【自主レポート】

第36回宮城自治研集会
第12分科会 ほんとうの住民協働とは? ~地元スペシャルになろう

清掃職場の新たな取り組みと
新たな公共サービス確立のために

京都府本部/八幡市職員労働組合・現業評議会 小林 勇也・久保小太郎・奥村 将真

1. はじめに

 私たちは八幡市役所環境業務課の職員です。職種は技術員(ごみ収集作業員)で現業職員として位置づけされています。全国的に清掃職場や学校・保育園給食・庁務員のような現業職場は退職不補充や民間委託により縮小されるなど大変厳しい状況にあります。そんな中私たちが所属しています環境業務課の現在の状況、そして環境業務課職員としてどのように市民サービスの発展に関わることが出来るのか。また、労働組合(現業評議会)の活動としても、今後どのように取り組んでいくかを自治研レポートとしてまとめてみました。


2. 採用されて感じたこと

 新規採用され、環境業務課に配属されました。私は収集運搬業務が仕事だと思っていましたが、市民が出すごみを回収することだけではなく、八幡市においては作業工程に集積場のカラス除けネットの後片付けが含まれています。たたみ方を先輩職員から学び、どのようにすれば速く丁寧にたたむことが出来るのかを工夫し、練習を重ねました。そして飛散ごみを掃除し、集積場を綺麗にすることで、市民サービスに力をいれていることに驚きました。また、収集業務の中で資源の分別方法についての啓発も行い、市民にも理解していただき、喜んでもらえることで、やりがいを感じました。
 採用されるまでは公務員は安定しているものだと思っていました。しかし現業職場は、退職不補充や民間委託などによって労働条件が悪くなっているなど、とても厳しい現状であることを先輩職員に教えてもらいました。その中で、労働組合を通して先輩職員がカラス除けネットの後片付けを現場の発想(組合提案)として行い、市民からの信頼を得ていることなど、労働組合の必要性などを教えていただきました。その後、自ら現業評議会の幹事会を見学し、現業評議会が必要だと改めて知ることができました。労働組合無しでは職場を守ることが出来ないこと、さらには市民サービスの低下にも繋がると思い、現業評議会の役員として組合活動に参加しました。
 組合活動を始めるまでは、私が採用されたように正規職員の採用が当たり前のように行われていると思っていましたが、そうではなく組合活動をしていないと確実に採用されるかは分かりませんでした。その中で、組合活動を継続し正規職員の必要性を訴え続けた結果、今年新たに仲間を増やすことができました。これからも厳しい現状は続きますが、自分たちの職場を守り、市民サービス向上のためにも仲間を増やしていくことが大切だと思いました。

 
収集後のカラス除けネットの後片付け   カラス除けネットの実施によって届いた
市民からの多数の感謝の手紙


3. 八幡市で始めた新たな業務

 八幡市では近年、収集業務以外にも次のような業務も積極的に導入し、環境業務課が行う市民サービスの幅を広げています。八幡市で新たな業務を企画立案し、実行しているのはすべて現場の清掃職員で、その知識と技術、そして現場での経験の質の高さが求められてきます。

【出前授業】
 八幡市では、2014年4月から市内の小学校4年生に環境教育の一環として環境業務課職員自らが小学校に訪問し、授業を行っています。小さい頃から分別方法やその必要性を伝え、実際に収集業務に携わりながらごみ収集や環境問題について少しでも興味を持ってもらい、将来的なごみの減量につながる業務を行っています。
 出前授業については現在小学校のみとなっていますが、自分たちの収集業務の存在や分別方法を発信するために、保育園や自治会に対しても自ら出向き、少しでもごみの減量や分別、そして資源の重要性を伝えていかなければなりません。

 
出前授業を行う環境業務課職員

【再任用職員の業務(ふれあい訪問収集)】
 2014年4月から八幡市ではふれあい訪問収集を行っています。ふれあい訪問収集とは1人でごみを出すのが困難な独居世帯に対し、個別に訪問し、家庭ごみを収集すると同時に安否確認を行うというものです。導入に至るまでの経過としては、労働組合を通じて他府県の市町村への視察を行い、情報を収集し、何度も試行錯誤した結果、このサービスを実施することができました。ふれあい収集を導入した時のように労働組合のような業務上以外での横のつながりが今後も重要になると感じました。
 現在この業務には再任用職員が行っています。今後大量退職を控える八幡市環境業務課の再任用職員の業務として、今まで培ってきた技術を活かし、無理なく安心して働くことのできる新たな業務をつくっていくために、組合活動などの横のつながりも活用していく必要があります。

