【自主レポート】

第36回宮城自治研集会
第9分科会 QOD(Quality of Death)を迎えるために ~地域でできること~

 厚労省では持続可能な介護保険制度をめざし、またできる限り住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最後まで続けることができるよう、各自治体に地域包括ケアシステムの構築の実現を求めています。日之影町は高齢化率が42.6%ですでに超高齢化多死社会を迎え、「地域力づくり」「医療介護連携」「認知症対策」という3つのテーマをもとに新総合事業として研究し取り組んでいます。その一部をご紹介します。



新総合事業で地域包括ケアシステムを創ろう
―― 住民同士で助け合い、支え合う、新総合事業
(新しい介護予防・日常生活支援事業)と地域づくり ――

宮崎県本部/日之影町役場職員労働組合 押方 英隆

1. はじめに

 わが国は団塊の世代が後期高齢者になる2025年まで10年を切り、それまでに何をすべきか、何ができるかを求められ、2014年の介護保険制度改定は、とくに地域包括ケアシステムの構築に向けて、在宅医療・介護連携の推進、認知症施策の推進、地域ケア会議の推進、介護予防・日常生活支援サービス事業の充実・強化としています。第6期介護保険事業計画も2015年度がスタートで、各市町村は新しい介護予防・日常生活支援事業(以下、新総合事業という)への移行を盛り込んだ計画を策定し、自治体ごとの手腕がいっそう問われることとなりました。


2. 地域の現状と課題

(1) 日之影町の高齢者の現状と介護保険サービス(フォーマルサービス)
① 宮崎県西臼杵郡日之影町は人口約3,900人、高齢者数は約1,800人、10人に4人以上が高齢者で、一人暮らし高齢者、高齢者世帯の割合も高く、また渓谷のまち・日之影町というだけあって、ほとんどが急峻な地形で、中心部から車で1時間くらい要する地区もあり、膝や腰をいためた高齢者が多いことが特徴的です。
 高齢化率を全国及び宮崎県のデータと比較すると、全国が26.7%、県が28.6%で、全国及び県平均をはるかに超えています。一般的に、高齢化率が7%を超えた社会を「高齢化社会」、14%を超えた社会を「高齢社会」、さらに高齢化率が21%を超えた社会を「超高齢社会」と呼んでいますが、本町はすでに「超高齢社会」を迎えています。
 高齢化の要因としては、平均寿命が延びたことと出生率の低下による少子化及び若者人口の流出による相対的な高齢化の上昇が考えられます。特に75歳以上の後期高齢者、一人暮らしや高齢者の世帯、認知症の高齢者が増加しており、介護が必要な方々が年々増えています。
 介護保険に関しては、介護保険のサービス費用の推移表(図3)のとおり、認定者数と給付額ともに2012(平成24)年度をピークに若干減少しており、横ばい傾向と見込んでいます。
 第5期保険料は4,900円(県平均が5,142円で26市町村中11番目)、第6期保険料:5,600円(県平均5,482円で26市町村中5番目)で、また上昇率は14.3%(宮崎県の市町村中第6位)でした。
 持続可能な介護保険制度の構築に資するために本町では介護給付費、介護保険料の抑制が喫緊の課題です。
 今後は、地域包括支援センターを中心に地域包括ケアシステムの充実と認知症の早期発見と早期対応、今年度から開始となった新総合事業など介護保険制度改正への対応で生涯心身ともに健康で活き活きと住み続けられるまちづくりを町民・事業者・関係者等と連携・協働しながら進めていかねばなりません。
 利便性には恵まれていなくとも、これまでは地域や近隣の助け合いで補ってきましたが、若年人口の流出や出生率の低下による人口の減少から過疎化・高齢化が進むにつれ、かつての家族や地域における人とひととの繋がりが薄れ、相互扶助機能も弱まっています。いまこそ町民の生活に住民同士の「助け合い」「支え合い」をより強固にしていく地域づくりが求められていると実感しています。

図1 日之影町の人口構造

図2 日之影町内の65歳以上の人口推移

図3 介護保険のサービス費用の推移

図4 介護保険料月額の推移

② 町内の居宅サービスは以下のとおり
・居宅介護支援事業所:3(社協、法人2)
・通所介護事業所:3(社協、法人2)
・訪問介護事業所:1(法人)
・訪問入浴事業所:1(法人)
・訪問看護事業所:1(町立病院)
・短期入所施設:1施設5床
・認知症対応型共同生活介護:1施設1ユニット
・地域包括支援センター:直営
③ 町内の介護保険施設は以下のとおり
・介護老人福祉施設:1法人45床 
 他は、町外の特養、老健、療養型施設を利用
④ 地域包括支援センター……保健センター内に行政直営(2013年度から)

