【自主レポート】

第36回宮城自治研集会
第9分科会 QOD(Quality of Death)を迎えるために ~地域でできること~

 点を繋げ線にし、線を増やし面に変えていく。地域コミュニティーの活性化とは、そのような作業ではないだろうか。私たちはサロンを例にとり、サロンの現状、運営における課題、地域に与える影響をみていくことで、高齢者だけでなくあらゆる世代を巻き込んだ地域コミュニティーの再生について考察した。



サロンによる地域コミュニティーの活性化
―― 自助・共助・公助 ――

宮崎県本部/三股町役場職員労働組合・自治研グループ

1. 研究テーマ選定に至る経緯

 我々の生活と台風や地震、降灰といった自然災害は切り離せないものである。特に大規模災害では、自治体や個人の力が試される場面は数多い。また、それ以上に地域の力も試される。そのような万が一の状況に備えるため、防犯のため、高齢化社会による孤独を少なくするためなど、様々な理由から地域コミュニティーの再生が声高に叫ばれて久しい。
 三股町においてはどうか。人口は増加しているが、高齢者を含む単身世帯も増加している。その背景として晩婚化、社会の利便性の向上、SNS等の普及があげられる。また、単身世帯や新たに移り住んできた人達のなかには地域の公民館支部に加入しない、地区の集まりに参加しないなど、理由はどうあれ地域の中に入らない人たちも少なくない。同じ単身世帯であっても、高齢世代と若者世代で状況は異なる。若者世代はスマートフォンやSNS、学校、職場等によって社会と何らかの繋がりを持っているが、高齢世代はそのような繋がりもなく地域で孤独である人もいる。
 そのような単身世帯や移り住んできた人たちも参加するであろうもののひとつが、町主催のまつりなどのイベントである。町主催のイベントや事業は、観光だけでなく、産業や福祉分野など多岐にわたっている。特に福祉分野では対象者が乳幼児から高齢者まで幅広く、個人だけでなくグループを対象にしたものまで数多くある。その一つに「サロン」がある。三股町内には、2016年4月末現在22のサロンがあり、うち13のサロンが2015年4月以降に立ち上がっている。そこで、このサロンを例に取り、サロンの現状、運営における課題、地域に与える影響から、全世代を巻き込んだ地域コミュニティーの再生について考える。

2. サロンとは

 1994年に全国社会福祉協議会によって提唱され、ふれあいサロンやいきいきサロンとも呼ばれている。住民が主体的に取り組む活動で、誰もが自由に参加でき、地域への関心を深め、地域の中の居場所づくりや助け合いを育む地域づくりをめざすものである。2013年現在、全国で6万箇所以上あり、その多くは高齢者を対象にしている(注1)
 サロンに参加することで心身のリフレッシュに繋がり、やりがいや生きがいを持つこともできる。また、地域のネットワーク構築にも非常に役に立ち、以下のような効果があると言われている(注2)
○心身の健康維持
 ・寝たきりや閉じこもりの予防
 ・認知症の予防にも期待ができる
○メリハリのある生活
 ・非日常の体験
 ・外出の準備や普段話さない人と接することで刺激を受ける
○情報共有
 ・同世代・多世代交流により、身近な情報を得ることができる
 ・地域の問題や課題、個人の声や思いが共有できる
 ・疑問や悩みの解決のヒントが見つかるかもしれない
○コミュニティーの構築
 ・ご近所づきあいの復活
 ・仲間意識が芽生える
 ・地域活動や行事のときに協力しやすい
 ・防犯・防災の「いざ」という時の頼もしい存在

3. サロンの運営形態

 町内のサロンは、高齢者を対象にしたものが多いが、多世代交流をしているところもある。全国的に見ると近年では、子育て中のお母さんと子どもを対象にした子育てサロンをはじめ、誰でも参加できるサロンや男性のサロン、高齢者に接する機会がない子どもと高齢者のサロンなど、多種多様な活動内容や運営形態がみられるようになってきている。

4. サロンの現状

 三股町内のサロンは、以前から地域コミュニティーがしっかりしている地区や元々人の集まる場所、自宅や自宅周辺で実施している場合が多く、利用しやすい環境にあるため、比較的順調に運営されているところが多い。