 
訪問時の安否確認の様子   安否確認の後、ごみを収集


4. 現業職場における正規職員の定数の重要性について

 八幡市環境業務課では2014年3月に環境業務課清掃職員の定数に関する覚書を市当局・市職労・現業評議会の連名で交わしました。覚書を交わしたことで今後10年間の人員採用計画が決定し、全国的に貴重な清掃職員の新規正規職員を継続的に採用する事が可能となりました。これまで採用を凍結していた十数年間で年齢構成が偏ってしまいましたが、この採用計画があることで今後10年、20年先までの人員配置の見通しがたちました。高齢化していた環境業務課が若返ることで、今まで以上の作業の効率化が図れるようになり、より市民サービスを充実させる計画が立てやすくなりました。また、職歴の長い先輩職員と同時期に業務を行える職員が増えることで技術・知識を継承できるようにもなりました。
 このことからも現在では全国的に採用の少ない現業職場では、新規正規職員を継続的に採用し、市民サービスを維持・向上させるために協約締結権を最大限発揮し、新規採用や労働条件について正式に文章を交わすことが出来る「組合」、特に「現業評議会」という組織での活発な活動は必要不可欠であり、今後も必要な条件等についてはしっかりと当局と文書確認等を行っていきたいと考えています。
【災害への対応】
 清掃職場への正規職員の新規採用があることによって災害時に特に現場力を発揮することが出来ます。八幡市でも2012年の京都府南部豪雨災害と2013年の台風18号による土砂災害によって2年連続で豪雨災害に見舞われましたが、災害ごみの対応については長年清掃職場を経験してきた管理職と監督職が中心となって指揮をとることで、市役所内での職種を超えた連携を円滑に行い、迅速な災害対応をとることが出来ました。このように災害時には清掃職場の正規職員が通常の収集業務に加え、災害ごみの収集を行うだけでなく、管理、監督職にも清掃職場を経験している職員を配置し、市役所内での横のつながりを築くことができる環境を準備しておくことが、災害大国と言われる日本の市町村には必要不可欠です。

 
連携を取りながら災害ごみを収集する環境業務課職員

【新たな業務を確立するために】
 継続して新規採用を行い、出前授業やふれあい訪問収集など新たな業務をつくるために重要となってくるのが現場と管理職との信頼関係です。管理職と円滑な関係をつくっていなければどんなに優れている案を打ち出してもそれは却下されてしまいます。八幡市の環境業務課においては組合提案(現場職員の発想)として、「カラス除けネットの後片付け」や「飛散ごみの掃除」等を行い、市民に評価され、市民の声を市当局に届けることが出来たからこそ、現場の職員の必要性を認めてもらうことが出来ました。
 現場の発想から市民サービスを行うことで、市民に一番近くで接し、ニーズを吸い上げている現場職員の必要性を伝え、市当局と信頼関係を築いてきました。
 その結果、八幡市では現場の職員(現業職員)が管理職として必要とされ、そして任用されました。
 清掃職場の実状や清掃職員とともに長年収集業務を行ってきた管理職であるから、市民ニーズに応えることが出来るのが現場の職員という事を知っています。
 業務内容を把握している管理職であるから、現場の気持ちを一番に共感し、現場の声を吸い上げ、迅速かつ的確に業務に反映することで、市民ニーズに応えることが可能になります。
 なにより管理職が市民ニーズを吸い上げ、直接応えているのが現場の職員という事を管理職が理解しているからこそ、市民サービスの維持、そして向上につながります。
 そして自ら発案した市民サービスを積み重ね、災害対応などを通じて現場と管理職の信頼関係を築いた結果、ふれあい収集や出前講座などの新たな業務を現場の職員が企画立案し、実行に移すことが出来ました。
 現場(一般職)と管理職という基本的には縦の関係ではありますが、八幡市においては、清掃職場を経験した管理職がいるからこそ、市民サービスについて考える時は同じ目線で考えることが出来ると感じています。そして同じ目線で考えることは、これからの市民ニーズに応えていく一つの近道になるのではないかと考えています。同じ目線で話し合い、市民サービスの拡充を図るためには市民ニーズを常に把握し、新たな業務を自分たちで確立し続け、信頼関係を築いておくことは必要不可欠です。


5. 最後に

 これまで先輩たちの企画立案で行ってきたカラス除けネットの片付けや飛散ごみの掃除、小学生を対象とした出前授業、その他災害対策をはじめとするたくさんの市民サービスを行い市民のニーズに応え続けてきた結果、新規職員を採用し、職員の定数に関する覚え書きを労働組合を通して交わすことができました。これからも定数通りの新規職員を採用し定数を守っていくには、これまで行ってきた市民サービスだけでなく、新たな職を確立していくことが八幡市環境業務課にとっては急務であると私たちは考えています。
 新たな職を確立するには日々の業務の中で時代の流れを敏感に感じ、毎日同じことをただこなすだけではなく変化をつけて業務を行うことが必要だと思っています。
 市民サービスの向上や市民のニーズの対応、災害支援などは正規職員がいなければできることではありません。正規職員を採用し続けることで職場が活性化され、職場が活性化されることで市民サービスの向上、市民のニーズに応えるということに繋がると考えています。
 私たちも収集業務のみを行うのではなく、先輩たちのように市民のニーズに合った新たな業務を模索し、発信し続け、これからもきれいな八幡市の街並みをつくっていきたいと思います。
 そして、八幡市の活動内容を積極的に全国に発信することで、全国の清掃職場に正規職員の仲間が増えていくことを願い、今後も活動を続けたいと思います。