(2) 日之影町の介護保険以外のサービス(インフォーマルサービス)
① 地域支援事業は以下のとおり
・通所事業(運動教室、栄養教室、認知症予防教室)
・訪問事業(閉じこもり・うつ予防訪問)
・家族介護教室
・介護用品(オムツ)給付
・介護慰労金支給
② 生活支援ハウス 8床(一時的入所施設 社会福祉協議会運営)
③ 給食配食サービス 週3日 @350円
④ 生活支援訪問サービス(介護保険非該当 軽度支援でのホームヘルプサービス) @200円
⑤ 緊急通報システム
⑥ ミニデイサービス「まさのや」「だるまや」「筋トレ倶楽部」 (社協)
⑦ ふれあいいきいきサロン
⑧ おれんじカフェ (若年性認知症者対応 地域包括支援センター)
⑨ 百歳体操・介護予防事業 (保健センター)
⑩ 高齢者住宅助成事業(県補助)
⑪ シルバー人材センター
⑫ 老人福祉大学・高齢者教室
⑬ 養護老人ホーム八戸清流園(54床)
⑭ 遠距離通所助成事業:中心部から15km以上離れた場所に居住する住民に通所サービスを提供する事業者に費用の一部を助成
⑮ お助け2680(ちょっとした困りごと対応:社協新事業)


3. 介護給付費抑制の視点からの地域づくり

(1) 支え合いによる地域包括ケアシステムの構築
① 地域包括ケアシステムの強化
 地域包括ケアシステムの構築にあたっては、介護・医療・予防といった専門的サービスの前提として、住まいと生活支援・福祉といった分野が重要で自助・共助・互助・公助をつなぎ合わせる体系化、組織化する必要があります。なかでも費用負担が制度的に保障されていないボランティアの支援や地域住民の支え合いの取り組みである「互助」の強化こそが介護給付費の抑制に直結するものであり、厚労省が推し進める新総合事業の本質ではないかと考えます。
 まず、日之影町独自の地域包括ケアシステムづくりを進めるなかで既存のフォーマルサービスとインフォーマルサービスの整理を行うことからはじめました。介護保険サービスや社会福祉協議会の独自のサービス事業、あるいは町単独で運営する支援サービスの把握と整理から取り掛かりました。そのなかで足りないものの整備作業が厚労省のいうところの資源の開発と政策提言であり、これを地域ケア会議で研究するものだと考えました。
 介護給付費抑制の視点でつくった新たな社会資源、受け皿づくり(インフォーマルサービス)が新総合事業と捉え、その新総合支援事業と地域住民を巻き込んだ支え合いのネットワークづくりを軸に地域包括ケアシステムの構築をめざすこととしました。
② 高齢者の社会参加
 高齢者の多くが農業をはじめとして家庭や地域でも大きな役割を果たしている状況にありますが、高齢者の割合の多い本町においては、さらに高齢者の持つ知識や経験、技術を活かし積極的に地域社会と関わりを持つよう社会参加を促進することが重要で、それは自分達とは異なった世代との交流の場であったり、高齢者クラブや高齢者大学、サロンなど同世代との交流の場であったり、技能を活かしたシルバー人材の派遣など多種多様な形態づくりが必要と考えました。
 自らの知識や技能を活かせる場ができるということは、生きがいを生み、積極的な社会参加が期待できる一因となるものです。娯楽、スポーツ、ボランティア活動などが自主的に展開されるような環境をつくりあげなければなりません。
③ 健康管理と介護サービス
 社会活動に参加するためには健康の保持が重要で高齢になるとともに心身の機能は低下していくことから、高齢者自らも日常的に健康管理に努めることが大切です。そのため、福祉、医療、保健などに携わる関係機関が連携し、健康管理ができるよう高齢者を支援していく体制を整える必要があり、保健センターや町立病院、地域包括支援センターを中心として、早期からの疾病予防や介護予防に取り組むこととしました。