2016年度 三股町ふれあい・いきいきサロン設置一覧表
 
2016年4月20日現在
No.サロン名設立年月日会員開催場所開催日開始時間 会 費活動内容
1東原
サロン
1999.4.117第8地区公民館 月1回
第1火曜
9:30~
11:30
年1,000円 血圧測定、ラジオ体操、折り紙、工作、筋トレ、脳トレ、歌唱、おどり、手芸、押し絵
2檪田
サロン
かなり以前10個人宅 毎日 なし茶話会
3花の会 2011.9.111中原
コミュニティセンター
毎週土、第1・3水曜10:00~
12:00
年500円 おしゃべり会、工作、茶話会、ドライブ、ものづくりフェア見学、文化祭への作品出展
4仲町ふれあい健康づくりサロン 2012.4.121仲町研修センター 月1回
第1水曜
10:00~
12:00
年1,000円 ラジオ体操、筋トレ、指トレ、折り紙、工作
5集まっみろ会 2012.7.1326勝岡
コミュニティセンター
月1回
第3月曜
10:00~
12:00
年1,000円 体操、ゲーム、血圧・体重測定他健康チェック、講話
6茶のん場(NPO法人M'sハートフル) 2012.8.2010 山王原個人宅月1回
第4木曜
 無料 茶話会、アロマハンドマッサージ
7駅っ茶ゆるり庵(よつばのくろーばー) 2013.9.2115 三股駅多目的ホール
元気の杜
月2回
土曜
 1回100円 レク・スポーツ、調理、創作、遠足
8はつらつ会 2014.9.1218前目
児童館
月1回
随時
 月100円 お話会、食事会季節ごとの郷土料理、健康・生活習慣病予防料理教室、ストレッチ、多世代交流会
9あっちゃんち(休止中) 2014.8~128ひかり
保育園
月1回
第4日曜日
 無料茶話会、編み物、トランプ
10餅原
元気会
2015.4.2015餅原
公民館
月1回
第3月曜
10:00~
12:00
1回200円 茶話会、食事会ほか
11稗田6支部ふれあいサロン2015.6.210個人宅 月1回 1回100円おしゃべり会、認知症予防食べ物学習
12えがお2015.6.2080山王原地域福祉館 月2回
第1・3土曜
 1回100円茶話会、血圧測定、健康体操
13サロン
2015.6.2236今市
児童館
月1回
第3月曜
10:00~
12:00
1回100円 体操、食事会、歌
14あじさいの会2015.6.2515山田
集落館
月1回
土曜
午後月200円茶話会、お菓子作り、創作活動
15エクササロン仲町2015.7.1110元気の杜 月1回
第2土曜
13:00~
15:00
年500円 おしゃべり会、軽運動、ラジオ体操、温泉浴
16サロン
みどり
2015.7.15209地区
分館
月1回
第3水曜
13:30~
15:30
1回100円 茶話会、折り紙、お手玉づくり、昔の遊び、歌、たわし作り、誕生会
17きゃんせ
轟木
2015.7.3053轟木
集落館
月1回
第4木曜
 1回100円茶話会、おどり、昼食会
18ほほえみ2015.7.27245地区分館、農村広場 月1回
第3水曜
10:00~
12:00
1回100円 お茶会、血圧測定、脳トレゲーム、子ども会15夜、鏡開き、講話
19花見原ひまわり会2015.8.139 花見原
コミュニティセンター
月1回 1回100円 茶話会、ラジオ体操、おどり、折り紙、食事
20茶飲ん村2015.7.115西植木
コミュニティセンター
月1回 1回100円茶話会、その他
21すず虫の会2015.9.2815 ビオトープガーデンカフェ月1回
第4日曜
10:00~
12:00
無料茶話会、その他
22さくら
サロン
2016.4.1920 寺柱
コミュニティセンター
月1回
第3水曜
09:30~
12:00
1回100円茶話会、体操、料理、血圧測定


