1. はじめに
東日本大震災の前で、みなさんの記憶に薄いかと思いますが、2004年10月23日M6.8の新潟中越地震がありました。その1年後ぐらいにテレビで『防災かまど』のドキュメンタリー番組が放映され、放送を見ていた私はこれだとピンときました。前々から自治研活動で何かをしたいと思っていましたから、これなら災害の時に使えるし小学校の校庭に設置したら子ども達も喜んでくれること間違いないと確信し、早速に用務員部会で提案しました。みんなは、すごいなあと褒めてはくれましたが実現しませんでしたが、その後、現業評議会が興味を示してぜひとも作ろうと言うことになりました。そして、崇広中学校の教頭先生に試作品を作ってもらいました。『防災かまど』が、地元の機関紙YOUに取り上げられ少しばかりの反響があったのも今では良い思い出です。
さらに、どのように作製し発信していくかが課題になりました。
私は、地元で自治会活動をしており、ある会議の後、「防災かまどを作ったけど、思うようにいかない」と話をしていたら、地元で水道配管の仕事をしている方が、「土管を使って"かまど"を作ったら」とアイデアを出してくれました。何度か話をしている間に、案を描いて実践に導いてくれました。職人としての腕も良く上手に機械を使い私の思ったとおりに仕上げていただきました。
今度は、私たち用務員部会が自らの手で四角いかまどと土管のかまどを2つの班に分かれて作製をしました。いつも一人で仕事をしている私たちには、汗を流しみんなで一つのものを作る喜びを感じることができました。慣れない作業でしたが、次第に上手に出来ていく事が自分たちの自信につながっていくようで貴重な経験でした。そんな思いの中私たちが作りあげたかまどの手順と苦労した点、満足した点を発表させていただきます。
2. 最初は、四角い集水桝を使った防災かまど
(1) 最初の試作品は教頭先生のアイデアから
初めての防災かまどは、崇広中学校の教頭先生に集水桝を利用する事を提案して頂き、四角い集水桝を二個使って作った横長のベンチ型でした。誰にでも簡単に作れる様に、なるだけ安価で簡単に入手できて、手を加えなくても良い材料と言う事で、これを選び、ほとんど手伝って頂いて作り上げました。とても立派な防災かまどのベンチが出来上がりました。現業評議会の全員学習会の場で皆さんに見て頂き、利点などを説明し、今後どの様に活用できるか話し合いました。おかげで、皆さんに興味を持って頂き、協力して頂ける事になりました。
(2) 災害時を想定して試してみました
実際に防災かまどを使って、調理をしてみなければという事になりました。実際に災害が起こったらと想像すると電気も水も無い中で、どの様にすれば避難されて来た方々に食事をして頂けるか話し合い、簡単に調理ができ皆さんに提供しやすそうな豚汁とご飯を作ってみることにしました。
今回は20人分ぐらいを想定して、調理員部会の方にレシピを考えて頂きました。実際の災害時には、水も無いと言うことで、備蓄のペットボトルの水をいかに上手に使って調理するかという事を考えながら、工夫して調理して頂きました。
また、火をおこすにあたっても、少ない材木や枯葉、紙などを使って、いかに早く無駄なく、調理の過程に応じた火力がおこせるか、清掃部会の方に考えて工夫して頂きながら協力して頂きました。
現実は、ご飯を炊くのも普段は炊飯器を使っているので、さあ、お鍋でご飯を炊くとなるとなかなか難しいもので、水加減・火加減を調節しながら、みんなで頑張って炊きましたが、一回目はびしゃびしゃした芯のあるご飯になってしまいました。再挑戦の二回目はわりと上手に出来上がりました。災害時に避難されてみえた方々に衛生的に、素早くご飯が配れる様に考えたら、おにぎりがいいのではないかと言う意見が出され、ラップを使ってご飯を握って貰いました。美味しいおにぎりが出来上がりました。
実際に試作品の防災かまどで調理してみると、なかなか上手く火が起こせなかったり、かまどの火がお鍋の横に上がってしまって、お鍋は黒くなるのに上手く炊き上がらないという現実に直面しました。
そこで、どうすれば良いか検討して、集水桝に丸い穴の空いた煙突用耐熱版をかぶせたり、火が起こしやすい様に、集水桝の下にLアングルを置いたり、桝の下部にバーベキュー網を置いたりして、改良品を作成しました。
実際に火を起こして鍋でお湯を沸かしてみると、最初の時より随分火が起こしやすくなり、お鍋も黒くならず、上手くお湯がわかせました。
(3) 写真を使って手順をまとめてみました。
① 火起こし
集水桝を使って作った防災かまどで、調理をするために、火を起こしているところです。
最初に小枝や枯葉を下に置いて火を起こし、火が付いたら木材や薪を入れて、火力を安定させていきます。いざという時、燃やす物がなければ、ベンチの木の部分を燃やさないといけないのかなあと思いますが、上手く燃えるか不安です。
枯葉や小枝を入れて準備中 |
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火がおきて木材を入れました |
② 実践中です
ペットボトルのお水で、先に切っておいた野菜や、お米を洗っています。少量のお水で上手く洗える様に、水を掛ける人と洗う人に分かれて工夫して洗っています。どれだけお水を使ったか、記録もしました。改良前の集水桝を使った防災かまどで、お鍋を火にかけて豚汁とご飯を炊いています。風がふくたび、お鍋の横から火が出て来て、お鍋がまっ黒になりました。
野菜を洗っています |
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お米をといでいます |
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使ったペットボトルです |
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豚汁をつくっています |
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炊いてます、火加減が難しい |
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おなべが黒くなりました |