(2) 住民を巻き込んだ見守り支援ネットワーク
① 住民を中心とした見守り体制づくり
 地域包括ケアシステムの充実と高齢者の社会参加の取り組みに並行し、介護給付費適正化を具体的に推進するためのケアプランチェック適正化事業、在宅医療介護連携推進事業、若年性認知症カフェ事業とも関連付けて、「一人暮らしになっても、認知症になっても、寝たきりになっても住み慣れた、この日之影町で一日でも長く生活できるように地域で助け合い、支え合おう」というコンセプトに町民への広報、啓発活動を始めました。その核となるものが10年くらい前に社会福祉協議会で立ち上げていた「日之影ふれ愛ネットワーク」と考えました。しかし、町民からは組織そのものが忘れられ、実質的に機能していなかったことから社会福祉協議会と協働し、再構築を図ることとしました。子どもから高齢者までを地域住民がみんなで見守り、助け合うシステムとして住民代表と生活に関係する機関の代表者と協定を交わし、その下部組織として地域包括支援センターを中心に「認知症高齢者見守り支援ネットワーク」を立ち上げ半年ごとに会議を開催し顔の見える関係づくりに取り組むようにしました。
② 日之影ふれ愛ネットワーク、認知症等高齢者見守り支援ネットワーク
 ・行政機関、社会福祉協議会、民生委員、郵便局、銀行、JA、地域住民がみんなで見守り、助け合うシステム……高齢者、障害者、児童等の住民を見守るネットワーク
 ・地域包括支援センター、警察、消防、病院等の専門機関のネットワーク……緊急対応、問題解決を職務として行うネットワーク
 ・JA、新聞販売、ガス業者、郵便、宅配、金融機関、タクシー等の民間のネットワーク……早期発見、通報、応急処置を職務と活かした社会貢献として行うネットワーク
 ・近隣、民生委員、ボランティア等の地域住民のネットワーク……見守り、連絡、通報を住民相互の助け合い活動として行うネットワーク
 ※この3つのネットワークを一体化することにより、さらに機能強化に努めています。
 2015年度の事業実績について以下のとおり
 2015年7月14日調印式(出席者:町長、商工会、警察署、消防団、広域消防、金融機関、郵便局、民生委員、タクシー、商店会、教育委員会)
 2015年7月17日、2016年2月12日ネットワーク会議(内容:ボランティアの活動紹介、認知症高齢者の見守り支援会議、認知症の講義、グループワーク、意見交換等)
 構成メンバー:ネットワーク見守会議36人(商工会長外)、ボランティア27人

(3) 給付適性化のためのチェックリスト・フローチャートづくり
① 独自のチェックリストづくり
 独自の地域包括ケアシステムの構築、新たな社会資源開発のためには地域ケア会議での研究方法が重要と示し、積極的な取り組みを推進しています。ここで重要なことは町民からの相談を受けた際に、困りごとや悩みごとは何かを聞き取り分析し、住み慣れた地域で安心して暮らせるよう、具体的な援助に導くことが重要だと考えています。そのためには初回相談時に要点を押さえたアセスメントができ、サービスにつなぎやすい独自のチェックリスト(図5)の必要性を感じました。
 最初に国のモデル事業等を実施された自治体について研究しました。なかでも先進的で厚労省からも高い評価を得ている自治体に直接掛け合い、視察研究に成功しました。なかでも大分県竹田市からは地区社協を活用した「くらサポ」という生活支援サービスの組織化等について学び、長崎県佐々町からは、介護予防事業について多くの学びを得ました。
