【自主レポート】

第36回宮城自治研集会
第11分科会 じちけん入門!! ~じちけんから始まる組合活性化~

宇治田原町職員自主的勉強会の実践


京都府本部/宇治田原町職員組合 岡本 博和

1. はじめに

 宇治田原町の職員規模は正規職員数132人であり、決して大きな職場とは言えません。まちの人口は2016年6月1日時点で、9,562人と10,000人を割り込み、人口は年々減っている状態です。一方で職員組合の組織率を見てみると、組合員数は101人、組合加入率は98%と高い組織率を誇っています。
 少子化対策、観光振興、防災減災対策、新名神高速道路開通を見越した道路整備など、新たな課題は増える一方で職員の数は増えず、限られた人員で宇治田原町の発展のため、まちづくりを進めていく必要があります。 
 しかし、職員が少ない、財源が無いばかりを言っていても、町の課題は解決されません。
 宇治田原町も大きな市と同じ自治体として存在しています。規模が違っても行政に求められるものは、そんなに変わりません。小さな町では1人でいくつも仕事を抱えているのは当たり前です。だからといって、大きな市と同じようなことを同じようにするのは難しいですが、小さな組織だから出来ないなんていうのは論外ではないでしょうか。
 そんな状況だけど、どうすればいいのか? 小さな町・組織だからこそできることを考えていこうとして発足したのが宇治田原町職員の自主的な勉強会「うじたわらプラス」です。
 「うじたわらプラス」は2015年9月に発足したばかりで、勉強会も9月と12月に2回行ったところであり、今後の運営も試行錯誤のところがありますが、職員自らが立ち上げた自主的勉強会が、職員の意識を変えるきっかけになればと期待します。


2. 勉強会発足のきっかけ

 勉強会を発足させるきっかけは、精華町の職員有志勉強会への参加でした。宇治田原町の広報担当者は広報紙で総務大臣表彰を受賞した、全国的にも名前を知られた職員であったことから、広報関係の研修会への参加や、講演等で近隣自治体だけにとどまらず、広報という仕事を通じて多くの自治体にネットワークを持っている職員でした。精華町の広報担当職員の方とも繋がっていたことから、声掛けをいただいたことで、精華町の職員有志勉強会へ参加することとなりました。
 参加した精華町の勉強会は京都府や国に派遣された職員の体験談を聞くというものや、「自治体職員の仕事力アップのための文献活用法」と題して国立国会図書館の職員の方が講演されるなど、自分の町の職員だけでなく、外部からも講師を招くといった、我々宇治田原町職員から見れば、自主的とは言え、充実した内容の勉強会をされていることに大いに刺激を受けました。
 精華町の勉強会へは2回参加し、1回目の参加は3人だけの参加でしたが、2回目は若手職員も含めて10人程度参加し、参加者全員によるワークショップなど参加型の勉強会も経験することができました。
 勉強会後の懇親会へも参加し、精華町職員の自主性に刺激を受け、宇治田原町でも勉強会を発足させていこうという雰囲気になっていきました。
 また、人材育成を担う総務課としても、職員の意識改革・能力開発を積極的に行うことが必要であるとの認識があり、2013年に策定された宇治田原町人材育成基本方針においても、職員一人ひとりの能力開発、意欲の向上を図り、その能力や可能性を引き出し、組織としての総合力を高めることを謳っていることから、総務課の理解も得られ、人事担当の係長も発起人として名前を連ねていただくこととなりました。


3. 勉強会発足へ

 精華町の勉強会に2回参加し、少しずつ勉強会発足の足場が固まり、勉強会の会場利用や、職員への案内に庁内連絡ツールを利用することなど、職場の上司の理解も得られ、勉強会の名称も「うじたわらプラス」に決定し、講演者の調整がついたことから、9月11日に第1回目の勉強会開催となりました。
◎第1回
 開催日時:2015年9月11日 午後5時40分~
 場  所:宇治田原町総合文化センター 研修室1
 参 加 者:宇治田原町職員42人、精華町職員11人、大阪市職員1人
 内  容:「意識のリニューアル チャレンジの扉」 宇治田原町職員 勝谷聡一
      「町職員としての……」         宇治田原町職員 田村 徹
      「都島から発信 大阪23区の広報を変えろ。20代若手職員の挑戦」 大阪市職員 増田章行
 
 勉強会発足の中心人物でありキーパーソンである宇治田原町広報担当勝谷による講演でスタートしました。「がんばる人を応援、まちを元気にする広報紙」というコンセプトで広報紙作成に取り組むことで、結果全国広報コンクール組み写真の部で総務大臣表彰を受賞するに至ったこと。その経験から、どんな仕事でも広い視野でまちの課題を捉えると、できることは色々あり、自分たちの組織だからこそ出来ることをやっていこうといった熱心な講演でした。
 続いて京都府へ出向経験のある職員から、宇治田原町の職員として仕事に取り組む日々の意識について講演をいただき、ゲストスピーカーとして大阪市職員増田氏にも講演をいただきました。
 大阪市の広報紙面が各区により異なっていた仕様を各区広報担当とチームを組んで統一仕様を調製した自身の経験を講演いただきました。
 講演を聞く形での勉強会の後は、会場を移しての懇親会となり、応援に来てくれていた精華町職員の方や、職場内でも普段は交流の無い職員同士の懇親を深める機会となりました。
勉強会の様子
紹介された新聞記事
懇親会後の様子

