【要請レポート】

第36回宮城自治研集会
第11分科会 じちけん入門!! ~じちけんから始まる組合活性化~

 札幌市役所職員組合清田区支部では「地元」を再発見し、「地元」と共に地域を活性化する取り組みを行っています。これから自治研活動をはじめようとする仲間に私たちの取り組みを知ってもらうことで、活動開始の足掛かりになることを願って、これまでの活動内容を報告します。



「地元」を再発見し、
「地元」と共に地域を活性化する取り組み


北海道本部/自治労札幌市役所職員組合連合会 伊倉 桃子

1. 自治研活動との出会い

(1) 自治研って何?
 私は2012年に札幌市役所に就職し、2013年に組合役員に就任しました。役員になったばかりの頃はまだ職員としての経験も浅く、組合活動を通じて組合のこと、役所の仕組み等を勉強させてもらい、当初は右も左もわからない状態で、自治研という言葉すら聞いたことがありませんでした。
 そんな中、役員の方に北海道本部石狩地方本部の自治研グループ討論会議に誘っていただき、自治研と出会いました。自治研と出会った頃の私は、そもそも自治研活動とは何をする活動なのかわからず、活動を通じてようやくわかってきたところです。
 このレポートでは自治研活動に無知であった私が自治研活動を通じて感じたことやこれまでの活動内容、自治研推進委員会を立ち上げるまでの経緯をお伝えします。

(2) 大学生との意見交換会
 石狩地方本部の自治研グループでは、公務員をめざす学生との意見交換会を行い、それをレポートにまとめ自治研集会に提出することになりました。テーマは「学生との意見交換を通じ、私たちが追い求めるべき理想の自治体・公務員像を考える」です。意見交換会では自治体や職員に対するイメージや職員になったらやってみたい仕事などを聞き取り、私たちがめざす理想の自治体や公務員像を考えました。役所の課題や仕事のやり方を考えるきっかけになり、自分が職員になったときの思いを再確認でき、仕事のモチベーションアップにもつながり、大変有益な時間となりました。最後に今後も住民と一緒に考え、実践する自治研活動に取り組んでいくことを確認し、活動の締めくくりとしました。
 この自治研グループに参加した当初は自治研についての知識がない状態でしたが、意見交換会に向けた準備や意見交換会を行う中で、次第に自治研活動は市民と一緒に考えながら活動できることを知り、自治研に無限の可能性を感じるようになりました。

(3) 自治研集会参加
 私は2014年10月に行われた、第35回地方自治研究全国集会(佐賀自治研)に参加しました。私と同じように自治研活動についてわからないながらも自治研活動を実践している事例や様々なテーマを設定して、悩みながらも活動している事例が数多くあることを知りました。佐賀自治研で地域に飛び出して問題解決を図る自治研は面白そうだなと感じ、私も何か活動を行っていきたいと思うようになりました。
 今回、宮城自治研集会に参加されている皆様もこの集会が自治研活動を開始する大きなチャンスになるはずです。全国各地で自治研活動を進めている仲間の取り組みを知ることで、活動開始の手がかりを掴み、皆さんの手によって自治研活動が各地で展開され、より良い地域づくりが展開されることを期待しています。


2. 「地元」を再発見し「地元」と共に活性化する取り組み

 ここからは、札幌市職清田区役所支部の活動を紹介させていただきます。清田区役所は10区ある札幌の中で一番規模が小さい区で、組合員は180人ほどです。地域的にはホテルも無い、警察署も郵便局も無い、地下鉄、JRの駅も無いという、札幌市の中では田舎まちという印象もありますが、緑豊かで治安が良い住宅地で住みやすいまちという一面もあります。位置的には札幌の南東端にあり、日ハムの本拠地である札幌ドームの奥で北広島市の手前にあります。