 その学びと研究から従来の25項目基本チェックリストと佐々町のチェックリストを参考に相談受付時チェックリストを作成しました。このチェックリストは相談者の身体状況、ADLやニーズ等の課題分析に有効で介護保険認定申請の必要の有無を判断する基本シートとして活用しています。介護サービス等のフォーマルサービス、介護保険外でのインフォーマルサービスにつなぎやすいチェックリストにし、さらには窓口での対応に迷い、判断できない場合は、多職種との個別ケース検討型地域ケア会議にかけるようにしており、会議に出席する多職種の方々が一目で状態理解ができるようなチェックリストにしました。それを統一シートとしたことで会議のために別シート(基本情報シート等)を準備する手間が省けるようになりました。
② 独自のチェックリストを使った相談対応
 独自のチェックリストは介護保険申請の有無にかかわらず、窓口や訪問先で相談を受ける際に、対応した職員が聞き取りを行うなかで記入するようにしています。窓口対応は地域包括支援センター職員もしくは介護保険係の職員となります。介護相談の多くは対応した職員の面接技術や知識と経験によって、その相談者の将来の方向性が左右されることは云うまでもありません。さらに対応する職員が一般行政職か、社会福祉士、保健師、介護支援専門員かでも変化します。しかし、そのようなことは、あってはならないことだと考えます。どんなときも、誰が対応しようとも住民一人ひとりに適した最良の判断をその都度、行わなければなりません。
 その最初の相談時に最低限必要な確認事項があります。チェック項目を簡潔にすることで、専門職でなくても聞き取りや記入は簡単に行えるようにしました。
 またチェックリストの18項目のうち低下している部分が多ければ、相談者の意向を確認し、その場で介護保険認定申請手続きを行い、軽度の支援で対応可能であればインフォーマルサービスにつないで支援するようにしています。
③ 個別ケース検討型と多職種連携型地域ケア会議
 ADL18項目上では援助する部分は少ないものの、相談者から要望があれば、個別ケース検討会型地域ケア会議で介護保険認定申請の有無とインフォーマルにつなげるかを協議しています。それでも対応できない場合やあるいは安心で安全な在宅生活が送れない場合には、地域の課題として取り上げ、行政職が多く参加する多職種連携型地域ケア会議で協議し、社会資源の開発につなげるようにしています。
④ 具体的なサービス資源の開発例
 役場町民課の下、社会福祉協議会が運営母体となり、軽度者の通所介護サービスに代わるものとして、ミニデイサービス(まさのや・だるまや)を立ち上げ、現在は事業内容をさらに拡大中で高齢者から子ども達の集いの場所としての利用を展開しています。
 また社会福祉協議会では、介護保険や生活支援訪問サービスでのヘルパー派遣の必要はなく、ちょっとした一時的な困りごと、頼みごとに対して、おたすけ2680という新事業も創出しました。
⑤ 開発したサービスから見える更なる新課題
 しかし、介護保険サービスの代替となる充実したサービスとはいえず、また地域住民主体型の事業開発までには至っておらず、新総合事業への移行に合わせてケアマネジメントのあり方について検討しなければならない課題も見えてきました。
 そこで新総合事業を進めていくなかで既存のサービスと新たに創出したサービスの整理をする必要があると感じ、独自のフローチャートを作成することにしました。
⑥ 独自のフローチャートから資源開発の部分を具体化
 町内のフォーマルサービスとインフォーマルサービスの内容を整理した上で、独自のフローチャートを作成しました。独自の相談対応フローチャートを活用すれば、介護相談に応じた職員のスキルに関係なく、初回相談からサービスにつなげるまで支援方法が一元化できるようにしました。
 さらに(図6)相談からサービス利用までのフローチャートの介護予防・日常生活支援総合事業の部分を社会資源の開発の部分として捉え、足りないサービスや地域の課題を抽出するようにしました。また新しい事業やサービスはこの部分を中心に取り組むよう、明確化しました。いわゆるこの部分を国がいうところの新総合事業であり、多様なサービスへの移行のポイントであると捉えました。