◎第2回
 開催日時:2015年12月18日 午後6時~
 場  所:宇治田原町総合文化センター 研修室1
 参 加 者:宇治田原町職員42人
 内  容:「『ゆりかごから墓場まで』は、もう時代遅れ」 宇治田原町職員 立原信子
      「民で挑戦。ふるさと志向力ある人材を育成するということ」
      京都大学化学研究所准教授 柘植知彦氏(宇治田原町在住)

 2回目の勉強会では、少子化対策を担当する町職員と、町内で活動されている団体の代表を務めている大学の先生にも登壇いただきました。また、参加者も職員だけでなく、婚活イベント運営を通じて交流の深まった町商工会の若手も参加し、職員だけの参加にとどまらない勉強会となりました。
勉強会の様子
◎新規採用職員向け「うじたわらプラス」ガイダンス
 開催日時:2016年6月8日
 場  所:宇治田原町役場2階大会議室
 参 加 者:新規採用職員6人
 内  容:「意識のリニューアル チャレンジの扉」 宇治田原町職員 勝谷聡一
      (うじたわらプラス)とは
 新規採用職員向けに、第1回目の講演概要と職員有志の勉強会「うじたわらプラス」のガイダンスを行いました。


4. 勉強会の開催を通じて

 勉強会は2回開催しただけですが、職員の意識を変えるきっかけになったのではないかと思います。
・庁内プロジェクトチームへの参加意識の高まり
 「宇治田原町いいところプロモーション・プロジェクトチーム」庁内公募への参画 
 2016年度からスタートする第5次総合計画推進にあわせて、宇治田原町のいいところを発信していくために、職員によるプロジェクトチームでまちの魅力発信のプロモーション事業が計画されました。3つの部会で構成されるプロジェクトチームの庁内公募委員枠に勉強会参加者から2人が参画しています。
 これまで、プロジェクトチームなどに職員参画を呼び掛けても反応はいまひとつでしたが、自ら参加しようとする職員が出てきており、勉強会によるプラス意識改革の芽生えが感じられます。
・職場の外にネットワークを持つことができた
 精華町の職員の方と勉強会を通じてネットワークを持つことができました。仕事関係の連絡のやり取りができるようになるなど、勉強会での繋がりが仕事にも生かされるようになりました。
・多方面からの情報が得られる
 様々な分野の職員やゲストスピーカーの講演を聞くことで、普段の仕事以外の情報に触れることができ、刺激になりました。
・うじたわらを応援しよう「ふるさと納税」
 職員の自主的な動きが出てきています。発起人を含めた9人で宇治田原町にふるさと納税を行いました。まちのことを考えている職員がいることをふるさと納税という行動でアピールしました。


5. 課 題

・継続開催の難しさ
 発起人は3人ですが、それぞれ仕事や家庭を抱えながらの勉強会運営なので、第2回開催以降、業務繁忙と4月定期異動などから第3回目が開催できていません。
 第1回目勉強会の冒頭に発起人3人以外に運営に協力いただける職員の参加を呼びかけましたが、やはり自ら運営に参画してくれる職員は少なく、運営していく人員の拡充も課題となっています。
・勉強会テーマ設定に苦慮
 どういったテーマ設定が良いのか、外の情報に触れる機会も必要と考えていることから、外部識者に講師として講演いただきたいと思っていますが、中々調整が難しく、予定していた講師の日程が合わず開催できなくなったこともあります。
 また、講演会形式からワークショップなどの参加形式の勉強会も検討しており、ファシリテーターの必要性を感じています。
 雑誌等の職員勉強会実施内容を見ていると、若手が職場内の他業務を知る機会として勉強会を開催している事例もあり、外部講師をこだわらず内部職員で実施していくことで日程設定が容易になるかもしれません。


6. 終わりに

 小さな町・組織だからこそできることを考えていこうとして発足した、宇治田原町職員の自主的勉強会「うじたわらプラス」はまだ始まったばかりです。職員が自ら考え企画し、運営していく取り組みは初めてなので、これからの展開がどうなっていくかわかりませんが、「うじたわらプラス」が宇治田原町職員の意識が変わっていくきっかけになればと思います。
 何か始めようと思っていても一人では中々一歩を踏み出せないかもしれませんが、勉強会や懇親会で仲間を見つけられれば、一歩踏み出せるかもしれませんし、その小さな一歩が新しいまちづくりに繋がっていくかもしれません。自主的な勉強会「うじたわらプラス」がもたらす小さな変化に期待するとともに、次代に繋がる勉強会をめざしたいと思います。