【自主レポート】

第36回宮城自治研集会
第11分科会 じちけん入門!! ~じちけんから始まる組合活性化~

 職場周辺や地域内においては、季節を問わず多くの清掃活動が行われています。私も活動に参加してきましたが、その立場は労働組合だけに限られていません。組合員という立場以外にも、地域住民として、或いは市職員として参加することもあります。この清掃活動を通じて気づいたことや感じたことを少し広げ、公共施設等を住民にとってより利用しやすい環境にするためのきっかけになればと思い、レポートにまとめてみました。



清掃活動からはじめる職場づくり・まちづくり
―― 視点を変えることで見えた「気づき」から ――

島根県本部/大田市職員連合労働組合 服部 倫尚

1. はじめに

 市内では、様々な種類の清掃活動が行われています。仕事や業務として行われる活動、ボランティアを募って行われる活動、自分たちの自治会をきれいにする活動……等、数えればかなりの数になります。私自身が参加した清掃活動も、労働組合の立場で参加した活動や、職員として参加したもの、或いは住民として参加したもの等があり、清掃活動の場は「様々な立場」「様々な視点」があふれています。
 活動に参加していつも感じることは「きれいになった環境、風景のすばらしさ」と「活動したことの充実感」です。他の参加者も皆同じようにそう言います。きれいになることは目に見える成果であり、それを充実感として捉えるのは当然だと思います。それはそれでいいのですが、活動を通じて"教訓"というか、"今後に何を活かすか"というものが欠如しているように思えていました。
 以前参加した清掃活動の中でのことでした。私はある施設の除草作業を担当していたのですが、駐車場に停められた車両が極端に線の外側にはみ出し、除草作業の邪魔になっていました。はじめのうちは単に「邪魔だな」と思っていましたが、なぜこんな駐車をするのか疑問に思えてきました。よく見ると、駐車している車両のほとんどが線からはみ出ており、そのため隣の車両もはみ出さざるを得ない状況でした。そしてその原因は駐車場の白線がほとんど消えかかっていることにありました。この発見を施設職員に伝えたところ、駐車場の白線が新たに引かれ直されることになりました。
 普段見慣れている景色であればこの気づきはなかったかもしれません。また、付近を車上から見渡しても気づかなかったかもしれません。実際に駐車場を利用する方の目線に近いところで作業をしていたから気づけたのではないかと思います。私の中では、この経験が「清掃活動」にもう一つのメリットを見出させてくれたのです。清掃活動とは単に環境をきれいにするだけではなく、「そこを利用する方の目線に立ち、環境改善できるきっかけになる」という点です。このレポートはまだまだ実践に乏しく、発表する段階にあるとは思っていませんが、最近私が感じた「気づき」を皆さんと共有したいと思い、提出することにしました。


2. 私が見てきた清掃活動

(1) 私が見てきた清掃活動について
 市内には、どんな清掃活動があるのでしょうか? 私が参加した活動以外にも多くの活動が行われていますが、ここでは私が参加したもの、また、身近に行われている清掃活動についてピックアップしてみたいと思います。
 ピックアップにあたっては、参加した(する)者の立場を数種取り入れることとしました。その結果、「組合員として参加するもの」「住民として参加するもの」「団体員として参加するもの」「職員として参加するもの」等の立場がありました。

【清掃活動の種類】
名 称 場 所 内 容 参加者(立場)
クリーン三瓶三瓶山周辺
・西の原 ・東の原
・外周道路沿い
・登山道
・ごみ拾い
・不法投棄物回収
地元・観光協会・環境団体
・行政・労働組合 等
列島クリーンキャンペーン市内各所(駅舎等)・ごみ拾い連合地区会議傘下組合員
市立病院支援ボランティア大田市立病院周辺・ごみ拾い
・除草作業
連合地区会議傘下組合員
市役所周辺清掃市役所本庁周辺・ごみ拾い大田市職青年部
市内一斉清掃自治会内・ごみ拾い
・除草作業
自治会住民
海岸清掃海岸砂浜・ごみ拾い地元若手住民
カーブミラー清掃地域内カーブミラー・拭き掃除スポ少関係者
職場内清掃執務室・床掃除
・机掃除
・カウンター清掃
大田市職員

(2) 活動の共通点について
① 活動を行う場所
 ~三瓶山、市役所、市立病院、駅舎、カーブミラー、執務室など、活動を行う多くの場所に公共性が見られました。多くの人が訪れる場所や人目に付く場所などの清掃が主目的のため、これには必然性があります。(三瓶山を挙げました。大田市の観光資源である三瓶山は、国立公園指定もあり公共性が高いです
② 活動の内容
 ~ごみ拾いを中心とした作業がほとんどでしたが、車両に乗りながらの作業ではなく大型機械も活用していません。実際にその場所に立ち、「見る」「聞く」「嗅ぐ」「触れる」「歩く」などの感覚をフルに使った活動となりました。
③ 活動への参加者
 ~どの作業も私一人ではなく、多くの参加者がいました。つまり、モノを見る視点も一つではなかったということです。