5. サロンの課題

 課題を明らかにするため、町内の幾つかのサロン運営者及び利用者、また非利用者に聞き取りをしたところ、以下のような意見を聞くことができた。
○運営者・利用者
 ・現状のままでよい
 ・話せる場所があればよい
 ・男性の参加が少ない
 ・運営の後継者がいないことで、この先の継続が難しい。
 ・参加者と活動内容が同じだと、マンネリ化する恐れがある
 ・反省会を行っている
○非利用者
 ・サロン自体がどういったものか分からない
 ・人付き合いが苦手なため参加しにくい
 ・足腰が弱っており、移動が大変
 ・興味がない

6. 実 験

 研究と併行して、活動内容の参考になればとの思いからロケットストーブを使った実験を行った。ロケットストーブとは、少しの道具と廃材で強力な火がおこせる装置であり、屋外での活動時に利用できるもので、災害時等にも活用が期待できる。
 今回は、口径140mmのL字煙突管とブロックで装置を作り実験を行った。直径約54cmのたらいに三股町の温泉源(冷泉)を汲み上げ熱したところ、約16Lを20分弱で40度まで温めることが確認できた。装置の大きさや燃料となる木材の量次第で、時間短縮や沸騰させることも可能である。
 初めは温泉源を生かした簡易足湯の提供のみを考えた実験だったが、調理器具を使えば料理も可能であり、お湯を沸かせることで、アイディア次第では、活用の可能性は広がる。
※ ペール缶を使用する装置や地面に穴を掘る方法もある。

7. 政策提案

 サロンを通じた地域コミュニティーの再生を考えたが、我々の考えと運営者および利用者の考え、非利用者の考えに大きな差があることがわかった。それらを踏まえた上で政策提案を行う。
<運営者・利用者への提案>
 参加者のニーズ調査とマンネリ化を防ぐためのプログラム選定が必要である。それには、参加者一人一人に役割を与え、各人の存在意義が見出せる活動内容の策定が重要である。
 また、活動場所を固定しないことも有効である。自由度が広がるため、参加者を迎えるのではなく、運営者側から出向くことで、参加者を獲得しやすくなる。
 例えば、体が不自由な人のお宅へ訪問することで、参加したいのに参加できない人にとっては有効であるし、屋外で子どもたちへの遊びの指導をすることで多世代交流ができる。さらにはサロンの周知を図るために、町のイベント時にサロンを開設し体験してもらう方法もある。そのほか、屋外活動で農作物を育成・販売し、得た収益を活動費に充てることで、さらなる充実した活動が可能である。
 一つのサロンでこれら全て行うと負担が大きくなる可能性があるので、複数のサロンで連携し役割を分散させることで、独自性や特色を生かしながら、負担軽減を図ることも重要である。
<後方支援の提案>
 広報の仕方を工夫することが重要である。インターネットの活用はもちろんであるが、インターネットをあまり使わない世代への周知は、広報や回覧、チラシ等が主となる。この場合、単発で終わる場合が多いので、連載欄などを設け、長期にわたり紹介し浸透させていくことが必要である。
 後継者育成の仕組み作りにあたっては、関係機関との連携を図り、主催者同士の勉強会や情報交換の場の提供、運営者研修やボランティア研修等が有効である。
 行政支援としては、まずは施設や機材・器具の貸出しを積極的に行い、なるべく運営経費がかからないよう支援し、その上で、必要な補助や助成を行うのが良い。住民主体の活動であることを鑑み、あくまでも自主性を損なわないよう配慮が必要である。

8. まとめ

 私たちは、地域コミュニティーについてサロンを例にとり、自治研に取り組んだ。調査を終え、住民の思いや地域の問題が浮かび上がってきた。様々な意見があるのは当然であり、抱えている問題も違う。しかしながら根底にある共通な思いは、人とのつながりの重要性や助け合い精神ということだと感じた。まさに共助であり、地域コミュニティーの大切さを再認識した。
 問題を洗い出し、一人一人が真摯に向き合えば、より良い地域コミュニティーができると確信している。私たちの住む三股町がより良い町になるよう切に願う。




参考資料
(注1)厚生労働白書(全国社会福祉協議会調べ)
(注2)全国社会福祉協議会パンフレット