③ 炊き上がったご飯をおにぎりに
なるべく、衛生的で後片づけが簡単に出来るように、ご飯はラップを使用しておにぎりにしました。温かく食べやすく、皆で楽しく頂きました。
みんなでおにぎりを作っています |
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完成したおにぎりです |
3. 次に取り組んだ、土管を使っての防災かまど
(1) 土管かまどの作業行程
材料は、ヒューム管(土管)、鉄金丸棒、獣害用柵、もち焼き用丸型金網です。
ヒューム管(土管)長さ2m10cm、直径32cmをベンチになる為の高さに合わせ、4分の1の大きさで45cm、50cm、55cmと長さを変えて切りました。
「かまど」をイメージすることで、火の炊き口を切り落とす作業から1つ1つが完成版(見本品)を作っていただきました。炊き口は、たての高さ25cm、横幅20cmを切り落とします。お鍋をすえる上の部分は、鉄金丸棒を使います。そのためには、丸棒が転がらないようヒューム管に歯止め(おおとつ)を6か所切り丸棒がおさまるよう平らに削り、磨く作業は至難の業です。
3本の丸棒を中央になる棒42cm、両側2本は、38cmのそれぞれの丸棒を渡すことで耐久性は、バッチリです。
前回の改善点で地面から直接火をつけるより低上げして火を入れることで、空気の回りが早いのではないかと考えました。そこで、獣害用柵を使い、ヒューム管の内側におさまるよう柵を作り、火の回りを良くするため、柵をバランスよく曲げヒューム管を内側にはめ込みました。それだけでは網目があらいためおもち焼き用丸型金網をのせ、火の炊き口は出来上がりです。
(2) 試してみました
実際に、鍋をすえ火を炊いてみました。火は、おこしにくかったのですが、いい感じに「かまど」の特徴がでてよかったです。もし、うまく火がまわらなければ、煙突の代わりになるようヒューム管の回りに数か所穴を開ければとも案を出し合い悩んでいたところ、見本品を作るため作業場を使わせて頂いた山本さんが「穴を開けることで火や煙でやけどするで。」とヒントをくれました。私たちは、その話を受け、「一度、火を炊いて試してみよう。」それから空気穴を開けるかどうか考えたらいいかなという事になりました。
作業に関わっていろいろ考えて頂き、ヒントを頂戴し、一緒に作業をして頂いたりと、大変お世話になり、色々助けて頂く事で和やかな雰囲気が出来上がりました。そして、慣れない作業を見守り、助けていただき最後には、歓声と拍手がおこりました。
前回の「かまどベンチ」もそうですが、移動できることが魅力です。今回は、丸型土管なので1人で転がしながらの移動と『かまど』『ベンチ』の組み合わせが簡単・コンパクトにおさまる仕上がりです。
3つの「かまどベンチ」は、それぞれお世話になった学校に置いて頂きました。
(3) 夏祭りに参加して地域のみなさんにお披露目
市内の地区で、8月22日に2年に1度の行事で『村おこし』が開催されます。『村おこし』とは、子どもたちもとても楽しみにしている夏まつりで、模擬店がいくつか出されます。その中にみんなで作り上げた「防災かまど」も使って頂ける事になり、市民の皆さんの前にデビューできることになりました。
もちろん、私も含め現業評議会の人たちも、一緒に『村おこし』を楽しむ事となりました。
これを機会に、今後は色々な地域の自治会の方々にも、この防災かまどを知って頂き、一緒に協力しあいながら、あちこちの学校や公園、避難場所に設置していけたらと考えています。そして、協力しあいながら作業をしていく事で、市民の皆さんと色々な情報交換や繋がりを深めていけたらと思います。そうする事で、いざ災害が起こった時に、深めた繋がりや絆を元に、市民の皆さんと一体となって、協力しあい助け合って災害を乗り越えていけるのではないかと思っています。
(4) 写真を使って作製の手順をまとめてみました。
① 土管を裁断して
最初に、土管の直径や長さを測って椅子にしたとき、安定した高さになる様に考え、一本の土管を適切な長さに切って頂いたら、四つできました。
土管の直径は約32センチです |
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切る長さを測っています |
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土管を切っています |
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四等分した土管です |
② お鍋が置けるような工夫を
次に、お鍋が乗せられる様に、鉄パイプが転がらず置けるように、土管に切り込みを入れ、土管の長さに合うように鉄パイプの長さを測り、切断して頂きました。
鉄パイプは土管の溝にピッタリはまりました。これで、お鍋が置けるようになりました。
土管に切り込みを入れました |
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鉄パイプを測ってます |
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鉄パイプを切っています |
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できあがった3本のパイプ |
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かまどに乗せてみました |
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③ かまどに焚口をつくる
かまどに火を入れる焚口を作って頂きました。
火を入れた時にコンクリートが割れない様に、焚口の大きさも考えて切って頂きました。
焚口の裁断をしています |
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焚口ができました |
④ 焚口の下に金網を入れます
上手く出来上がりました。そして、焚き木が上手く燃える様に、焚口の下に金網を置ける様に細工をして頂きました。