⇒上記3つの共通点から、こういった清掃活動には、「公共施設等を訪れる方の目線や感覚に近い形で作業できる」ということが言えると思います。

(3) 活動を通じて感じたことについて
① 作業前と比べ、きれいになった環境、風景をすばらしいと思いました。
② 私の活動がこのすばらしい環境、風景を支える一助となったと思うと嬉しくなりました。
③ その達成感に満足しています。
④ 気になったことがいくつかありました。

⇒ここで出てくる「気になること」が私の「気づき」であり、具体には下記のとおりです。

(4) 気になったこと(活動したそれぞれの場所で)
① 駐車場の白線がほとんど消えかけており、停車している車両が線からはみ出している。⇒駐車スペースが有効に活用されていない。
② 立木の枝が伸びすぎていた。⇒歩行者にとって枝が顔に当たる危険性がある
③ 立木の枝が伸びすぎていた。⇒障がい者用の駐車スペースが利用しづらい
④ 使用されていない案内看板等があった。⇒来訪者を迷わせてしまう可能性がある
⑤ かなり深い溝の割に上蓋がない。⇒夜間など住民が誤って転落する危険性がある
⑥ 横断歩道の位置がニーズに合っていない。⇒よく利用する通学児童、生徒の安全性が心配
⑦ 窓口カウンターのスペースが狭い(申請等の筆記作業をするには狭い)。⇒利便性が悪い
⑧ 来客用カウンターのペン立てにインク切れのペンが多数あった。⇒利便性が悪い
⑨ 来客者から見るカウンター越し執務室が整理されていない。⇒印象が悪い
⑩ 窓口での相談内容が、全て周囲の来客者や職員に聞こえてしまう。⇒個人情報、プライバシー保護の不徹底
 …などなど。


3. 清掃活動を通じて見えたもの

 2.(4)で「気になったこと」をいくつか列記しましたが、これらは清掃活動中に気づいたものです。いずれも何らかの改善が必要ではないかと思ったものでした。これら以外にも様々な気づきがありましたが、すぐに改善できるものもあれば、改善には調整が必要なものだったり予算を伴うものだったりと、対応に時間を要するものもあります。
 しかし、すぐに改善できるものは気づいたその日から改善することができ、小さなことかもしれませんが公共施設の利便性アップに繋がります。活動参加者が多数いる場合、多くの参加者が同じポイントで同じ気づきをすれば、その気づきはもはや小さなことではなく、多くの人が感じる大きな要改善ポイントになります。
 この改善が積み重なれば、職場だけでなく、地域や市全体といったまちづくりにまで大きな影響を及ぼすことになるのではないかと思います。そしてそのまちづくりは、立場を超えて集まった参加者の一つの気づきからスタートするいうことになります。つまりは「協働」です。
 その環境や風景を見慣れてしまっている人にとっては、こういった気づきを出していくことは難しいかもしれません。そうであるならば、今まで関与していなかった場所において、真っ新な気持ちで清掃活動に参加することで、新たな気づきが見えてくるのではないでしょうか。


4. まとめ

 今回のレポートでは、清掃活動によって気づくことから職場の改善や、公共施設の改善、そして広く捉えればまちづくりにまで及ぶのではないかということを述べました。職場環境の改善やまちづくりであれば、何も清掃活動に限らなくてもよいのでは? 自治研活動じゃないのでは? と思われるかもしれません。
 ただ、私のこのレポートの出発点は、清掃活動に新たなメリットを見出すことができた体験が元になっています。単に環境をきれいにするだけではなく、「利用者目線に立ち、環境改善のきっかけに気づく」ということです。清掃活動に参加することは非常に良いことだと思いますし、そのことが改善に繋がるならば様々な立場で皆どんどん参加すればよいと思います。
 労働組合として、そういった考えに基づいた活動を始めているわけではありません。個人的な気づきのまま終わってしまっている例もあります。既存の清掃活動を利用して、労働組合、地域住民、関係団体など、たくさんの立場からたくさんの気づきを寄せ集める取り組みをしてみてはどうか? との思いもあります。そして、結局のところ、自分たちの利用する場所や住んでいる地域をよく観察して、改善点を見つけて、改善に向けた取り組みをするというのは、労働組合が行う労働安全衛生の取り組みの拡大版だと思います。そうであれば、地域住民とともに環境改善の取り組みを進める点で自治研活動になるのではないかと思います。
 まだまだ個人的見解の枠を脱していない状況ですが、取り組み方によってはおもしろいものになるのではないかと感じています。