(1) 地域応援事業
 札幌市職清田区支部では地域応援事業を行っています。これは地元のおいしい商品を組合員に購入してもらい、地元を再発見し、地元を元気な街にしようという取り組みで2014年から始めました。この事業を始めた頃は自治研活動の一環という意識はありませんでしたが、自治研を知ってからこれも立派な自治研活動の一つであることに気が付きました。
 地域応援事業では商品を安く提供するために割引分を支部で負担することにしましたが、この負担がネックとなり、2年目以降の事業継続には反対の声もありました。しかし私はこの事業で組合員に自分の職場の地域の知られざる商品を味わってもらうことで地元を再発見し、地域の活性化に役立ててもらいたいという思いで、「ぜひ続けたい」と粘り、支部役員の了承を得ることができました。活動をしていると反対意見が出てくる場合があるので、地域を少しでも良くしたいという粘り強い意志を持ち続けることが大切だと思います。
 提供する商品は役員で地元のお店を回り、お店の方に協力を依頼し、商品を提供してもらうというやり方で集めました。快く引き受けてくれるところもあれば、仕方なく承諾してくれるところなど反応はまちまちでした。ネックとなっていた割引分も趣旨に賛同していただいたお店には仕入れ価格での提供や一部割引などに協力していただくことができました。いつもお世話になっている区役所周辺の商店やお薦めの店、福祉施設の商品などから計10品(かにみそ缶詰、ドリップコーヒー、生そば、有精卵、はちみつ等)を揃えました。年末の忙しい時期と選挙時期も重なり、注文が伸びるかどうか心配していましたが、売り上げは25万円にも達しました。お店の方にも組合員にも喜んでもらえ、地域にわずかでも貢献できたと思います。この事業は地域との連携を図りながら、地元を元気にできる取り組みであると考えているため今後も継続していきたいです。ただ、経験値の少ない事業のため商店、商品の絞り込み、価格設定などの面で至らない点もありました。地域の商店の皆さんと関わりを持つことができたことは大きな成果です。

(2) 清風ファーム
 清風ファームは支部役員がじゃがいも(キタアカリ)と枝豆を育て、できた作物を組合員に販売し、売り上げを全額、社会福祉協議会の愛情銀行に寄付するという活動です。札幌で農業というイメージは薄いと思いますが、清田区は土と水がよく、道内でもトップクラスの農産物ができる土地です。特に「ポーラスター」と呼ばれるホウレンソウは国内有数の産地になっています。東京を中心に出荷され、道外では認知されているようですが、地元札幌にはあまり出回っていないため、清田区でホウレンソウ栽培していることを知らない人も多くいます。
 清風ファームでは、毎年5月下旬に農業素人集団の私たち役員で、借りた畑に作付けを行います。私自身も農作業初体験でしたが、枝豆とじゃがいもは簡単で失敗が少ないため、毎年この二つを栽培しています。作付けから収穫時までは基本的にほったらかしで、完全無農薬、自然農法です。農作業といっても作付け、数回の草取り作業、収穫の3つしかやることはありません。収穫時期を見計らって8月下旬から9月上旬に役員で収穫を行い、すぐに袋詰め作業、翌日の昼休みに野菜即売会を実施します。販売対象は組合員でじゃがいも、枝豆を1袋各100円で販売し、毎年完売するほどの好評をいただいております。2015年は26,150円
を売り上げ、味も美味しかったと言われ、一安心しました。
 農作業は大変だというイメージがあるかもしれませんが、放っておいても野菜は想像以上に立派に育ってくれるので苦労は感じておりません。役員は楽しみながら作業していて、収穫した野菜がわが子のように思えてきます。
 組合員に格安で安全安心の美味しい野菜を購入してもらい、地産地消を実践でき、これが少しでも地元の農業を考えるきっかけにもなってくれることを願っています。


 清風ファームの運営は清田区の土地柄を活かした取り組みで、毎年恒例の行事となっています。このようにその地域の特色を生かした取り組みを行うことも自治研活動スタートのきっかけになると思うのでぜひ、自分の地域の特色を探してみてください。

(3) ひなまつり講習会
 毎年、ひなまつりの当日3月3日の昼休みに組合員、非常勤、臨時職員の女性を対象に「ひなまつり講習会」を開催しています。この講習会は様々な分野でご活躍されている女性を講師に招き、その経験や考え方を学んで人間・女性として自己を高めることを目的としています。
 昼休み中という時間の制約もあり、食事も兼ねた短時間の講習会のため、「気さくで肩ひじの張らない集まり」という雰囲気が定着しています。食事はひなまつりということで毎回、チラシ寿司と桜餅を用意しています。対象女性の約9割(約80人)もの参加があり、好評をいただいています。
 2014年の講師には女子カーリングの前五輪選手である寺田桜子さんから冬期五輪の体験を語っていただきました。2015年の講師にはとても無理だと思っていた北海道テレビアナウンサーの石澤綾子さんに来ていただき、アナウンサーになった経緯やテレビ局の仕事内容について講演していただきました。無理だからと最初から諦めるのではなく、講演依頼をお願いしてみると意外と簡単に来てもらえることもあるのだと実感しました。2016年にはコミュニケーションアドバイザーの姉帯美和子さんに来ていただき、気負わずにリラックスして仕事、生活に向き合う大切さを講演していただきました。
 こうした学習会を開催することで、参加者には非常に喜ばれますし、組合は賃金労働条件の改善だけに取り組んでいるのではないということを実感してもらう機会にもなります。市民と一緒に考え、実践する自治研活動を実践していくためにはまず組合員に信頼してもらうことが必要になると思います。