(4) 新総合事業(介護予防・日常生活支援総合事業)
① 日之影町は2016年度から開始
 国の規定では2017年度までに実施義務となっていますが、西臼杵郡内は今年度から同時開始とし、現在の要支援者に分類される方を対象に保険給付のサービスから各自治体で決める多様なサービス(地域支援事業)に移行しました。(ただし、医療系サービス等は従来どおり)
 地域の高齢者等を福祉の観点からだけでなく、町づくりの視点で捉え、安心して生活できる環境(買い物、住居等)を整えることを考え、保健福祉分野にさらにプラスαの新しいものをつくり出さなければなりません。特に超少子高齢化・過疎化の現状では、保健福祉分野のみならず、商工関係、町づくり関係の部署と関わりが必須不可欠と考えています。

図5 相談受付時の聞き取り用チェックリスト

図6 相談からサービス利用までのフローチャート


4. 社会資源の開発は地域ケア会議等で生み出す地域づくり

(1) 給付適性化が主体の地域ケア会議に異論
① 本県も給付適正化を中心とした地域ケア会議の動き
 隣県おいて厚労省のモデル事業をとおして地域ケア会議が成功している自治体があります。九州内の自治体や介護保険関連の団体は、こぞって視察に伺い、自分達の町でも同じことができないだろうかと研究しているようです。また本県でも、今年度に入り、県内の首長向けに介護保険トップセミナーを開催し、給付適性化事業のケアプラン点検のような地域ケア会議を県内にも広めていこうとする動きがあります。ようするに国は、給付抑制に成功した自治体の地域ケア会議を推奨しているように思えてなりません。
② 給付適正化に特化した地域ケア会議に疑問
 主流になっている地域ケア会議は、個別ケース検討型にこだわるあまり地域づくりから離れているように感じています。国が示しているガイドラインは、現業のサービスに相当する現行型に加え、多様なサービスとしてサービスA(緩和した基準によるサービス)、サービスB(住民主体のよる支援)、サービスC(短期集中予防サービス)、サービスD(移送前後の生活支援)といった類型を例示しています。この部分の資源開発の地域づくりは、生活支援コーディネーターを中心とした協議体で協議するのか、整理がつかなくなってきています。給付抑制に特化する個別ケース検討型の地域ケア会議が必要であれば地域づくりの材料の一部にはなりますが、その会議の中で地域づくりについて協議することは困難だと考えています。
③ 受け皿づくりとしての地域ケア会議
 国が示したガイドラインにおける多様なサービスはあくまでも例示であり、それぞれの地域の実情や高齢者の実態によって、多様なサービスを開発していくことが、新総合事業を進めていくうえで重要と考えます。しかし、要支援者がこれまで予防給付として提供されてきた介護予防訪問介護と介護予防通所介護が各市町村の新総合事業に移行することで、予防給付が保険給付から地域支援事業になり、「サービス切り」といった印象を持ってしまいます。
 当然のこととして、本町では、これまでサービスを利用していた人、今後利用できることを前提にしている人からの不安をなくすため、現行型はそのまま移行し、一方で軽い人向けの受け皿づくりとして、会議のメンバーでもある社会福祉協議会を中心に、ミニデイサービス、おたすけ2680等の社会資源の開発を進めてきました。
④ 地域ケア会議は給付適性化よりも地域づくり
 そもそも介護保険法の流れから各市町村の介護保険担当課の音頭で地域ケア会議を開催していますので地域づくりに導くことは容易なことではありません。したがって地域づくりはおろか受け皿づくりもままならず、自分達の得意分野である給付抑制に特化した個別ケース検討型地域ケア会議になってしまうのだろうと推察しています。それでも厚労省は、給付抑制に成功し、一定の成果を上げている自治体を優等生扱いせざるを得ない状況にあるようです。
 しかし、一方で事例を提出しなければならない居宅介護支援事業所のケアマネジャーの思いは、計り知れないと考えます。行政と介護の中心的役割を担うケアマネジャーの関係性が悪化してしまえば、連携が深まるどころか、地域包括ケアシステムの崩壊につながるのではないかと不安を抱いています。日本国の介護保険は、民間を巻き込んでいることが大きな特徴ですから、行政と民間のバランスが崩れてしまうことがあってはならないと考えます。
 目先だけのことにとらわれることなく、民間を含めたいろいろな団体と連携し、住民同士の支え合いと助け合いの地域づくりについて、方向性を導く協議の場として捉え、多職種が協働し、隙間のない地域包括ケアシステムの構築を進めていきたいと考えます。


5. まとめ

(1) 日之影町のめざす住民同士の支え合いと助け合いの町づくり
① 住民の意識改革
 個人の価値観の多様化、少子化による家族形態の変化、高齢化に伴う地域からの孤立等により地域住民相互の社会的つながりが希薄化している実情において、社会福祉の基礎は「他人を思いやり、お互いを支え助け合おうとする精神」であるといわれています。
 そのため生活の安心と幸せを実現するためには、「地域住民としてのつながりを持ち、思いやりを持って、共に生きるまちづくりの精神」が不可欠です。住み慣れた地域で、誰もが安心して、健康で生きがいをもって暮らし続けたいという願いを叶えるためには、みんなで地域の課題や問題を検証し、知恵や力を出し合い、みんなで解決する地域の体制づくりが必要と考えます。
② 住民主体の福祉活動の意義
 新総合事業において、住民主体の福祉活動に期待されているのは、多様な生活支援の活動を展開し、その中で高齢者が役割を発揮して生きがいを持つことや居場所づくりなどを通してのつながり、孤立を防ぎ、様々な困りごとに住民同士で助け合う地域をめざしたいと考えます。身近で複雑な福祉の課題を自分たちの問題として捉え、生活のしづらさを抱えて暮らす人に対して、同じ地域で暮らす者同士、何ができるかという意識がもて、住民側から、地域ケア会議あるいは、そのような話し合いの場を開こうという要請が上がるような地域づくりを進めていきたいと思います。
③ 公民協働で作り上げる
 この研究をとおして、それぞれの地域で住民同士が関係する機関や団体等と様々な協力関係を持てば、解決できる課題はたくさんあると感じました。
 地域住民のつながりを再構築すること、誰もが安心して暮らせる地域社会を実現するための体制を公民協働で作り上げること、地域での様々な課題を生活の主体者である住民に視点をあてること、行政や社会福祉協議会、民間団体、地区住民との支援策を公民の協働により実施していくことを再認識することができました。
 そのような意味では、住民や行政、社会福祉協議会等の今後の使命、役割はどのようなものなのかを試行錯誤しながら福祉のまちづくりをめざすとともに、地域を活性化させていくような積極的な福祉活動へと変容することをめざし日々の業務に取り組んでいきます。