鉄パイプを切断したり、金網を曲げて土管に設置したりしました。
完成した土管のかまどです |
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金網を切っています |
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金網を土管に入れました |
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鉄パイプを切っています |
⑤ 椅子をつくります
木枠の椅子の部分の作業です。
長さの測り方や、印の付け方、のこぎりの使い方や引き方も教えて頂きました。
また、電動ドリルの持ち方や使い方、ネジくぎの打ち方も、教えて頂きました。
土管にピッタリの木製椅子が出来上がりました。改良品は長いベンチではなく、一人でも運べる様に、一台ずつの椅子型ベンチにしました。
座り心地もばっちりです。
お鍋を乗せてみても、しっかり安定しています。
木を測っています |
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木を切っています |
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椅子の組み立て中 |
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椅子の組み立て中 |
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完成した椅子をかまどにセット |
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人が座っても大丈夫でした |
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おなべも置けました |
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⑥ 集水桝の改良品を作りました
集水桝の改良品を作るため、煙突版を細工して頂きました。
集水桝の一辺を割り開けて、焚口を作りました。
煙突版をまげています |
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集水桝を割り開けて焚口を作りました |
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完成した集水桝のかまど |
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⑦ 完成したかまどを試してみました
早速、火を入れてお湯を沸かしてみました。
薪を入れる所に、空気が入りやすい様にもち焼き網を入れて工夫したので、火も起こしやすかったです。
お湯も、前回より短時間で沸いた様に思います。
集水桝のかまども、火が鍋の横に出ることなく、上手くお湯を沸かすことができました。
皆さんの知恵や経験を持ち寄り話し合って、出来上がったかまどは、前回の問題点や改良点を、ほぼ改修出来たと思います。これもひとえに皆さんのおかげであり、皆で協力し合った結果だと思います。市民の方々や、各部会、部署の隔たりを無くし、一緒に防災の活動に取り組む事の素晴らしさ、大切さを実感しました。
最後に、参加者全員で記念撮影を撮りました。
土管のかまどです |
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集水桝のかまどです |
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集水桝のかまどでやかんが焦げません |
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参加者の記念写真です |
4. 地域の方と交流をかねて
2月20日土曜日の午後から市内の岡田地区の「いもに会」に参加させていただきました。「いもに会」は午前に地区の方による共同作業のあとに防災の意識を高めるため、そして交流などを兼ねて行っています。以前、区長さんから地区に常備してあるかまどと現業評議会が作った防災かまどを使ってぜひともうちの地区で一緒に実演をしてみたいといわれました。いもには岡田地区の方が用意をしていただきました。私たちがアルファー米を準備しておにぎりを作りました。いろんな味のアルファー米を楽しみながらみんなでいただく事ができました。岡田地区にも立派な防災かまどがあり共感する事ができました。地域のみなさんとかまどを通じて仲よくなり防災についても話し合いお互いがわかりあい笑顔での自治研研修ができました事が一番の収穫でした。
岡田地区の皆さんと |
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作ったおにぎりです |
5. まとめ
今後は、もっと違った人達や違った場所で防災かまどに取り組み、一緒に作って広めていけたらいいなあと思っています。
作るメンバーが変われば、違った案も出てくるかも知れません。
実習も違った材料で、違ったメニューで炊き出しをしてみたら、いろいろな問題点や改良点が発見できるかもしれません。
今後もいろいろな地域の方や、いろいろな年代、いろいろな職業の方々と一緒にコミュニケーションを図りながら作業することで、縦の繋がりや横の繋がりをしっかりと築いていけるかも知れません。そういう絆を、この防災かまどを通して縦横無尽に築いていけたら、いざという時に皆で助け合える災害に強い市、地域になると思います。
将来、そんな強い絆が出来上がっていく様に、まずは出来る所から防災かまどを広め、設置していけたらと思っています。
また、小学校で子ども達も興味を示してくれましたので、一緒に試してみました、その事は次回に報告できたらと思っています。
これで、伊賀市職労現業評議会の防災かまどのからの発信を終わります。
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