3. 自治研推進委員会立ち上げ

(1) 自治研推進委員会準備会
 これまで紹介した活動は清田区支部での活動でしたが、これからは札幌市職全体の活動について報告します。札幌市職では1997年に札幌市政研究所という団体を設立し、そこに対する役員派遣と財源の大部分を交付することで自治研活動と位置付けていましたが、それ以来一般組合員が参加するという手法ではなく、会員制の団体として独自の活動を展開していましたが、一定の役割を果たしたとして2015年9月30日をもって解散しました。
 自治研推進委員会は規則上存在していましたが、事実上活動は行われず、再開に向け、2015年6月にまずは準備会を発足させ、6人という少人数で準備を進めることとしました。
 準備会ではまず、やってみたい活動を出し合いましたが実現可能性も含めて議論する中で、実際にどのテーマで活動を進めていくか、なかなか決まらず、改めて自治研活動を一からスタートすることの難しさを実感しました。

(2) 自治研推進委員会発足
 札幌市職から自治研推進委員会を立ち上げることを決め、準備会メンバーの声掛けを中心に委員を募り、2015年11月についに自治研推進委員会が発足しました。委員を募るにあたっては、各支部から何人という枠を設定せず、少数でもいいからやる気のある若手という点に重点を置きました。
 15人という少ない人数で、なおかつ手探りでの活動開始となりましたが、まずは思いつくことから始めようということで、北海道地方自治研究所の協力を得て札幌市の財政分析をテーマとした学習会を6月に開催しました。組合員の他に組織内市議も参加してくれたことで、市政に対する意識を新たにすることができ、思いのほか充実したものになりました。
 また、全国集会への自主レポート提出も検討しましたが、テーマはいくつか上がったものの、やはり時間が足りないということで、2年後を見すえてチャレンジサポート制度を活用することとし、今集会に2本提出しました。その内の1本は推進委員ではない組合員が全面的に協力してくれています。
 さらに嬉しいことには、自分たちの活動を伝え聞いた組合員が、生活保護と自立支援をテーマにした自治研究論文を寄稿してくれました。少しずつではありますが、私たちの活動が広がりを見せていることを実感しています。
 自治研推進委員会を発足させる前は自治研活動を意識することなく、それぞれの支部や職場で自治研活動と言える活動をしていました。その一つが先ほどご報告した清田区支部の取り組みです。札幌市は人口が195万人の道内一の大都市ということもあり、地域の人とのつながりが希薄になり、職員と住民の距離も近くありません。市民と向き合う覚悟を持って、市民と一緒に考え、実践する自治研活動を札幌市職全体で取り組んでいきたいと考えています。
 今後は職場の壁を越え、横断的な取り組みをしていきたいという思いで毎月、自治研推進委員会を開催しています。まだまだ何をしたら良いかわからず日々、悩みながら活動していますが、そこから学んだことを自分の支部や職場の改革に生かしていくことができるはずです。自治研推進委員会で活発な活動を行い、札幌市職での代表的な活動の一つとなるよう、今後も活動を継続していきます。


4. これから自治研活動を始められる方へ

 これから自治研活動を始めようと思っている方の中には、何をすれば良いかわからないと思っている方がいらっしゃるかと思います。私がまさにそうでした。しかし、普段仕事をしているとき、何気なく生活しているとき、必ず自治研活動開始のヒントとなる課題があるはずです。自治研は、職場の問題や地域の問題といった身近な問題解決に取り組む活動です。自治研活動に取り組むことで普段感じている問題点を市民と一緒に考え、一緒に解決につなげ、問題意識を共有することができます。職場の問題解決や住民の生活に直結できると信じて活動を開始しましょう。
 取り組むテーマが幅広く、やり方も多様で、何から始めたらよいかわからないという場合もあるかもしれません。そんなときは悩みながらも活動を続けている仲間がいることを思い出して、勇気を持って活動を開始しましょう。自治研は素晴らしい活動を行っていますが、残念ながらまだまだ知名度は高くありません。それぞれ活動する地域は違いますが、それぞれの地域で自治研活動が展開され、自治研活動が日本全国で誰もが当たり前に知っているメジャーな活動となる日を楽しみにしています。