【自主レポート】

第36回宮城自治研集会
第9分科会 QOD(Quality of Death)を迎えるために ~地域でできること~

 人口減少による高齢化が著名である本町において、将来にわたって安心して生活ができる地域包括ケアシステムの充実が求められている。しかしながら、そのシステムを維持するために必要な医療スタッフの確保も大きな課題の一つである。貴重な医療スタッフをどのように確保し、また育てていくことも包括ケアシステムの基礎となる重要なものと認識し、その取り組みについて報告する。



安心して働き続けられる医療・介護の職場
―― 新人看護師のサポートを通して ――

島根県本部/奥出雲町職員組合 勝部 千江

1. はじめに

(1) 地域の状況
① 人 口
 本町の人口は、2005年から減少を続け、2014年4月1日時点で13,971人と、9年間で約2,300人の減少となっています。国立社会保障・人口問題研究所による将来推計人口を参照すると、2030年には1万人を割り2040年には約8,000人の人口となり、今後急速に人口が減少していくことが予想されます。

国立社会保障人口問題研究所 日本の地域別将来推計人口(2013年3月推計)

② 高齢者人口
 本町では、総人口に占める65歳以上の割合(高齢化率)が2014年4月1日時点で、38.1%と非常に高くなっています。国立社会保障・人口問題研究所による将来推計人口を参照すると、65歳高齢者人口は、今後5,000人前後で推移し、2040年には約4,000人に減少するという予測がされています。一方、15歳までの若年層については、出生数の減少が継続し、年間約1,600人から約600人に減少する予測となっています。このことから、高齢者数はある程度横ばいに推移していくが、若年層が減少していくため、高齢化率は年々高くなるという計算となっています。

 
国立社会保障人口問題研究所 日本の地域別将来推計人口(2013年3月推計)

 また、本町の65歳以上の人口については、前述したようにほぼ横ばい状態でありますが、特に90歳以上の高齢者のみをみてみると、今後増加していくことが予測されています。このように、罹患率の高い年齢層の増加により当院一般病棟への90歳以上の超高齢患者の入院割合が高まることから、医療と介護の両面を必要とする患者が増加していくものと予想されます。

(2) 当院の担う医療
 奥出雲病院は病床数148床(一般病棟 98床 療養病棟 50床)の島根県と広島県の県境にある病院です。
 急性期病院で治療を終えられた患者の転院の受け入れや地域の開業医との連携を持ちながら、中山間地の医療を支えています。
 当院の入院患者の49%が80歳以上の高齢者で占められていて、在院日数も増えています。在院日数の多い疾病は大腿骨骨折・脳梗塞・誤嚥性肺炎が多く、平均在院日数が50~60日になっています。

 
 これは、在院日数の多い疾患5例です。

 医療スタッフへの地域住民からの期待が増えてきているのを感じています。地域住民の健康生活を支える医療人の一員としての新しいスタッフの入職はとてもうれしいですが、離職率の高い職種なので、離職率を減らすことが今後の課題です。

(3) 当院の取り組み
 当院では中学生・高校生の看護体験学習を受け入れ、将来の医療者の育成につながるように活動しています。年々、希望者も増えています。現在、入職している方の中にも看護体験学習を経験している方が増えています。


看護体験の感想
 今日の体験で1番印象的だった事はどんな事ですか?
  生まれたての赤ちゃんの臍の緒を見て、臍の緒の色が白いということを初めて知りました。
  赤ちゃんが産道を通りやすいように骨を動かす所に人間の体の不思議を感じました。
  エアマットという床ずれを防ぐ物があることが判った。
  認知症の人がいるので積極的に話しかけることが大切。
 今後への思い
  今回の体験を通して学んだことを看護する上で活かしたい。
  高校生活で最後の看護体験だったので、いろんなお話を聞こうと思いました。
  助産師さんが楽しく仕事について話して下さったり、仕事を魅力的に話して下さったので、ますます助産師になりたいという気持ちが強まりました。 


 看護体験で看護師・助産師になりたいという思いを強くして、看護の道をめざしてもらえる人が増えればうれしいです。

(4) 新人看護師への継続教育をサポート
 当院では新人教育の中心として臨床でのプリセプターシップを行っています。これに加えて医療圏域の他病院との合同新人看護師研修を定期的に開催しています。臨床実践能力の向上やリアリティショックの軽減など、新人看護師の卒後教育を支援しています。
 OFF-JTである定期合同研修会では患者に侵襲を与える看護技術・知識、判断能力を養うためシミュレーション教育を中心に学習しています。
 シミュレーション研修とは医療の高度化、基礎教育の変化、患者ニーズの変化などにより、医療を取り巻く環境の変化に応じ、安心、安全な看護技術を習得するために注目されている教育方法です。
 研修内容は主に患者に侵襲を与える看護技術やアセスメント能力の訓練を行っています。
 臨床現場を離れて行うOFF-JTを定期開催することは新人の技術面、精神面のサポートになっています。また、シミュレーション教育は安全な医療を提供することや新人の技術向上につながっています。
 臨床現場でも病棟スタッフ達が、精神面もフォローしながら現場に慣れてもらうために、声がけをしています。また、軽スポーツをしたり、食事会を行ったりと現場から離れたところでもストレスを解消するために工夫をしています。
 当院の新人看護師入職者は
 2012年 3人  2013年 3人  2014年 2人  2015年 5人
 当院では2012年度より同研修を開始しました。以後、新卒採用者に離職者はないです。これからも精神面、技術面にて支えていけるようにしたいです。

 

(5) まとめ
 看護師だけでなく、他の職種の方も離職せず、働きやすい環境をつくることが大切です。実際、町外より入職された方で我が町へ定住していただいている医療関係者の家族もいらっしゃいます。子育ての面でも支援できるように、院内保育も開設しています。
 少子高齢化と言われていますが、働きやすい職場の提供と住みやすい環境をつくることで、少しは改善していければ良いと思います。