在宅医療についても今後推進していくことが求められています。行政・医療・保健・福祉・住民が連携して在宅医療などを推進するシステムである「地域包括ケアシステム」について、当院における現状・状況を報告します。



当院の地域包括ケアシステムの現状と課題


島根県本部/雲南市立病院職員労働組合 松浦 陽子

1. 情 勢

① 厚生労働省は、2015年を目途に、高齢者の尊厳の保持と自立生活の支援を目的に、可能な限り住み慣れた地域で、自分らしい暮らしを人生の最期まで続くことが出来るよう、地域の包括的な支援・サービス提供体制の構築を推進しています。
② 雲南市は島根県の東部に位置し、人口は2010年国税庁によると約4.2万人となり、その中で65歳以上の高齢者が約1.4万人と全人口の32.9%を占めており高齢化が進んだ現状であります。


2. 雲南市立病院の現状

① 雲南市立病院は現在、内科・精神科・小児科・外科・整形外科・脳神経外科・皮膚科・泌尿器科・産婦人科・眼科・耳鼻咽喉科・放射線科・麻酔科・リハビリテーション科の14診療科です。病床数は一般199床、感染症病床4床、回復期リハビリ病棟30床、介護療養型病棟48床、合計281床の病院です。
 「地域に親しまれ、信頼され、愛される病院」を基本理念に、雲南圏域における中核病院として、地域の皆さまに急性期(救急)医療及び介護の分野においてサービスを提供する重要な役割を担っています。
 介護事業でも介護療養型をはじめ、訪問看護及び訪問リハビリを実施し、医療から介護まで一貫したサービスを提供し、地域医療を実践している病院です。
 看護体制は、一般病床10対1看護、療養病床(医療)25対1(回復期リハビリ病棟15対1)療養病床(介護)6対1看護/4対1介護の状況です。
② 2014年9月より一般病床199床のうち43床を地域包括ケア病棟として新設になりました。地域包括ケア病棟では、急性期治療を終了し、病状が安定した患者さんに対して、在宅等への復帰に向けた医療や支援を行う病棟です。在宅復帰をスムーズに行うために「在宅復帰支援計画書」に基づいて、主治医・看護師・専従リハビリスタッフ・在宅支援担当者が協力して、効率的に患者さんのリハビリや在宅支援を行います。入院期間は60日を限度としております。
③ 入棟日より60日間という期限の中で、病棟では患者さんの現状や退院に向けての今後の方向性・課題について、看護師・リハビリスタッフ・在宅支援スタッフで、退院支援のためのカンファレンスを毎日行っています。
 殆どの患者さんは期限内に退院することが出来ますが、稀に入棟後に病態が変化し入院前よりADLが低下し、在宅での介護が困難となり退院先の変更が必要となる場合や退院予定の施設の受け入れ困難等の理由から期限を超過するケースもあります。このような患者さんの退院支援を行う上で必要な情報の不足、退院先との連携不足、患者さん・ご家族とのコミュニケーション不足などから円滑な退院支援が行えないこともあります。


3. 地域包括ケア病棟新設に伴う多忙化

① 昨年の当病棟看護研究より「入棟早期から患者・家族のニーズを把握し、在宅をイメージした退院支援が必要」という結果が出ました。入棟時に統一した情報を入手することで、目標のズレも少なくなるのではないかと考え、現在検討しております。看護師と多職種で退院に必要な情報共有を図り、より充実したカンファレンスにすることで、患者さん・ご家族の思いに沿った円滑な退院支援に繋がるのではないかと考えます。多職種が連携することで、各々の職種の負担の軽減にも繋がるのではないかと考えます。
② 今まで内科病棟であった病棟で入院患者さんを受け入れていた43床が、地域包括ケア病棟となり入院患者さんを受け入れることができなくなり、残りの一般病棟で入院患者さんを受け入れることになりました。今までのように、科別での入院ではなく、どの病棟でも空床次第で入院を受け入れるようになりました。入院を受け入れる病棟は、以前に比べ、激務になり時間外勤務も増加している現状にあります。
③ そこで部署ごとの協力体制を強化されるようになりました。まず、入院のない病棟である地域包括ケア病棟の看護師と回復期リハビリ病棟の介護職員が準夜帯23時の体位交換及びおむつ交換の手伝いにいくことになりました。一般病棟看護師の指示に従って働く現状にあります。
 また、救急外来看護師は、2人配属があります。そのため、救急外来看護師も患者さんのおられない時間は、空き時間があるため病棟への手伝いに行くことになっています。勿論救急外来患者優先となっています。
④ 一般病棟は、高齢化に伴い慣れない環境、治療により、夜間せん妄をきたす患者さんが増えている現状にあります。また、病院で亡くなられる患者さんも多く、より丁寧な対応が求められています。夜間、少ない看護体制で更に入院患者があると現場は大変厳しい状況におかれています。そこで、救急外来看護師は、病棟で困ったことがあれば対応できるような体制に変化しました。救急外来の状況が許せば、病棟で不穏患者さんの対応や亡くなられた患者さんの死後の処置に対応している現状があります。
⑤ 多忙な部署に看護師が増えることが一番好ましいですが、厳しい現状にあります。看護度が変化する中で柔軟に応援し合うことで、少なからず多忙な部署の負担軽減に繋がっているのではないかと考えます。


4. まとめ

 雲南市立病院職員労働組合では、部署ごとにオルグを行い、各職場の問題点の共有化と改善に取り組んでいます。雲南市立病院は、地域に必要とされている病院であることを職員一人ひとりに意識喚起を促して、働きやすい職場になるよう取り組むことで職員の定着化を図っていきたいと思います。